大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜   作:疾風迅雷の如く

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第24指導 再会

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到来山。そこは活火山である為に周りには温泉宿屋など様々な施設があった。しかし噴火の可能性が近年上昇してきた影響により、那須脇旅館などの宿泊施設は到来山から撤退し別の場所へ移動した。現在では空き家があるだけだ。

 

「聖君、本当にいるのかな?」

「長門ぉ〜、いるに決まっているだろ。ここで帰るなんて事は無しだぜ」

そんな到来山の宿泊施設だった空き家を歩く二人組がいた。その二人組はかつて雄山の勤め先だった西智学園都市の生徒であり、オカルト部の部員である矢田と長門である。この二人はこの付近の宿泊施設に幽霊が出ると聞いてやってきたのだ。

「そうは言っても信憑性のない噂だよ?下手に近づいたら私達…呪われちゃうんじゃ…」

「長門。だからと言ってこのまま帰ったら皆になんて説明すればいいんだよ?手土産の一つや二つ用意しておかないと公欠が欠席になるかもしんないんだぞ」

「内申点に響いて困るのは聖君だけだよ…私はなんともないし」

「流石、成績不良生は言うことが違うね〜…」

「成績不良生じゃないもん! 聖君が頭良すぎるだけだよ! S特なんて学園都市に数人しかいないんだよ!?」

長門は思わず叫んで反論した。この矢田は一見するとチャラ男であるがS特と呼ばれる特待生、所謂超エリートと呼ばれるものだ。しかし矢田にその自覚はなく、平気で授業を何回もサボったりするので厳重注意されているのだ。今度欠席するようなことがあれば間違いなく矢田はS特ではなくなるだろう。

「そういえばあの椅子に座っていた連中がそうなのか…」

矢田は数年前の記憶、S特の特待生の説明会を思い出す。特待生と聞くからには数多くの人々が集まる…そう予想していた。しかしそこには矢田を含めた数人しかおらず思わず困惑してしまった。その時、矢田は初めて自分がS特にさせられていたのだとわかってしまった。

 

「んなことはどうでもいい。それよりも…」

矢田が反論しようとすると窓から黒い車が走っているのが見えた。

「…あれはユーザン先生か?」

その車の運転席にはかつてオカルト部の顧問だった雄山の姿があり、矢田だけではなく長門も首を傾げた。

「なんでユーザン先生がいるのかな?」

「普段ダラけてもオカルト好きだったってことじゃないのか?」

「そんなわけないと思うよ…」

「…ユーザン先生の写真でも撮って帰るか。その方がオカルトじゃね?」

「聖君、絶対学校サボりたかっただけでしょ?」

「長門着いてこい! 先回りするぞ!」

矢田は長門の言葉を無視し、腕を引いて先回りした。

 

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「(さて、もうそろそろだな…)」

雄山は目的地の近場に車を止め、外へ出て空気を吸う。西智学園都市はまさしく都会そのものであり、自然は全くないという訳でないがほとんどなかった。その為自然の空気というのは雄山からしてみれば澄んだ空気であり、心を穏やかにさせる作用がある。

「ユーザン先生!」

雄山が落ち着き、深呼吸をしていると聞いたことのある声が聞こえ、そちらを振り向く。

「矢田に長門か…何故ここにいる?」

「やだな先生。オカルト部の活動っすよ。わざわざ公欠までして来たんですから何か一つ写真でも撮らないと帰れないんです」

「残念だがここにオカルトはないぞ」

「先生の存在自体がオカルトっす。だから写真撮らせて下さい」

「撮ったらすぐに帰るんだぞ。ここは危険だ…」

「え〜?」

「そもそも部活の為とは言えオカルトを探すから公欠する方がおかしいんだ。さっさと帰ってテストに備えろ」

「教師じゃなくなったユーザン先生に言われても説得力ありませ〜ん!」

「とにかくここはオカルトは存在しないし、暴力団同士の取引があるんだ。俺はそれを止めなきゃいけない。下手に首を突っ込んで殺されるかもしれないから今日は帰れ」

「大丈夫ですよ! そん時は俺がぶっ倒してやりますから!」

「なぁ、矢田…俺がキレる前に帰れ」

雄山はドスの効いた声を出し、矢田を脅す。

「わ、わかりましたよ。ほら長門帰るぞ!」

そう言って矢田は長門の腕を掴み長門と共にその場を去った。

「ここまでしないと言うことを聞かせられないあたり、俺は教師に向いてない…転職して正解だったか」

苦笑気味に笑い、雄山は再び車に乗って移動をし始めた。

 

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そして雄山は到来山の頂上に着くと車を止め、車から出ようとしたがそれは端末の電話機能により遮られた。

「もしもし」

【ふっふっふっ…どうやら指示に従ってくれたようだな】

「んなことはどうでもいい。それよりも東堂はどこだ?」

【そう急くな…キラーマウンテン。あのへっぽこ吸血鬼なら無事だ】

「俺は東堂はどこだと聞いているんだ。無事かどうかよりもそっちの質問に答えろ」

【…あそこのワゴン車の中にいる。だが貴様の首を貰おう。勇姿様の目の前でな】

「お前…!! 勇姿一派か!?」

【そういうことだ。私は大和勇姿様を陰陽師協会の会長へと担ぎ上げ、この狂った世界を元通りにする…だがその為には看板が必要だ】

「看板…?」

【そうだ。陰陽師協会の会長になるにはそれなりの手柄がなきゃいけない…その手柄は大和雄大、裕二、雄山の三人の首だ。その首を取ったというだけで我々勇姿様一派は看板を得たことになる】

「俺達の首が手柄…?」

【最強の陰陽師の一族、大和一族の貴様らの首さえあればすぐにでも勇姿様一派には最強の一派だと証明できる。看板というのは貴様らを倒したという肩書きのようなものだ。だが我々の中でそれを持ってこれるのはただ一人…】

「その一人が勇姿という訳か。だが勇姿は大和一族の一員だぞ?俺達の首を取ったところで陰陽師協会(やつら)が納得するとは思えない」

【貴様ら大和一族がクーデターを起こしたことにすれば何とでもなる。会長代行にはそれをするだけの動機があるからな】

「お前は大和一族を舐めすぎだ。大和一族は特に情報を操ってきたからここまで勢力が大きくなったんだ。真実を知ればいずれ勇姿一派は潰れる」

 

【ふん…だがお前がここで死ぬことには違いない。かつてキラーマウンテンと呼ばれた男がへっぽこ吸血鬼を助ける為だけに死ぬのだから哀れなものだ。もっとも実の弟である勇姿様が介錯してくれるのだからありがたく思え】

「…そうか。だがてめえらはミスをした」

【何だと?】

「俺が死んだら東堂を解放する保証はどこにもないと言うことと、ワゴン車の中には勇姿と東堂しか乗っていないことだ。どんなに暴れても何一つ問題はない!」

雄山は電話を切り、ワゴン車へ駆けていく。そして仁王立ちしている大男が目の前に現れ、止まった。その男こそが雄山達が今まで探していた人物、大和勇姿だ。

 

「久方ぶりだな…雄山」

勇姿が口を開き、雄山へと歩み寄る。一種の牽制だった。勇姿は兄である雄山を警戒していたのだ。

「色々と聞きたいことがあるが…ひとつ聞かせて貰う。何故お前は陰陽師協会の会長の座を狙う?」

「無論、俺はこのふざけた世界を変える為だ」

「世界を変える…?」

「俺は雄山達とは違い陰陽師としての教育は受けていない。だからこそ陰陽師…否、裏の世界の存在を知り、戦った。だがそれと同時に人一人救えず、魔力も霊力もない自分が無力だと思わざるを得なかった…」

「それとこれとどういう関係がある?」

「俺は裏の世界…つまり陰陽師や魔法使い、超能力者等の存在を表に出し、それらに関する研究者を増やす…そしてその研究によって魔力や霊力が少ない者でもそれらの能力が使えるようにする。それが俺の望みだ」

勇姿の計画は余りにも壮大だった。勇姿のやろうとしていることは言ってみればパワーバランスの崩壊。裏の世界の住民は誰もそんなことは考えられなかったが故に雄山は硬直してしまう。

「だがそれをするには権力が必要だ。兄貴達がいなくなれば自然と俺は大和一族の宗家当主となり、情報を操れる。同時に陰陽師協会の会長となれば大和だけでなく九条、堂島等の名家も皆俺の前では無力。余計な圧力がないから超常現象の研究も進むと言うわけだ」

「勇姿、そんなことをする前に人類は滅びるぞ…! 世界大戦に使われた兵器は元々は人類の発達の為に使われた道具でしかなかった。だが国はそれを利用して兵器を作り出したんだ。超常現象の研究もいずれそういった活動に使われるようになる!」

雄山は勇姿に力説するが勇姿は組んでいた腕を放し、構えた。

「かもしれん。だがそれでも俺はやらねばならない…例え実の兄と言えどもこれだけは譲れない」

「ならやるしかねえな。お互いによ」

雄山は勇姿が構えたことにより、破魔札を持ち、構えた。

「行くぞ…雄山!!」

「こい!」

そして兄と弟が激突し、互いに譲れない思いをぶつけ合った。

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