Fate/Magicalwars   作:ディルーン

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幕間の物語 その6 【クラムベリー&子ギル】

子ギル「マスター、令呪を最後まで使い切ってしまった魔法少女がいるそうです。どうしますか?」

クラムベリー「今は手を下さなくても大丈夫でしょう。ところで、そろそろ私も強敵を探しに行こうかしらね。」

子ギル「僕は貴女の道楽に付き合うのはパスですよ。」

クラムベリー「心配ご無用。貴方に代わる新しいサーヴァントを用意するつもりですから。ふふ、さて、どんな戦いが巻き起こるか楽しみですね。」

子ギル(令呪がもう三画追加されてますね…)


第8話 叛逆の終結

少し時間は戻り、ラピュセルがピーキーエンジェルズを追って走り出した後、スノーホワイトとアルトリアは電波塔で待機していた。

 

「ラピュセル…大丈夫かな…」

 

「気に病むことはありませんよマスター。私の息子がそう簡単にやられることはないと思いますし。」

 

その時、2人の背後から声がする。女性の声と一方は男性の声だ。

 

「ここにいたのね、スノーホワイト。」

 

「貴女はジャンヌ…失敬。ジャンヌの生まれ変わりのセイバーですか!いやはや、またお会いできるとは光栄の至り。しかし、貴女とゆっくり語らいたいのはやまやまですが…残念ながらそのようにはいかないようです。」

 

暗がりから姿を現したのはルーラとジルだった。その後ろからスイムスイムも姿を見せる。

 

「な、何をしに来たの…?」

 

「間抜け。この期に及んでわからないの?」

 

ルーラは冷たく吐き捨てるとスノーホワイトに王笏を向ける。

 

「ルーラの名のもとに命じる。スノーホワイト、身動きをとるな!」

 

「な、何これ…!?」

 

ルーラの王笏から光が放たれ、スノーホワイトは突然身体が石になったかのように動けなくなった。王笏を向けた相手に命令すれば思いのままに操ることができる。これがルーラの魔法である。

 

「マスターに何をした!」

 

アルトリアは剣を抜き、ルーラに向かうがアルトリアの行く手を数匹の海魔が遮る。

 

「邪魔はさせません。これからルーラの美しき叛逆が始まるのです。あの白き魔法少女はまさに天上の存在。その神座から彼女を引きずり降ろすのがルーラの目的。私はルーラの天に牙を剥く姿に惚れ惚れしました。もっと見たいのです、ルーラがあの魔法少女を絶望と慟哭で染める瞬間を!」

 

ジルは海魔を巧みに操り、アルトリアにさし向ける。アルトリアも海魔を次々と斬り捨てていくものの、海魔はうじゃうじゃと湧き出てくる。そうしている間にもスイムスイムによってスノーホワイトのマジカルキャンディーがどんどん転送されていく。もはやアルトリアには一刻の猶予もない。

 

「マスター!口は動かせますか?私に魔力を…うぐっ!?」

 

しかし、スノーホワイトは恐怖のあまり口が動かせないようだ。やがてアルトリアは完全に海魔に囲まれていた。

 

「さあ、絶望なさい…。ふっふっふ…貴女が悲痛に歪む顔はとても唆られますねえ。」

 

悪趣味なジルの笑みに睨みをきるアルトリア。再び剣を構えて海魔達に向かう。

 

「まずはキャスター、先に始末させてもらう!」

 

アルトリアはジルに斬りかかるが海魔が盾になり、ジルを守る。

 

「私に与えらた役割は貴女の足止め。別に貴女を殺す必要はありません。ですが、戯れるのも悪くないですから、もう少し楽しみましょうか。」

 

余裕のあるジルとは対照的に余裕のない者もいた。ルーラである。ルーラの魔法は相手に絶対服従の命令を下す事が出来る。発動成功時の命令は絶対で抗う事は不可能であるという強力なものであるがゆえにとても制約が多い。具体的には王笏を向け、ポーズをとらねばならない。命令中・命令遂行中はそのポーズをとり続けなければならない。ルーラの名の下に命じなければならない。さらに相手との距離は最長で5メートルというもののため、扱いが難しい。

 

(まだ終わらないの…?このポーズ疲れるんだけど。)

 

スイムスイムは一心不乱にスノーホワイトのマジカルフォンからキャンディーを転送しているが、まだかかりそうな様子であった。

 

「スイムスイム、早くしなさい!」

 

「もうちょっと待って。あと少し。」

 

(こいつどれだけキャンディー貯め込んでたのよ?)

 

ルーラはスノーホワイトを見やるが、すぐにハッと視線を電波塔の下に移す。そこにはピーキーエンジェルズの2人とラピュセル、モードレッドの姿があった。

 

「あの馬鹿どもアホども、ゴミカスども!足止めも満足にできないの!?」

 

ピーキーエンジェルズ達の不甲斐なさを罵倒するもラピュセルとモードレッドは電波塔の下へ到達してきた。これでは上まで来るのは時間の問題だ。

 

「ラ、ラピュセル!」

 

スノーホワイトはラピュセルの救援に思わず声を上げるがその一言が急展開を迎えさせた。

 

「ラ・ピュセル?あの魔法少女のことか!おのれ!ジャンヌの名を騙るとは無礼者め!」

 

何とジルはいきなり攻撃の矛先をアルトリアからラピュセルに変えた。どうやらジャンヌ・ダルクに関連する名前を付けていたことが気に食わなかったようだ。海魔は一気にラピュセルに群がる。もちろんラピュセルに海魔の溶解液などは効果はないのだが、突然の海魔の襲撃にラピュセルは驚いてバランスを崩し、電波塔から落下する。

 

「マスター!くそっ、このタコが!」

 

モードレッドはラピュセルに這い寄る海魔を一刀で薙ぎ払う。ラピュセルも落下しながらも剣を伸ばし、電波塔の壁に突き刺して事なきを得る。

 

一方、ジルが海魔をラピュセルに差し向けたため、アルトリアは海魔の拘束から逃れ、ルーラ達に向かってきた。

 

「あっ!?ちょっと何やってんのよ、キャスター!」

 

「もうすぐ終わる。」

 

「黙ってろ、ボケぇ!」

 

ルーラのスイムスイムへの一喝を他所に高速で迫るアルトリア。しかし、アルトリアは2人に向かって剣を振り上げるが、突然その剣が何かに弾かれた。

 

「くっ!?何だ、魔法か?」

 

だが、ルーラは命令の魔法を発動させている最中でスイムスイムはマジカルフォンを操作している。2人とも魔法を使える気配はない。

 

(見えない壁に弾かれたような感覚…まだどこかにサーヴァントがいるのか?)

 

アルトリアは身構えて剣を構えるが誰もいない。そうこうしている間にスイムスイムが口を開く。

 

「終わった。」

 

スイムスイムはスノーホワイトのマジカルフォンを投げ捨て、ルーラに目配せする。スノーホワイトはやっとルーラの魔法から解放されるも、ぺたりと腰を地面につけたまま、動けなくなっていた。

 

「よし。これでもうあなたに用はないわ。帰るわよ、キャスター!」

 

しかし、ジルは執拗にラピュセルに海魔を向けている。ルーラのことなどまったく眼中にないかのようだ。ため息をつきながらルーラは左手をジルに向けて言い放つ。そして、令呪が光り輝く。

 

「マスター、ルーラが令呪をもって命ずる。攻撃を中止し、今すぐ私のところへ戻ってきなさい!」

 

「むむ、聖処女を冒涜した存在を始末したかったのですが、令呪の命令なら仕方ありません。」

 

ジルはしぶしぶ海魔を退きあげさせルーラのもとに戻る。ルーラとスイムスイム、そして、ジルは電波塔の端へ移動する。ルーラは戻ってきたピーキーエンジェルズの2人に腕を持たれ、スイムスイムはピーキーエンジェルズを追ってきたカルナに抱き抱えられ、ジルはそのまま霊体化して消えた。

 

「待て!スノーホワイトに何をした!」

 

「逃げるのかてめぇら!どこまでも卑怯な奴らめ!」

 

しかし、ルーラ達の返事はない。ラピュセルとモードレッドの言葉は電波塔の周りに木霊しただけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしよう…キャンディーが…」

 

「早く取り返しに行こう!」

 

「父上のマスターを泣かせるなんざ万死に値するな。全員まとめて叩き斬って…」

 

「でも、間に合うでしょうか。脱落者発表まであと10分しかありません。」

 

ラピュセルはアルトリアの一言を聞いて肩を落とす。取り返しに行きたいが、普段から交流のないルーラ達を探すのは至難である。王結寺に行けばいいかもしれないが、10分で移動とキャンディー奪還をこなすのもそれこそ不可能に近い。

 

「私…死んじゃうのかな…」

 

「申し訳ありません、マスター。私が不甲斐なかったばかりに…」

 

俯くスノーホワイトと何も言えないアルトリア。あまりの悔しさに地面を殴るラピュセルに、どうすればいいかわからず頭を抱えるモードレッド。皆が失意に沈む中、このあと予想だにしない衝撃的な知らせが来ることを知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、スノーホワイトからの強奪を済ませたルーラ達は王結寺に戻ってきていた。ちなみにたまはルーラ達より先にカルナに王結寺に運ばれており、顔の傷の手当てを受けた後だった。しかし、「連絡もせずに勝手に帰るな」とルーラにどやされてしまったが。

 

「スイムスイム、今回でどれだけ手に入ったのかしら?」

 

スイムスイムはルーラのそばへ歩み寄り、マジカルフォンの画面を見せながら言う。

 

「2940個。」

 

「ふん。それでスイムスイムは元々何個持っていたの?」

 

「826個。」

 

その話を聞いたピーキーエンジェルズが驚きの声をあげる。

 

「どうやったら2000近くも稼げんの?」

 

「ブルジョワやねー。」

 

その時、たまがおずおずと口を開く。

 

「えっと、このキャンディーはどう分けるの?」

 

すると、暗がりから姿を現したアンが口を挟む。

 

「じゃあ、私がザッと見積もってみますわ。」

 

近くにメアリーの姿はない。どうやらモードレッドとの戦いの傷が完全には癒えてないらしく、奥の部屋で休ませているそうだ。

 

「2088を5人で割れば417と余り3ですわ。これだと割り切れないのでここは適当に3人に…」

 

「何を馬鹿なこと言ってるのかしら?割り切れるわよ。」

 

アンを押さえつけるかのようなルーラの言葉が響く。そして皆の視線を一斉に集めた。

 

「どうしてわざわざ5等分しなきゃいけないの?2088を2で割った1414がリーダーである私の分。もう一方の1414を2で割った522がスイムスイムの分。残りの522を3で割った174がミナエル、ユナエル、たまの分。ほら、割り切れたでしょ?」

 

寺の中が一瞬凍りつくように静まり返るがすぐさまたまの側にいたカルナが抗議する。

 

「待て。作戦は成功したんだ。皆が最低限同じだけ受け取れる権利はあるはずだぞ?」

 

しかし、ルーラは呆れたと言わんばかりにこう続ける。

 

「与えられた仕事を満足にこなせなかった無能が、馬鹿なりに自分の役割をきちんと果たした奴と、作戦の立案から実行時には最も重要な役割を担ったリーダーの報酬がなぜ等しいと思うの?馬鹿なの?ああ、馬鹿だったわよ。貴女達が馬鹿で無能で3人がかり、しかもサーヴァントまでいたのに足止めもできなかったから作戦そのものが失敗しそうになったのよ。わかる?」

 

ルーラは皆をキッと睨みつけて罵倒する。ピーキーエンジェルズとたまは目をそらし、スイムスイムは正座で俯いている。アンは面食らったように目を丸くし、カルナは拳を握りながら反論できないことを悔しそうにしている。ルーラの罵詈雑言の矛先はついにサーヴァント達にまで及んだ。

 

「それにライダーとランサー!ミナエルとユナエルとたまは戦闘には向いてないから全力でサポートなさいとあれほど言ったじゃないの。キャスターもそう。自分勝手に暴走して、令呪まで使う羽目になったんだから。」

 

ジルは今、ここにはいない。どうやらまだやるべきことがあると言い残し、寺の裏庭に行ってしまった。自分の話を聞かずにどこかへ行くのは癪に触ったが、そもそもルーラはジルと真面目に対話する気はないので放置している。

 

「本音を言うとあなた達サーヴァントも皆クビにしたいくらいよ。身の程を知りなさい、馬鹿ども!罰がないだけマシと思いなさいよ。」

 

いよいよ、脱落者発表の時間がやってきた。ルーラは面倒そうにマジカルフォンを開く。

 

「どうせ最下位はスノーホワイトよ。これで…」

 

そう言いかけた途端にルーラは我が目を疑った。そこに表示された名前はルーラが一番予想だにしなかった名だったからである。しかし、マジカルフォンの画面には確かに表示されている。

 

『最下位はルーラだぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、ここは電波塔。スノーホワイトとラピュセルは今週の脱落者発表に驚きを隠せなかった。

 

「どうしてルーラが!?」

 

「分からない…でも確かにそう書かれてる…」

 

「待てよじゃあ、さっきまでの戦いは何だったんだ?」

 

モードレッドも混乱していた。しかし、アルトリアはハッと閃く。

 

「わかりました。恐らくこれは裏切り…いや、内乱の可能性があります。きっと誰かがルーラを脱落させるために仕組んだ、それができるのはあのルーラの集団に入っていた誰かになるでしょう。」

 

「そんなことって…何のために?」

 

「そこまではわかりません。ですが、これでマスターは一先ず今週も無事です。」

 

「でも、後味悪すぎるな…」

 

アルトリアの言葉にラピュセルは顔をしかめる。スノーホワイトも下を向いたまま、黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

「…どうして…私が…こんな…」

 

いつもルーラが立っている舞台。そこにはもうルーラの姿はなかった。代わりにスーツ姿の1人の女性が血まみれで横たわっていた。

 

「キャスター、私からの最期の命令よ…裏切り者をあぶり出して…」

 

その女性は蚊の鳴くような声でそう呟いた後、事切れてしまった。そう、この女性こそルーラの正体、木王 早苗である。

 

「やーい、うるさい奴がいなくなったー!」

 

「キャンディーをちゃんと分けないからこんな目に遭うんだよ!」

 

ピーキーエンジェルズはルーラが死んだことに「やったーやったー、やったったー」と歓喜している。たまはあまりにも惨い光景に身体を丸めてふさぎ込んでいた。そして、今までずっと無言だったスイムスイムが口を開けた。

 

「死体は私が片付ける。今日は解散。」

 

スイムスイムは早苗の遺体を肩に担ぐ。その言葉を聞いてピーキーエンジェルズとたまは寺の扉を開けて外に出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、ルーラ。私より先に死んでしまうとは。ですが、ご安心ください。貴女の叛逆は必ず私が達成して見せましょう。裏切り者をあぶり出して殺せ…その最期の命令を果たさせていただきます。」

 

裏庭にいたジルは令呪を介してルーラが死亡したことを悟る。ジルは静かに黙祷し、それを終えると裏庭から王結寺の門へ歩き出す。その手には怪しく光る魔本があった。

 

 

ピーキーエンジェルズとたまはスイムスイムより先んじて寺から出ようとする。だが…

 

「お待ちなさい。」

 

王結寺から出ようとする皆の前にジルが現れた。ジルは寺の門の前に立ち、進路を阻む。

 

「な、何の用だよキャスター。もうルーラは死んだんだ。」

 

「どうせあんた1人じゃ何もできないんだからさっさと消滅してよ、うっとうしい。」

 

ピーキーエンジェルズは分かりやすく悪態を吐くがジルは気にせず続ける。

 

「ルーラを殺したのは貴女方に間違いありませんね?これは私の推測ですが、ルーラの1日あたりのキャンディーの稼ぎを計算し、平均を割り出すとトップである白い魔法少女が2000個しか持っていないことはあり得ません。私はいつも側でルーラの仕事を見てきました。だから、1度の人助けで貯まるキャンディーの平均値はだいたい把握できましたよ。ここから考えるとあの白い魔法少女は甘く見積もっても1万は超えるキャンディーを持っていないととても1位にはなれません。」

 

「…するどい。それで、私達がルーラをどうやって脱落させたかわかるの?」

 

スイムスイムの問いかけにジルは頷きつつ続ける。

 

「おそらくスイムスイム。貴女は白い魔法少女からすべてのキャンディーを奪ったわけではないのでしょう?これも私の推測ですが、キャンディーを3/2ほど奪い、誰かに転送する。そして、ルーラと標的である白い魔法少女以外の魔法少女全員にその奪ったキャンディーを平等に分配すれば最下位はルーラになる…違いますか?つまり、貴女はそれを利用してルーラを謀ったと見て間違いないでしょう。」

 

たとえ狂化されていても元帥としての経験で培った観察力と洞察力でスイムスイムを論破したジル。しかし、彼の本領は悪い意味でここから発揮された。

 

「私はルーラと約束しました。裏切り者をあぶり出せと。その裏切り者は今まさに目の前にいる!ルーラは叛逆を企てていましたが、志半ばで倒れてしまった。ならばこそ、ルーラと共に生きる者はまた共に死ぬのは道理である。裏切り者を裁かねばならぬのはかつての仲間を殺すということで私も忍びないのですが、革命を起こす者達は運命を共有するという古来からの伝統に従い、貴女方には死んでもらいましょう。これでルーラとの約束も、この儚くも美しい叛逆の物語の幕も下ろすことができる。まさに一挙両得です!」

 

「何をわけわかんないことを…うわっ!?」

 

「ひぇー、何これキモい!」

 

ジルは手始めにピーキーエンジェルズを海魔で取り囲む。しかし、ミナエルはすぐに落ち着きを取り戻し、こう吐き捨てる。

 

「ははっ、キャスターは馬鹿じゃないの?サーヴァントの宝具は魔法少女を傷つけることができないってファヴが…うっ!?」

 

海魔はミナエルに触手を叩きつける。すると、ミナエルの腕から血が流れた。

 

「お姉ちゃん!嘘、な、何で宝具が効いてるんだよ!?」

 

「私は召喚に応じた日から貴女方の使う魔術の解析を行っていました。なかなか特殊なものでしたから、本日まで手間取りましたが、ついにその魔術を模倣することに成功しました…!」

 

何とジルは魔法少女達が使用する魔法を解析し、自分も魔法少女と同じ力を作り出すことに成功したのである。そのため、ジルの操る海魔は魔法少女を殺すことも可能になったのである。

 

「そんなのありかよ!うわあっ!?」

 

ピーキーエンジェルズに海魔が群れをなして迫る。その時、王結寺の壁を突き破ってメアリーが飛び出してきた。

 

「マスター、危ない!アン、あいつを止めるよ!」

 

「メアリー、ですが海魔に行く手を阻まれて動けませんわ!」

 

アンもメアリーも無限に増え続ける海魔に悪戦苦闘しているようだ。

 

「いやあ!来ないでー!」

 

たまは穴を掘って逃げようとするが海魔は穴にも侵入する。終いにはたまをおぞましい触手で攻め立てた。

 

「た、助けてー!」

 

その時、穴の中の海魔が吹き飛ぶ。穴の外からはカルナが見えた。どうやらたまを救助しに来たようだ。

 

「マスター、早く俺に掴まれ!」

 

たまは涙ながらにカルナの腕を取る。カルナはたまを引き上げて抱き抱えて宙に浮かぶ。

 

「まずはマスター、安全な場所へ…」

 

「待って…スイムちゃんとミナちゃんとユナちゃんが…」

 

たまの眼下には海魔の攻撃をひたすらかわすスイムスイムと寺の灯篭の陰で怯えるミナエルとユナエル、海魔に袋叩きにされて傷だらけのアンとメアリーが見える。だが、ジルの襲撃はたまとカルナも例外ではなかった。

 

「逃がしませんよ!さあ、今度は天にまで届くものをお見せしましょう!」

 

たまとカルナを捕らえるため、ジルは巨大な海魔を召喚する準備に入る。ジルの足元からみるみるうちに海魔が膨らんでいく。その大きさは王結寺の門の高さの3倍ほどになった。

 

「逃げ道を塞がれ…ぐっ!」

 

巨大な海魔の一撃はたまを狙うが間一髪、カルナが頭を伏せて守る。

 

「このままではジリ貧だ。キャスターの魔力が尽きるのが先か、マスター達が海魔に殺されるか…」

 

だが、そんな心境のカルナに異議を唱えるかのようにこの戦いは終わりを迎えることになった。

 

「今。」

 

海魔の攻撃をかわしていたスイムスイムが突然動きを止めて呟いた。すると…

 

「グハァッ!?何なのですか…これは…私の魔力回路が乱されて…ぐふっ!」

 

突如、ジルが吐血し、うつ伏せに倒れる。すると、海魔が次々と消滅し、巨大海魔も徐々に朽ちていった。

 

「おぬし、隙だらけであるぞ。おかげでいいところに我が『无二打』が決まった。」

 

ジルの背後から姿を見せたのは赤い髪に中華風の衣装を着た男…この男は魔拳士の異名を持つ中国の拳法家、李書文である。どうやら李書文はスイムスイムのサーヴァントのようだ。

 

「ぐぬぬ…やはり叛逆者は儚く消え去るのが運命でしたか…ルーラ…申し訳ありません…」

 

それだけ言い残すとジルは消え去り、やがて海魔も完全に朽ち果てた。

 

「あれがスイムちゃんのサーヴァント…?」

 

李書文の突然の登場に驚きを隠せないミナエル。その時、スイムスイムが李書文に駆け寄る。

 

「ルーラが言ってた。むやみやたらと自分の能力を晒すべきじゃないって。だから、用事が終わったらもう消えていいよ。」

 

「ふむ、我がマスターはなかなか冷たいのう。仕事が終わったら即帰れか。しかし、これも圏境の鍛錬だと思うとしよう。

 

ひとしきりスイムスイムと言葉を交わした李書文はまたスッと消えてしまう。辺りには先ほどまでに激しい戦いがあったことが嘘のような静寂に包まれていた。

 




現在確認された組み合わせ

スイムスイム×李書文(アサシン)


ルーラ&ジル・ド・レェ 脱落。

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