アバンタイトル
「―――はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
月明かりが差し込む路地裏に、1人の女性が佇む。女性の息は荒く、顔から汗がひたり、ひたりと流れ落ちていく。
「―――、まさかここまでやるなんて、想像以上だわ・・・」
―――コツっ、
「それはこちらも同じこと、いくら貴様とてここまでやるとは思いもしなんだぞ」
同じ路地裏小さな足音と共にに現れたのは黒いコートを羽織った長身の男。
「あなたに褒めてもらっても嬉しくはないんだけど」
「あぁ、しかしコレは称賛に値する。こと私との闘争において、
「喜んでいいのかしら?それは」
「無論だ、私は素直に貴様を褒め称えている」
「へぇ、死徒ふぜいが随分と生きがってくれるじゃない。あなたはこの私が何者かわからないわけではないでしょう?」
「あぁ、私が一介の死徒に過ぎぬなら貴様と対峙した時点でその死は確実であった。私が一介の死徒に過ぎぬならな」
「それもそうね、フォワブロ・ロワイン。それにしても、あなたは私を殺してどうしたいわけ?一体誰の差し金?」
「ほう、そこまで見抜かれていようとは。その金色の魔眼、曇ってはいないと見える」
「答えなさい、あなた程の死徒に私を殺すように命じたのは誰?」
「なに、これも吸血鬼社会の決まり事では。上の命令には逆らえんのだ、故に、「王」と答えれば貴様も検討がつこう。」
「それはわかっているわ、私が聞いているのはどちらかよ。白い方か黒い方か、まぁ、こんな事を考えそうなのは恐らく前者でしょうけど。」
「悪く思うな、真祖の姫君。―――いや、アルクェ・・・」
コツ、コツ、コツ、―――。
足音が聞こえる頃には遅かった。
その音の主はすぐ側の路地までに来ていたのだから。音もなく忍び寄ったソレは長身の男の身体から飛び出る有象無象を難無く打ち消す。
「―――人間か。」
否、この時男が感じたものはそんな生安い物では無かった。なぜなら男の懐からい出る獣は百鬼無双、一体一体が熊と対峙しても引けを取らない戦闘力を持つから故。それをあのようなナイフの一刺しで、それらすべて平等に塵芥と変えるなど人の身において成せる業の遥か上を超える。正確な表現、この時男は彼の人間を本能的に「死神」と捉えてしまった。
「貴様、何者だ。何が目的で、何故ここに来た」
「ハハッ、Who、What、Whyか、こいつは傑作だ。一度の質問で三つも問を投げかける奴なんざ初めてだ」
「答えろ人間、貴様は何者だ?何が目的で、何故ここにいる?」
「俺が何者かなんてのはどうでもいいよ。ていうかあんたら自体、俺が名乗っても誰かわからないだろ?何が目的―――そりゃあ、俺の本業だからなぁ、依頼なんざなくとも仕事は仕事。ここんところ全然起きてこれなくてさぁ、準備運動にはもってこいって訳よ。最後に何故ここにいるか・・・か、そりゃあ・・・―――あんたらを殺すためさ。」
「―――フッ、たわけが。」
男の懐から先の数倍の数と大きさの獣達が吐き出された。
「さぁ、凶祭を・・・血の喝采を・・・万物に死を・・・妖夢の如き一時を―――。さぁ、早々に夢から醒めねば、俺がすべてを喰らう前に。」
■■
「フォウ、フォフォーウ!」
「何か、酷く怖い夢を見たような―――。」
ギュイーン、ガシュと
ドアが開く音がしたので振り向いてみると、
「おはようございます先輩、上手く睡眠は取れましたか?」
「あいにくと夢見が最悪だった。」
「それはお気の毒です。それはそうと先輩、今日はダヴィンチちゃんから緊急の収集がかかっています。至急中央管制室に集合してください」
―――数分後。
―――ギュイーン、ガシュ
「やぁ、藤丸君。昨日は良く眠れたかい?」
「悪夢に苛まれました」
「それはそれは災難だ。まぁ、よくある事だし。早速だけど、今回の特異点の話をしよう」
「えー、また特異点?」
「まぁね。今回はまた珍しいケースなのだよ。特異点Fを覚えているかい?観測した時代は特異点Fの一年程前、カルデアスから観測した座標が特異点Fのすぐ側なのだよ」
「―――なんか、この時代のこの地域って異常が多いよね」
「先輩の言う通りです、こんなに頻繁に同じ時代の同じ地域で聖杯が出現するものでしょうか」
「そうだねぇ。でも、カルデアスの観測に間違いは無いはずだし、まぁ、この特異点の聖杯自体は恐ろしく微弱な物だ。安心しろとは言わないが、聖杯自体のレベルだと今までで最弱のレベルだからさ。念のため聞くけど、行ってきてくれるかい?」
「サーイエッサー」
「了解です、ダヴィンチちゃん!」
「フォウ!フォフォフォーウ!」
「よろしい!コフィンに入ったね。それじゃあ、レイシフトを開始するよ〜」
『アンサモンプログラム スタート。
霊子変換を開始します』
『レイシフト開始まであと、3…2…1…』
『全工程完了。
グランドオーダー実証を開始します。』