空を辿る   作:Schrodinger

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第3話

 私立白糸台中学校麻雀部は、西東京における最強校として全国に名を馳せる存在である。数多くのプロを輩出してきたのも、その実力の証左である。当然、学校側も学校が全国に誇る部として、その活動を全面的に補佐している。部室は他のどの部よりも広く、レギュラーともなれば専用の練習部屋があるぐらいだ。豊音は校舎三階西端の―校舎東側が高等部で、西側が中等部らしい―麻雀部の部室に連れられた。角部屋であるために、二面にある窓から光が入る明るい部屋で、自動卓が6台も中央に設置され、麻雀部がどれほど白糸台において厚遇されているかがよく分かる。内5卓では、部員同士で麻雀が打たれている。戸の音に反応してこちらを向いた部員たちは、朱音を見てすぐさま挨拶をした。

 「「おはようございます、副部長!」」

 「ん、おはよう!今日は入学前だけど特待生の子連れてきたよ!」

 「い、岩手から来ました、姉帯豊音です」

 「おおーっ」「おっきい...」「本当に年下?」

 ざわつく部員たち。それを制すように朱音が部長はどこかと尋ねると、奥の部屋にいると言う。どうやら偶然にも、入学前の特待生がもう一人来ているらしい。そう、と朱音は返し、豊音に向かって部長に挨拶しに行くから付いてきて、と言い、部屋の奥の"特別練習室"と書かれた戸に向かって歩き始めた。豊音は少し部屋を見てボンヤリしていたが、直ぐに気を取り直して遅れないように急ぎ足で朱音に付いていった。

 

 特別練習室は、麻雀部のレギュラー専用の練習室である。中央に卓が1台置かれ、ソファやパソコン、テレビなどが完備されている。この部屋は部員たちの憧れであり、レギュラーの座を狙って部内では激しい競争が行われている。朱音と豊音が部屋に入ると、部屋には2人の人物がいた。一人は白糸台の制服を着て丸眼鏡をかけた、黒髪のサイドテールの少女で、もう一人は黒のパーカーに白のショートパンツと黒のニーソックスを穿いた少女で、髪は正面から見て左にはねのある小豆色のショートボブであった。身長は朱音より10cmほど低い。朱音たちをみて丸眼鏡の少女が口を開く。

 「朱音おっはー、その後ろの子は入学予定者の子?今、特待生の子を見つけたもんだから連れてきちゃった。あ、はじめまして。私はここの部長の雲林院麻友でっす、君、背が高いねえ。うらやましいなあー、うらやましいなあ。どこから来たの?好きなものはある?東京のどこに住んでいるのかな?」

 「部長、初めて会う人の前でマシンガントークやめてください、固まってます」

 「あっ、ごめん...」

 麻友のマシンガントークで固まっている豊音に朱音が、ほら、自己紹介、と促す。

 「岩手から来ました、姉帯豊音です。これからよろしくお願いします!」

 「おっ、君も特待生か!今年の特待生は2人と聞いているからこれで揃ったわけだねぇ!あ、そうだ!ほら、宮永さんも自己紹介!」

 それまで無言だった、黒のパーカーの少女に麻友が自己紹介を促す。どうやら彼女がもう一人の特待生の様だ。

 「長野から来ました、宮永照です」

 抑揚のない、どこかボンヤリとした口調。感情が読めない人だな、という第一印象を豊音は抱いた。

 「宮永照さん、か。私は向野朱音!ここの副部長!」

 朱音が照に対しての自己紹介をするのを見て、麻友が口を開いた。

 「うんにゃ、じゃあ丁度四人いるんだし、お互いを知るという事も兼ねて一回打ってみようかねぇ」

 

 急遽始まることになった、白糸台での初めての麻雀。席順は朱音、照、麻友、豊音の順番。親決めの結果、親は麻友になった。豊音は部長、副部長の強さを想像して身震いする傍ら、目の前の照を見つめた。自分と同じ特待生。しかも今年の特待生は自分と照の2人だけ。どれだけ強いのだろうか。彼女と仲良くできるだろうか。賽の目が回され、牌が配られる。悪くない配牌だ。じゃあまずは赤口から...と思ったその時、豊音は自らに視線が向けられている事に気が付いた。照がこちらを見ている。いや、睨んでいる?その気迫に豊音は息をのんだ。この麻雀は荒れる。この考えにたどり着くのは容易なことであった。そして、親の麻友が第一打を打つ。豊音にとっては忘れ難いものとなる、長い闘いが始まった。




キレを良くするために短めに。
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