テトラたちは飯代のかわり(?)に海獣退治を引き受け、無事討伐成功。
漁師たちからお礼にと貰った漁船で海を越えた。
彼らの第一目標は、魔力異変について何か知っているであろう魔術師、
ヘルレイオスを探すこと。
第二目標は、「妖精との契約」。万が一ヘルレイオスと対峙することになった
場合に備え、力をつけておきたいのである。一応。
ヘルレイオスの行方については全く手掛かりが無いので、ひとまず彼らは
「ある精霊」が住むという「ディアナの塔」を目指していた。
精霊契約…なるべく多くを味方にしたいところだが、どうなることやら。
…………『ホワイトヴェルト・港』…………
「すっごい雪!」
「足を滑らせるなよ?」
人形レジンがウキウキ・テトラちゃんに警告。
北の大陸「ホワイトヴェルト」ではほとんど一年中雪が降っているそうだ。
「俺はこのままでも平気だが(テトラも元気そうだが)、
……念のため防寒具やら色々買っておくか。」
後ろの方で寒そうにしていた魔女ニーキスを、ヴェルディは気遣ったのだろうか。
一同は港に居た「かめにん」から防寒具やらを掻っ払った。
所持金はゼロガルドなので、支払いは船上で釣った魚介類共をまるごとドン。
なんだかサカナクサイ奴らっスねえ。
「アレ、なんか、舟。……」
そうこうしているとテトラたちの漁船の横にもうひとつ、小舟が着港した。
着港、というか漂着の方が正しそうな雰囲気。
舟上には一人、大人の男が倒れているよう。
待てッ、とヴェルディは止めようとしたが、テトラは既に小舟の上。
「……ウゥ、………………」
「!生きてる………大丈夫、ですか?!」
「…………ダイ……ジョブデス。……スコシ船酔イヲ…………」
「それならわたしの酔い止めグミあげます!!…酔い止めって酔ってからでも効くっけ?
……とにかく、どうぞ!!」
テトラは謎の男にグミを食べさせた。モグ、モグ、モグ。
テトラは男を舟から引きずり上げて背中をさすってみたりするが、
依然として激烈に弱々しい。
「ワタシが回復術を使えればソレでイッパツ、なんだろうが…」
申し訳なさそうなニーキス。人形と少年も困り顔だ。
ふと、目を男の持ち物に向けるヴェルディ少年。
……刀、と……荷物袋………なにやら見覚えのあるマーク。
それは彼が幾度となく目にした、日の丸とクロスを重ねたような、
対魔士のシンボルマークだった。
「…その男、対魔士のようだ。息はしてるみたいだからもう、ほっとこう。」
「そんな、……凍死しちゃうかも………」
「大丈夫だろう、きっと。ヘタに面倒見て、復活したソイツに斬られたりするのはゴメンだ。
ニーキスの魔導書だとか、ノクティルカを、レジンを没収されるかも。
……凍死するようなことがあれば、まあ俺たちもラッキーというか……」
と、テトラの顔を覗くヴェルディ。ムッとした表情…
「この人が死んじゃったら、ラッキーなの?」
「!……いや、…………そういうことじゃ、」
「わたしが、レジンやニーキスさまが対魔士だったら、ヴェルディは見捨てちゃうの?!」
イヤ、少年は我々を気遣って……衝突を避けるためにだな……と、
レジンが間に入ろうとするが、テトラは何やら収まらないようだ。
「ヴェルディは、間違ってる。 『あのとき』だって、
なんかヴェルディはウヤムヤにしたけど、…………死のうとしてたんだ。
わたしが、ひとまず描ければ、魔力が戻ればもういいんだって思ってた。
……違うよ。……全然良くないんだよ…………!!!」
そう言うとテトラは男をおんぶして歩いて…行こうとしたが、やはり大人の男を
おんぶするのはキビシイようで、男を運ぶのはニーキスに任せ歩いていくのだった。
…………『雪降る町クーレンベルク』…………
テトラたちは雪道を黙々と歩き、町に着くと宿屋へ直行した。
未だ弱っている男をベッドに寝かせると、フゥゥっと、ニーキスは一息。
その日は男子女子・二部屋借りて一泊することとなった。
「すまないな少年、テトラは……気分屋なのだ。」
部屋の壁に背中を預けて座るレジンが、一言。
ヴェルディはもう片方のベッドに腰を下ろして謎の男を眺めていた。
「俺は間違ってる、か。……それはわかってるつもりだし、
『そのこと』をテトラもわかってるんだろうけどな……」
しばらくして、少しは回復したのだろうか、謎の男が喋り始めた。
「……本当に申し訳ない……彼女には、命を救われた……この恩は返さねばな……」
「…………」
「彼女は……あなた方は、一体…。旅の途中ですか……??」
レジンは男の問いに答えた。
「彼女は、テトラは魔力異変の真相を確かめようと旅をしている。
あわよくば異変を治めて、妖精の消えるのを食い止めようとしているのだ。
私は、ただの彼女の人形。付き添いのようなモノだ。」
ヴェルディが後に続いた。
「俺は、……俺も、お前と一緒だ。 彼女に救われた……!
そうだ。テトラは何故か俺に救われた気でいるが、そうじゃない。
……俺が救われたんだ………俺が力になりたいんだ………!」
それを聞いて男は晴れやかな表情を浮かべた。
「素敵じゃないか…! オボロゲだが、どうも僕のせいでテトラさんを怒らせてしまった様子。
どうか今の言葉を直接伝えてあげてくれ。」
一方、女子部屋……
ニーキスが何か聞きたそうなのを察して、テトラは話し出した。
「ヴェルディは絵の描けなくなった私を…もう一度、描けるようにしてくれた。
助けてくれたんです。なんかちょっとアブナそうな方法で。
…でもわたしはソノコトよりも、単純に『描いてくれ』って言ってくれたのが嬉しかった。
それはニーキスさまの歌声みたいに……もしかしたら、それ以上に眩しかったコトバ……」
ニーキスは黙ってテトラの話を聞く。
「……ヴェルディには、死んでもいいみたいな事を言って欲しくない………!」
コンコンと音を鳴らし、魔女ニーキスが男たちの部屋に入ってきた。
ドアの向こうにはテトラがイブカシゲにしている。
「ワタシの魔女修行にチョコっと付き合って貰えないか?」
…………『クーレンベルク・キムラスカ広場』…………
一同は宿屋から少し歩き、広場に出た。
謎の男もついてきている。大丈夫なのかアンタ?…
雪は降り止んでいた。おそらく珍しい事と思われる。
空はピンクと紫のグラデーション。
魔女ニーキスは、広場にある大きな像(ユリア像…岩場に腰掛けた女性を象った石像)
の前に立ち、本を開いた。
「テトラが魔法使い役。ヴェルディが妖精役で。」
「???」
「契約の儀式のヨコウレンシュウだ。」
「??ニーキスさまの、練習では……????」
「教える側に立つと、より理解が深まるかなぁって、ね。」
グニョッと飛び出てきたカメレオン。
舌を伸ばして、降り積もった雪を少量・ペロンと口に入れる。
そしてペッ!と吐き出したモノをニーキス様がキャッチ。
「テトラ。これを……。」
ニーキスから氷の指輪を受け取ったテトラ。
なんだか汚そうなんですケド、というカオを直ぐに整えた。
テトラとヴェルディはなんとなく「流れ」を理解していた。
「ヴェルディ……」
「テトラ、……望みはなんだ。」
「わたし、テトラは、契約を結びたい。」
「では契約の指輪を。」
ニーキスは本をテトラに向けて開いた。
「…我、今、妖魔ヴェルディに願い奉る。指輪の盟約のもと、我に妖魔を従わせたまえ……
我が名はテトラ……。」
「…テトラに従おう。 俺は、……テトラの力になりたい………!!」
「ヴェルディ……。 この契約を結んだ今! あなたはわたしの『絶筆』を見届けるまで
死ぬことを許されない。わたしが許しません!!! ……お願いだからね?ヴェルディ……」
「…わかった。……ありがとうテトラ……」
暮れ色と白雪のあいだ。氷の指輪が美しく光る!!