夢中になりすぎて、本編の流れの確認を忘れそうになるから大変。
研究教室に籠もって機械を弄りながら発明品を作っていると、急に研究教室の扉が勢いよく『バンッ!』と音をたてて開いた。
…扉壊れるんで、もう少し優しく開けてくれないかな?
心でそんな注意をしながら道具をテーブルに置き、ゴーグルを外して一息つくと、アタシは椅子をクルリと反転させて来客の姿を確認した。
……すぐに目を逸らしたけど。
「入間さん…話しがあるって言ったっすね?」
なぜかお怒りの、天海蘭太郎がいらっしゃいました。
アタシ悪くない。
だって、何も言わないでそっちが体育館出て行ったし?
アタシは暫く体育館でボッチだったし?
思い出しライトの残骸モノクマに持っていかれ……これは関係ないか。
…忘れかけた事は、無理矢理除外する。
「き、聞くから!だから…一度外に出るぞっ!」
天海の体を反転させて外に出るよう、手で押しながら誘導する。
だってここじゃ発明品とか、材料がゴチャゴチャしててまともに話しなんてできないし。
無理矢理だったが、なんとか中庭まで連れて行くと「で?話しって?」と本題を切り出した。
忘れてた事に対するお説教は、受け付けない。
「そうっすね。まずは…あの後、図書室であった事っす」
腕を組ながらそう言った天海に、アタシは「はっ?」と素で聞き返した。
あの後って…どの後だ?
「ほら、最初の動機でモノクマと話した後…入間さんが寝落ちした後の事っす」
「な、なんかあったのかよ…?」
思いもしなかった話しに、思わず警戒してしまう。
そんなアタシに気づいた天海が「そんな変な事じゃないんで、怯えなくても大丈夫っすよ」と苦笑を浮かべた。
…別に怯えてないし。
「茶柱さんが入間さんを寄宿舎に連れて行って、百田君がゲームルームにいたメンバーに事情を説明している間に、赤松さんと最原君と話しをしてたんすよ…。で、その時に赤松さんに謝罪されたっす」
「待て待て!今の流れじゃ、何もわからねーぞ!?オレ様にもわかるように説明しろよ」
肝心な部分が省略されすぎだ!
話しが読めなくてわからん!
「はは…そりゃそうっすよね。…で、赤松さんが謝罪してきた理由なんすけど…あの図書室で首謀者を殺そうとしていたみたいっす」
「……へ?」
思わず、そんな間抜けな声が出た。
それはつまり…赤松は天海と最原に、自分がやった事を全部話していたって事でOK?
……マジで?
呆然とするアタシに構わず、天海は更に話しを続けていく。
「でも結局は、最原君達が入間さんに改造して貰ったカメラ…隠し扉の本棚付近のカメラのフラッシュが壊れてたり、凶器の砲丸の通り道である本棚の上を、入間さんが本を探して乱雑にした事もあって、未遂で終わったっんすよ」
…言葉が出て来ない。
何も言えない。
もうアタシ、黙って脳内で情報整理するのに精一杯だ。
「とりあえず、カメラとセンサーは最原君が持っておくことになって、砲丸は3人で倉庫に戻して一目につかない所に置いといたんで…それだけ伝えておこうと思ったっす」
「お、おう…?」
夜時間になったら砲丸回収しに行く気満々だった…。
うん。話してくれて良かった。
時間の無駄にならずに済んだしな。
これで、心置きなく発明に時間を費やす事ができる。
「とりあえず、話しはそれだけか?だったら、オレ様は発明の続きを…」
「いや、まだっすよ」
研究教室に戻ろうとしたら、引き止められた。
まだ何かあんの!?
「ちょっと…見て貰いたいものがあるっす」
そう言って天海が取り出したのは、モノパッドだった。
これ、まさか……ないないないない。
そうだ。生存者特典とかいうやつじゃないよな、うん。
ただのモノパッドで、何か不具合が出たんだな。
そうだ、そうに決まってる!
「なんだよ、故障でもしたのか?」
自分に言い聞かせるように笑いながら、天海からモノパッドを受け取ると電源を入れた。
モノパッドの画面が瞬時に明るくなり、所有者である天海の名前が画面に浮かぶ……事なく、アタシの期待を裏切るようにその文字が画面に浮かぶ。
生存者特典
……why?
顔から血の気が引いていくのを感じながら、アタシは恐る恐る天海を見上げた。
だけど、天海は何も言わずにアタシの手にあるモノパッドを操作すると、「これ、見て貰っていいっすか?」と言って黙り込んだ。
『コロシアイを終わらせるヒント』
そんなタイトルと共に、文章が続いていた。
ところがどっこい、どれだけ文章を読んでも全く内容が頭に入らない。
もう読んだ事にしよう。
後で冷静になった時に、また見せて貰えばいいや。
「……」
声を出したくても、上手く言葉にする事ができず空気が擦れるような音になる。
だから、代わりに『なんで?』と目で天海に訴えた。
なんでアタシに見せた。
もっと相応しいやつがいるだろう、最原とか。
「『キミが最初に思い出す記憶は超高校級狩りについてだ』…つまり、このモノパッドに書かれている事は真実って事っす」
違う。
アタシが言いたいのは、そっちじゃない。
「なんで…オレ様にコイツを見せるんだよ?」
やっと出てきた言葉は震えていて、ちゃんと言えたかどうか不安になる。
それをどう捉えたのかは知らないが、天海はモノパッドを取り上げると「で、次の話しなんすけど…」と何もなかったかのように笑いながら話しを切り替えた。
えっと…話しって、今ので最後じゃなかったのか?
ていうか、なんで答えない。
「ま、まだ何かあんのかよぉ…」
そろそろ、アタシのライフポイントが尽きそうなんだけど。
誰かヘルプミー。
「こっからは大した話しじゃないんで、そんな泣きそうな顔しなくても大丈夫っすよ」
「ホント…?だったら聞いてやる。さっさと言え!」
急に強気に出たせいか「切り替え早いっすね…」なんて言われたけれど、気にしない。
それよりも、アタシの気力的に早く済ませて。
「入間さんって、兄弟とかいるっすか?」
「兄弟ぃ…?」
いきなり何を聞いてくるんだ…みたいな目で、思わず天海を見てしまった。
いやホント、いきなりどうした?
「や…特に何でもないんすけど。で、どうなんすか?」
「兄貴がいるけど、それがどうかしたか?」
アタシ自身の兄を思い浮かべながら答えた。
妹に背を抜かされた兄貴って、見てて可愛いんだよな…。
ブラコンではないと思いたいけれど。
「俺にも妹がいるんで、いつか入間さんのお兄さんとは話し合ってみたいっすね…」
それはつまり、シスコントークでもするつもりか。
天変地異でも起こらない限り無理だから、諦める事をオススメする。
「ふーん…つまり、お前は『妹』とか『弟』ってやつに飢えてんのか?だったら、オレ様が『蘭太郎お兄ちゃん』って呼んでやろーか?」
冗談混じりで笑いながら適当に言ってみると、「いいんすか?」って真面目な顔で返された。
「えっ、マジかよ…」
「えっ、冗談だったんすか?」
絶句するしかなかった。
×××××
あの後、強制的に話しをなんとか終わらせて、アタシは休む間もなく研究教室に籠もって手を動かしていた。
周りが気になって一度手を止めて外を確認すると、もう真っ暗な暗闇が広がっており、夜時間のアナウンスもとっくに終わっている時間になっていた。
「こっちは完成。こいつは明日もう少し改良するか…」
散らばったままの道具や部品を片付け、出来たばかりの発明品は別に保管すると、アタシは昼間に部屋に設置しておいた布を敷いたハンモックに横になった。
…こうして見ると、研究教室が第2の個室みたいになってきてる。
ゴロリと寝返りをしながら、アタシは次のコロシアイ阻止方法を考える。
そろそろ、次の動機である大切な人が映った動機ビデオを配られる。
そこから起きてしまうコロシアイを止めるには、どう動くべきか…
頭の中で可能性を考える。
そうしている内に、アタシは眠りについていた。