大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜 作:疾風迅雷の如く
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それから数時間後、中性的な顔立ちの人物が雄山のいる那須脇旅館の周りをうろつき回っていた。
彼の名前は九条裕二。雄山の兄であり、九条家に婿入りした男だ。そんな彼はかなりの理系人間であり、少し調査をすれば誰がそこにいてかつ、何をしていたかを知ることができる。その為ここをうろつき回っていた。
「もう出てきたら? ここなら誰もいないよ?」
いきなり裕二がそう発言すると周りからガサリ、と音が聞こえ数人ほどが裕二の後ろに現れた。
「流石は現会長や現会長代行の弟と言ったところだな」
その男達は顔を隠す為に覆面をしているが同時に武装し、裕二を怨念を込め睨む。
「こうして僕の前に現れたってことは味方じゃなさそうだけど陰陽師協会の方かい? それとも会長派?」
「どちらでもない。ましてや会長代行派でもない…」
「じゃあ何派?」
「我々は勇姿様一派だ! 勇姿様の愚兄よ! 貴様は邪魔者でしかない! ここで去ね!!」
勇姿の一派の構成員達は裕二に向けて爆弾の代わりを果たす起爆札や破魔札に雷属性を付加した雷破魔札等様々な武器を投げ襲撃した。
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「…これもダメか。」
その一方、雄山は裕二同様に陰陽術、魔法、様々な手段を用いて調べたが文系の悲しさ故に手がかりとなる魔力の痕跡が全く見当たらず、相手がどのようにして自分達の場所を知ったのかわからぬままだった。それさえわかれば相手がどのような相手であるかということがわかる。しかし手がかりは実行犯が筋骨隆々の大男であることと、計画的な犯行であることだけでその他のことはわからなかった。
警察内部にいる陰陽師を呼んだとしても現場検証で時間がかかる上に雄大に助っ人を頼んだのはそういった捜査を目的としているからだ。
そんなことを考えているとかつてないほどの爆発が雄山の耳の鼓膜と地面を振動させた。
「なんだ!?」
その爆発に反応し、雄山は身構える。確かに警戒していたとは言え雄山からしてみれば予想外だった。計画的に誘拐したのであれば罠は必要最低限に済ませる。その理由は必要最低限以上に罠を仕掛けると第三者に目撃されてしまい計画に支障が出てしまうからだ。その為罠は最低限の量かつ最高の質で設置するのがベターである。
しかし今回は違う。余りにも爆発が大きすぎる。これだけ爆発が大きければ警察沙汰にもなる上に、証拠も残りやすくなり、テロ行為でもない限りはしないだろう。ましてや裕二の目を欺けるほどの誘拐犯がそんな馬鹿なことをするはずがない。この爆発と誘拐犯は関係ないという結論に達するには十分だった。
そして数分後ようやく爆発が収まり、揺れが止まる。
「…一体何だったんだ?」
雄山が呟き、周りを警戒しながら見渡す。するとエンジン音が全く聞こえない水素自動車が雄山の前にライトを向けた状態で現れた。
「(これは…裕二の車か!?)」
雄山はライトを向けられて車を運転している者が誰だかわからない。その為、運転しているものが知り合いの人物であっても雄山はいつでも攻撃出来るように構えた。
「雄山、待たせたね。」
中性的な声の持ち主が雄山に声をかける。その声の正体は雄山は知っており、警戒を緩めた。
「裕二…! 今の爆発は!?」
そう、その男とは雄山のもう一人の兄である九条裕二だ。
「少しね…問題が起きたんだ。その対処をしてきた」
「問題…?」
「これのこと」
そう言って裕二は達筆な文字が描かれた和紙を取り出し広げる。するとその紙の上に気絶している覆面の男達が現れた。
「こいつらは?」
「僕を殺そうとしてさっきの爆発を起こした犯人だよ」
「裕二をか…そりゃまた無謀なことをしたもんだ。師匠ですらも殺せないのにこいつらが殺せるはずがない」
雄山がそういうと裕二は苦笑した。
「それはともかく雄山。こいつらが言うには会長の一派じゃない」
裕二は苦笑から真顔になり、シリアスな雰囲気を醸し出した。
「じゃあ大兄貴の一派か?」
「それとも違う…こいつらは勇姿の一派。僕のことを勇姿様の愚兄とかそんな風に呼んでいた」
「勇姿様の愚兄…か。大兄貴の言っていた通り、勇姿も再評価され始めたってことか」
「そう…勇姿のことを知っている癖に僕の特異体質のことを知らないんだからよっぽど勇姿のことを評価しているみたいだ」
「なるほど…これから尋問でもするか?」
「そっち方面は雄山の分野だし任せるよ。僕は雄山の端末から犯人が誰なのか割り出してみせる」
「任せた…」
雄山は裕二に端末を渡し、裕二は襲撃した人物を引き取った。
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深い森の中…そこに雄山と多数の襲撃者がそこにいた。
「ぐっ…」
襲撃者の一人が目を覚まし、雄山は襲撃者に目線を合わせる。
「よう、起きたか?」
「お前は…大和雄山…!!」
「俺のことを知っているとは驚きだ。自己紹介が省けた。」
「この縄を解け!!」
「おい…誰に向かって命令しているんだ?」
「うるさい! 解げっ!?」
雄山は襲撃者が言い終わる前に襲撃者を殴り飛ばした。
「なあ? 立場ってもんがわかっていないようだな?」
「黙れ! お前はぐっ!?」
雄山は再び殴り、襲撃者の鳩尾に拳が入る。
「いいか? 一回しか言わねえ。これから俺が質問することだけに答えろ。さもなければ…先端の方から切り飛ばして畑の肥料にするわかったな?」
言っていることが暴力団と変わらない。流石は元マフィア狩りの男である。
「ちなみにお前が死のうが俺がパクられることはねえし、てめえだけが損をするだけだ」
「…!」
襲撃者は舌を噛み自害を試みた。ここで死んでしまえば自らの持つ機密情報を漏らすことはなくなる。死人に口なしとはよく言ったものだ。
「何をやっているんだ? てめえは?」
しかし雄山は襲撃者の顎を掴み阻止した。雄山はその手を使う輩を何度も見てきた。その為それを阻止することが出来たのだ。
「…っ!!」
自害を阻止され、顔を歪ませる襲撃者は屈辱で一杯だった。
「安心しな。てめえを拷問する時は全員尋問して何も吐かなかった時だ。誰か一人でも吐いてくれればそれでいい…」
「…」
「それじゃあ質問するぜ。お前達は勇姿の一派って言っていたが勇姿とは面識があるのか?」
「…我々は勇姿様の命を直接受け、貴様ら兄弟を殺すように命じられた」
「本当か?」
「事実だ。誰か三人のうち一人でも討ち取れば幹部へと昇格することが約束された」
「それで1番貧弱そうな裕二を襲ったわけか…」
「そうだ。雄大は陰陽師協会会長代行だ。周りに護衛がいてもおかしくない上に実力もある。お前は裏の世界で数々の武勇伝を残した男。だが裕二の強さは知れ渡っていないだけでなく魔力も少ない。つまりお前達兄弟の中で弱い…そう思っていた」
「当然だな…俺たちの影に隠れていてかつ魔力も少ない。そんな相手に油断するなという方が無理だ」
「油断などはない。俺達はやる時はやる。相手が蟻だろうが油虫だろうが勇姿様の命令であれば殺る。我々が弱く裕二という男が強すぎただけのことだ」
「なるほどな。てめえらの評価も改めないとな」
雄山は襲撃者の言葉を聞いて感心していた。雄山の嫌いなことは『油断する』ということだ。裕二の見た目が中性的であり、魔力も少ない。その為雄山は裕二に対して『油断』しても仕方ないと思っていた。しかしこの襲撃者は裕二を殺す際に初めから全力を尽くした上で自分の弱さを受け入れた。あの爆発も今考えてみれば裕二を殺す為だけにやったものだろう。
「次の質問だ。お前達は何故勇姿の部下となった?」
「そんなもの人それぞれだ。理由は特に定まっていない」
「人それぞれだと?」
「そうだ。勇姿様の魅力に惹かれた者もいれば権力や金に釣られた者もいる。現在社会と変わらねえよ」
「(つまり動機は必ずしも一致する訳じゃないか…)」
雄山が考えていると襲撃者は忌々しげに雄山を睨む。
「最後だ…勇姿が俺達兄弟以外に襲うように指示したか?」
「されていない。お前達兄弟の首以外は好きにするように命じられたんだ」
「そうか。なら…お前は用済みだ」
雄山はそう言って襲撃者に陰陽術をかけた。
「は、話が違う…」
襲撃者はそこに倒れ、息を立てて眠った。
「安心しろ。約束通り殺しはしねえ」
雄山は他の襲撃者達にも同じように尋問をした。