「おめでとうぽん!あなたは本物の魔法少女に選ばれたぽん!」
魔法少女となって悪と戦う大人気ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』。しかし、それは数万人に1人を本物の魔法少女にする力を持つ奇跡のゲームであった。もちろん魔法少女になればゲームの中で使っていたアバターを元にした姿と人間離れした身体能力、さらに自分だけの固有の魔法を得ることができるのである。そして、この魔法少女になった者に課せられる使命はその与えられた力で人々を助けて善行を積み、「マジカルキャンディー」と呼ばれるポイントのようなものを増やしていくこととされていた。N市に住む「姫河 小雪」もまた魔法少女に選ばれ「スノーホワイト」として日々人助けに勤しんでいた。さらに小雪の幼馴染の男子である「岸辺 颯太」も「ラ・ピュセル」という名の魔法少女に選ばれており2人は再会を喜んだ。そして、ラピュセルと助けも借りつつ人助けを重ねたスノーホワイトはいつしかマジカルキャンディーの獲得数がトップになっていた。昼は学生、夜は魔法少女と充実した毎日を過ごしていた矢先、ゲームを管理する電子妖精のファヴから衝撃的な通告が出された。
「魔法少女の人数を減らすことにしたぽん。」
その日、チャットルームに集まっていた魔法少女達はそれぞれ口々に意見を言い合う。ほとんどがブーイングだったが、お構いなしにファヴは続ける。
「理由は魔法少女が増えすぎたことにあるぽん。魔法の源になる魔力は土地に依存するぽん。それに魔力は石油とか石炭みたいに限りある資源のようなものなんだぽん。つまり、魔法少女がこの街に集中すると魔力が枯渇してしまうぽん。だから、魔法少女の数を半分に減らすぽん。」
「減らすって…じゃあどういう方法で減らすの?」
皆のファヴへの文句をかいくぐってスノーホワイトが質問した。
「今日から1週間の内に一番マジカルキャンディーの総数が少ない魔法少女を脱落させるぽん。これを8回繰り返すぽん。だから今まで以上にいっぱい活躍していっぱいキャンディーを集めてほしいぽん。」
皆、ファヴの無情な一言に沈黙する。しかし、反論する者は誰もいなかった。間を持たせるようにファヴは続ける。
「だから、お詫びのしるしにマジカルキャンディーを効率良く集められるシステムを2つ追加するぽん。1つは『英霊召喚システム』、もう1つは『令呪』だぽん。」
ファヴは突如チャットルームの背景にモニターを出す。そこにはN市の街中が映し出された。
「まずはこれを見てほしいぽん。」
するとモニターがズームする。そこに映っているのは地面に書かれた青白い円陣だった。
「ここからこれからのマジカルキャンディー集めのパートナーとなるサーヴァントを召喚できるぽん。街の所々に設置したから各自、そこへ向かってほしいぽん。ただし、1回英霊召喚を行なったらこの円陣は消えちゃうから注意してほしいぽん。」
スノーホワイト達は一切喋らず、ファヴのモニターを注視し説明に耳を傾ける。当然だ。魔法少女の競争に関わる話であるから皆、真剣に聞いている。
「それとサーヴァントのルールを説明するぽん。サーヴァントにはレアリティが存在するぽん。☆の数によって決まっていて、下から☆1〜☆5まであるぽん。☆の数が多い程サーヴァントの基本能力が高いからその分は有利になるぽん。だけど、☆はあくまで基本能力の差であってマスターとなる君達が上手く運用してポテンシャルを引き出してあげればたとえ☆1でも十分戦えるぽん。」
それから…とファヴは一呼吸置いて説明を続ける。
「召喚にはマジカルキャンディーが必要だぽん。1回ごとにキャンディーは100個必要で、最大10回まで連続で召喚できるぽん。ただし、サーヴァントとは1人1騎までしか契約できないぽん。だから、召喚した回数のサーヴァントの中から取捨選択をしなきゃいけないぽん。」
「待てよ!1回の召喚に付きマジカルキャンディー100個って暴利じゃないか?」
トップスピードが声をあげる。マジカルキャンディーは魔法少女が脱落しないために必要な謂わば生命線である。それをガチャのような召喚システムに100個も支払うのは割に合わないと思ったからだ。
「そう言うと思って特典も用意してあるぽん。10回連続で召喚システムを利用したらレアリティの高いサーヴァントが1騎以上確定するぽん。具体的には☆4以上が必ず手に入るぽん。」
「つまりキャンディーをつぎ込めばつぎ込む程強いサーヴァントを仲間に出来て一歩リードできるわけか。」
リップルが頷く。トップスピードはまだ文句を言いたげだったが、リップルが納得している様子のため、一旦黙ることにした。
「まあ、数打ちゃ当たるってのはガチャの基本だよねー」
「だよねー。てか、つまりそれって10連ガチャってやつ?」
ミナエルとユナエルもそのルールを受け入れたようである。その時、スノーホワイトが挙手する。
「し、質問なんだけど、サーヴァントさんの性格とかは事前にわかるの?ほら、仲良くなれないと嫌じゃない?」
「今はどうでもいいじゃない、そんなこと。使えるものは使い倒せばいいのよ。」
スノーホワイトの質問に被せるようにルーラは悪態を付く。
「さあ、それはわからないぽん。契約するまでのお楽しみだぽん。さあ、話を戻すぽん。2つ目の機能は『令呪』だぽん。原則としてサーヴァントは魔法少女の魔法の干渉は受けないぽん。それは逆もしかりで魔法少女はサーヴァントの攻撃で傷付くこともないぽん。」
すると、スイムスイムがファヴの話を遮る。
「じゃあ、ルーラの魔法でもサーヴァントを支配することはできないの?」
「話は最後まで聞くぽん。そこでサーヴァントに絶対的な命令を実行できる権利…それが令呪だぽん。サーヴァントにはそれぞれ人格があり、命令を無視することもあるかと思うぽん。しかし、これを使用すれば3回までサーヴァントに強制的に命令できるぽん。」
「3回まで…ちなみに全部使い切ったら?」
今度はヴェスがファヴを見つめながら問いかける。
「サーヴァントとの契約が解消されるぽん。それと同時にサーヴァントは自立し、勝手に行動してしまうぽん。これは運営としても困る話だから極力避けてほしいぽん。」
「ふーん、令呪がなくなったら邪魔になるだけかぁ。」
今度は皆から少し離れたところにいるカラミティがボソりとつぶやく。
「というわけで、令呪をすべて使い切った魔法少女はサーヴァントを野に放した罰としてペナルティを与えるぽん。罰の度合いはどんなサーヴァントとの契約を破棄したかで決めるぽん。酷い場合は…アバターの削除もあり得るぽん。」
「そんな!アバターを消すだなんて…」
「落ち着くんだスノーホワイト。令呪を全部使わなきゃ問題はないよ。」
狼狽えるスノーホワイトをラピュセルが落ち着かせた。スノーホワイトはラピュセルに取り乱してごめんというような表情を見せる。
「では、お知らせは以上だぽん。皆のこれからの頑張りに期待してるぽん。サーヴァントとも喧嘩せずに仲良くやるぽん。」
それだけ伝えてファヴはチャットルームから退室した。
気がつくとカラミティとクラムベリーもチャットルームからいつの間にか退室していた。残ったメンバーでチャットが始まる。
「あの2人は早速サーヴァントを召喚しに行ったのかしらね。」
「どうしよう…脱落しちゃったら…どうしよう。」
「まずはマジカルキャンディーを1000個集めて10連ガチャすりゃいいんじゃね?」
「それが先決だよねー。お姉ちゃんマジ堅実ー」
ルーラのチームのメンバーが口々に言葉を交わす。ただ、スイムスイムだけは終始無言であった。いや、ぼんやりとしているだけかもしれないが。
「脱落だなんて…そんな…私達これからどうなるのでしょう。」
「大丈夫だ、シスターナナ。君は私と私のサーヴァントが必ず守る。」
ふらりと体勢を崩しかけたシスターナナをヴェスが優しく抱き止める。
「ちくしょう、言いたい放題言いやがってあの白黒…急に魔法少女の数を減らすなんてふざけんなって話だぜ。」
「サーヴァント…これをどう扱うが競争の鍵かな。」
地団駄を踏むトップスピードとは対照的にリップルは冷静に状況を分析していた。
「でも〜、サーヴァントとの契約は強制じゃないんからね〜。やりたくなかったらやらなくてもいいんだよね〜。」
間延びした呑気な声で自分の意見を言うのはねむりんである。
「ねむりんはああ言ってるけどキャンディー回収の効率を上げることができるのは美味しい話だね。少し契約料が高いけど手伝ってくれるのはありがたい。」
「うん。じゃあ、今から召喚に行った方がいいのかな?」
ラピュセルもスノーホワイトも一応はサーヴァントのマスターになる決心は付いたようだ。やがて、次々とサーヴァントを召喚しに行くのか、それともキャンディー集めに行くのか皆が退室していき、チャットルームに残るはねむりんだけになった。
「でも、お友達ができるのはいいかもねぇ。ちょっと考えてみようかな〜。」
実はねむりんも英霊召喚システムに興味を持っていたことは誰も知る由もない話である。
※ここのスペースには明らかになった組み合わせや脱落者を記載していきます。
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