お艦は自分の嫁です!!
では、どうぞ。
「ねぇ…電はさ………やっぱり恨んでるよね。」
先に沈黙を破ったのは私だ。
「……恨んでは、ないのです。」
「本当に?」
この問いは何度もしたものだ。
何度も問い。
何度も許しを請い。
何度も許してもらった。
「はいなのです。」
「…ごめんなさい。」
「謝らないで欲しいのです。」
何度もしたやり取り。
電は優しいから無理してそう言ってくれているのだろうと思う。
「やっぱり気になるのです?」
「そりゃあ、ね。私が沈めたのと同じ何だから…電にもっと責められても…いや、責められて償いをしないといけないはずなんだから。」
「確かにいーちゃんのした事はいけない事なのです。」
電はソファーから立ち上がり私の前に立つ。
こんな時なのに不謹慎だけど、私は月を背にした電は綺麗だった。
「一つ質問してもいいのです?」
「もちろん。」
電は私に手を伸ばして前髪を触る。
その手つきは優しくて母が子供に触れる様な慈愛に満ちている。
「雷ちゃんは…いーちゃんを庇った時はどんな顔をしてたのです?」
「それは…。」
そこで電が微笑む。
その顔は姉である雷と被り、あの時の事が頭の中で鮮明な映像となり流れる。
「雷は………笑ってた。」
あの時、雷は笑ったのだ。
まるで『心配いらないよ』と言うように投げた木にしがみついた私に笑いかけたのだ。
「雷ちゃんは恨んではなかったのです。なら、電が恨む事なんてしないのです。」
「電…。」
「気にするなとは言わないのです。でも、雷ちゃんはいーちゃんを守れて嬉しかったはずなのです。電が雷ちゃんと同じ立場でも雷ちゃんと同じ事をして…守れて嬉しくなるのです。」
電を見上げる私の目から次々と涙が溢れる。
その涙は私の中に溜まった負の感情も一緒に流す。
そうすると雷との楽しかった日々が次々と今まで負の感情を占めていた所を埋めてしまう。
「いーちゃんは泣き虫なのです。」
「ごめ…ううん。ありがとう…電。」
「んっ…どういたしましてなのです。」
溢れる涙を電が指で拭ってくれて。
泣き止んだその目に優しくキスをしてくれた。
くすぐったくも温かいキスに私は電に甘えるように抱き付く。
「いーちゃん。」
「ん?」
電がふいに声をかけてくる。
「お願いがあるのです。」
「なに?」
電を見上げるといつになく真剣な表情で力強く窓の外…水平線を見つめる。
「あのレ級は雷ちゃんなのです。」
「根拠はあるの?」
「はいなのです。あの時、電の前に立ったレ級は…泣いたのです。前髪にはお揃いの髪留め。それに…言ったのです。」
「…何を?」
「『電…オ母サン……イーチャン』って小さかったけど確かに言ったのです。」
「そんな…でも、艦娘が深海棲艦になるなんて…聞いたことない。」
今までそんな事例はなく、艦娘と深海棲艦は敵対を続けている。
もし、そんな事があるのなら和解の足掛かりになるかもと頭の中を過る。
しかし、そんな自分に嫌気が差す。
どこまでいっても職業柄そんな事を考えてしまう自分が嫌いになる。
「いーちゃん。いーちゃんは悪くないのです。」
「あれ?私口に出してた?」
「口には出してなくてもいーちゃんの考えなんて読めちゃうのです。和解の為の一歩になるとか考えてそんな自分に嫌気が差してると思うのです。」
「うっ…図星です…。」
私が素直に認めて謝ると電はクスクスと笑う。
「大丈夫なのです。電はいーちゃんは艦娘全員の事を考えてくれてるのです。」
「うん…皆には戦い以外にもっと楽しく生きて欲しいから。」
「えらいのです♪それにいーちゃんはきっと雷ちゃんと助けてくれる。電は信じてるのです。」
電は一切の疑いもない信頼しきっている眼差しで私を射ぬく。
だから私は頷く。
「うん。きっと…きっと雷を助けて見せるから。」
「お願いしますのです♪」
私達は笑い合う。
そして扉の外で会話を聞いていたであろう人に声をかける。
「お母さん。それでいい?」
ガチャ。
「あらあら。バレていましたか。」
少し困った様な表情をしたお母さんが私室の扉を開けて中に入ってくる。
「隠れる気なかったくせに。」
「ふふっ♪」
「お母さんは遠慮しすぎなのです。」
電は私から離れてお母さんの元に近付く。
「電達は家族なのです。遠慮なんてして欲しくないのです。」
そのままお母さんの手を引いてお母さんを挟む様にして三人でソファーに座る。
「雷ちゃん。きっとまた昔みたいに皆で笑い合えますよね。」
「もちろん。今度は私が絶対に助ける。」
「なのです♪」
私達三人はその晩は三人で寄り添ってソファーで眠った。
――――――――――
「ア、アぁア…イ……なず…マ…お…カアサン………いー……チャ…ん…。」
「ヤツラハテキダ。」
「ウウッ…て……キ…?」
「ソウダ。ニクメ。ウラメ。コロセ。アノムスメ…クラウディアノムスメヲ…コロセェ!!」
「コ…ロス…。」
「クックックッ…サァ…マッテイロ…イマニアイニイクカラナ…。」
――――――――――
「フム…どうしたものか…。」
源 慎一郎が深くため息を吐く。
大本営の大元師の部屋の椅子に深く腰掛けて机の上に纏められた書類の束を投げる。
その書類の表紙には【極秘】と大きな印が押されている。
「どうかなされましたか?」
「大和か…。」
いつの間にか慎一郎の背後に現れた艦娘。
大和型一番艦 大和が慎一郎に声をかける。
「なに。少々厄介な事になってな。」
「厄介…ですか。」
「読んでみろ。」
「では、失礼します。」
机の上に置かれた書類を手に取り、読み始める。
本来なら艦娘が極秘書類を読むなど言語道断だが彼女は特殊だった。
慎一郎の大和は数々の歴戦で武功をあげるだけではなく、慎一郎の秘書艦で右腕で提督会議等でも発言力があるのだ。
そして、マスコミにも何度も取り上げられて彼女を知らない人は居ないと思われる程の有名なのだ。
「これは…本当なんですか?」
「ああ…認めたくはないがな。」
「そうですか…なんと低俗な。」
大和の目付きが鋭く細められる。
その目には怒りが灯っている。
「大和。」
「はい。」
「青葉と川内を呼べ。」
「わかりました。」
大和が部屋から出ていく。
それを見送った慎一郎は再度ため息を吐き出す。
「……クズどもめ。」
そして、一人呟いた言葉は虚空に溶けた。
――――――――――
「樹ちゃん。」
「ん…お母さん…。」
瞼を開けるとお母さんの優しい笑顔が目に入る。
「んー…おはよぅ…。」
「はい。おはようございます。」
目を擦って眠気を覚ましながらお母さんに挨拶をする。
昨日はソファーで寝てしまい体が痛いがそれでも心は軽くてどこかスッキリとしていた。
「あれ?電は?」
「樹ちゃんが妖精さんに頼んでいたのが出来ましたから電ちゃんは調整に工廠に行きましたよ。」
「そっか…って、出来たの!?」
お母さんの報告に私は飛び上がる。
「あらあら。」
「わ、私も行かないと!!」
慌てて着替えようとして転けそうになる。
そんな私を見てお母さんが困った様に微笑む。
「樹ちゃん。」
「な、なに?」
お母さんが私に近付いて髪の毛を触る。
「頭はボサボサ。服はぐちゃぐちゃ。そんな格好ではいけませんよ?」
「あぅ…でも!」
「でもではありません。ほら。動かないで下さい。」
お母さんに服と髪を直してもらう。
その手つき一つ一つに気遣いの念が込められているのか嬉しくなってしまう。
髪を直して貰っているときに目を閉じると小さい時にママに髪をといてもらっていた記憶が蘇る。
「はい。終わりましたよ。」
「ありがとう。お母さん。」
ママとの記憶を思い出して泣きそうになってしまった私はお母さんに抱き付いてなんとか堪える。
「じゃあ、いってきます。」
「はい。いってらっしゃい。お寝坊さん。」
きっと泣きそうになった私にお母さんは気付いていただろうけどなにも言わない。
私は走って部屋を出る。
そのままの勢いで工廠に向かった。
――――――――――
「はぁ…はぁ…。」
工廠に駆け込んだ私に妖精さん達がびっくりしている。
「はぁ、んっ…ごめんなさい。」
そんな妖精さん達に謝りながら奥に進んで行く。
そして、それを見つけた。
「い…じゃなくて、司令官さん。待っていたのです。」
「お、お待たせ。」
危なかっしい電にひやひやしたけど返事をしてそれの横まで近付く。
私の目に映るのは鈍く浅黒い鋼で出来た駆逐艦 電だ。
第二次世界対戦で使われていた実物を再現したものだ。
「妖精さん。完成したんだ。」
「はい。きぼもとうじのままです。」
「そうか。装備は?」
「こちらのしょるいにまとめています。」
「ありがとう。」
妖精さんから書類を受け取り目を通す。
50口径12.7cm連装砲 2基4門
25mm連装機銃 3基
25mm単装機銃 2基
61cm3連装魚雷発射管 3基
九四式投射機 1基
そこに記されたいた装備は以上だ。
「あれは?実現したか?」
「まだじっけんだんかいですがとうさいしています。しかし、きんかいでなんどかためされることをおすすめします。」
「わかった。」
この船を動かしたくてウズウズするがなんとか抑える。
「いーちゃん。電は頑張るのです。」
「電。ありがとう。」
ふんっと気合いを入れる電に笑ってしまう。
ここから始めよう。
私達の戦いを。
「そう言えば…改修工事の件は大丈夫なのです?」
……………忘れてた。
―続く。
読んでいただきありがとうございました!
今回も色々問題を投下してしまいました自分です。(←バカです)
ほのぼのが書きたいよー(泣)
感想をいただけると嬉しいです♪
では、次回お楽しみに!!