大和が師範〜キラーマウンテンと呼ばれた陰陽師〜   作:疾風迅雷の如く

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第6指導 手回しとハンドル

車を走らせ、現場付近に着くと背中を刃物で切り刻まれ血を流している滝河がうつ伏せの状態で倒れていた。

「滝河!」

雄山は呼吸を確保する為に滝河を仰向けにすると顔の一部が火傷しており、右眼に至っては完全に潰れていた。

「滝河さん!」

東堂の声を聞くと滝河はゆっくりと左眼を開け、口を開いた。

「ぁ…大和先生…?」

口を見るだけでも子規のように赤く染まっており、滝河の状態は重傷でありもはや助からないと雄山は思った。

「何があった!?」

「…追手にやられました」

「追手…? 侵入者じゃないのか?」

滝河の言葉を聞いた雄山は妙に思い尋ねた。この場合追手は自分が組織を裏切り、それを始末しに来た者であり、侵入者と呼ぶ方が正しい。だがもし追手であれば…滝河が内部の裏切り者ということになる。

 

「…追手です。私は6年前、当時引越し業者の社長だった鴨川慶次に10億円で学園都市の内通(スパイ)するように言われたんです」

その答えは雄山が望んでいないものだった。滝河が状況的に結界を弄ることが出来たとは言え内部の裏切り者とまでは思いたくなかった…

 

「10億…!?」

その一方で東堂はその金額に驚いていた。何せ宝くじの一等を当てるよりも高いのだ。その1割でも2等か3等くらいの価値はあり、裏切るだけでそんなに貰えるなら逆に疑うだろう。そんな東堂の驚愕とは関係ないと言わんばかりに滝河は話しを続けた。

「当時生活に困っていた私はそれに頷き、鴨川の指示に従、い行動し、てきま、した…ですが…はっ…うぇっ…」

滝河は血を吐き、咽せると背中の傷が開き、そこからより多くの血が流れ始めた。

「滝河、ゆっくりでもいい…無茶はするな」

「さ、最後の最後に…私の、良心が働きました。私はカメ、ラで証拠となる動画を撮っていました、が鴨川にバレ、てカメラも壊、され、て…マ…」

そして滝河は開けていた左眼を閉じてしまい永遠に語らなくなった。雄山は徐々に滝河の身体が冷たくなるのを感じ、手を離した。

 

▲▼▲▼☆☆☆☆▼▲▼▲

 

雄山達は救急車を呼び、滝河を病院へ運ばせると死亡が確認された。

「ユーザン先生…」

「東堂、辛いか?」

「…辛いです。最後に良いことをしようとしたら殺されるなんて…」

東堂はそれ以上は言えなかった。何故なら目から流れる液体と鼻から出そうになる液体が邪魔をしていたからだ。

「それが裏の世界の闇だ。正義がどうこう言える表の世界の倫理なんてものは通用しねえ。力がなきゃ何も出来ない世界なんだよ」

「…」

雄山がティッシュを取り出しそれを東堂の方へ向けると東堂は無言で受け取った。東堂は限りなく表に近いとはいえ裏の世界の住人であるが故に雄山の言っていることがそういう物だと理解してしまった。

「だがその場から生きられば別だ。東堂、もしお前がいなきゃ滝河はとっくに死んでいて何も聞くことが出来はしなかった」

「え…?」

「俺の顔を見るまで、滝河は俺でもなくお前でもない誰かの名前を呼んでいた…滝河の年齢とお前の性別からしておそらく娘だろうよ。その娘に謝りたくて俺に全てを話したのかもしれねえな。…生きれば弱者であっても可能性はあるんだ。だから生きろ。生きて自分を前へ進ませろ」

「…はいっ!」

「そんだけ返事が出来れば鴨川弁当に乗り込むぞ」

雄山は有無を言わさず東堂を車に乗せ、鴨川弁当の本社へと殴り込み(カチコミし)に向かった。

 

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「東堂、鴨川慶次がどんな人物か知っているな?」

高速道路を走っていると雄山がいきなりそんなことを東堂に尋ねた。

「…私達妖怪を暴れさせただけじゃなく滝河さんを殺した極悪人、ですか?」

「そうだ。だが裏の世界じゃそんなのは当たり前だ…鴨川は非常に根回しが早え上に頭も切れる。おそらくあそこまで頭の切れる奴は裏の世界の奴らでもそうはいない。躊躇していたら逆に殺られかねえ…それ以上に厄介なのが逃すことだ」

東堂の答えに付け足すように、雄山は鴨川の危険さについて解説し、注意した。

「…でも仮に逃げられたとしても外部の警察とかに任せればいずれは捕まるんじゃないんですか?」

東堂のいうことはもっともである。通常であれば警察に任せれば大体解決してしまうものだ。それでも無理なら探偵を使い、鴨川の行方を追えばいい。

「そいつは無理だ…何せ事情が事情だからな」

雄山はため息を吐いて後ろから来た2台のトラックを避ける為に追越車線から走行車線に移った。

「事情とは警察が裏の世界とは関係ないからですか?」

東堂は裏の世界の表面だけを見ている…故にその答えが出てきた。

「違う。それだったら警察が暴力団(ヤクザ)を捕まえられる訳ねえだろうが。警官にもきちんと裏の世界の奴らはいるんだよ」

「じゃあ何で…?」

「学園都市は滝河の言うことが正しければ今、鴨川の情報操作によって警察の目が光らないようになっている。だからこの前起きた殺人事件も放棄された状態になっている上に滝河が殺されたことをなかったようにしてやがる」

「つまり…警察は動けないってことですか?」

「ああ、警察が今動けない以上逃したら、永遠に捕まえられるはずがねえ。そういった根回しは鴨川の得意とすることだっ!」

雄山はいきなりハンドルを切り、片輪走行をし始めた。

「ユーザン先生! いきなりなんですか!?」

東堂はヒステリックに叫び、雄山の方へ振り向くと雄山は指を前と後ろを交互に指していた。

「前と後ろ見てみろ」

そして、前と後ろを交互に見ると大型トラック4台が二つの車線を平行して前と後ろから迫ってくるのがわかり、東堂は悲鳴をあげた。

「きゃぁぁぁーっ!?」

「東堂、しっかり掴まってろ!」

雄山はアクセルを踏み、前のトラックと右壁の隙間を通っていき、トラックの前に戻った後、元の四輪走行に戻った。

「怖かった〜…」

「これでどっちか片方でも衝突してくれればありがたいんだが…世の中そう甘くねえか」

しかし雄山が前に行ったことで前のトラックは加速し後ろのトラックは減速して衝突を避け雄山達を追いかけて来た。

 

「もしかして鴨川弁当が私達に気づいたんですか?」

「いやそれはねえだろうな。仮に滝河が俺達のことを話しても奴らが俺達を知る訳がねえ。となれば…俺を恨んでいるマフィアか暴力団(ヤクザ)の連中だな」

高速道路でいきなり襲撃され、現実味(リアルティ)が増し東堂は雄山が元ヒットマンだと確信した。

「…一旦SAに降りるぞ。このままじゃ確実に殺られかねないが奴らと言えどもSAで事故起こす程アホじゃねえ。そこで事故を起こしたら警察が駆けつけて面倒なことになるのは目に見えているからな」

雄山はSAの看板を見てアクセルを踏み、挑発じみたこと…いや挑発そのものをした。

 

雄山がこのような行動をした理由は二つほどある。一つはマフィア達が雄山の車を追いかけるのに夢中にさせることだ。そうすることでトラック全てがSAに入り、他の高速道路を利用する車に影響を与えなくてすむ。

「でもそこに着いたら…」

「十中八九間違いなく、戦闘だな。東堂、もしかしたらお前も戦うことになるかもしれないから覚悟しておけ」

そしてもう一つが戦闘だった。雄山はマフィア達を誘き寄せ自分を追いかけるマフィアをこの場でしま…もとい、倒してしまおうという考えがあった。随分と脳筋じみた考え方だが下手に高速道路で動きを封じたら交通事故による渋滞など一般車両に大きな影響を与えることになりかねない為にそうしたのだ。

そして雄山の狙い通りトラック4台が雄山の車をつけてSAに入った。

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