白い司令塔(仮)   作:0ひじり0

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どもども!ひじりです。

年末…かぁ…。
時がたつのは早いなぁ…。

そして後、一ヶ月とちょっとで一周年な訳ですよ!
あー…本当に早いなぁ…。

まあ、どーぞです!


第弐拾肆話~裏・赤城視点~

私と提督がこの倉庫に閉じ込められてから三日目を迎えました。

 

「大丈夫ですか?寒くはありませんか?」

 

いくらまだ日中は暑いと言えど木々に囲まれたこの倉庫は朝晩は肌寒く艦娘である私は大丈夫ですが提督はそうはいきません。

 

「うん。大丈夫。心配してくれてありがとう。」

 

「いえ、寒かったりしたら言ってくださいね?」

 

「うん。」

 

おまけにこの倉庫は敵に見つからないように高さはそれほど高くはなくてその殆どが木々の影になっていて日中もそんなに暑くはありません。

 

「赤城。」

 

「なんですか?」

 

「支えてくれてありがとう。」

 

そんな場所で体温を保持するために身を寄せ合い暖を取っています。

仕方ないのです。

そう。

仕方ないのです!

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「こんな暗闇の中でさ…赤城が居てくれて良かったなって思ってね。」

 

「そ…そうですか。」

 

「うん。」

 

ああ!

この人はこうも簡単に心を乱してくる言動をしてくるのでしょうか。

無自覚なのが余計にたちが悪いですよ。

 

「…提督。」

 

「うん?」

 

「提督の昔の話が聞きたいです。辛くないのを。」

 

「どうしたの?急に。」

 

「いえ、あの…提督の事を知りたくて…ではダメですか?」

 

早鐘を打つ心臓を必死に抑えようと試みながら少しでも気が紛れる様にと話題を振る。

 

「ん、いいよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

提督が何か思い出そうとしてか上に目線を向けたらしく近くなった提督の髪から私の鼻に女の子特有の甘い匂いが届く。

 

「それじゃあ、昔…お父さんの所に居た艦娘のお話にしよっかな。」

 

「はい。」

 

何を話すか決まった提督が懐かしむ声色で語り始める。

それは私がよく知る艦娘だった。

 

「昔…あれは私が6才の頃初めてお父さんの鎮守府にお邪魔したことがあってね。そこで出会った初めての艦娘が加賀さんだった。」

 

「加賀さんだったんですか?」

 

「うん。当時、加賀さんはお父さんの秘書艦をしててね。お父さんが抱っこしながら鎮守府内を案内してくれてる時にずっと後ろから着いて来てくれてたんだけど…ほら、加賀さんって無表情じゃない?」

 

「あ―…そうですね。加賀さんは不器用な人ですから。」

 

「そうなんだよね。私と目があったらさ…逸らすの。目線を何度も。」

 

可笑しそうにクスクスと笑う提督の声を聞きながらお世辞にも表情が豊かとは言えない加賀さんが幼い女の子に戸惑っている姿が用意に想像出来てしまう。

 

「そんな事を何度もされたら子供だった私は苦手意識が芽生えちゃって近付けなかったんだ。」

 

「あはは…加賀さんったら…。」

 

「そんな時にお父さんが緊急の用事が入っちゃってお父さんってばいきなり私を加賀さんに抱っこさせて押し付けちゃうの。あの時は本当に困ったなぁ。」

 

「それからどうなりました?」

 

「ん?加賀さんに抱っこされた私は借りた猫の様になってたんだけどね。ふと加賀さんの顔を見ると無表情なのに冷や汗がダラダラ垂れてるんだよ?もう、ビックリしちゃったよ。」

 

「ぷっ、あはは!なんですか?それ。」

 

おもわず苦笑が漏れてしまう。

瑞鶴や他の空母の皆さんには恐れられる加賀さん。

だけど提督の娘さんとなればどう扱っていいのか分からなかったのでしょう。

 

「あはは…はぁ…それでどうしたんですか?」

 

「私がママに持たしてもらってたハンカチで拭いてあげたの。そしたら凄く驚いて私を見つめてきて、その時初めて加賀さんと目があったんだ。」

 

やはり提督は優しい方みたいですね。

提督が此処に着任した日から私を含めて数人の艦娘が色々と調べて回りましたが不正などは何も見付からなかった。

そこで提督の両親についても幾つかの情報を得ましたがどれも良い所ばかりでした。

しかし、二人は行方不明扱いです。

理由は死体が見当たらなかったから、だそうです。

 

「驚く加賀さんに私が『どうしたの?』って聞いたら加賀さんは『何でもありません』ってだけ言ってそのまま執務室に連れていってくれました。それからお茶やお菓子をくれて一緒に食べた。あの時のお茶にお菓子は美味しかったな。」

 

「それからどうなったんですか?」

 

「お腹一杯になった私が加賀さんに抱き着いて寝ちゃったの。それで目が覚めたら加賀さんが慌てながら私に謝るの。『すみません。起こしてしまいましたか?』って…後ろでお父さんも居てそれ見て大笑いしたんだけど加賀さんがお父さんに怒っちゃって私をソファーに座らせてからお父さんの首根っこ捕まえて奥の部屋に連れてったんだよね。」

 

「ふふっ…きっと恥ずかしかったんですね。」

 

「うん。多分そうだと思う。少しして加賀さんは戻って来て私の前に立ったんだけど、どうしたらいいのか分からないのかその場で立ち尽くしてるの。」

 

提督の話に耳を傾けながらも思考は止まらない。

なぜ提督はこんなにも辛い目にあっても人や私達艦娘にも優しく出来るのでしょうか?

 

「加賀さんはもっと甘えて欲しかったんでしょうか?」

 

「流石同じ一航戦だね。その通りだよ。」

 

「ふふっ…加賀さんらしいですね。」

 

心は大人でも体は小さい提督。

その原因も心的ショックだと聞きました。

髪が白くなるほどのショックなんて普通の人間に耐えられるのでしょうか?

 

「子供は無邪気なものでね。まだ眠たかったのもあって抱っこをねだったの。そしたら加賀さんも恐る恐るだけどそれに答えてくれてその日は帰るまで加賀さんに抱っこされてたよ。」

 

「そうでしたか。懐かしいですか?」

 

「うん。それからは鎮守府にお邪魔する度に加賀さんに抱っこをせがむようになって加賀さんも困った表情をするんだけどどこか嬉しそうで楽しかったよ。」

 

そして、昔に比べてもましになったとは言え未だに男尊女卑の色が濃いこの国でどれだけの努力をしていたのか…。

 

「そうですか…あの、提督。」

 

「ん?どうしたの?」

 

私には理解できない位に血の滲むような努力を経て今の提督が居るのではないか?

そう思った私は提案する。

でも、少し恥ずかしくて悪戯だと思わせる様に笑って。

 

「加賀さんがしてたみたいな抱っこをしてもいいですか?」

 

「ええっ!?」

 

あわあわと腕を動かして慌てる提督がかわいいですねぇ…。

おっと、暗くて見えないでしょうがきっと私の顔はだらしなくなってしまってるに違いありません。

 

「いやいやいや!恥ずかしすぎるよ!!」

 

「今は私達しか居ませんし、真っ暗ですから大丈夫ですよ。」

 

「ダメ!恥ずかしい!」

 

「あ…。」

 

提督が立ち上がり、温もりが消えてしまう。

 

「あの、提督…。」

 

「……なに?」

 

キュッ。

 

きっと今の私の顔は幼子みたいになっていると思いますが、そんな事など気にも止める余裕も無くて提督に我儘を言ってしまいます。

 

「ダメ…ですか?」

 

「うぐっ…。」

 

提督が困ったと言う感じに声をあげる。

それでも私は提督を離せなくて…困らせてるのが心苦しいけど、どうしても出来なかった。

 

「……はぁ…。」

 

「提督…。」

 

「うーわかったよ。いいよ!するよ!」

 

「ありがとうございます!!」

 

やけくそ気味に提督が了承してくれると私の落ち込んでいた心は一気に天にも昇る程に明るく照らされる。

 

「では、どうぞ♪」

 

「うぅ…。」

 

提督が私に甘えてくれる。

その事が待ちきれなくて両手を広げて迎える準備をする。

 

ギュッ。

 

「んふふー♪」

 

「あぅ…恥ずかしぃ…。」

 

提督が恥ずかしそうに抱き付いてくれると私の胸に頭を乗せる形になる。

ビックリしたのか一瞬躊躇うが大人しくしていて私は抱き上げるように提督のお尻の下で手を握る。

 

「どうですか?提督?」

 

「恥ずかしいけど………落ち着く。」

 

「それは良かったです。」

 

落ち着くってことは嫌ではないと言うことですね。

その言葉を聞いて嬉しくて鼻歌を歌ってしまう。

 

「~~~♪」

 

私と加賀さんが軍艦時代によく聞いて、艦娘になってからはよく歌った曲。

私達の思い出が詰まった曲。

その歌と共に昔の記憶が暗闇の中に浮かび上がる。

あれは数年前の大規模掃討作戦の前日。

この鎮守府にいた加賀さんが沈む前日。

 

――――――――――

 

「加賀さん。」

 

「赤城さん。どうかしましたか?」

 

「もう寝ますか?」

 

「いえ、まだですね。」

 

「少し…夜風に当たりませんか?」

 

「…はい。」

 

「……加賀さん。」

 

「はい。」

 

「明日、ですね。」

 

「そうですね。」

 

「………。」

 

「………。」

 

「加賀さん。」

 

「はい。」

 

「歌を……歌いませんか?」

 

「………はい。」

 

「「木枯らし吹きて 想いは深し

夕日は沈みて あわれを誘う

君恋し わが胸はもゆる

思えば いとしき 誰の姿よ

 

夕闇せまりて 星影あわし

み寺に光れば 楽の音ひびく

君恋し わが胸はもゆる

思えば いとしき 誰の姿よ

 

ふるさと離れて 遠く来し いま我れ

夜ごとに夢見て 在りし日の面影

君恋し わが胸はもゆる

思えば いとしき 誰の姿よ」」

 

「……加賀さん。必ず生きて帰って来ましょうね。」

 

「はい。もちろんです。」

 

―続く。




読んでいただきありがとうございました。

んー…無理矢理感が半端ないですよね今回(泣)
因みに今回の歌は1928年に出た『君恋し』って歌です。
時代背景がおかしいかもしれませんが許してください!お願いします!!(土下座)

後、一話で赤城編の終了ですね。
この話が終ればメインに話を戻す予定な訳ですが。
皆様楽しみにしてて頂けると嬉しいですね。

ではでは!
また、お会いしましょー!!

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