「今日もお疲れ様。スノーホワイト。」
「うん、ラピュセルもね。」
いつもの電波塔の上で今日の成果を話し合う2人。その横にはそんな2人を見つめる騎士達がいる。
「とりあえず今日も順調にキャンディーを稼げましたね。」
「俺と父上が力を合わせたらそんなもん簡単だっつーの。」
アルトリアは今日のキャンディーの総数を確認し、モードレッドはダラっと寝そべっていた。しかし、そんな和やかな雰囲気を破壊する、招かねざる者達が電波塔に近づていた。
「本当に大丈夫かなぁ…」
「まあ、ラピュセルは強いけど3対1なら有利しょっ。」
「そーだよね。あたしらにはアンとメアリーもいるし。たまのサーヴァントも鬼強いから楽勝だと思うよー。」
電波塔の下に集まっているのは不安げなたまと余裕綽々なピーキーエンジェルズ。そして、その後ろからルーラ、スイムスイム、ジルがやって来た。
「いちいちうるさいわね。私の指示に従っていればすべて上手くいくって何度も言ってるでしょう。後は貴女達の実力次第よ。さあ、早くラピュセルを誘い出しなさいミナエル、ユナエル。それとライダーの2人はラピュセルのサーヴァントの相手をして。」
ルーラはひとしきり指示を出すとスイムスイムとジルと共に電波塔に向かう。一方、ピーキーエンジェルズはスノーホワイトとラピュセルのいる頂上へ一足先に飛び立つのであった。
電波塔を登る前にルーラは少し気になることをスイムスイムに問いかける。
「そういえばスイムスイム。貴女はまだサーヴァントと契約してないの?」
「…ごめんなさい。また後でやるから…」
「ふーん。まあいいわ。あなたの仕事はキャスターと一緒に私の護衛だから、しくじるんじゃないわよ。」
しかし、ルーラは気づいていなかった。実はスイムスイムの左手の甲にはすでに令呪があることを。そんなことは気にかけず、ルーラは2人を引き連れ、電波塔を登り始めた。
スノーホワイトとラピュセル、アルトリアとモードレッドがそれぞれ談笑しているところに2人の人影が近づいてきた。それはピーキーエンジェルズだった。
「あれ?貴女達は確かミナエルと…」
しかし、そう言い終わらないうちにスノーホワイトにミナエルとユナエルが飛びかかった。
「何をするんだ!」
すかさずラピュセルが2人を振り払う。アルトリアはバランスを崩したスノーホワイトを抱きとめた。
「決まってんじゃん。」
「キャンディーちょうだい!」
「キャンディを奪って自分達だけ生き残るつもりか!」
ラピュセルはピーキーエンジェルズに掴みかかろうとするがそのまま空を飛ばれ、逃げられてしまう。
「やーい、ここまでおいで!」
「何て癪に触る奴らだ。マスター、追おうぜ!」
「ああ、そうだねセイバー。スノーホワイトは危ないからここで君のサーヴァントと一緒に待ってるんだ!」
「待って、ラピュセル…」
しかし、ラピュセルとモードレッドはピーキーエンジェルを追って電波塔を降りる。
「ここは私の息子に任せます。貴女は私のそばから離れないでください、マスター。」
とっさに身を乗り出しそうになったスノーホワイトをアルトリアは落ち着かせる。しかし、スノーホワイトに3人の不穏な人影が迫っていた。
ピーキーエンジェルズを追って港にやってきたラピュセルとモードレッド。そこには宙に浮かぶ2人の姿があった。
「へえー、もう追いついたんだ。」
「お前達みたいな卑怯な魔法少女は許せない!」
「そんなの知るかよ!」
ラピュセルは自身の魔法で大剣を抜き、ピーキーエンジェルズ目掛けて振り回す。しかし、ミナエルとユナエルは空中での機動力を生かして器用にかわしていく。
「マスター、俺も加勢する…うわっ!?」
モードレッドが戦いに加わろうとした瞬間、足元を銃弾がかすめる。さらにモードレッドの目の前にカトラスを持った小柄な少女が現れた。その少女はピーキーエンジェルズのサーヴァントの1人、メアリーだ。
「お前の相手は僕だ。ここから先は通さないよ。」
「ふん、見たところお前はあの双子天使のサーヴァントか。なら、お前をぶっ倒して進むまでだ!」
モードレッドも対抗して剣を抜き、メアリーに斬りかかる。しかし、メアリーも自分の身の丈ほどあるカトラスでモードレッドの斬撃を受け止める。2人の間でしばらく激しい火花が散る剣劇が繰り広げられた。
(メアリー、もう少しあのセイバーを誘導してくださらない?私の射程範囲内に入ればすぐに撃ち抜いて差し上げますわ。)
一方、2人とは離れた場所に隠れて狙撃のチャンスをピーキーエンジェルズのもう1人のサーヴァント、アンが狙っていた。
実はアンとメアリーはルーラが事前にこのような作戦を聞かされていた。それはラピュセルのサーヴァントをメアリーがアンの射程範囲内に移動させ、確実に照準を合わせたうえで敵の頭を撃ち抜くという計画である。当初、回りくどいうえにサーヴァントはたとえ頭を撃ち抜かれても即死するわけではないと2人は反対したが、ルーラの意見はこうだった。
「ええ、そんなことは承知の上よ。でも、顔をやられたら、たとえサーヴァントといえど無事で済まないんじゃなくて?それに即死させられなくても目とか喉元を潰してしまえば戦いはグッと有利になるわ。」
「いかなる強き戦士であろうと眼球や喉を鍛えることはできませんよ。私は生前軍務の経験はありますが、目や喉を貫かれて無事な者を見たことはありません。」
ルーラの言葉にうんうんと頷くジル。アンとメアリーもその意見に異論はなく、ルーラの作戦に乗ることにしたのであった。
剣撃を受けながら一歩一歩後退し、アンの銃の射程範囲内へモードレッドを誘導するメアリー。もちろんモードレッドは廃倉庫の屋根に伏せて狙撃の機会を伺っているアンの存在に気づいていない。
(もう少し…もう少し…今ですわ!)
メアリーがモードレッドをついにポイントまで誘導することに成功した。ここぞとばかりに引き金を引くアン、だがまさかのタイミングでアクシデントが起きた。
「何あれ!剣が伸びた!?」
「お姉ちゃん、危ない!」
ユナエルはラピュセルの大剣に巻き込まれそうになったミナエルを引き寄せる。そして、逸れたラピュセルの大剣はクレーンに吊り下げられていたコンテナのチェーンを斬った。コンテナがメアリーとモードレッドの頭上に落下する。
「うわっと!?」
「何だ!?」
「しまった…銃弾が…!」
モードレッドとメアリーは間一髪でかわすがアンが放った銃弾がコンテナに遮られてしまった。コンテナが潰れて中からセメントが吹き出た。
「くそっ、悪運が強いな…あっ!」
「隙アリだ!おらあっ!」
メアリーは突然の出来事に動揺し、隙ができてしまった。そこへすかさず跳躍したモードレッドがメアリーに跳び蹴りを食らわす。
「うわぁっ!」
メアリーは大きく吹っ飛ばされ廃倉庫の壁に激突し動かなくなってしまった。
「メアリー!何てことですの!」
アンは再び銃を発砲するがモードレッドは見切っていたらしく剣で銃を防御した。
「お前もあいつの仲間か!叩き斬ってやるぜ!」
モードレッドは剣を振りかぶり今度はアンに斬りかかる。アンも対抗し、銃をリロードするがモードレッドの方が早い。このままでは剣の直撃を受けてしまう。そのときだった。
「ふんっ!」
「ぐわっ!?誰だ!」
モードレッドは突如何者かのタックルを受けて弾き飛ばされた。アンを守ったのは…赤い翼と金色の鎧の男、カルナだった。
「次は俺が相手だ。」
「また新手か。でもよ、さっきのチビより骨がありそうだな。」
モードレッドの挑発を聞き流し、カルナは身構える。槍を持っていないのはおそらくマスターが魔力を十分に供給していないからだろうか。
(マスターはまだ戦う覚悟が定まっていないから無理に戦わせて負担をかけるわけにはいかない。しばらくは俺が汚れ仕事を請け負おう)
カルナはチラリと横目でアンを見る。
「ライダー。早く片割れを助けに行け。ここは俺が食い止める。」
「わかりました。任せますわよ、ランサー。」
アンは戦場から離脱した。残った2人が対峙する。最初に仕掛けたのはモードレッドだった。剣を振り上げ、斬りかかる。しかし、カルナは素早い身のこなしでかわす。
「ふん、なかなかいい反応じゃねえか。」
軽口を叩くモードレッドに対し、カルナは反撃に回し蹴りを見舞う。モードレッドは剣で防御するがカルナの一撃は重く身体が後ろに大きく後退する威力であった。
「次は防げると思うな。」
「ちっ、一筋縄ではいかねぇみたいだな。」
そうつぶやいた次の瞬間、モードレッドの剣とカルナの拳がぶつかり合い火花を散らした。
その頃、ラピュセルはピーキーエンジェルズと交戦していた。ラピュセルは大剣を振るいピーキーエンジェルズを叩き落とそうとする。しかし、空を飛ぶ2人にはなかなか当たらない。一旦体勢を整えようとラピュセルは地面に足をつく。だが次の瞬間、ラピュセルの足元に大きな穴が開いた。
「うわっ!?」
「やったー!たまナイスタイミング!」
「へへーん、ざまあみろー!」
ラピュセルの着地点に待ち伏せしていたたまが自身の魔法で穴を開けたのである。ラピュセルはそのまま地下深くへ落下…したかのように思えた。しかし、ラピュセルはとっさに自身の魔法で剣の大きさを変え、穴の両端に剣をまるで橋のようにかけたのである。これでラピュセルは穴に落ちずに済んだ。ラピュセルはそのまま頭上の2人を見やる。
「よし、これで助かったな。」
「ひえっ、あんなのあり!?」
ミナエルが驚いたような声をあげる。驚いているのはたまも同じで穴から這い上がり、へりで呆然としていた。すかさずラピュセルはピーキーエンジェルズを捕らえるために跳躍。そのとき、偶然下にいたたまの顔を踏みつけてしまった。
「ふぎゅっ!?うわっ、落ちゃう!」
たまが顔を踏まれたためバランスを崩して自分の空けた穴に落下していった。
だがここでモードレッドとカルナの戦いが意外な形で幕を引いた。
「むっ!?マスターが危ない!」
カルナはいきなり背を向けてモードレッドの前から飛び立つ。
「こら!逃げるのか?」
しかし、カルナはそんなモードレッドの罵声を聞き流し、たまが空けた穴に一直線に向かう。そのまま、たまを穴の底に着く前に抱きとめた。
「大丈夫か、マスター?」
「あ、うん。ありがとう。でも、早く皆のところへ行かなくちゃ…」
「いや、それは辞めた方がいい。ほら、怪我しているじゃないか。しかも、顔をやられている。一旦退がって治療しよう。俺はマスターを安全な場所へ送ったらすぐにまた戦場に戻る。」
カルナはたまを抱き抱えたまま、一時戦場から離脱するのであった。
一方、ラピュセルはミナエルとユナエル、2人まとめて大剣で薙ぎ払う。
「このまま消えるなら忘れてやる。まだ続けるつもりなら次は本気で当てるぞ!」
しかし、ラピュセルの目の前から2人の姿が消えていた。慌てて頭上を見上げるとゴム毬を掴んだカラスがいた。
「よし、時間稼ぎはこれくらいでいいかな。」
「早くルーラのとこへ戻ろう。」
ゴム毬とカラスがそれぞれミナエルとユナエルに姿を変えた。そう、この変身能力こそがピーキーエンジェルズの持つ魔法なのである。
「時間稼ぎ…まさか!」
ラピュセルは何かに気づき、猛ダッシュで逃げるピーキーエンジェルズを追う。そこへラピュセルの後ろからモードレッドがやってきた。
「マスター!どうした、急に走り出して?」
「セイバーか。まずいことになった。このままじゃスノーホワイトが危ない!」
「とすると、父上に助太刀しに行かなきゃなんねえか。ちっ、俺は敵を逃しちまって消化不良だけど、父上がピンチならしょうがねえ。俺もマスターに着いてくよ!」
「頼むよ、セイバー!」
ラピュセルとモードレッドは電波塔へ急ぐ。そして、ラピュセルの予想通り、スノーホワイトとアルトリアに危機が迫っていた。
幕間の物語 その5【ルーラ×ジル・ド・レェ】
ルーラ「いい、スイムスイム?チームのコア・コンピタンスはリーダーで決まるの。あんたはファクトベースじゃないし、アセットの読みが甘いからベネフィットを得られないのよ。」
スイム「……どうしよう。わからない。」
ジル「ふむ、チームの中核となる強みはリーダーで決まる。実証に基づいた行動じゃないうえに利潤の読みが甘いから実利を得られない…ということですかな?」
ルーラ「あら、物分かりがいいわねキャスター。」
ジル「ですが!私はその思想には異議を申し立てる。いいですか、利潤や効率ばかり追い求めていてはやがて人間は破綻します。それこそ聖処女を貶め、辱めたフランスと同じです!ジャンヌがそのことを身を以て教えてくれました。つまり…」
スイム「纏めると私はフランスになってはいけないってこと?」
ルーラ「前言撤回…キャスター、やっぱり貴方とは会話不能だわ…」