比企谷くんの同級生(仮)   作:ほーき。

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オリキャラ注意です!



3話

 放課後ティータイムよろしく、緩い時間が流れる。

 紅茶に舌鼓を打ちつつ読書に勤しむ。

 平塚先生が訪れるまで会話はなく、俺は読書、雪ノ下は参考書を開き勉強をしている。

 グランドから流れてくる運動部の声をBGMにページをめくる。

 そこで、ふと疑問に思ったことを口にする。

 

「なあ、雪ノ下――おまえ友達いないの?」

「なっ、どういうことかな」

 

 一瞬、驚くがすぐに平静となり聞き返してくる。

 

「いや、いつも連れてるお友達はどうしたのかと思って」

 

 皮肉まじりに言葉を吐く。これは雪ノ下にではなく、『友達』という単語からの拒否感からだ。

 

「あー、あの子たちにも部活があるしね。……それに仲良くしてるわ、週に一回はここでお茶会してるくらいだし」

「おい、待て。お茶会ってなんだよ。 え? なに、ここでしてんのか?」

 

 聞き捨てならないことを平然と仰る。

 ここって、女の花園なの? 知らなかったわ。こうしては居られない。そうだ、家に帰ろう。

 善は急げ、鞄をひっ掴み立ち上がる。

 

「もう大丈夫だよ。ここで、することはないから」

 

 俺の行動を予測していたのか、食い気味に答える。

 

「そうか。でも……まあ、あれだ、俺のことは気にしなくていいぞ」

「ううん、ほんとはね、比企谷くんも一緒に参加させようかなーと、思ったりもしたけど二度と来なくなりそうだから自重したんだ」

「ほんとに気にしないでください!」

 

 雪ノ下の余計なお世話に語気が強くなる。

 俺の言い方が面白かったのか、クスクス笑っている。

 くっ、これがリア充特有の冴えない奴に向ける嘲笑か。本人は笑われた理由が分からないだけに、余計笑い者にされるという、負のループ――やはりこいつも、向こう側の住人か。

 そういや、一年生のときに約束した『学校では関わらない』はなし崩しになっている。……あれは確か『女子』に対する嫌悪感からだったか――。

 うん、黙っておこう。これを持ち出すのは雪ノ下に失礼だ。

 再び静の時間が訪れる。

 雪ノ下はもっとギャルギャルしいというと語弊があるが、こんな辺境で大人しく勉強をしているとは思わなかった。

 

 自分を中心に物事を進める。

 常に周りには人がいる。

 彼女を取り巻く環境は笑顔に満ちている。

 

 これが雪ノ下陽乃で――雪ノ下陽乃の語り部はいつだって取り巻きの連中だ。

 だから、こんな場所で奉仕部なる部活動を一人でしていることは不思議だった。

 語り部のいない物語は停滞する。

 リアルタイムに語る者が現れなければ、それは雪ノ下陽乃の伝記――説話になりうる。

 もう神話に近いものになっている。本人は喋らないが周りがさも自分の『雪ノ下陽乃』は優秀かを自慢しあう。

 彼女は語られるだけの可能性を持っている。

 

「ふう」

 

 開いているだけの小説を閉じ、ため息をつく。いつの間にか文字を目で追うのを止め、同じ空気を共有している彼女について考えていた。

 久しぶりかもな。

 ふと、頭のなかでそんな言葉が浮かんでくる。他人に感心を持たないようにしてた俺は知らず知らず彼女のことを観察していた。……なんか、変態みたいだな。

 

 

 

 

「すまない、職員会議が長引いてしまった」

 

 そう言い平塚先生は現れた。

 

「おっそーい、比企谷くんがずーっとこっち見てて危なかったんだよ」

「平気で嘘をつくな。チラ見しかしてねえよ」

「比企谷、二人っきりでチラ見はアウトだぞ」

 

 アウトってなんですかね? お縄にくくられるちゃうのかな?

 

「ときに比企谷、私が言った言葉を覚えているかね?」

「奉仕の精神を学ぶ、でしたっけ」

 

 昨日そんなことを言っていた気がする。

 雪ノ下を警戒しすぎて忘れていたが――。

 

「静ちゃん、本題に移ってよ」

 

 間を雪ノ下が割って入る。

 

「そう急かすな、陽乃。ふむ、なら本題を言おう。陽乃、比企谷、おまえたちはなぜ、自分の正義を主張しないのだ!?」

 

 憤慨だ! と言わんばかりに食ってかかる。

 この人、何言ってんだろ。ほんと。

 

「静ちゃん、正義は高らかに主張するものじゃないよ。正義とは胸に秘めるものだよ」

 

 雪ノ下は諭すような穏やかな顔でなだめる。先生、教え子に真剣に心配させるなよな。……そんなんだから――。睨まないでください。心の声を読まないで!

 雪ノ下の言葉に感銘を受けた先生だったが、俺の顔を見るとやれやれ、と手を煽りだした。

 正義か、聞くと心がピョンピョンする。

 中二には避けては通れない道だろう。

 

「陽乃の言い分も一理ある。だが、互いの正義をぶつけ合う――それが青春というものだろ? 違うか比企谷!」

 

 俺に振るなよ、まじで。この人の青春感は少年誌に大きく影響されてんだよなー。一般女性の感性を持ち合わせていないんじゃないか? そう疑いたくなる。

 

「勘弁してください。先生のおもちゃじゃないっすよ」

「はあ、比企谷――君はほんとに理解してないんだな。……陽乃、私は比企谷のひねくれた性格の更生を頼んだ。そうだね?」

「そうだね、でもわたしは更生する必要はないと思うなー」

 

 意外にも、雪ノ下は先生の言葉を否定する。

 

「どうしてかね? 比企谷の性格は更生しないとまずいレベルだろ」

 

 先生は不思議そうに雪ノ下に問いかける。更生――か、自覚はないが、ぼっちというのは、そんなに罪なことなのだろうか? 七つの大罪にも匹敵するほどの罪――孤独……なにこれ、超かっけぇ。

 二人の会話に入ることなく、一人そんなことを思案する。

 

「わたしに誰かを更生する資格はないよ。ましてや、比企谷くんなんて……」

 

 雪ノ下は遠い何かを眺めるように答える。

 

「なら、比企谷の更生はしなくていい、だが比企谷を近くで見守ってて欲しい」

「見守る? 比企谷くんを?」

「ああ、比企谷は危なっかしくてな。陽乃も思い当たる節があるんじゃないか? 」

 

 事故のことを示しているのか、先生はお願いするように言う。

 

「うぅー? 確かに人として危ないかも」

 

 可愛らしいうめき声を上げながら、意図的に攻撃してくる。こいつなりの照れ隠しなのだろうか?

 

「あの、俺の意見無視ですか? てか、雪ノ下はアルソックかよ」

「下手なセキュリティより、こいつは安全だぞ」

 

 平塚先生は笑いながら話す。すると、雪ノ下は不満そうに口を開く。

 

「わたしは守れて妹だけだよ」

 

 分かるわー。俺も小町なら死んでも守るからな。やはり、千葉の妹は守らないといけないのである。

 

「ともかく、依頼内容を比企谷の監視に変更だ。そして、比企谷、君もこの部活に入るんだ、陽乃のサポートを頼んだぞ」

 

 締めくくるように平塚先生は話す。

 結果、俺は入部決定なんですね。

 

「言い忘れるとこだった。二人には勝負してもらう」

 

 またもや、面倒事を作り出す。勘弁してくれませんかね。

 

「静ちゃんは意外と……でもないけど、押し付けがましいよね」

「そ、そんなことはない。いいから聞け。ただこうして、依頼に答えてばかりでは、やりがいがないだろう。だから、勝者には敗者に何でも一つ命令できる権利を与えよう」

 

 うわー、うわー。どっかで聞いたことあるわ。

 食い付きの悪い俺に、平塚先生は驚きながらこちらを見る。

 

「なんだね、比企谷は不満か?」

「いや、面倒だなーと」

 

 ほんと、この人だけ盛り上がってるよ。先生は俺の感触が悪いと分かると雪ノ下に同意を求める。

 

「陽乃はどうかね?」

「別にいいよー。負ける気なんて、さらさらしないし、万が一負けても比企谷くんに卑猥なお願いをする度胸はないし――ねー?」

 

 こいつ、あのときのことまだ根に持ってやがったな。

 ないよ? ないけどさ、俺だって男のプライドが……ごま位はある。小さすぎるかな?

 

「同意を求めんな。……でも、入部が決定事項ならもう特に口出しはしません」

 

 ザ・人任せ。これ以上足掻いても無駄だろう、なら諦める一択だ。

 

「決まりだな」

 

 満足そうに大きく頷く。

 

「勝敗の決着は簡単だ。誰が一番、人に奉仕できるかだ。悩める少年少女を救いたまえ」

 

 と言い残し先生は教室を後にした。

 台風みたいに場を荒らして去っていった。

 

「うへぇ」と気持ち悪い声を出す俺と涼しい顔をしている雪ノ下。

 気まずい空気が包み込む。

 その空気を破ったのは再び第三者だった。

 ノックの音が二回、教室に響く。

「どうぞ」雪ノ下が返事を返す。

 ガラガラと扉が開くと女子生徒が入ってきた。

 

「……」

 

 さっきより、殺気立つ。……くそつまんねぇな。重苦しい空気が教室を支配する。

 部屋に入った彼女は無言でこっちを見ている――おそらく。理由は彼女の目が見えないからだ。

 って、確か昨日来てなかったっけ?

 俺と雪ノ下が握手をしている瞬間に入り、帰った。

 

「えーっと、依頼があるのかな? 二堂 椿(にどう つばき)さん」

 

 「い、依頼はあったけど、解決したというか……」

 

 しびれを切らした雪ノ下が問いかける。……二堂椿か聞いたことねぇな。おそらく違うクラスの生徒だろう。

 にしても声小さいな。俺も大概だが、彼女は度を越した小ささだ。

 

「おい雪ノ下、知り合いか?」

 

 雪ノ下はうつむいている彼女を知っているみたいなので、聞くと――。

 

「うん、同じクラスなんだ。ね?」

 

 二堂に同意を求めるように言う。

 

 「はい」

 

 緊張しているのか震わせながら言う。……まさか、こいつも雪ノ下の二面性に気付いてるんじゃ――ってそんなわけないか。大方俺の死んだ魚の目と評される腐った目を見てびびっているのだろう。……あれ、目から汗が――ぐすっ、帰ろ。一人で自暴自棄になっていたら、いつの間にか話は進んでいたようで――。

 

「もしかして、比企谷くんと話したいだったりしない?」

 「そうです! でも、どうして分かったのでしょう?」

 

 依頼内容はどうやら俺にも関係があるらしく、雪ノ下はいつもの仮面上の笑顔をちらつかせながら親身に相談にのっている。

 

「なんでもは知らないよ。知ってることだけ」

 

 かの有名な委員長の台詞を口ずさむ。雪ノ下にはそれをいう資格がある。それだけの優秀さはあるし、どことなく似ていなくもない。

 すると、二堂は口元を隠しながら小さく笑った。

 目元まで覆っている前髪にふたつくくりの後ろ髪、制服も着崩しておらず、清楚なイメージが浮かぶ。国際教養科には変わった生徒が多いと聞くが、二堂は雪ノ下とは別ベクトルの異彩を放っている。

 

「んー? おかしなこと言ったかな?」

 

 不思議そうに首を傾げるも思い当たる節がないのか悩んでいる。

 雪ノ下は普段こんな感じじゃないのかもしれない。教室では雪ノ下を囲み、談笑している。話題は……まあ、女子高生らしいものなのだろう。

 だから、アニメから台詞を持ってくるのは二堂にとって、新鮮なのかもしれん。……知らないけど。

 

「で、二堂……さんは何しにここへ?」

 

 終わりのない無駄話を遮り俺が口を開く。

 

 「はい比企谷さん、私は『フロルの飼い主(キズナイーバー)』です!」

 

 消え入りそうな、それでも力強く答える。

 そっか、そっかフロルの飼い主(キズナイーバー)か。え? この子が?

 

 「比企谷さん――いえ、フロルの救世主(メシア)さん、改めて――」

「待って、待って――わたし、全然話についていけてないよ!」

 

 雪ノ下がたまらず口を挟む。……ですよね。いきなり、中二みたいなことを喋りだしたら不気味だよな。

 ここは俺が説明するか――内心俺も突然の再会に動揺してはいるのだが。

 

「フロルの――じゃなくて、二堂は俺が庇った犬の飼い主だ。高一の入院していたときに、手紙のやりとりをしていたんだ。二堂から提案してきたんだよな?」

 

 二堂にバトンを渡すと、はい、と言い続きを話し

 始める。

 

 「比企谷さんに会うのは申し訳なかったので、ご両親に謝罪をしました。……なにか、比企谷さんを手助けできることはないかと伺うと入院期間中話し相手になってくれと頼まれましたが――その……殿方と会話をしたことが少なかったので、文通という形を取らせていただきました」

 

 すらすらと話すと疲れたのか息を吐く。

 

「ごめんね。二堂ちゃんここに座って」

 

 雪ノ下は二堂の疲労を察すると長机の真ん中に椅子を置き座らせる。

 

「気が利かなくてごめんな」

「比企谷くんはわたしに謝って欲しいけどね」

 

 俺が二堂に謝ると雪ノ下は紅茶の準備をしながら不満げに言う。

 

 

「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」

 

 三人分の紅茶を用意した雪ノ下は配りながら注意する。……こいつ、ほんと気が利くな。飲み終えていた俺のカップにも紅茶を注いでくれている。これがデキる女という奴なのだろうか。

 

 雪ノ下が言うとおり紅茶は熱く、フウフウしながら、ちびちび飲む。

 

「どこまで話してたっけ」

 

 雪ノ下が二堂を視線に入れながら口を開く。

 

「手紙をしていたってとこまでだな」

「そっかそっか、でも比企谷くんと入院期間中ずっと一緒に居たけどそんな手紙見なかったよ?」

「おい、誤解を招くようなこと言うな。放課後な――放課後だけだろ」

 

 雪ノ下はわざとらしく挑発するように話す。こいつ、マジで何がしたいの?

 二堂は恐る恐るといった感じで俺と雪ノ下交互に目をやりながら声を出す。

 

 「あの、……お二人はどういったご関係なのですか?」

「あのね、わたしと比企谷くんは……ねえ、比企谷くん――わたしたちってどういう関係かなぁ?」

「あ? 被害者と加害者とかでいいんじゃねぇの」

 

 欲しかった答えが帰ってこなかったのかつまらなそうに返事をする。

 

「加害者じゃないよ。加害者の車に同乗してただけだもん」

 「ご、ごめんなさい。フロルが飛び出したばっかりに」

「違うよ、これは誰も悪くないよ。そうだよね、比企谷くん?」

 

 確かに誰も悪くないのかもしれない。でも、二堂はそれじゃあ納得しないのではないか? ならば――。

 

「強いて言うなら、俺が悪い――でいいんじゃないか。もし、二人が責任を感じてるなら止めろ。いい迷惑だ」

「迷惑って、でも比企谷くんらしいね」

 

 雪ノ下は楽しそうに納得する。それに比べ、二堂は考え込んでいる様子で――。

 

 「だめです! 比企谷さんはフロルのせいで、骨折したから……」

 

 二堂は優しい。あの手紙でも思ったが俺の事故にとても責任を感じているようだった。だが、こいつは優先順位を間違っている。

 

「二堂――フロルのせい、だなんて言うなよな。大事な愛犬なんだろ? 手紙の半分くらいフロルのことだったぞ」

 

 今になって分かったが、もしかしたらあの手紙は相当勇気がいることだったんだろう。丁寧な文字には、俺を気遣う励ましの言葉に愛犬であるフロルの経過報告も書いてあった。

 

 「はい、ごめんなさい。……でも、比企谷くんは――フロルの救世主(メシア)だから、いつかはちゃんと謝ろうと……」

「おう、まあ、あれだ。気持ちは伝わったからもう大丈夫だぞ。フロルの飼い主(キズナイーバー)さん」

 

 ふふふ、と二人で笑う。

 

「良い雰囲気なとこ悪いけど、メシアとか、キズナイーバーとか意味が分からないんだけど?」

 

 雪ノ下は胡散臭そうに割って入る。

 

「ああ、それな。手紙のやりとりしてたときのペンネームみたいなものだ」

 

 くっ、確かに恥ずかしいこと書いてんな。反省、猛省。

 

「そ。ねえねえ、二堂ちゃん、比企谷くんとはどういう手紙のやりとりをしてたの?」

 

 雪ノ下は興味をなくしたのか、二堂に話しかける。止めてやれよ。二堂さっきから震えてるじゃねえか。

 

 「その、フロルのことだったり、比企谷さんの様子とかを聞いたりです。……あ、比企谷さんがよく魔王みたいに性格悪くて、分厚い仮面を付けた奴に目をつけられたって、書いてたのですが、雪ノ下さんのことだったんですね」

 

 ……二堂さん!! とんでもない、爆弾発言をしやがった。

 

「へー、比企谷くん――やっぱり気づいてたんだ」

 

 舐め回すようなじっとりとした視線を俺によこす。えぇ、気づいてましたよ。でもね、雪ノ下自身が付けている仮面ではなく、女子特有の嫌悪感を誇張してしまっただけでして……。これもう駄目だな。女子に他の女子の悪口を書いてる時点で俺の敗訴だ。

 

「悪口言ってごめんなさい!!」

 

 そこには男らしく、土下座をする高校二年生男子の姿があった。

 

 

 




まとまりがない
改稿するかもです。
陽乃にばれずに手紙をしていたことや、ペンネームなどは次回ということで……
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