真姫ちゃんと生き霊くん。尚マスコットにされる模様。   作:しろねぎ

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真姫ちゃんかわいいかきくけこ!

メインの作品は別なのでこちらは亀更新です。


生き霊その1

都内某所にある“西木野総合病院”そこに1人の患者が居た。その患者の名前は東 悠太《あずま ゆうた》今年高校に入学する“筈だった”15歳の少年だ。

 

筈だったと言う理由は、彼が所謂昏睡状態だからだ。しかも昏睡状態は7年も続いている。昏睡状態になった理由は7年前、小学生の時に道路に飛び出した友達の女の子を庇って車に轢かれ、その時に頭を強く打って昏睡状態になったのだ。

 

助けた女の子は幸いにも怪我も無く元気である。しかしその少女は普通の少女ではなかった。悠太が現在入院している西木野総合病院の一人娘だったのだ。そして少女は医者である父親に懇願した。『悠太を治して!パパは凄いお医者様なんでしょ!?』

 

そんな言葉に少女の父親は困惑した。現代の医学では悠太の治療は不可能だったのだ。脳幹の損傷が激しく、生きているのが不思議なくらいだった。そして何よりも困った原因は、少女が道路に飛び出した理由が父親にプレゼントされたハンカチを拾おうとしたからだ。つまり悠太が昏睡状態になった原因は少女の父親にあった。

 

勿論少女の父親も悠太を助けたかった。だからこの病院に無償で悠太を入院させる事にした。生きているのが不思議な状態ではあるが、容態事態は安定していた為、治すのは無理でも、生かしておく事は可能だった。

 

そんな生きているだけの悠太を見て、少女は決意した。絶対に私が悠太を助けてみせると。

 

そしてそう決意したと同時に、少女には“ある物”が見える様になった。

 

「悠…太?何で、悠太が2人居るの?しかも、少し…透けてる?」

「えっ?真姫ちゃん?えっ?何この状況?僕がベットで寝てる…?」

 

そう。幽霊である。この場合は生き霊と言った方が正しいのだろう。

 

♪♪♪♪

 

少女…西木野真姫に悠太の生き霊が見える様になってから7年。彼女は15歳になり、近くの“音ノ木坂女学院”に通う事になった。

 

「真姫ちゃん、忘れ物は無いわね?」

「大丈夫よママ。行ってきます」

 

玄関先で母親に見送られ、真姫が家を出ようとする。すると母親が優しい声色で“もう1人”に声をかけた。

 

「悠太君も…真姫ちゃんを宜しくね?ちゃんとお友達が出来るように見てあげてね?」

 

そう。悠太に声をかけたのだ。最初は真姫が『悠太が見えるの!』と言い出した時は父親と一緒に大変心配したのだが、悠太は真姫が許可した物は触れる為、筆談にてその存在を証明した。真姫以外には悠太の声は聞こえないので、基本的に筆談である。

 

真姫の父親は未だに若干の抵抗があるものの、受け入れてはいる。まぁ医者である手前、幽霊等の非科学的な物を信じるのが難しいのは当然ではある。

 

《分かりました。しっかりと見守ります!》

「はい!良い返事ね!」

 

悠太は小さなメモ帳に真姫を見守ると書いて真姫の母親に見せると、真姫の母親は満足げに頷いた。

 

端から見ればプカプカと浮かぶペンとメモ帳を見て頷くホラーな状態ではあるが、それを容易に受け入れる辺り、豪胆な母親である。

 

「もう、2人共余計な事話さないで!さっさと行くわよ悠太!」

「うわっ!?待ってよ真姫ちゃん!?」

 

真姫が家を出ると同時に、悠太は引っ張られる形で家を出た。悠太は基本的にには真姫から10メートル以上は離れられないのである。真姫から許可が出れば最大で50メートルまでは離れられるのだが、何でもかんでも真姫の許可が必要なのだ。端から見れば女王様と下僕のような関係である。

 

「待ってじゃないわよ!余計な事ばっかり話してるから悪いんでしょ!?」

「ま、真姫ちゃん落ち着いて?そろそろ人通りが多いから…」

「……分かってるわ」

 

悠太の言葉を聞いて、真姫が口を閉じる。悠太の姿が見えない一般の人からすれば、真姫が1人で怒っている様に見える。そしたら有らぬ噂が立ってしまう恐れがある。

 

一時期、悠太と話す真姫を見て近所で噂になった事があった。『西木野総合病院の一人娘は精神異常者だ』と。真姫本人は気が強く、噂はあまり気にしていない。しかし悠太は気にした。このままでは真姫の家族にも、真姫にも迷惑がかかると思ったのだ。

 

それを悠太が真姫に伝えると鼻で笑われた。それどころか『バカな一般人の持論でこの真姫ちゃんが動揺するわけ無いでしょ?』と一蹴されてしまった。しかし悠太も退かなかった。なので会話をする時は人通りが少ない時と、家に居る時にしよう、と条件を付けたのだ。

 

これに真姫は反論したが、悠太本人が辛いからと言って、渋々了承して貰った。

 

「全く…私は悠太と話す時間が少なくなって不満よ」

「高校で友達を作れば大丈夫だよ。僕みたいな幽霊モドキだけと仲が良いんじゃダメだ」

「私は一向に構わないわ」

「そ、それって僕の事を…!」

「私には絶対に逆らえないから無害だもの。これ程使いやすい奴は居ないわ」

 

小声で話す真姫の言葉を聞いて、悠太はがっくりと項垂れる。確かに真姫の許可が無ければ悠太は何も出来ない。これ程自分に都合の良い者は居ないだろう。しかも、幽霊だから範囲内なら空も飛べるし壁もすり抜ける。色々と便利なのを悠太は否定できなかった。

 

「ハァ……そろそろ学校に着くね。入学式にしては歩いてる人が少ないみたいだけど、時間は間違ってないよね?」

「大丈夫よ。時間の確認をこの真姫ちゃんが怠る訳が無いでしょ?」

 

悠太は周りを見渡して通学する新入生の少なさに驚いた。そして不安になった悠太は真姫に小声で訪ねると、真姫は小声で自信満々に大丈夫だと伝えた。それを聞いて悠太は安心したが、一抹の不安が頭を過っていた。

 

(新入生がこれ程少ないなんて…学校経営は大丈夫なんだろうか?)

 

その不安は的中する事となる。

 

♪♪♪♪

 

入学式から数日後、学校の廊下に貼られていたのは“廃校”のお知らせだった。それを見て、人通りの少ない廊下で真姫と悠太は話していた。

 

「貴方の言う通りになったわね。廃校なんて…私には関係無いけど」

「真姫ちゃん達1年生は特にそうだよね。入学して直ぐに思い入れとかは無いだろうし」

「貴方も1年生…私達と年齢は変わらないんだから」

「勉強は家で真姫ちゃんと一緒にやってるし学力的には真姫ちゃんより少し下くらいの自負は…ん?」

 

ふと悠太が横を見ると、生徒が何やら騒いでいるのを見つける。耳を傾けてみると、『私の輝かしい高校生活がぁ…』と声が聞こえた。リボンの色を見ると2年生であることが分かる。

 

(もう既に高校生活の3分の1が終わってるんですがそれは…)

 

悠太は内心で突っ込むと同時に、学校が好きなんだな、と名も知らぬ先輩に感心した。

 

「…音楽室にでも行こうかしら」

「おっ、真姫ちゃんのピアノリサイタル!お供させて頂きます!」

 

真姫の呟きに食い付く悠太。お供も何も真姫からは離れられないのだが。

 

「全く…真姫ちゃんのピアノを独り占め出来る貴方は幸せ者よ?感謝して聴きなさいよね!」

「そりゃあもう心得ておりますよ!僕の心の癒しになってるからね」

 

真姫の言葉に嬉しそうに答える悠太。それを見て真姫も満更ではなさそうにしていた。

 

♪♪♪♪

 

真姫と悠太は帰宅後、真剣にお互いの顔を見つめていた。しかしロマンチックな雰囲気ではなく、若干不安の色が見えた。

 

「本当にそんな事が…出来る様になったと言うの!?」

「うん…!これで僕は人類全てが羨む…素晴らしい能力を手に入れたと言えるだろう!」

「くっ…確かに貴方の言う通り、その能力を手に入れたと言うのなら、流石の私でも羨ましいと思うわ!」

「ふっふっふ…ならばお見せしよう!この“可愛い熊さんのヌイグルミ”を使って!」

 

悠太が真姫に触れる事を許可された熊のヌイグルミを掴み、天高く掲げる。

 

「コレが新しく僕が手に入れた力…入魂《ソウル・イン》だッ!」

 

悠太が熊のヌイグルミに手を突っ込むと、みるみる内に悠太の身体(霊体)がヌイグルミの中に入っていく。そして全ての身体がヌイグルミに収まると…

 

「動けるし、喋れる!やったよ真姫ちゃん!」

「信じられないけど…本当に悠太の声が私以外にも聞こえてるのか…ママで試してみましょう?」

「そ、そうだね。とりあえず、行ってみよう!」

 

真姫は悠太が入ったヌイグルミを掴むと、母親の所に向かった。

 

(掴まれても痛くは無いな…痛覚はやっぱり無いのかな?物とかは持てるかな…?立ち上がったり、一人で動く分には問題ないけど)

 

悠太は自身の身体の変化を観察する。観察している内に、真姫が母親の前に悠太の入ったヌイグルミを置いた。

 

「あら。懐かしい熊さんね!まだ持ってたの?」

「うん。でね?この中に悠太が入ってるんだけど…悠太、動ける?」

「大丈夫だ。問題ない」

 

真姫に言われてヌイグルミの身体を動かす悠太。問題なく動いており、それを見て真姫の母親も目を丸くしていた。

 

「ほ、本当に悠太君が入ってるの?」

「はい、声は聞こえてますか?」

「………」

「ママ?どうしたの?声は聞こえて無いとか?」

 

沈黙する真姫の母親。まさか声が聞こえて無いのでは?と思い真姫は心配するが、それは杞憂で終わった。

 

「可愛い~!悠太君!最高よ!ねぇねぇ!ヌイグルミなら何でも入れるの!?」

「ちょっ!ママ!?」

「は、はい、ヌイグルミなら大丈夫かと…後は関節が動くプラモとかも大丈夫だと思いますけど…」

「大きさは関係無く!?」

「お、恐らくは」

 

物凄い勢いで悠太を質問攻めにする母親。その様子を見て真姫が止めに入った。

 

「ちょっと待ってママ!一旦落ち着いて!悠太も混乱してるから!」

「えっ?あっ、ごめんね悠太君…ついつい…」

「別に構いませんけど…」

「私、動くヌイグルミって小さい頃に憧れてたの」

「その気持ちは分かります。まさか自分が動く側になるとは思ってませんでしたけど」

 

落ち着いた真姫の母親を見て、胸を撫で下ろす悠太。しかし次の言葉で焦る事になる。

 

「ねぇ?“ぎゅっ”てしても良いかしら?」

「えっ、それは…マジですか?」

 

焦る悠太。見た目は可愛い熊さんのヌイグルミではあるが、中身は15歳で思春期真っ盛りの男の子である。真姫の母親は子供を産んだとは思えない程若く見えて、美人だ。真姫の姉と間違われるなんて日常茶飯事である。そんな人に抱き締められたらどうなるかを想像するのは難しくない。ゴクリ…と悠太の喉がなった。ヌイグルミに喉も唾も無いのにである。

 

「ま、真姫さん、どうすれば…」

「………好きにすれば?エロ熊」

「お、怒ってませんか?」

「別に」

 

悠太が真姫に判断を仰ぐが冷たく突き放された。心なしか怒っている様に見える。

 

「真姫ちゃんの許可も貰ったし、良いわよね?」

「えっ、ちょっ…」

 

悠太が言い切る前に真姫の母親が悠太を持ち上げた。それを受けて悠太も覚悟を決めた。

 

(まぁ痛覚とか無いし、感触も何も無いよね)

 

等と軽い気持ちも有ったのだが…

 

「はい!ぎゅ~っ!」

「あふん」

 

悠太から変な声が漏れる。そう、感覚は有ったのだ。それを見ていた真姫は悠太に言い放った。

 

「悠太…最低、気持ち悪い」

 

暫く真姫は悠太と口を利かなかった。




まきちゃん?
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