比企谷八幡の人間観察譚   作:麒麟人間

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長らく更新が遅れてしまいました。
いやーいろはすの話を書くことは最初から決定してたんですが、他者の視点から見たいろはすってただ可愛いってだけの子なので、素のいろはすとのギャップや本当の魅力を語るにはどうすればいいか悩んだ結果、何度も書き直して試行錯誤しました。

正直いろはすの魅力の1割も表現できてない気がしますが、それでも良ければお楽しみ下さい。


会議室で部長たちを観察

放課後、いつもなら奉仕部でラノベでも読みながらゆっくりしている時間帯。俺は例によって一色に拉致され、生徒会の仕事を手伝わされている。

今日は部活動連盟との来年度の予算を決める会議なのだそうだ。

毎年自分の部の予算を少しでも多く獲得しようと話し合いは熾烈を極めるらしいので、手伝って欲しいと一色に泣きつかれてしまったのだ。

 

正直今回は俺が口を挟んで良い事ではないので裏方に徹しているのだが、いつまで経っても会議が終わる様子がない。

 

次第に、話し合いに熱を入れる部と、それほど予算にこだわりがない部で温度差が出てきて、冷めている部は端の方でダベりながら会議が終わるのを待っているだけとなった。

 

俺も、これ以上手伝える事がないので、彼らを見倣って背景と同化し、彼らの会話に耳を傾けながら、時間が過ぎるのを待つことにした。

 

 

 

落語部「早く終わんねーかなー。正直俺らの部って小物くらいにしか予算使わないから何とかやれてるし、もう帰りてーんだけどなー」

 

文芸部「だよね。でも生徒会長も大変だよね、部費減らされたくないからって、ただのクレーマーみたいな運動部連中に囲まれてさ」

 

落「助けてやりてーけど、俺たちみたいなヒョロい文化部が行っても睨み一発で竦み上がっちまうしな」

 

文「そうだね。生徒会長もよく折れずに張り合えるよね。先生もいるし、女の子相手に暴力振るったりはしないだろうけど、殆ど恫喝みたいに言いがかりを付けて予算を上げようとするゴツい男ども相手に一歩も引かないなんて」

 

落「一色ちゃん、一年で生徒会長とかすげーよな。めちゃめちゃ可愛いし、あんな子と付き合いてーよなー」

 

どうやら彼らは一色に興味深々のようだ。確かに見た目の可愛さだけで言えば校内でも上位に入る外見をしていると言っても過言ではないだろう。

 

文「あの無邪気な笑顔を見ちゃうと他の女子が霞んで見えちゃうよね。女の子っていうのはやっぱりああいう可愛げがないとね」

 

残念ながら、多分君が見た笑顔は無邪気どころか、頭に数匹猫を被ったあざとさの塊みたいな笑顔だろうけどね。

 

落「前に一度何人かで遊びに行った事あるんだけど、あの時一緒にいた男は全員一色ちゃん狙いだったくらいだからな。残念ながら全員玉砕したみたいだが」

 

文「いつもオシャレだし、あの子の隣を歩いているだけでも周りに対して優越感を感じるよね」

 

ここにいるのは各部活の部長ばかりなので一色から見ても手をだ……手を繋いでみたいと思うくらいのスペックを持った者が多いのだろう。2人とも一色と遊びに行った事はあるらしい。

 

落「でも最近はデートに誘っても断られるんだよな、多分生徒会に力を入れてるんだと思うけど」

 

文「そうなんだよね、最近生徒会長とデートした奴が居るって話聞かないよね。葉山くんとも距離を置いてるようだし、おそらく特定の男子と遊んだりは して無いんじゃないかな」

 

2人の会話に、ついこの間デートと称され、一色に連れ回された事を思い出してしまう。

まぁあれは葉山のための練習みたいなもんだからノーカウントか。

 

落「って事はここで粘ってOK貰えれば、他の奴らに差を付けられるわけか。ある意味勝負時って事だな」

 

文「まぁ簡単にはいかないけどね。そもそも上の学年の俺たちと生徒会長との接点が少ないから、会おうとしてもなかなか機会がないし」

 

落「生徒会や部活が終わってからじゃ時間も取れないしな。それにやっぱり生徒会って忙しいらしい」

 

その割にはあの子かなり頻繁に奉仕部に顔出しますけどね。もう何なんでしょうねあの子、ここ最近は最早準部員と呼べるほど自然に入り浸るようになってしまっている。

 

文「そうだ、ならいっそ、忙しくしてる生徒会長の仕事を手伝ってポイントを稼ぐっていうのはどうだろう。それなら一緒にいる時間も出来て一石二鳥じゃないかな」

 

落「それは魅力的だが、生徒会と関係ない俺たちがいきなり仕事を手伝うなんて言っても、門前払いがオチだろうな。大体、やった事もない俺たちに生徒会の仕事の手伝いなんて出来る訳ないだろ」

 

俺としては、君たちが一色の手伝いをしてくれれば、事ある毎に奉仕部に泣きついて来なくなるから大歓迎なんですが。

だが、俺たちも生徒会の経験がある訳ではないが、確かに一般の生徒がいきなり手伝える仕事なんて雑用くらいしかないだろうな。

 

文「いいアイディアだと思ったんだけどな。じゃあ重い荷物を運んでる所を、さり気なく荷物を持ってあげる……いや、まずそんな場面に遭遇しないと話にならないな」

 

落「じゃあ普段とのギャップを狙うのはどうだ? そんなに真面目そうでもない俺が、真剣に何かを訴えかける表情を見れば、一色ちゃんもときめいたりするんじゃねーかな!」

 

文「……僕は普段から真面目なつもりなんだけど」

 

落「なら逆にちょっとチャラい感じのキザなセリフとかで良いんじゃねーか? 女の子ってのは細かいオシャレに気づいて貰いたがるもんだし、そういう違いを気にしてやると喜ぶぞ」

 

なるほど、真面目系の文芸部くんとは違い、落語部くんはどうやら結構遊んでるタイプのようだ。やはり落語で鍛えた面白トークで場を盛り上げているのだろうか。

 

文「そ、そういうことをサラッと言うのは難しいかな。どうしても照れちゃうし、なんだか女たらしみたいに思われるのも嫌だな」

 

落「普段言わないからこそ効果的なんじゃないか。むしろちょっと興味無さげにしておいて、ふといつもと違うファッションとかを指摘して「ちゃんと見てる」アピールするとかな」

 

いやどんだけあざといアピールだよ。まぁそんな事を狙ってやったとしても、あざとさに一家言ある一色にはバレバレだと思うがな。

 

文「ううん、難しいな。それに、そこまで親しくなれてない俺たちが興味無さげに振舞ったら、アピールするとか以前に向こうに興味無くされそうだよ」

 

落「……確かに、一色ちゃんからデートに誘われてる訳でもなく、俺たちから誘っといてそんな態度だったら、間違いなく不評を買うな」

 

一色が自分からデートに誘うやつなんて葉山だけだろうから、最初から無理難題なんだよなぁ。

 

文「考えれば考えるほど、難易度が高いよね。やっぱり僕たちには高嶺の花なのかな」

 

落「まぁそこは最初から分かってた事だしな。これ以上考えてても良い案は浮かばないし、俺は当たって砕けるぜ!」

 

文「そうだね、話し合いも終わったみたいだし、俺、この会議が終わったら、生徒会長をデートに誘うよ」

 

落「お、そうくるか。どっちが上手くいっても恨みっこ無しだからな!」

 

ひどい死亡フラグを建てながら、2人は熱い友情を交わす。

 

 

 

そうこうしている間に会議は終了した。

結局、運動部連中は一色たち生徒会の提示した予算を引き上げることは出来なかったようだ。

もうお役目は終わった事だし、もう良いだろう。奉仕部に顔だけ出して帰ることにしよう。

 

いろは「あ、待ってください、せんぱ……」

 

文「あ、あの生徒会長!」

 

落「一色ちゃん、ちょっといいかな?」

 

いろは「あ、えと、文芸部さんと落語部さんの……えーと、予算に問題がありましたか? といっても、もう会議は終わってますけど」

 

文「あ、いや、そうじゃなくて……」

 

そんなやり取りが聞こえた気がしたが、俺には関係ないので、さっさと退散する事にした。

 

 

 

ガコン!

 

奉仕部に行く前に糖分を摂取しようと、自販機でマッカンを購入する。

今回の依頼である部活動予算決議では、予め各部活が付けてきそうなクレームの予想と、それを論破するための正論の用意や下調べが俺の仕事だった。

 

なので、一応不足の事態に備えて奉仕部部長代理という事で会議に出て控えていたが、実際には予想外の展開は起こらず、連中のクレームを一色がのらりくらりと反論するだけの時間となっていた。

 

おそらく、各部活の部長たちも、生徒会長とはいえ、か弱い1年女子である一色を舐めて、少し脅せば簡単に譲歩すると踏んでいたのだろう。部長以外にも強面な連中を連れている部があったことからもそれは伺える。

 

しかし、そこは歴戦の猛者である一色のこと、大男たち相手にも一歩も引かず、完璧な作り笑顔を貼り付けたまま、淡々と正論をぶつけて論破していった。

 

そのおかげで会議中における俺の仕事は皆無だったから、俺の特技の一つ人間観察に励んでいた訳だが、やはりというべきか、一色もそれなりに人気があるんだな、と再確認した。

 

ここ最近は生徒会長としてしっかりしてきたのか、少しずつ奉仕部に頼ってくることも減ってきたし、奉仕部に入り浸っている割には、きっちり仕事はこなしているようだ。

 

一色の本性を知らぬ男子生徒からすれば、一年で生徒会長になるほど優秀な上、外見も良いとなれば、さぞかし優良物件に見えるのだろう。

 

俺の中でも一色という存在は、あざといだけで可愛くない劣化版小町という印象でいたが、最近は、まぁ、なに? ちょっとは可愛げみたいなものを感じる事も無くはない、かも知れない。

 

自分の考えを打ち消そうとマッカンを一気に飲み干そうとした所に、背後から突然声を掛けられた。

 

いろは「あー! こんな所に居たんですね、探しましたよ、先輩」

 

八幡「ぶっ! げほっげほっ! い、一色か、急に話しかけんなよ、ぼっちは話しかけられる事に慣れてないから、いきなり声掛けられるとビックリしちゃうんだぞ」

 

いろは「何言ってるんですか? っていうか、先輩酷いじゃないですかー、わたしの事無視して帰っちゃうなんて」

 

八幡「いや、会議終わったし、俺がいる意味無いだろ。っていうか良いのか、一色?」

 

いろは「え、何がですか? もう仕事全部終わりですよね?」

 

八幡「いや知らんけど。さっきお前なんか誘われたりしてたんじゃねーの?」

 

いろは「あー、そうかもですねー。まぁ興味なかったんで、急いでるって言って最後まで聞かずに出てきちゃったんですけど」

 

哀れ文芸部くんと落語部くん。強く生きろよ!

 

いろは「あ、もしかしてヤキモチとか焼いたりしちゃいましたか? 先輩は心配性ですねー」

 

八幡「アホ、そんなんじゃない。ただ、アレだ、せっかく面倒な生徒会の仕事がひと段落ついたんだから、ちょっとくらい遊んでてもいいんじゃ無いかと思ってな」

 

なんだかんだ言って、今回1番しんどかったのが一色であることは間違いない。少しくらい羽を伸ばしても文句は言われないだろう。

 

いろは「まぁその辺りはおいおい。それより酷いじゃないですか。笑顔で論破してるだけで良いって言うから我慢してたのに、全然終わらなかったじゃないですかー!」

 

八幡「何言ってるんだ、結局こっちの提示した条件そのままで会議を終わらせたんだ、上出来だ。もし向こうが強行策に出るなら俺も介入するつもりだったが、その心配もなかったしな」

 

いろは「……」

 

八幡「ん、どうした?」

 

いろは「……は! なんですか何があっても守ってやる宣言ですか正直かなりときめきましたけどそういうのは正式に付き合ってからだと思うのでまだ無理ですごめんなさい」

 

八幡「もう振られるのに慣れすぎて、逆に振られてないような気がしてきたわ。……あ」

 

まだ残っているマッカンを飲もうとしたが、そのマッカンは一色の手によって奪われてしまった。

 

八幡「おい?」

 

いろは「会議で疲れたので一口貰いますねー。……うぇ、何ですかこれ。ちょっと甘すぎじゃないですか?」

 

八幡「おい千葉のソウルドリンクをバカにすんなよ。ってか人の飲み物勝手に飲むんじゃねぇよ」

 

しかも俺が口つけてる奴を躊躇せずに飲むとか、さすがゆるふわビッチだ。そういうの勘違いしちゃうからやめてくれませんかね。

 

いろは「まぁいいじゃないですか。それより明日は土曜日ですし、10時に千葉駅に集合で良いですよね?」

 

八幡「は? 何の話だよ」

 

完全に聞き覚えのない話だったが、俺の反応に一色は不満そうに頬をふくらませる。

 

いろは「遊んでてもいいってさっきせんぱいが言ったんじゃないですかー。だから明日はいっぱい楽しませて貰いますからね」

 

八幡「いや、別に俺と遊びに行くとか言ってないし、誰か他の奴と行けよ。俺と行っても気晴らしにならんだろ」

 

いろは「でわでわ、明日よろしくでーす! あ、これもういらないのでお返ししますね」

 

八幡「あ、おい⁉︎」

 

一口飲んだだけのマッカンを押しつけながら、一色は走り去ってしまった。マジでこれどうすんだよ。

マッカン好きとしては中身を捨てるわけにも行かずに悶々としながら帰路につく羽目になってしまった。

 

 

 

その日飲んだマッカンの味は、練乳の甘さ以外にも、ほんの少しスパイスと、素敵な何かの味がしたような気がした。




という感じで、当初の予定よりも大分会話が多くなってしまいました。
でも仕方ないですよね。いろはすの本当の魅力は八幡ありきというか、八幡との掛け合いが1番輝いていると思うので。
あと、この2人の会話は書くのが楽しすぎて、勝手に文章が進んじゃってるので止められませんでした。
次で最後になる予定ですが、多分結構期間が空くと思われますので、適当にお待ちください。
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