白雪「今日もお疲れ様、セイバー。」
青王「はい、お疲れ様でした。ところで…お腹が空いたのですが。」
白雪「そうなの?じゃあ、あそこの喫茶店でお茶にしよっか!」
青王「いえ、私はそこより隣のラーメン屋に行きたいです。チャーシュー麺大盛りが食べたい気分です。」
白雪「ええっ!?さっきお昼ご飯、10杯もおかわりしたのにまだ食べるの?」
白雪(セイバーってそんなに食べないといけないクラスなのかな…颯ちゃんのセイバーもいっぱい食べるのかまた聞いてみよ。)
青王「行きましょう、マスター。どうやらあのラーメン屋は大盛りを30分で完食できたらタダになるそうですよ。」
日中は人々で賑わう噴水のある公園も夕方になると誰もいなくなる。そんな人気のない公園で1人、ベンチに座り一服しているのはクーフーリンであった。
「リップル…あいつはいつも1人で行こうとするな。俺はサーヴァントなんだから少しぐれえ頼ってくれてもいいのによ。」
そう呟きながら空を見上げる。しかし、綺麗な夕焼けに紛れて何か馬車のような物体がこちらに接近してきた。
「うわあっ!?なんだありゃあ?」
まさに彼にとっては晴天の霹靂、いや今は夕方だがとにかくすごいものがクーフーリンの目の前に降りてきた。ドーンと地響きを鳴らし降りてきたのは神威の車輪だった。
「危ねえなてめぇ!どこの英雄だ!」
「はっはっは!威勢の良い奴がいるな。む?その気配…貴様もサーヴァントか?」
現れたのはイスカンダルであった。イスカンダルはクーフーリンをじっと見つめる。
「ああ、サーヴァント。ランサーだ。よくわかったな。」
「何、貴様からは人間ではない雰囲気を感じたのでな。しかも、その身なりだと魔法少女ではあるまい。」
クーフーリンはそんなイスカンダルの軽口を余所に槍を構えて先を向ける。
「それでライダー。俺に何の用だ?戦いにでも来たのか?」
「ふむ、余を恐れぬとはなかなかの胆力よのう。どれ1つ手合わせといこうか!」
「へっ、ここでお前の力を見ておくのも悪くねえ…いっちょやるか!」
クーフーリンは槍をイスカンダルに突き立てるべく踏み込む。しかし、イスカンダルも腕の腕の防具で槍を逸らし、腰の剣を抜き反撃を試みる。クーフーリンも負けじと身体を伏せて剣の攻撃をかわした。
「俺もタダでは倒れねえぞ!」
「やるではないか。だが、まだまだ余は満足しておらぬ。もっと楽しませよ!」
クーフーリンの槍とイスカンダルの剣が再び火花を散らす。2人は武器を大きく振りかぶり、いよいよ強力な一撃を双方が放とうとした…その時だった。
「おーい、ライダー!何してるんだ?」
「ランサー?何してるの?」
トップスピードとリップル、お互いのマスターが現れた。
「ん?お前が来たってことは…そうか!この青タイツの男がリップルのサーヴァントか!」
嬉しそうに声をあげるトップスピード。
「この髭面のマッチョのおっさんがあんたのサーヴァントか…」
リップルは別に興味ないと言った表情でつぶやく。
「てか、2人ともどうして喧嘩なんかしてるんだ。理由があるなら聞いてやんぞ?」
「喧嘩なものか。要は力くらべよ。余は強者との戦いは血湧き肉躍るからな。」
「なんだ喧嘩じゃないなら別にいいか。でも、ライダー。今は戦いよりもマジカルキャンディー集めだ。そっちに集中してくれ。あんたも聞いただろ、ねむりんが脱落した話…」
その時、リップルが横から口を挟んだ。
「そういえば妙な噂を聞いたんだった。スノーホワイトとスノーホワイトのサーヴァントが言ってたんだけど、魔法少女じゃなくなったら死ぬって噂知ってる?」
「あー、あったな。でも、俺はそんな噂信じてないぞ。」
馬鹿馬鹿しいねというような表情でトップスピードが笑う。しかし、リップルは一転して顔色を変えた。
「その話なんだけど…ネットのニュースにこんなのがあった。これ、偶然だと思う?」
リップルがマジカルフォンで見せた記事…その事実が皆の運命を大きく変えてしまうことになるとは誰が予想していただろうか。
その日、チャットルームは騒然としていた。事の発端はリップルが見つけたあるネットニュースの記事であった。もちろんこの騒ぎを聞きつけたスノーホワイトとラピュセル、シスターナナとウィンタープリズン、ルーラ達にマジカロイド、さらにはカラミティ・メアリまでチャットルームに集まった。
「そんな…嘘だろ…?ねむりんが死んだなんて。」
「でも、死亡時刻といい被害者の名前といい一致しすぎてて偶然とは思えない。」
「とにかくファヴに聞いてみよう。それが一番早い。」
ラピュセルの提案に皆は賛同し、すぐさまファヴを呼び出す。
「はーい。どうしたぽん?皆お揃いで。」
「ファヴ、単刀直入に聞く。魔法少女の資格がなくなると死ぬのか?」
「その通り。魔法少女の資格がなくなった人は死んでしまうぽん。」
その一言に皆に衝撃が走る。一瞬皆は無言になるがやがて口々に抗議が始まる。
「そんなのおかしいだろ!いや、仮に本当だとしてもなぜ早く言ってくれないんだ!」
「ファヴはそんなこと皆はとっくに理解してると思っていたぽん。まさかそんなにパニックになるとは予想外だぽん。」
「死ぬなんて…そんな…怖いよう…」
「お姉ちゃん、これマジヤバい展開じゃない?」
「死ぬとか怖すぎるじゃん。はあ、こんなことなら魔法少女になんてなるんじゃなかったかも。」
たまとピーキーエンジェルズが混乱する中、スイムスイムとルーラは何かを考え込むように無言だった。
「こんな非人道的なことは許せません。ファヴ、運営と話をさせてください。」
やや弱腰ながらもシスターナナが面と向かってファヴに抗議する。しかし、ファヴはそんなことはどこ吹く風とさらりと受け流してこう言う。
「だから、ファヴはサーヴァントと契約するシステムを追加したんだぽん。基本的に何でも言うことを聞いてくれるサーヴァントと一緒にキャンディーを集めればそれなりの数にはなるぽん。死にたくなかったら頑張ってキャンディーをたくさん集めるんだぽん。」
ファヴがチャットルームを去ろうとした時、最後にスノーホワイトが問いかける。
「ねぇ。死ぬってことは今まで皆知らなかったことなのに何でアーチャーは知ってたの?」
「さあ?きっとどこかでたまたま情報が漏れちゃったのかもしれないぽん。まあ、アーチャーも昨晩何者かに消されたらしいからもう話はできないと思うぽん。」
それだけ言うとファヴはチャットルームから姿を消した。残された皆はやがてどんどん解散して行った。おそらく心の整理がつかない人がほとんどなのだろう。
「どうしよう。ねむりんが…」
「もう落ち込んでても仕方ないよスノーホワイト。僕達がこれからどうするか考えなきゃ。」
「そこはマスターに同意するぜ。明日は我が身…かもしれないしな。」
「しかし、ねむりんという魔法少女はともかくアーチャーまでまるでタイミングを見計らったかのように消されてしまうとは。
これは何か裏がある可能性も…」
いつもの電波塔に集まる、スノーホワイトとラピュセル、2人のサーヴァントのアルトリアとモードレッド。アルトリアとモードレッドも魔法少女として脱落すると死ぬということを聞かされたようで2人とも口ごもっている。
「大丈夫だよ、スノーホワイト。僕とセイバーが必ず君を守る。それに君には立派なサーヴァントだっているじゃないか。」
「そうだぜ。父上と一緒にいられるなんて滅多なことじゃねえ。その上守ってもらえるなんて無敵だろ。」
「もう、貴方方は…ですがマスター。私は貴女の剣です。正しく使うのであれば私は協力を惜しみません。」
ラピュセルとモードレッド、そして双方から褒めらて少し照れくさくなるアルトリアから励まされたスノーホワイトは顔を上げて頷いた。
「皆、ありがとう。それと颯ちゃんの言葉…すごく元気出たよ。」
「だから颯ちゃんはやめろって…!」
スノーホワイトの言葉に頬を赤らめるラピュセル。その光景をニヤつきながらモードレッドが見守っていた。しかし、アルトリアだけは浮かない顔で考え事をしていた。
(アーチャーはこの事実を知っていたのにまるで口封じのように消された。なぜでしょう…?誰かがこの私達、サーヴァントを利用して何か企んでいる気がするのは私だけでしょうか…?)
一方、ここは城南地区。この場所は一見平和そうに見えるが裏ではギャングやヤクザ達の抗争が絶えないという曰く付きの地区である。そこに1人の女性がいた。その見た目はまるで西部劇に出てくるガンマンのような出で立ちである。なぜが胸元にかけて肌の露出も多いが。
「さあ、お前達が寄越した刺客は皆あたしが撃ち殺した…これからどうしてやろうかね?」
その女性は魔法少女であった。『カラミティ・メアリ』。この城南地区を縄張りとし、多くの魔法少女から危険視されている存在である。彼女はスーツ姿のサングラスをかけた男性に銃口を向けている。
「あ…ありえない…俺はお前を捕らえるために数十人は刺客を送り込んだはずなのに…なぜお前1人で全滅させることができた…」
男はすでにボロボロの満身創痍の体である。銃口を向けられて怯えるしかない。
「あれぐらい朝飯前…いや、5〜6人くらいあたしの仕事仲間に任せたかねえ。あいつはすごいよ。一度戦えと命令したが最後、骨も残さない勢いで殺しまくるんだ。あれは見ていて気持ちよかった。あいつと契約して正解だったな。」
「仕事仲間…?それでもたった2人で…うぐっ!?」
そう言い終わらないうちにカラミティは男の腹部に蹴りを入れる。
「いい加減うるさい口を閉じな。」
「ぐっ…待て。お前が欲しいのは何だ?金か?薬か?」
「決まってるじゃないか。お前の命だよ。」
カラミティが引き金を引こうとしたその瞬間に一台の車が2人の前にやって来て止まった。
「よう。ここにいたか。仲間を助けに来たぜ。」
「てめえ兄貴を放しやがれ!」
3人のチンピラがカラミティを包囲する。その手にはピストルやナイフ、鉄パイプが握られている。
「あーあ、面倒くさいねえ。さてはこのグラサン野郎の刺客の残党か。まあいい。こいつらの相手は任せるよ。バーサーカー…!」
カラミティがそう言い放つと黒い霧がチンピラ達の背後から湧き出る。そして、その中から全身を黒い鎧と鉄仮面で覆った騎士のような人影が現れた。そう、この黒騎士こそカラミティ・メアリのサーヴァント、円卓の騎士の英雄譚に登場するアルトリアの部下にして、湖の騎士ランスロットである。
「Arrrthurrrrrr…」
「ひいっ!?何だこれ?急に出て来たぞ!」
「ばっ、化け物め!」
1人のチンピラが鉄パイプで殴りかかるがランスロットは片手で受け止め、鉄パイプを奪い取る。そして、鉄パイプを振り上げ、怯んだチンピラの…
「ぎゃあっ!」
頭を潰して殺害した。他のチンピラ達は恐怖を覚え、一目散に逃げ出し、車に乗り込む。しかし、ランスロットは車にいつの間にか追いつき、車を持ち上げた。
「や、やめろー!許してくれ!わかった!今すぐ城南から出て行くから…あっ!」
だが、チンピラの命乞いもランスロットは聞く耳を持たず車を思い切り投げ飛ばした。車はそのまま爆破炎上した。
「Ar……thur……」
「ふふ、よくやったよ、バーサーカー。さて、どっちにしろお前はあたしかあいつに殺されるんだ。あばよ。」
カラミティは燃え盛る車の残骸を背にサングラスの男を射殺したのであった。
「あははは!敵対組織の幹部と聞いてどんな奴かと思ったらあっけない。さあて、クライアントから報酬をもらいに行こうかね。行くよ、バーサーカー。」
カラミティが歩き出すとランスロットは霧を発生させ、それを纏って消えていった。
その夜、ルーラ達は拠点である王結寺に集まっていた。というのもルーラは自分とチームを組む者達全員に声をかけて集合させたのであった。
「今日呼び出しかけたのは他でもないわ。私達の今後についてよ。マジカルキャンディーには命がかかっている…そしてそのタイミングでのキャンディーの転送機能の解禁…これって何を意味してるかおわかり?」
まず、最初にたまが挙手する。
「えっと…たくさん持ってる子が少ない子にキャンディーを分けてあげましょうってこと?」
「0点!」
ルーラは苛立ちながら叫ぶ。その様子にたまはさらに萎縮してしまう。
「チームを組んでその中でやりくりしようって話じゃね?」
「おー、それっぽいよねー。それだとあたしらが一番有利だね。」
「30点!」
またもやルーラの採点にピーキーエンジェルズはしょぼくれて座る。
「ところでルーラ。今日は人助けをしに行かないのか?」
「それは今関係ないでしょ!退場させるわよ!」
「な、すまん。」
カルナの質問に空気を読めと言わんばかりにキレるルーラ。頭を抱えながらスイムスイムに問いかける。
「スイムスイム、貴女はわかるかしら?」
しかし、スイムスイムは首を横に振る。ため息をつくルーラに今度はメアリーが声をあげる。
「わかったよ、アン。これは誰かのキャンディーを奪い取ってもいいってことだ。命がかかってるってことは生き残るならキャンディーを奪って誰かを最下位に引きずり下ろせってことだよ。」
「なるほど。それは合理的ですわね、メアリー。」
「やればできるじゃない。ユナエルのサーヴァント達は90点くらいね。」
うんうんと頷き、ルーラは皆の前に向き直る。
「いい?私達は明日の夜、キャンディーを手に入れるために魔法少女を狩りに行くわ。まずターゲットはスノーホワイトよ。」
ルーラはその後、普段から目障りに感じていたスノーホワイトからキャンディーを奪い取る計画を皆に話した。そして、最後にこう付け加える。
「…という作戦で夜襲を仕掛けるわ。当日までに自分のやることをしっかり把握しておきなさい。失敗した者はキャンディーの分け前はないと思うのよ。」
「これをガチでやるの?うまく行くかな?」
「電波塔によくいることは知ってるけど、スノーホワイトのサーヴァントには会ったことないし、ラピュセルは強そうだし…」
「2人とも頭でごちゃごちゃ考えても仕方ないですわ。」
「略奪は海賊の専売特許だよ。だから、任せて。」
ピーキーエンジェルズの2人をフォローするようにアンとメアリーが口を挟む。
「私…失敗しないかな…痛いことされないかな…?」
「マスター、大丈夫だ。マスターは俺が必ず守る。」
ふるふると不安に身体を震わすたまにカルナは優しく寄り添っていた。
やがて、ルーラが解散を言い渡す。皆が帰路につく中、スイムスイムはまだ正座し、ルーラの近くにいた。
「気になってたんだけど、なんで貴女はいつも正座して話を聞くのかしら?」
「尊敬すべきリーダーには正しい姿勢で応えるべき。これはルーラが言ったこと。」
「…どんなに使えないバカでも頭に尊いものを入れていけば良くなるものね。」
ルーラはそのままスイムスイムの頭を撫でる。
「尊いものって?」
「私の『言葉』。」
そのとき、スイムスイムの背後で何かの気配が揺らめくがルーラはまったく気づくことはなかった。
ルーラは寺の奥の部屋に入る。そして、そこにいる人影に声をかけた。
「そろそろ出てきなさい。明日の作戦の説明をするわ。」
「その必要はありません。そもそもその策は一部私が監修してたはずですから。」
部屋の奥から姿を現したのはジルだった。
「そうね。…ねえ、キャスター。この世の中は本当にバカばっかりよね。どうして皆私に着いて来られないのかしら。」
ルーラ、いや、木王早苗は幼い頃からエリートであることにこだわり、学校の成績も優秀だった。しかし、自分以外の人間は自分よりバカばかりだといつも見下していたため、友達は1人もいなかった。社会人になってからは社長に反発してしまい会社を退職させらたが、それは会社や社長ができが悪いだけと思っていたため全く後悔はしてなかったのである。故に魔法少女になった後でもその性格は変わらず、チームを作ったはいいが、やはりメンバーはすべからく自分より駄目であると思っているのである。
「奇遇ですね。私も常にこの世界には憂いを感じていました。なぜ、私の美学が理解されないのか苦悩しておりました。しかし、いくら神に祈ろうとも、得心を積もうとも、それが果たされることはありませんでした。ルーラ、貴女はこの現状をどうすればいいと思いますか?」
あまりに突拍子も無い話に一瞬困惑するがルーラは彼女なりに答える。
「それなら私が世界を変えてやればいいわ。私は完璧なんだから。周りが全部駄目だから私が苦労するの。周りを、世界をまとめ上げるには絶対的な力を持ったリーダーが必要なの。それが、私よ。」
「それは…!まさかこの時代に革命家のような思想を持った人間がいるとは…!その通り、私達は何も間違っていない。世界が狂っているのです。神よ、なぜ私達が報われぬのか。それは神が我々を救わず、罰さず、玩弄するだけだからなのです。ならば私達がこの世界に牙を剥くしかないでしょう。ですから私の仮初めの命、ルーラ、貴女の世界への反逆に使っていただきたい!」
「ふーん。貴方、急に下手にでたわね。でも、安心なさい。私に着いてくればキャスターが死ぬなんてことはあり得ないわ。」
しかし、ジルは遠慮がちに首を横に振る。
「いえいえ、いつか我々は果てる運命であると思います。しかし、貴女の名と功績は永遠に残るでしょう。革命、これ即ちこの世を破壊し、創造するという志を持つ者はいずれ死にゆくものなのです。なればこそやるならば徹底的にやりましょう。中途半端は許しませんよ!」
「相変わらず話が噛み合わないけど、貴方の熱意だけは伝わったわ。明日の作戦、キャスターはかなり重要なポジションにいるんだからしくじるんじゃないわよ。」
「元よりそのつもりです。」
仲が良いのから悪いのか、ルーラとジルは一通り普通の人間にはおそらく理解されないような問答の後、ジルは霊体化し、ルーラは変身を解除する。
(私のチームから誰1人も脱落者なんて出してたまるかっての。)
そう心でつぶやくルーラを再び何かが気配を消して観察していた。
現在確認された組み合わせ
カラミティ・メアリ×ランスロット(バーサーカー)