大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜   作:疾風迅雷の如く

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第37指導 第五世代との対面

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雄山は骨折した右腕を応急処理し、東堂を見つめながら口を開いた。

「東堂、キツイか?」

「正直にいえば」

「愚痴でも構わねえから今のうちに吐けるものは吐いておけ」

「……ユーザン先生、勇吾さんは無事なんでしょうか?」

「その心配はねえよ。勇吾対策をしてなければ大兄貴達と言えども勇吾を捕らえることは出来ない。もっとも勇吾が逃げることを第一にしていたらの話だ。逃げずに戦えばあっという間に対策されて殺されるだろうな」

「そうですか……」

「勇姿ならば戦っても問題ないが、勇吾には経験ってものが足りねえ。どれだけセンスがあろうとも経験の差ってのはデカイ。例外的に伯父貴が生まれたての勇姿に負けたが、伯父貴は不意を突かれたのと伯父貴の家族が殺されたのが原因だ」

「確かに不意を突かれたらどうしようもありませんね」

「まあ、愚痴るのはここまでだ。ここから先はゲームでいうボス部屋かもしれない。愚痴ることに気をとられて注意出来なかったなんて言い訳にならないからな」

しばらくの間、東堂は沈黙し、冷たいそよ風が二人の髪を揺らす。

「……ユーザン先生行きましょう、ボスの部屋に」

「よし、行くか」

東堂が決意し、雄山はそれを見て笑みを浮かべる。

 

そして奥へと歩むと電気が自動で灯り、一瞬眩しさのあまり目を閉じる。

「ようこそ、大和雄山。我が日本セル研究所へ」

白衣を着た少女がいつの間にかそこにいた。その少女は裕二を女体化させたような外見でありながら、目は鋭くそしてその瞳には狡猾な老人のような輝きがあり、雄山と東堂を捉えていた。

「誰だ?」

「私はここの研究所の所長、角田だ」

「……おいおい、ノーベル賞を授与した角田と思っていたがお前はその関係者なのか?」

雄山の目の前にいる少女が角田を自称し、雄山は戸惑ってしまう。

「関係者ではなく正真正銘、私はノーベル賞を授与した角田だ。だが寿命を迎えそうになり、私は別の身体に脳を移植することを決意した。第三世代の身体から私の脳に適応する身体を作り上げた結果がこれだ。このような少女の身体を望んだのではない」

「ランダムで作られたってことか」

「ランダムというよりは恐らく私の身体的特徴がこの少女と酷似していたからだろう。大和勇姿の三つ子のうちの男二人の遺伝子はどうあがいても身長190cmを超える身体に成長するようになっている。移植した後、脳と身体、どちらか片方だけでももう片方を受け入れずに拒絶したら身体が異物を作ったり脳の命令が出来なかったりして死んでしまう。故にこのような少女の身体に移植しざるを得なかった」

 

角田が「さて」と呟き、指を鳴らした。

「これから面白いものを見せてやろう」

「面白いものだと?」

雄山と東堂が構え、角田から距離を置き戦闘態勢へと移る。

「第四世代は大和勇姿のクローンでしかないが非常に優秀だ。あの14-0801はドーピングを専門に学習させたが1年を過ぎた時には私よりも詳しくなり、他の者もそれとはまた別の教育をしたら一流を超えるレベルに辿り着いた。何故オリジナルの勇姿が高校受験に失敗して何年も浪人していたのか不思議なくらいだ」

高校受験、即ち中学生が高校に入る為の試験である。高校受験の倍率は割と低く余程欲を出したりしなければ落ちることはない。だが勇姿はその欲を出し、レベルの高い高校に受験した。その結果浪人することになった。そんな落ちこぼれのクローンが優秀だといっている為に雄山や東堂は首を傾げた。

「何がいいたい?」

「それ故にそこから進化することは難しい。新たに勇姿の遺伝子を使った人造人間、つまり第五世代のほとんどが第四世代の下位互換になってしまう。しかしだ。中には突然変異というものがある。第一世代から能力持ちが生まれ第二世代のキッカケとなったように第三、第四世代からも突然変異が生まれ、第五世代となる」

角田は一呼吸置き、雄山に笑みを浮かべた。

「今指を鳴らしたのは第五世代を呼び出す合図だ。君らに対する日本セル研究所の歓迎はその第五世代の過激な歓迎だ」

角田がそう言うや否や小柄な裕二と同じサイズの女性型、痩せマッチョの男性型、勇吾のような筋骨隆々の男性型、計3名が雄山達を囲む。その一方、角田は階段を上がり文字どおり高みの見物をし、紙コップに注がれたコーヒーを飲んでいた。

「突然変異を起こす要因が少ないこともあってか第五世代はその三人だけだ」

「何がどう違うんだ?」

「じきにわかる。かかれ」

角田の合図によって三人が雄山を襲い、角田のコーヒーを飲む音と共に地面を揺らす音が同時に響く。

 

「させないっ!」

封印を解いた東堂がその内、女性型と痩せ体型の二人を押さえ込む。結果として勇吾体型、ただ一人が雄山を襲う形になった。

「この二人は私に任せてください! ユーザン先生!」

「任せた」

雄山が東堂にそう告げると残りの一人を相手にした。

「(あの吸血鬼、中々やるではないか。14-0801はよくあの吸血鬼を誘拐できたものだ)」

東堂の動きを見た角田が感心し、頷く。東堂は魔力が非常に少ない為に散々ヘッポコ扱いされていた。しかし今回の動きで東堂に対する角田の評価は改まった。

「流石はキラーマウンテンの従者なだけある。しかしよりによってその二人を相手にするか」

その瞬間、東堂に止められた痩せ体型が目を光らせた。

「っ!?」

東堂は野生とも言うべき勘でそれを避けるが、避けた場所はマグマのように床が溶け今もなお熱を持っている。

「そいつは使える能力が機械を自分の手足のように動かせるというものでな。機械を体に組み込ませサイボーグとなっている。勇姿が不得意とした遠距離戦もできるということだ」

「ここってサイボーグ研究所でしたっけ? もう管轄外ですよねそれ」

律儀にも東堂が突っ込み、それを指摘する。しかし角田はそれを無視して口を開けた。

「必要とあらば管轄外でも手を出す」

角田は胸ポケットにあったスイッチを押し、扉が開く。その先に出てきたのは雄山によって潰されたマフィアの残党達の姿だった。

「こいつらは……俺が潰した中華系のマフィア連中か」

「感動のご対面という奴だ。いい演出だろう?」

 

「……角田、こいつらにもサイボーグ化させたのか?」

勇吾体型の第五世代を投げ飛ばし、雄山が尋ねる。

「いや、サイボーグ化はしていない。サイボーグ化にはデメリットもあってな。サイボーグ化によって攻撃力は増すがその分反動も強い。言ってみれば対物ライフルをフルオートにして片手で撃つようなものだ。だから能力でそれを打ち消しているにしか過ぎない」

「ふん、なるほど。それじゃあ従来の怪人化って奴だな?」

「…! 怪人化の研究までしていることを知っているとは驚きだ」

全くの無表情で角田が拍手を送り賞賛する

 

「鴨川が怪人化したマフィア達を殺す時に組織のことを話したら困ると言っていたからな。初めこそ鴨川の所属している妖魔連合会がマフィア達を怪人化させたかと思ったがそんな能力の奴はいない。となれば別の組織が関わっている可能性がある。大和に敵対している組織の九条や堂島、峯山、長峰、安里などの家も考えたが九条や堂島が黒幕なら大和一族にちょっかい出すよりも会長のすい臓がんを治してから挑む。峯山と長峰、安里は大阪、京都、兵庫にいるからほとんど影響を受けない上にそれぞれ三家が敵対していて自分たちのことが精一杯でこちらには手を出せない」

その言葉に角田は腕を組んで黙って聞く。

「それらの家が手を出せない状況下でかつそんな技術を持っているのは技術大国日本ですら極一部。ましてや学園都市付近では日本セル研究所だけだ」

雄山のドヤ顔が角田の視界に入り、雄山の推理が始まった。

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