王馬へのイライラを無理矢理封じ込める為に、アタシはモノクマーズの喧嘩に意識を向ける。
なんで、ほぼ初対面で役立たずって言われないとダメなんだよ?
…頑張ってなかった事にしよう。
「こうなったら、アタイが4匹まとめてブッ壊しちゃうんだから!」
「4匹って、ワイもターゲットやん!?」
「やんのか、コラァ!」
未だにエグイサルに乗ったまま喧嘩をするモノクマーズが、今だけ羨ましい。
こんな状況じゃなかったら、アタシも多分今頃は王馬と喧嘩してる。
『お止めなさい…愛しい我が子達よ』
アタシ達が見ることしかできなかったモノクマーズの喧嘩を、体育館に響いた姿無き声が制した。
その声が聞こえた瞬間、モノクマーズが一斉にエグイサルから降りてきて「お父ちゃん!?」と叫びながらキョロキョロしだす。
「お…お父ちゃん??」
誰かがそんな疑問を口にした瞬間、突然体育館の証明が全て落ちた。
真っ暗な暗闇で、自分の手すら見えない。
やがて、再び証明がついた事に安心する暇もなく、ステージから身体の半分が白と黒で分けられたクマ…モノクマが背中に羽根を生やして登場した。
まぁ、羽根はすぐにポロリと落ちたけれど。
「才囚学園の学園長!そう、モノクマだよ!オマエラ、どうもはじめまして!」
開口一番にそう言ったモノクマに、返事をする者などはいない。
「見える…僕には見えるヨ。あれは絶望と狂気が渦巻く不吉のヌイグルミ…」
“超高校級の民族学者”真宮寺が不気味に笑いながら、モノクマを見つめる。
「ねぇ…そもそもヌイグルミじゃなくて、ボクはモノクマなんだけど。そして、この才囚学園の学園長なんだよ!もっと敬って欲しいもんだね!」
ヌイグルミって言われた事に、モノクマは怒ったかのように顔を赤くして叫ぶ。
そんなモノクマを無視するかのように、天海が「けど…」と呟いた。
「気になるのは、さっきのコロシアイの話しっす。あれって、どういう意味っすか?」
天海の疑問に、モノクマは待ってましたとばかりに「うぷぷ…」と両手を口元にまでやり笑い声を上げる。
「コロシアイをして貰いたいんだよね。超高校級の才能を持つオマエラ同士でさ」
「殺し合い…?わ、私達で?」
「冗談はやめて下さい!」
驚きで目を丸くする赤松を見て、茶柱が冷や汗をかきながら叫ぶ。
対してモノクマは意外そうに首を傾げて「えっ?もしかして嫌なの?」なんて聞いてきた。
「オマエラも、学園を見て回ったならもう分かってるでしょ?学園の周辺は巨大な檻に囲まれて外に逃げられないって事も…エグイサルがいる限り、ボクらに逆らえないって事もさ。つまりオマエラの生殺与奪権は、このボクが握ってるんだよ」
「ふ、ふざけないでください!なんで仲間同士で殺し合うんですか!?」
「…仲間?」
何の事やらとばかりに、モノクマはわざとらしく首を傾げると狂気に満ちた笑みをアタシ達に向けた。
「オマエラは仲間同士なんかじゃないよ。互いの命を狙って殺し合う…敵同士なんだよ」
その一言で顔を青くしたアタシ達を見るモノクマは、楽しくて仕方がないって顔に出ていた。
「それより聞きてー事がある。俺らはどうやって殺し合えばいいんだ?武器でもくれるのか?」
モノクマの言った事になんとも思わなかったのか、“超高校級のテニスプレイヤー”の星がモノクマに問いかけた。
そんな星の態度に、百田が「何聞いてんだよ!」と怒鳴るも「連中から情報を聞き出すのが先だろ」言われると、渋々大人しくなった。
「武器なんてあげないよ?この学園で行われるコロシアイは…知的エンターテイメントなのです!そう……学級裁判によるコロシアイなんだよ!」
アタシから、簡単に学級裁判についての説明をしようと思う。
校則には、殺人を犯すと学園から卒業できるというルールが存在していて、それは誰にもバレていない事で初めて成立できるモノだ。
それがちゃんとできているのか…それを立証するシステムが学級裁判だ。
殺人を行ったクロと、それ以外のシロによる命がけの裁判。
議論の最後にする投票でクロを指摘し、そのクロが正しければ指摘されたクロがおしおきされ、不正解の場合クロ以外のシロ全員がおしおきされる。
因みに、おしおきっていうのは処刑をさす。
「まぁ…かったるい説明はこれくらいにして----ワックワクでドッキドキなコロシアイ新学期を始めましょうかー!お好きな殺し方で、お好きな相手を、お好きに殺してくださーい!」
これから起こるであろう殺し合いが楽しみなのか、モノクマが豪快に笑う。
「あんたに何て言われようと…私達はやらないよ」
そんなに大きな声ではなかったけれど、赤松の声はこの場にハッキリと聞こえた。
モノクマも笑うのを止めて、ジッと赤松を見ている。
「コロシアイなんて絶対にやらない!あなたの思い通りにはさせないから!」
「そういう反抗は大歓迎だよ。嫌がっているオマエラをその気にさせるのが、学園長であるボクの仕事だしね。アーッハッハッハッハ!」
モノクマが高笑いを始めると、それに釣られるように「ぎゃはははは!」とモノクマーズも笑いだす。
「全部止めてやる…」
誰にも聞こえないぐらいの声で、アタシは呟いた。
憑依がなんだ。
今のアタシは“超高校級の発明家”入間美兎だ。
だったら、自分の植え付けられた才能を信じる。
きつく握り締めた拳の爪が痛いとかも気にしてられない。
これから起こる犯行の方法も、トリックも、タイミングも、犯人もアタシには分かるんだ。
だったら、全力で止めてやる。
原作なんて関係ない。
アタシは自分のやりたいようにしてやる。
このコロシアイを……アタシが望む形で終わらせてやる!
やっとプロローグ終わった…。
次から、チャプター1に入ります。