今後はこんぐらいのペースで行こうかなと思ってます。
「………」
目を覚ますと目の前にユウイチがいた。
それも、横に寝ているのではなく、下に仰向けになって。
つまり、私がユウイチの上で寝ていた。
ちょっと待ってなんでこうなっているの私分からない。
……下敷きにしているのも悪いので、さっさと退くことにしよ…って、あれ?
腕が抜けない。
なんで?って、それは私の腕が彼の背中に回しているからで…。
つまり、彼に抱きついていたからであって、抱き…、…。
あれ?もしかして、私はユウイチに抱きつきながら寝ていた?
「………ぃっ!?」
速やかに、しかし彼を起こさないように背中に回している腕を引き抜く。
な、なななな…、
何をしているんだ私はっ!?
頭を抱えてそう思う。お世話になっている人に抱きついて、挙句、そのまま寝る!?図々しいにもほどがあるだろう!?
なんだか、頭が熱くなってきた気がする。絶対、今の私は真っ赤かだろうなぁ…。
あぁ、ああ。
どうしよう。彼にどう思われただろうか。見ず知らずの女に抱かれて寝るなんてとんだ不届き者だ。追い出されても文句は言えない。
もし追い出されたらどうすれば…、一文無しだという事はここに来て散々思い知らされた。碌な稼ぎも得られない私じゃあ、3日もしないうちに飢え死ぬ…。
ああ、思わず両手で顔を覆う。真っ赤だったのが、熱を失って今度は冷たくなっている。絶対、青ざめているだろう…。
どうしよう、どうすれば、考えれば考えるほど不安に駆られていく。
もう、いっそ自分から潔く出て行くのもいいかもしれない…。
そうだ、そうしよう。ユウイチにも迷惑をかけないように、静かに、静かに……、あ。
グギッ
「あ」
立ち上がろうとして、ユウイチの足を思い切り踏んでしまった。
思わず声も出てしまった。
しかも、今の一撃でユウイチと目があった。
唐突な痛みと共に目を覚ました。
ボンヤリとした視線の先には、先に起きていたのか、フォウが俺の上からまさに退こうとしていたところだった。
で、目が合って、
フォウがベットから飛び、床に正座して、突然、頭を床にくっつけ、ごめんなさいと、謝ってきた。
必死に謝ってくるフォウを見ながら、痛恨の訴え、というカードがあるのを思い出した。
って、そんな事はどうでもいい。
どういうことか説明してもらおうと、フォウを宥めながら説明を促す。
昨日俺に抱きついて寝てしまった→はしたないと思われた→もう生きていけない、ということだそうだ。
いや、その理屈はおかしい。
フォウをなんとか落ち着かせるのに30分ほどかかった。
「あー、フォウ。今日も出かけるが、どうする?」
無理矢理開き直させたフォウに向かって言う。若干涙目になっている彼女。
「どうって?」
「あー、着いてくるかってことだが…」
「…ユウイチはどっちがいいのだ?」
少し間をおいてフォウが答える。
ふむ…、と顎に手を添えて自分の部屋を見渡す。昨日掃除していないからか、埃が少々積もっている。髪の毛も落ちているし…。
「あー、フォウ。それじゃあ、家事を頼めるか?」
そう言うと、パァっと顔を輝かして
「ああ!家事なら出来るぞ!」
ほとんど家の事は私任せだったからな!と、自信満々に言われた。
よほど嬉しいらしい。
「そ、そうか。じゃあ、部屋の埃を払うのと、洗濯を頼めるか?」
「任せろ!」
と、やる気に満ちた声が響く。まぁ、そこまで言うのなら…。
そのあと、簡単に洗濯機や掃除機の説明をする。…掃除機を見せた時にDクリーナー?、と言われたのは驚いたが。精霊世界はよくわからんなぁ…。
わりと真剣に聞いてくれるので話しているこちらとしてはとても気が楽だ。
「……ここに、この洗剤と柔軟剤を入れて、あとはボタンを押すだけだ」
「なるほど、覚えたぞ!」
うむ。なら、大丈夫か。それじゃあ…
「今着ている服を洗おうか」
そう言った途端慌ててペタペタと服を触りだすフォウ。汗でビショビショなのがわかったのか、すぐに新しい服…昨日ガイドさんに買わされたやつだ、を持ってきて脱ごうとする……が、俺がいたのをことに気づき、赤い顔がさらに紅くなった。そしてフリーズした。
……そういや、俺も汗だくだわ。
「じゃあ、頼んだぞ?」
玄関で靴を履き、コートを羽織る。最後に腕にデュエルディスクをつけ、我が家にいる唯一の同居人に声をかける。
「昼には戻ってくるのだろう?」
つい先ほど不器用ながらも、なんとか洗濯機を動かした彼女。やりきった顔をしている。
まぁ、ボタン押すだけなのだが…。
「ああ、冷蔵庫に入っているのは好きに使っていいからな」
あ、だが、なるべく消費期限の早いものから使ってくれると助かる、と付け加えていう。
昼飯は彼女が作ることになった。フォウが料理も作れるぞ!と豪語するものだから、そんなに言うのならと。
…まぁ、今まで見てきて彼女が嘘や見栄を張るような輩ではないし、大丈夫だろう。
「楽しみに待っていてくれ!腕によりをかけて作るからな!」
ぐっと拳を握り、俺に向かって宣言するフォウ。
ここまで自信満々に言われると楽しみになってくるな…思わずニヤリとしてしまう。
……よし、そろそろ行くか。ドアノブに手をかけ、外に向かって歩き出す。
「いってくる」
「いってらっしゃい」
いつもとは違い、返事が返ってくることに違和感を覚えつつも、悪くないな、と思うユウイチだった。
今の季節は冬だ。ゆえに肌を凍らせるような寒さが人々を襲う。どうしても晒け出さなければならない顔や手袋を着用していない手などの素肌は外の寒さに凍えて冷え切りそうだ。
ふと辺りを見回すと掲示板にデカデカと今日の寒さをまるで自慢するかのように低い数字が、気温と記された文字の隣に書かれていた。
"寒いので今日は温かい格好を必ずしましょう!"と、無難な注意書きも書かれていた。ちなみに昨日も見た。
そんな掲示板から目をそらし、目的地に向けて歩みを進める。
今回はカードショップに行くわけではない。だからと言って、銀行からお金を下ろすわけでも何か買いにいくわけでもない。
今日は仕事をしに来たのだ。
いつも家でダラダラしているわけではないのだ。しかも今回の依頼主は…
「………」
着いた、か。
目の前にそびえ立つ巨大な高層ビル。見上げてみるとまるで宇宙まで届いているのではと思うほどの大きさだ。デカイ建物なら、この街のあちこちにあるがナンバーワンは?と聞かれたら迷わず此処だと答えるだろう。
そう、この建物こそ覇者が住まう塔。
「KCコーポレーション……か」
何十年にも渡り世界中に大きな影響を与え続けている大企業だ。
そんな威厳ある会社の本部に足を踏み入れる。
何故、俺がこんな巨大企業に出向いたというと。
フォウとまだ出会う前、ガイドさんから俺に会いたい人がいると言われたのだ。なんでも、ガイドさんが認めるほどのデュエリストを見てみたいだとかなんとか。
来てくれたらお礼に新しいカードのテストプレイができるのデスよ、と話しを持ちかけられ、しかも詳しく聞いてみるとそれが前々から使ってみたいと思っていたカードで。
どんな人かはわからないがカードの誘惑を断ち切れず、今に至る。
受け付けの人にアポイントの有無を確認され、ここでしばらく待つよう指示された。ソファに座り、だだっ広いロビーをゆっくりと見渡して暇を潰す。
しかし、大企業にもなるとロビーですら広いな…。って、さっきから気になっていたんだがあの石像…、ブルーアイズか。
ん…?もしかしてあのステンドグラス、ブルーアイズか?…………あ、あの装飾もブルーアイズか!?よく見たら受け付けのペン立ても刺さっているペンのクリップの部分もブルーアイズじゃないかぁぁ!?はっ、ここのガラステーブルは……KCのロゴか。…よく見たら、ブルーアイズいたよロゴの近くに小さく!
そうしてしばらくブルーアイズ探しをして時間を過ごした。
黒い服の人に案内され、たどり着いたのはホールだった。
それは、デュエルするのにまさに適した大きさの。
「君がユウイチくんかい?」
ボーっと眺めていると、声をかけられた。
声のする方を向くと、そこには白衣のようなものを着た高身長のメガネ男。
きっとあだ名はもやしだろうな…、なんて失礼なことを考えながら彼の問いかけに肯定するよう、ああ、と答えた。
「ようこそ、我らが研究室へ!歓迎するよ」
と、両手を広げて迎え入れるポーズをするもや…、メガネ男。
この人こそ、俺をここへ呼び出した張本人だ。
「知っているとは思うけど、僕はアララギ。しがない研究者さ」
そういうとアララギは手を差し出した。
握手か。
「俺はユウイチ。ふつうのデュエリストだ」
こちらも手を出し、アララギの手を握る。…手も大きいな。
ふとアララギの身長の大きさを再確認しようと彼を見上げると、彼が笑っていた。
彼はここのカード部門のいわゆる調整係という感じの役職の人だ。
ガイドさん経由で俺のことを恐らく知った彼は、俺に仕事の依頼をする形でここへ呼んだ。
「ハハハ、彼女を倒したデュエリストが、普通なわけないだろう?」
「彼女……、ああ、ガイドさんのことか?」
「そうそう〜。いやぁ〜、彼女から聞いたときはどんな人が来るのか色々考えてたけど、なるほどなるほど」
アララギは自由になった両手をポケットに突っ込み、ひと息つく。
「確かに、これなら納得だよ。ユウイチくん」
君、いい目をしているね…。
もとから細い目をさらに細く鋭くさせ、まるで見定めるかのように見つめてくるアララギ。
なにとなくその瞳に吸い込まれるように俺も見つめ返し、気づく。
……こいつの目もギラギラと煌めいているじゃないか。まるで、そう、好敵手に出会ったかのように。
「よし、いつまでもお喋りできないからね、さっそく始めようか。……ユキ!スタンバイお願いするよ!」
俺に向けていた視線を後ろへ向けると、助手だと思われる人に声をかけた。すぐさま、はーい!と女性の返事が返ってくる。
「概要は前もって説明したとおり、新カテゴリのテストプレイだよ。……はい、これね。使用するデッキに制限はないけど、このカードたちだけは絶対に抜かないように」
アララギが白衣のポケットから取り出したカードの束を取り出しながら説明をする。お互いに新しいカードのプレイをするそうだ。
ポン、と渡されたデッキを確認する。……ん?
「アララギ。もしかしてこれ、レベル6はないのか?」
パラパラとカードを確認している最中に気づいた。ないとすごく困るのだが…。
するとアララギは少し困ったように、
「あー、それねぇ…。ちょっと企業秘密だからあんまり深くは言えないけど、まぁ、調整中でね?どうしても必要なのかい?」
と、言った。
「ああ、でないと考えていたコンボが出来なくなってな…」
なるほどね〜…。と頷くアララギ。顎に手をあてて、あの部分を削除すればまぁ、問題ないかな…とブツブツ呟いている。
ちょっと待ってね、と言うやいなや先ほど声をかけた助手の方へと向かっていった。
俺はこの間にこのカードを使ってデッキを作るか…。
昼までには戻るって約束したからな。
「ユウイチくん、準備はいいかい?」
デュエルフィールドの向こう側に立ったアララギが俺に聞いてくる。
「ああ、いつでも大丈夫だ」
「デュエルするのは久し振りだからね、ちょっと手荒いまねするかもしれないけどーーーー
ーーーデュエルッ!」」
アララギLP4000手札5枚
ユウイチLP4000手札5枚
デュエルの宣言とともに、お互いにデッキの上からカードを5枚引く。
さて、先行は…アララギか。
「おっと、僕が先行か。それじゃあ行くよ。僕のターンッ!」
アララギ手札5→6
「うーん、悩むねぇ…。先行だしそこまで動かなくていいかな。モンスターを一体とリバースカードを2枚伏せてターン終了だよ」
アララギLP4000手札6→3枚
場 セットモンスター
伏せカード2枚
1ターン目、アララギはカードを伏せるだけで終わりか。これでは何のデッキかまだ分からないな…。
とりあえず、俺のターンだ。
「ドロー!」
ユウイチ手札5→6枚
ふむ…、あの2枚の伏せカードも気になるが相手の手の内が分からない以上、ここは慎重に行こう。
まずは藪を突く!
「俺は手札から、終末の騎士を召喚!」
ブワァっと、黒いオーラを纏いながら俺の場に黒い騎士が現れる。
「終末の騎士の効果で、俺デッキからシャドーミストを墓地に。そして、墓地に送ったシャドーミストの効果でデッキからディアボリックガイを手札に加える……バトルだ!」
終末の騎士攻/1400
攻撃力は下級にしては少々心持たないが、相手のセットモンスターを暴くには充分だ。
「終末の騎士で、そのセットモンスターに攻撃!」
俺の声に応じ、アララギのセットモンスターに飛びかかる終末の騎士。
ガキンッと、金属同士がぶつかる音が響く。
騎士の剣を受け止めたのは魔物がその怨念で蘇った骸骨だった。
だが、剣を受け止めたものの、その骸骨は筋肉がないためかじりじりと押され、そのまま両断された。
あのモンスターは…、
「ふふふ、セットモンスターは……ゴブリンゾンビだよ」
やはりあのシルエット的にゴブリンゾンビか。
と、なるとアララギのデッキはアンデット族……。
「破壊されたゴブリンゾンビの効果で、僕はデッキからゾンビキャリアを手札に加えるよ」
ゴブリンゾンビ
効果モンスター
星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
(1):このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動する。
相手のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。
(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。
デッキから守備力1200以下のアンデット族モンスター1体を手札に加える。
ゾンビキャリア…、確かアンデット族で中核を担うカードだったはず。警戒しておこう。
ならば、このカードだな。手札の2枚の罠カードをディスクに差し込む。
「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
ユウイチLP4000手札4枚
場 終末の騎士攻/1400
伏せカード2枚
「よし、僕のターン、ドロー!」
アララギLP4000手札4枚→5枚
場 なし
伏せカード2枚
「おっ、いいカードを引けたよ」
アララギはドローしたカードを見てそう言ってくる。…何を引いたんだ?
「僕はゾンビキャリアを捨て、手札から魔法カード、チューナーズ・ハイを発動!」
チューナーズ・ハイ
通常魔法
(1):手札からモンスター1体を捨てて発動できる。
そのモンスターと同じ種族・属性でレベルが1つ高いチューナー1体をデッキから特殊召喚する。
そのカードがアララギの場に現れるとともに、向こう側から……あれは二人三脚ゾンビか?が走ってきた。
そのゾンビは汗を流しながらもお互いに高揚した顔でモンスターゾーンに辿り着いた。
「その効果でユニゾンビを特殊召喚、さらに効果を発動するよ」
青い男と緑の男のゾンビ男の不気味なコーラスが響く……、音程があってねぇ…!!
「デッキから馬頭鬼を墓地に送ってユニゾンビのレベルを1つあげるね」
ゾンビの奏でるメロディーになにくわぬ顔でいるアララギ。慣れなのか。
ユニゾンビ
チューナー・効果モンスター
星3/闇属性/アンデット族/攻1300/守 0
「ユニゾンビ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
手札を1枚捨て、対象のモンスターのレベルを1つ上げる。
(2):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
デッキからアンデット族モンスター1体を墓地へ送り、対象のモンスターのレベルを1つ上げる。
この効果の発動後、ターン終了時までアンデット族以外の自分のモンスターは攻撃できない。
ユニゾンビ☆3→4
「そして永続魔法、星邪の神喰を発動し、今墓地に送った馬頭鬼の効果、自身を除外して墓地からゴブリンゾンビを特殊召喚だ」
終末の騎士に斬られたガイコツが地面から這い出てくる。
……ユニゾンビはチューナー、ということはつまり。
「シンクロ召喚か」
「ご名答!だけどその前に、星邪の神喰の効果を発動させてもらうね。墓地のモンスターが除外されると、その除外されたモンスターの属性と異なる属性のモンスターを墓地に送ることができる。なかなかおもしろい効果だろう?」
星邪の神喰
永続魔法
自分の墓地のモンスター1体のみがゲームから除外された場合、
除外されたそのモンスターと異なる属性のモンスター1体を
デッキから墓地へ送る事ができる。
「星邪の神喰」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
「この効果でデッキから不知火の宮司を墓地に送るよ。あ、宮司は炎属性ね」
…不知火の宮司か。
このカードが入っているということはつまり、アララギのデッキは不知火か。新カテゴリを使うっていう名目のもとでやっているからな。
「お待たせ、レベル4のユニゾンビにレベル4のゴブリンゾンビをチューニング!」
シンクロ召喚!
「PSYフレーム・ロードΩ!」
ズビュンッ!と、ゾンビからサイボーグを身に纏った男が現れた。
ああ、もうお前アンデットでいいよ、と何度思ったか…。
「そして、墓地に送られたゴブリンゾンビでデッキから不知火の武士を手札に加えて、召喚!バトルだよ!」
アララギがバトルフェイズに移行する宣言をする。
攻撃力2800のΩと、1500の武士か。二体の合計は4300。ただし、俺の場には1400の終末の騎士、まともに受ければ2900のダメージだ。
だが…、
「ユニゾンビの制約によって、このターンあんたはアンデット族でしか攻撃できない。だったか?」
「そう、そのとおり!よく知ってるね。僕はΩで攻撃できない。だけど、武士はこう見えてもアンデット族だよ!」
かなり血色が良くても1度死んでるからね!と、言うアララギ。なんか武士が無念…!って顔してるからやめようか。
「武士!あの黒い騎士を切り捨てろ!」
主人の命が下されると、すぐに頭を切り替え我が敵を討たんと構える。
切り捨て御免!
ユウイチLP4000→3600
ダメージを受けるが、微々たるものだ。それに、このカードを発動することができる…!
「だが、終末の騎士が破壊されたことで永続罠、竜星の具現化を発動!」
切り捨てられた終末の騎士が地面から舞ってきた砂に包まれる。
「このカードの効果により、デッキから地竜星ヘイカンを特殊召喚!」
砂が晴れるとそこには、虎にも似たこげ茶色のモンスターが佇んでいた。
「あれま。もうそのカードを引いていたか。いやー、なかなかに厄介だね」
「作っておいてそれを言うか」
いやー、ごめんごめんと頭を掻くアララギ。
まぁ、純粋なパワーカードじゃないだけマシだ。
「それじゃあ、僕はこれでターンエンド」
アララギLP4000手札2枚
場 PSYフレームロードΩ攻/2800 不知火の武士攻/1800
伏せカード2枚 星邪の神喰
俺のターンか。
アララギのΩがかなり厄介だが、さて、どうするか。
ユウイチLP3600手札4枚→5枚
場 地竜星ーヘイカン攻/1600
伏せカード1枚 竜星の具現化
「ドロー………!」
このカードが来たのか。ならば、よし。
「おっと、君のスタンバイフェイズにΩの効果。除外されている馬頭鬼を墓地に戻すよ」
PSYフレームロード・Ω
シンクロ・効果モンスター(制限カード)
星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。
相手の手札をランダムに1枚選び、
そのカードと表側表示のこのカードを次の自分スタンバイフェイズまで表側表示で除外する。
(2):相手スタンバイフェイズに、
除外されている自分または相手のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを墓地に戻す。
(3):このカードが墓地に存在する場合、
このカード以外の自分または相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードと墓地のこのカードをデッキに戻す。
でたな、馬頭鬼戻し。
「メインフェイズ、俺は手札の暗竜星ジョクトを召喚!」
俺の場に暗闇に包まれた小動物のようなモンスターが現れる。
「おっと、君もシンクロ召喚を決めるつもりだね?二体のレベルの合計は5、ってことはあのモンスター…」
アララギが二体のモンスターを見てそう言ってくる。
そう、彼の言うとおり、俺はあのモンスターを出す。
「俺はレベル2のジョクトとレベル3のヘイカンで、シンクロ召喚!」
来い!ソリティアパーツ、ボウテンコウ!
俺の場のジョクトとヘイカンが光となり、新たなモンスターが出てくる。
眩い光を放つモンスターだ。
源竜星ーボウテンコウ
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星5/光属性/幻竜族/攻 0/守2800
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分は「源竜星-ボウテンコウ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「竜星」カード1枚を手札に加える。
(2):1ターンに1度、デッキから幻竜族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
このカードのレベルは、墓地へ送ったモンスターと同じになる。
(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動できる。
デッキから「竜星」モンスター1体を特殊召喚する。
ボウテンコウ。サーチ、レベル変更、墓地肥やし、リクルート、といった様々な効果を盛り込んだモンスターだ。しかもチューナーである。
このカードが出たことで、アララギがこちらの動きのマストカウンターを見極めるかのように集中するアララギ。
「ボウテンコウのシンクロ召喚時、デッキから竜星カードを手札に加えることができる。その効果でデッキから竜星の輝跡を加える」
デッキから手札に輝跡を加えつつ、手札の魔法カードを手に取る。
「俺はさらにワン・フォー・ワンを発動!手札から水竜星ービシキを墓地に送り、デッキより風竜星ーホロウを特殊召喚する」
再び、俺の場に2体のモンスターが並び、怪しい表情をするアララギ。
「うーん。その組み合わせだとレベル6かな…、でも、ここでボウテンコウの効果を……」
アララギが俺の次の展開の予想をたててくる。
確かにな。ボウテンコウのレベルを上げればショウフクなどの強力なモンスターが出せるだろう。
だが、俺は、
「俺はレベル5のボウテンコウとレベル1のホロウで、シンクロ召喚!」
アララギの声を遮り、ボウテンコウのレベル変更をせずに続行した。
「レベル6、瑚之龍(コーラル・ドラゴン)!そして墓地に送られたボウテンコウの効果!」
俺の出したモンスターに対し、おや、といったような表情を見せるアララギ。
「またチューナーかい。そのカテゴリ、そんなにシンクロを連打するようなデッキじゃないんだけどなぁ〜」
アララギがそうぼやく。いや、そう言われてもな…。
デッキに手をかける。
「デッキより、レベル6のシウゴを特殊召喚!」
秘竜星ーシウゴ
効果モンスター
星6/地属性/幻竜族/攻 0/守2600
「秘竜星-シウゴ」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された時に発動できる。
デッキから「竜星」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
……ペンデュラムとセフィラに関する効果がカットされているな。
まあ、当然といえば当然か。今マスタールール2だからな。
「さすがにここで止めさせてもらおうかな!まずは、武士の効果!そして武士をリリースし、罠カード!不知火流ー燕の太刀を発動!」
不知火の武士
効果モンスター
星4/炎属性/アンデット族/攻1800/守 0
「不知火の武士」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の墓地のアンデット族モンスター1体を除外して発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで600アップし、
このターンこのカードがモンスターと戦闘を行った場合、
そのモンスターはダメージ計算後に除外される。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードが除外された場合、
「不知火の武士」以外の自分の墓地の「不知火」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。
不知火の宮司
効果モンスター
星4/炎属性/アンデット族/攻1500/守 0
「不知火の宮司」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。
自分の手札・墓地から「不知火の宮司」以外の「不知火」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。
(2):このカードが除外された場合、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
不知火流 燕の太刀
通常罠
「不知火流 燕の太刀」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドのアンデット族モンスター1体をリリースし、
フィールドのカード2枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
その後、デッキから「不知火」モンスター1体を除外する。
シウゴとコーラル・ドラゴンが並んだところで、アララギが動いた。
「燕の太刀の効果でコーラル・ドラゴンと竜星の具現化を破壊するよ!さらに、デッキから不知火の影者を除外」
一線、光がすぎたかと思うや否やコーラル・ドラゴンと具現化が真っ二つになった。
武士が振り切った格好をしている。どうやら彼がやったようだが、技の反動か、彼も倒れてしまった。
……一太刀で二つのものを両断する諸刃の剣術というわけか。そりゃ、そんな技を極めようとしたら命が何度あっても足りないな…。
だからアンデットなのか。
「そして武士の効果で墓地から除外された宮司の効果、シウゴを破壊するよ!」
武士の斬撃から逃れてホッと息をつく間もなく、さらに必殺の刃がシウゴを襲った。
……具現化まで破壊されたのは予想外だったが、まだいける。
「だがシウゴが破壊されたことにより、デッキから竜星の具現化を再び手札に加える。さらにコーラル・ドラゴン効果でデッキからさらに1枚ドロー」
瑚之龍(コーラル・ドラゴン)
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星6/水属性/ドラゴン族/攻2400/守 500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「瑚之龍」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):1ターンに1度、手札を1枚捨て、
相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
(2):S召喚したこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
「じゃあ僕は燕の太刀で除外された影者と、墓地のモンスターが除外されたことで星邪の神喰の効果を使おうかな」
デッキから具現化を手札に加え、さらにドローする。
すると俺と同様にアララギもさらにカードの効果を発動させた。
「星邪の神喰の効果で2体目の馬頭鬼を墓地に、さらに影者の効果で除外されている不知火を特殊召喚するよ!」
不知火の影者
効果モンスター
星4/炎属性/アンデット族/攻 500/守 0
「不知火の隠者」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドのアンデット族モンスター1体をリリースして発動できる。
デッキから守備力0のアンデット族チューナー1体を特殊召喚する。
(2):このカードが除外された場合、「不知火の隠者」以外の除外されている
自分の「不知火」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果の発動時にフィールドに「不知火流 転生の陣」が存在する場合、
この効果の対象を2体にできる。
「この効果で宮司を特殊召喚!」
武士と入れ替わり、今度は知性的な人間が現れた。
……あれもアンデットなんだよな。
さて、アララギに妨害されたが。
「墓地のディアボリックガイの効果を発動!デッキからディアボリックガイを特殊召喚する!」
デュエルディスクからディアボリックガイを取り出し、デッキからもう一体をディスクに置く。
残念ながらこの程度では止まらない。
「そして手札の幻想の見習い魔術師はハンドコスト1枚で手札から特殊召喚できる」
悪魔の戦士の隣に、褐色肌の魔女がポンと現れた。
これで、再びレベル6が2体。
「…まさか、本当の狙いはシンクロではなくエクシーズっ!?」
アララギが俺の場のカードを見てそう言う。
そのとおり、俺の狙いはあのモンスターを出すことだ!
「俺は2体のモンスターでエクシーズ召喚!来い!ランク6、甲虫装機 エクサビートル!」
魔女と戦士が交わり、金ピカに輝くロボット……に見えるが昆虫が俺の場に現れた。
そんなエクサビートルだが、さっそく地面にランスを突き立て何かを引っ張り出そうとしている。
「このカードの効果で墓地のボウテンコウを装備する!」
引き上げたのはエクサビートルと同じような金ピカの幻竜。幻竜の方は透けているが。角を鷲掴みされて痛そうだ。
まぁ、ボウテンコウには悪いがこれからもっと酷いことをするのだ…。
「そして、エクサビートルの効果!対象はそこで突っ立ているΩ!」
いきなり名前を呼ばれて、えっ、とキョトンとするPSYフレームロードΩ。武士の剣技の時もそこでボーっと明後日の方向向いていたの俺見ていたからな!
「おっと、Ωがやられるのはまずいね。Ω!逃げるんだよ!」
エクサビートルが持っているボウテンコウをΩに向かって振りかぶる。
それを見たアララギがとっさにΩに指示を出す。
「逃がすかぁぁぁ!速攻魔法、禁じられた聖杯発動!対象はΩ!」
異次元にワープしようとしたΩだったが突然、水をかけられると体から力が抜け、膝をついた。
「……驚いたね」
と、アララギ。そしてΩに向かって飛来するボウテンコウ。
そのまま、Ωにボウテンコウがぶつかり両者は共倒れした。
「そしてボウテンコウが墓地に送られたことにより、デッキから再びシウゴを特殊召喚させてもらう」
と、ボウテンコウの効果で、デッキからシウゴを出そうとした時アララギから声がかかる。
「あれ、それって名指しの1ターンに1度じゃなかったっけ…ん?」
デュエルディスクでボウテンコウのテキストを確認するアララギ。
しばらく睨めっこしていたが、やがてハッとした表情なる。
「そうだよ!特殊召喚をターン1にしたから他の効果に何にも制限設けてなかった!」
うわぁぁぁ、と空を仰ぐアララギ。しかしすぐにこちらに向き直り、
「よくもまぁ、そんな針に糸を通すように抜け穴を見つけるねぇ…」
と、言ってきた。
「…エクサビートルを使うやつがいてな。そいつからヒントをもらっただけだ」
そいつ、というのはダイノウジのことだ。
これ、ボウテンコウが使えるのなら一度は試してみたかったが、なんせ9期のカード。しかもレベル6のシウゴもまだ出ていないとわかって見送りしていたが、ここで使えると聞いてきたんだ。ここだけはパスをしてくれたガイドさんに感謝だな。
さて、これからが地獄だぜ、アララギ!
その頃サイパラことフォウは。
えっと、確かこのボタンだっけか……。あれ?じ、時間設定?これってした方がいいのか?あ、でもオートで大丈夫ってユウイチ言ってたし…。うーん……。
あっ!ととと……。ふぅ……危ない危ない。カードをばら撒くところだった…。ユウイチってよくこれに夢中になれるのだな。………あとで詳しく教えてもらおうかな。
※瑚之龍でコーラル・ドラゴンと読むのはさすがにわかりずらいと思ったので()でフリガナをふっておきました。
ボウテンコウって実は名指しのターン1じゃないんですよね。1回やってみたかったんです。エクサビートル大好き。
次はふつうに明宵サイパラ幻影騎士団使うので今回だけは勘弁を……。