大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜   作:疾風迅雷の如く

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第18指導 対立と協力

「さてと…ヤマ。態々私を呼び出した理由…そろそろ教えて貰おうか」

雄山、東堂が雄大に対峙するようにソファに座る。

「大兄貴…これを見ればわかる」

雄山がそういって取り出したのは巨大な鉄の箱だった。

「この中に電話で報告した妖魔連合会会長、龍造寺時夜の頭が入っている」

「例のテロリストの首領か」

雄大は電話で雄山の言っていたことを思い出し、頷いた。

 

「種族はギドラ。三つ首の竜だ。その中に首が三つ入っている…うち一つは真っ二つに分かれたがそれでも充分だろ?」

雄山は箱を開け雄大に見せると納得し、雄大が触り始めた。

「確かに作り物ではない…本物だ。だがその首がどうした?」

その触り心地や鱗などから判断して作り物でないと確信するが話の流れがわからない。

「大兄貴も鈍いな…こいつを始めとした妖魔連合会は人妖平等を唱え、それを実現する為だけに西智学園都市を混乱させてその隙を突いて乗っ取ろうとしていたんだよ。そこにいる東堂を始めとした妖怪の血を引いた子供達を暴走させてな」

それを聞いて雄大はようやく理解し、頭の中で思考し、口を開けた。

「…そういうことか。ヤマ。西智学園都市はスポンサーである大和財閥によって作られた都市であり密接な関係にある。学園都市を抑えればこの地域の子供達は全員人質に取ったも当然。つまり妖魔連合会は財閥そのものの動きを止める力を欲していた。…となれば私と敵対関係にある勢力が関わっている可能性があるということだな」

雄大のいう通り、西智学園都市は大和財閥がスポンサーとなっておりそのスポンサーになる条件として学園都市の中で優秀な生徒を引き抜いている。生徒からしてみれば大和財閥に入社出来るということで学園都市内の学校に入学しているということになる。

 

「妖魔連合会を滅ぼした奴らからしてみれば俺と東堂は目の上のタンコブ…命を狙われる身だ。向こうと接触する可能性も高くなる」

「それでこの娘を大和一族の保護下におけ…と言うことか」

雄大は東堂を見る…確かにこのヘッポコ吸血鬼では頼りない。鍛えればモノになるだろうが現状では雄山の足を引っ張ることになる。

「頼む。俺の式として働かせればどうにかなるんだ。その首は大兄貴に献上する…」

雄山が頭を下げ、そう懇願すると雄大は顎に手を添えた。

「ヤマ…一ついいか?」

「なんだ?」

「お前がこの首をやるということは私の手柄ということになる…だがそこまでしてやる必要はないのではないか?私の方にメリットがありすぎる。…お前の本当の目的はなんだ?」

「勇姿を見つける為だ」

雄山は即答した。

 

「イサムの行方が分かったのか?」

「そこまではわからねえ…だがその龍造寺が目撃したらしい。」

「目撃した? この蜥蜴がか?」

雄大は東堂を見、その様子を伺う。

「それは間違いありません。私も聞きました」

東堂の目を見て嘘はついていないと判断すると雄大は雄山に話しかけた。

「…なるほどな。アンサーでも居場所がわからなかったイサムが遂に見つかったか。その為に大和一族の保護下に入ろうと…」

「そうだ」

「ならば私やヒロはともかく、大和一族の協力は得られんと思ってくれ」

「…どういうことだ?」

雄山は雄大が言ったことを理解できなかった。

 

「…私はお前が去った後の陰陽師協会や大和一族について説明しなきゃいけない。お前がつい最近の動きの中で知っていることと言えば会長が危篤状態になり、協会が会長代行として私を指名した事と、会長派と私の派閥に分かれている…と言うものくらいだろう?」

「そうだ。俺はそれに加えて引退する前…8年前の陰陽師協会の規則くらいしか知らない。今はどうなっているんだ?」

「規則はほとんど変わっていない…強いていうならば式の条件や取り締まりがキツくなったくらいだ。それは後で確認してくれ。本題は陰陽師協会の勢力図だ」

 

「大兄貴と会長の二大勢力じゃないのか?」

「平たく言えばの話だ。…ヤマ、大和一族宗家当主任命式にイサムが呼び出された理由、何故だかわかるか?」

雄大は話題を変え、雄山に何故勇姿が関わりのない陰陽師の家の跡継ぎの任命式に呼び出されたのか…その理由を尋ねた。

「勇姿が呼び出された理由?俺達と同じ血の通った兄弟だからだろう…それ以外にあるか?」

雄山のいう通りでもあながち間違いではない。しかし雄大は首を横に振った。

「それだったら陰陽師の家の当主の任命式には出られない。イサムは陰陽師として育てられていない…だがヤマもすでにその身で感じているとは思うが肉弾戦においては大和一族史上最強級。その上私よりもずっと人を惹きつけていた」

「何言ってやがる。大兄貴。確かにあいつはステゴロでマフィア達相手に少しばかり傷を負う程度で済むほどで済んだ…でもよ、少なくとも親父や大兄貴ほど人を惹きつけたのを見たことはない。勇姿は友人すらもほとんど作れないでいたんだぜ?」

勇姿は確かに陰陽師の訓練を受けていないにもかかわらず肉弾戦に関しては最強クラスで雄山達兄弟も一目置いていた。しかし雄大のようなカリスマはなく友達と呼べる人物も数人程度である。

「お前の評価が普通の大和一族の評価だ…だが先代と私は違う。イサムはもっと高く評価されるべきだった。それ故に先代は長兄たる私を差し置いてイサムを宗家当主に任命しようとした」

しかし雄大と先代に当たる雄山達兄弟の父は勇姿を高く評価していた。

 

「…まさか、雄大さんが勇姿さんを行方不明にさせたの?」

東堂が口を挟み、雄大は苦虫を噛み潰したような顔になった。

「…いや、私はイサムが当主として任命された後、決闘を申し込むつもりだった。お互いに命を懸けてな」

ちなみに日本国内では決闘罪という罪があるが雄大はそれをしておらず未遂行為で済ましている。…したとしても警察や裁判所に圧力をかけてなかったことにするだろうが。

「親父はそれを認めたのか…?」

「勿論だ…先代はイサムが敗れればそれまでと考えていた。それだけイサムを買っていた」

「しかし勇姿が勝ったとしても勇姿は陰陽師の知識はないし、あったとしてもあいつは脳筋だぞ?」

「脳筋なことは私も同じだ。むしろ私の方が脳筋過ぎるくらいだ。昔、イサムに『裁判で弁護士や検事は矛盾点を探して犯罪者を庇ったり、追い詰めたりする職業で学がなくとも法律を暗記してしまえば馬鹿でも出来る』と教えたことがあってな…イサムの唖然とした顔が今でも覚えている」

「…そりゃそうだろうな。そんなことが出来るのは親父と兄貴達くらいしかいない。それと全国の弁護士と検察官に謝れ」

二人は苦笑し、笑い合った。

 

「世間話もそこまでにしてだ…他の連中に協力が得られない理由はそれまで酷評していた大和一族が手のひら返しでイサムを再評価し始めたからだ」

雄大は笑うのを止めて真剣な表情に戻り、理由を話し始めた。

「…別にそれとこれとは関係ないんじゃないか?」

雄大は雄山達の長兄であり、大和宗家当主でもある。その為勇姿が再評価されたところで雄大の立場を脅かすものではない。

「大有りだ。私達以外の大和一族がイサムが見つけたら当主に仕立て上げ、傀儡にする輩も現れる。…そして会長派のいいなりになる可能性も否定出来ん。そうなれば大和一族は滅亡しかねない。だから私やヒロ、先代しか協力出来ないんだ」

それを聞いて雄山は一人の人物を思い浮かべる。

「…師匠は? あの人なら力づくで解決出来るだろう。かつては勇姿の手綱を握っていたくらいだからな」

そう、雄山の師匠だ。雄山の師匠は考え方が脳筋であり、恐ろしいまでに強く雄山ですら勝てない存在だ。その師匠は今もなお発言力がある。

「あの人は敵になることはない…が中立だ。どんなに頼んだところで動くことはない」

「さよか…だが東堂を守るには十分だ。大兄貴、よろしく頼む」

「後は任せろ」

雄大のシンプルな言葉は雄山や東堂から見てとても頼もしい言葉だった。

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