サイコショッカー使いのダイノウジとのデュエルを制した俺は、受け取った3枚のカードの持ち主である女の子を探していた。
ダイノウジが言うからにはその女の子は金髪のポニーテールで、前髪も片目が隠れるほど長いそうだ。
かなり目立つ特徴をしていると思い、すぐに見つかると思ったが…
「…ここにもいないな」
かれこれ2時間ぐらい経過していた。
あちこち探し歩いていたが、2時間も経つと流石に疲れてきたのでベンチに腰掛けて休んでいた。
そんな時である。
「やっほー、隣いいデスか?」
比較的高めの声が耳に入った。大体誰かは予想できるが、声をけられた方を振り向く。顔を見て気が滅入った。
「げぇ、ガイドさ…いだっ」
拳骨をくらった。…割と痛い。
「げぇっとは何デスか、げぇって。美少女が隣に来たんだからもっと喜んでもいいと思うのデスが?」
紅色の髪をツインテールにした、紺色の制服を着た女の子が俺の言った言葉に対して文句を言っている。
まぁ、確かに美少女だとは思うが…
彼女はこの町の住人で今は海馬コーポレーションのバイトをしている人だ。確か、初心者にデュエルの手解きを教えているようなことをしていた気がする。あと、とあるカードのモンスターによく似ている。
ちなみ彼女もデュエリストなのでデュエルも出来る。出来るが…
「笑顔でブラックホール羽箒決めてくる悪魔…」
「…んー?よく聞き取れなかったデスねー、もう一回言って下さい。ねぇ、特に最後の方」
痛い痛いそのグリグリするのやめて下さい。
「…えーっと、金髪で、片目が隠れてて、ポニーテールの女の子?」
彼女に今探している女の子の特徴を言った。
もしかしたら何か知っているかもしれないと思い聞いてみたのだが、
「うーん…、あ。あぁ、いましたねそんな娘」
どうやら手応えありのようだ。聞いて正解だった。
すると突然彼女は何かをひらめいたような顔をして
「あ!もしかしてガールフレンドデスか!?あなたも隅に置けないデスねー」
ニヤニヤしながら彼女が聞いてくる。ああ…、どうやらからかわれているようだな。
「いや、拾ったカードを返そうと探しているだけだ」
素っ気なくそう返す。
「なーんだ、つまらないデスねー」
ちぇー、と言いながら彼女が言う。
のわりには残念そうに全然見えない。
「で、何か知っていないか?なんでもいい」
さっさと聞き出してしまおうと、彼女に迫る。
「分かったデスよ、急かさないでください。えっとデスね、いかにもここの住人じゃなっかたから話しかけたら案の定外からきた人だったデスから住民登録してもらったのデスよ。これが確か2時間前ぐらいデス。で、その後はふらふら〜って……あ、そうでした、裏路地に入って行きましたね。そっから先は知らないデス。ごめんなさい、あんまり力になれなくて」
彼女、ガイドさんの話しを相づちをうちながら聞く。
成る程な…。彼女の言うことが正しければ、まだこの辺りにいそうではあるな。…裏路地か、女の子が戻って来ていることも考えられる。一度戻ってみるのもありかもしれないな。
そうと決まれば行ってみよう。
「いやありがとう、助かった。今度何か奢ろう」
そう言って立ち上がる。すると彼女からじゃあ、飛び切りの頼んでも良いデスかね〜と言われた。…あまり高いのは遠慮したいなと思いながら、ダイノウジと対戦した裏路地に向かう。
向かっている最中、カードの持ち主がここの住人ではないことについて考えていた。ここ、童実野町はデッキ登録が義務付けられている。このデッキ登録がなければ、住民登録も出来ず、保険もおりない為病院も利用出来なくなる。ここの住人なら誰もが知っているシステムだが、外からきた観光客や引越してきた人等は知らないまま過ごすことも多い。まぁ、その為にガイドさんのような人がKC社から派遣されているわけだが。…改めて思うとやはり無茶苦茶なシステムだ。この町に住みたければデュエルが好きか嫌いか関係なくデュエリストになれと言われているようなものだ。しかもこのシステム政府や町が発令しているのではなく、KC社が、一企業が決めたものなのだ。かなりの大企業だが、果たしてここまでの干渉力を持ってしまっても良いのだろうか。だが、ここまで世界にデュエルを浸透されていなければただのカードゲームの一種として数えられていたのだろうと思うと、なんとも言えない気持ちになる。
そう言えばこの3枚のカード、
サイレント・バーニングと沈黙の剣、そして
「沈黙の魔導剣士…か」
効果テキストを読んでみるとどれもサイレントモンスター、確かデュエルキングが使用していたモンスターだったか、のサポートをするカードのようである。前者2枚は悪くない効果だが、最後の1枚はイマイチと言わざるを得ない…。
にしてもこの魔導剣士、金髪でポニーテールで、前髪で片目が隠れてるってダイノウジが言っていた特徴によく似ているな。もしかしてコスプレか?だったらなんでこのカードを賭けたんだ…?
…なんて考え事をしているうちに例の裏路地に着いた。
居るといいなぁと思いながら中を覗くが
「…やはり、いないか…」
当てが外れた。またあちこち歩き回る事になりそうだ。
気分が沈みながら次は何処らへんを探そうかと、踵を返すと
「あ」
金髪で、ポニーテールで、片目が隠れるほど長い前髪の、もっとあげるとあのカードにそっくりな服装、というか少し汚れているがそのままの格好をした女の子がいた。
「もし、このカードの持ち主か?」
その女の子に近寄り問いかけ、さっきまで眺めていた3枚のカードを彼女に見せる。
持ち主だといいが…、というか本当に似ているな。
彼女の目線がカードに移る。
そしてカードを見た瞬間、彼女の目が見開かれた。
「あ、返せっ!」
そう言いながらカードを奪い去らんと手が伸びてきた。
俺は取られないようにさっとカードを取られない位置まで上げる。
彼女がぴょんぴょんと跳ねながらカードに手を伸ばすが全然届かない。
…反応からして恐らく彼女がこのカードの持ち主だろう。だが、違う可能性も僅かばかりある。
「あー、ちょっと待て。さっき、と言っても3時間ほど前だが…、お前"ユウイチ"という奴とデュエルしただろう?」
もちろん嘘だ。彼女はダイノウジとデュエルした。
俺がそう言うとまだ跳ねていた彼女が動きを止める。
そして少し間をおくと、
「3時間前…?そうだ!私はなんかよくわからないハゲに負けて…、ってそうだその手があった!」
いきなりひらめいた様子の彼女が、俺の腕についているデュエルディスクを見ると俺から一定の距離を取る。
…まさかだと思うが、
「デュエルだ!私が勝ったらそのカードを返せっ!」
やっぱり、デュエルか…。どうやら今の彼女は興奮状態にあると思われる。一度デュエルして落ち着いてから返した方がいいかもしれない。
準備を終えた彼女が早くしろ、と急かしてくる。仕方がないか、と思いながら俺もデュエルディスクを展開させる。そしてデッキをセットし、5枚のカードを引く。
「「デュエル!」」
ユウイチLP4000手札5枚
ゲストLP4000手札5枚
…ゲスト?ということは彼女は観光客かなにかなのか。危ない、1日経っていたらもうこの町から離れていたかもしれなかったということか。
って先攻は俺か。
「俺のターン、ドロー」
まぁ、悪くないが…。罠カードが多いな。
「俺は手札からラギットグローブを召喚。カードを4枚伏せてターンエンド」
ユウイチLP4000手札1枚
場 ラギットグローブ攻/1000
伏せカード4枚
ゲストLP4000手札5枚
「私のターンっ!」
さて、どう来るか…。
「私は手札からジェムナイトアレキサンドを召喚!そして効果発動!」
彼女の場に赤、緑、青に輝く宝石の戦士が現れ、すぐに光が彼の体を包む。
ジェムナイト・アレキサンド
効果モンスター
星4/地属性/岩石族/攻1800/守1200
(1):このカードをリリースして発動できる。
デッキから「ジェムナイト」通常モンスター1体を特殊召喚する。
「来て、ジェムナイト・クリスタ!」
その光が晴れると、七色の光を放ちながらダイヤの戦士が現れた。
ジェムナイト・クリスタ
通常モンスター
星7/地属性/岩石族/攻2450/守1950
クリスタルパワーを最適化し、戦闘力に変えて戦うジェムナイトの上級戦士。
その高い攻撃力で敵を圧倒するぞ。
しかし、その最適化には限界を感じる事も多く、仲間たちとの結束を大切にしている。
一気に攻撃力2450のモンスターか。しかし、ジェムナイトか…。確か融合するデッキだという記憶があったが…
ジェムナイト・クリスタを1ターンで出せたことが嬉しいのか、彼女は得意満面の笑みを浮かべている。
さて、さらに展開は、
「ジェムナイト・クリスタ、そこのグローブに攻撃!」
しないのか!
だったら、
「待て。バトルフェイズに入った時、罠カード幻影霧剣を発動」
幻影霧剣
永続罠
フィールドの効果モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
「幻影霧剣」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
対象のモンスターは攻撃できず、攻撃対象にならず、効果は無効化される。
そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。
(2):墓地のこのカードを除外し、
自分の墓地の「幻影騎士団」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。
ラギットグローブが突如現れた剣を握る。そして、その剣から霧が発生し、ラギットグローブを覆った。
攻撃対象を見失ったクリスタは、大人しく彼女の場へ戻っていった。
「これで俺のラギットグローブは攻撃対象に選択されなくなった」
通常モンスターが出て来て焦ったが、なんとかなった。
「くっ、隠れるとは卑怯な…」
彼女がそう言ってくる。
卑怯って…。戦術と言って欲しいな。
「何もなしか?だったら、早くターンエンドしろ」
ぐぬぬと唸る彼女に対してプレイを促す。ちなみに120秒間以上何も動作をしなかった場合、遅延行為と見なされ敗北となる。
分かってる!と、言った彼女はカードを1枚伏せて、ターンを終了した。
ゲストLP4000手札4枚
場 ジェムナイト・クリスタ攻/2450
伏せカード1枚
ユウイチLP4000手札1枚
場 ラギットグローブ攻/1000(幻影霧剣の効果で効果無効、攻撃対象に出来ない、攻撃不可)
伏せカード3枚
意外と呆気なくターンが回ってきた。しかし伏せカード1枚か。
「俺のターン、ドロー」
デッキの上から新たにカードを引く。そして引いたカードを見た俺は確信した。
彼女には悪いが、このターン中に終わらせてもらう。
「俺手札から、ダスティローブを召喚。そして場のラギットグローブとダスティローブでエクシーズ召喚!ランク3、幻影騎士団ブレイクソード!」
前のデュエルでも散々使った騎士が現れる。
今日は本当に酷使させて本当に悪いと思っている。
「そして、エクシーズ素材となったラギットグローブの効果により、攻撃力が1000上がる。…ブレイクソード効果発動!俺は場の幻影霧剣と、そこの伏せカードを破壊する!」
ラギットグローブがエクシーズ素材になったことで、場に突き刺さっていた幻影霧剣をブレイクソードが引き抜き、彼女のフィールドの伏せカードに向かって投げる。
「…っ、ミラーフォースが!」
剣がセットされたカードを貫き、破壊する。
伏せはミラーフォースだったのか。破壊しておいて正解だった。
「そして、俺は今墓地に送られた幻影霧剣の効果を使い、墓地のダスティローブを特殊召喚する。さらに手札のサイレントブーツは場に幻影騎士団がいる時、手札から特殊召喚できる。俺はこの2体で再びエクシーズ召喚!現れろ、2体目のブレイクソード!」
俺の場に騎士が2体並ぶ。
段々と状況が分かってきたのか、彼女の顔が青ざめていく。
「2体目のブレイクソードの効果発動。俺の場の伏せカードとジェムナイト・クリスタを破壊する」
2体目のブレイクソードが伏せカードをクリスタに向かって投げつける。カードが刺さり、クリスタは破壊された。
破壊されたカード ジェムナイト・クリスタ 幻影騎士団ドゥームシールド
これで場には何もいなくなった。
あとは直接攻撃で終わりだ。
「決着だ。2体でダイレクトアタック」
2体の騎士が、彼女に向かって剣をかざす。
抵抗する手段を失った彼女は、されるがまま切り刻まれた。…ソリットビジョンだから実際に切られてはいないが。
「きゃああああああ!」
ゲストLP4000→0
「くっ……殺せっ!」
デュエルが終わるや否や、彼女はそう言ってきた。
…なんでそうなる。と、いうか全然落ち着いてない。むしろ更に面倒くさいことになっていないか…?
「おい、一旦落ち着け。あと話を聞いてくれ」
そう言って落ち着かせようとするが
もうお終いだとでも言わんばかりに顔を真っ青にした彼女が
「もう、無理だ…。やっぱり、私には無理だったんだ…」
そう呟いた。
…、何か訳ありなのか。とにかく早く返した方が良さそうだ。
「すまない。すぐに返すべきだった。申し訳ない…」
とカードを差し出したのだが
情けは要らないっ!と、言われて突っぱねられてしまった。
こいつ…!この強情者め…!
「おいっ」
「ひっ…!」
少し強めに言うと小さく悲鳴をあげられてしまった。顔もよく見ると目に涙が溜まって今でも泣きそうな表情をしている。
可哀想なことをしてしまったかもしれないと反省する。
「なんだかよくわからないが取りあえず受け取れ。それと負けたぐらいで泣くんじゃない」
ワンショットキルを決めておいてあまり言える台詞ではないが…
「…だが、私は敗者だ。負けた方は勝った方の言うことを聞かないと…」
弱々しい声で彼女が喋る。
まだ受け取らないのか…。だったらこちらは強く出よう
「じゃあ勝った俺からの命令だ、さっさとこの3枚のカードを受け取れ今すぐに」
そう言って彼女の手に無理やりカードを握らせる。
強引だが、こうでもしないとこいつは受け取ってもらえそうにないからな。
これで今日はやっと帰れる、と息を抜くのもつかの間
「だが、これでは…」
ブチッ…。
尚もまだ意地を張っているこいつにとうとう、堪忍袋の尾が切れた。
「デュエルに負けたぐらいでメソメソするな!」
いきなり大きな声を出したせいか、彼女の身体がビクッと震える。それなりに辺りに響いたのか、側を通る通行人もこちらを見ている。
だが、周りからの目なんてどうでもいい。今俺は目の前で自分の弱さを自覚しながら何もしようとしないこいつに怒りを感じているっ!。
「負けたら、次はこうしようとか、次こそは負けないようにデッキを改造するとか、思わないのか!」
そうだ。俺だってそうして積み上げてきて、今の俺がいるんだ。
「どんなに出来損ないだろうと素人だろうと、その次に挑戦する心があれば強くなれる。俺も手伝ってやる。だから、そんな簡単に諦めるな!」
最後にそう言い切る。
彼女はこちらを、涙の溜まった瞳でこちらを見つめながら
「…私のような出来損ないでも、やれば出来るのか…?」
そう彼女が聞いてくる。何言っているんだ、お前は…。
「当たり前だ。お前にも出来る」
そういうと彼女は、私にも出来る、私にも出来ると暗示のように呟き、
「…ごめんなさい。迷惑をかけてしまって」
謝ってきた。その表情はさっきよりだいぶ良くなっていた。これでひと段落ついたか…。まったく、変な奴と出会ったものだ。
「ああ、気にするな。それじゃあな、まぁ、また機会があったら面倒を見てやるさ」
一言残して家へ足を運ばせる。
今日は一日中忙しかったなぁと、過去を振り返りながら思っていると不意に彼女から声をかけられた。
「…あっ、待ってくれ!」
まだ何かあるのか、と思いながら彼女のほうを向く。
すると彼女は
「実は、泊まる場所が、無いんだ…。だから、その、ひ、一晩泊めてくれないだろうか…?」
…え。
明日は多分投稿出来ないと思われます。
追記:第1話の一部が辻褄が合わない表現があった為、修正しました。