いや、紅鮭団で赤松さんの愛の鍵イベントを解放しようと奮闘していたら……春川→百田→アンジー→アンジー→入間→王馬→真宮寺→春川→東条→真宮寺→真宮寺→真宮寺→真宮寺→赤松って感じになりまして……。
なぁにこれぇ…
何度も怖い思いをさせてごめんよ…最原君………
体育館からモノクマとモノクマーズが去った後、みんなが持っているモノパットから校則が追加された事を知らせる電子音が鳴った。
アタシもモノパッドを制服のポケットから取り出して、みんなと同じように校則を再確認する。
いや、だって覚えてないやつとかあったら嫌だし。
才囚学園校則という文字から、以下の文が順番に流れていく。
・才囚学園での共同生活に期限はありません
・学園内で殺人が起きた場合、全員参加による学級裁判が行われます
・学級裁判で正しいクロが指摘できれば、殺人を犯したクロだけがおしおきされます
・学級裁判で正しいクロを指摘できなければ、クロ以外の生徒であるシロがおしおきされます
・クロが勝利した場合は才囚学園から卒業し、外の世界へ出ることができます
・シロが勝ち続けた場合、最後の2人になった時点でコロシアイは終了です
・夜10時から朝8時までの夜時間は、食堂と体育館が封鎖されます
・才囚学園学園長であるモノクマへの暴力は固く禁じられています
・モノクマが殺人に関与する事はありません
・モノパッドは貴重品なので壊さないでください
・死体発見アナウンスは3人以上の生徒が死体を発見すると流れます
・才囚学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません
・校則違反を犯した生徒は、エグイサルによって処分されます
改めて見ると、本当によくできた校則だと思う。
そんな校則に疑問を持ったのか、アンジーが「この6番目の校則って、どういう意味ー?」と全員に問いかけた。
6番目の校則…『シロが勝ち続けた場合、最後の2人になった時点でコロシアイは終了です』ってやつか。
「…残り2人になったら、裁判が成り立たないからじゃないかな」
「なるなるー。終一って頭いいねー。にゃははははー」
疑問が解けてスッキリした顔でアンジーが笑い、それとは逆に「ふ、ふざけんな…」と百田が怒りで声を震わす。
「何がコロシアイだ…何が校則だ…ふざけんなっ!誰がこんなモンに従うかってんだ!」
そう叫ぶや否や、百田はモノパッドを持つ手を大きく振り上げ、その勢いのまま床に叩きつけようとした。
「…おっと、ダメっすよ」
そう言って、近くにいた天海が百田の腕を掴んで止めさせた。
止められた事に対して百田が睨みつけるが、天海はそれに屈する事もなく自分のモノパッドを操作して校則を百田に見せる。
「モノパッドは壊したらいけないって、校則にも書いてあるっす」
「校則なんて知るかっ!オレはこんなふざけた遊びに付き合う気はねー!」
「いや、これは遊びなんかじゃねーっす。この状況で逆らうのは無謀っす」
天海の言っている事は正論なのだが、百田は認めたくないのか再び口を開き文句を言おうとするも…
「もー!ケンカしてる場合じゃなーい!!」
おそらく本日聞いた中の一番の大声で赤松が叫んだ事で、2人の言い争いはピタリと止まった。
…止まったのはいいんだけど、アタシ耳がキーンってしてる。
「こういう時こそ、みんなで協力しないと……って、ホントは言葉で言うよりピアノで弾いた方が早いんだけどね。ほら、ショパンの『軍隊ポロネーズ』だよ。一気に結束力が高まると思うんだよね」
赤松には悪いとは思うんだけれど……クラシックとかベートーベンの『運命』しかアタシは知らないから、そんな例えをされてもなんの反応もできない。
「ともかくさ、みんなで協力して、もう一度出口を探してみない?」
「でも…あの大きい壁のどこを探しても、扉も穴も開いてなかったよ?」
「だったら、ボクらはどうやってこの壁の内側に入ってきたのですか?」
白銀が壁には何もなかった事を告げるも、キーボがすぐに疑問を抱いて思った事をそのまま口にした。
しばらく考えるように赤松は腕を組んで唸っていたが、やがて閃いたかのように手を合わせた。
「きっと、どこかに抜け穴があるんだよ!それをみんなで探せばいいんだよ!ここに私達を閉じ込めた誰かさんは、私達を争わせたいみたいだけど…そうはいかないって事を見せてやろうよ!私達はみんなで協力し合うんだよ!」
そう力強くそう言った赤松だったが、周りが何も言わずに静かになっている事に焦り出したのか「私、変な事言った…?」とアタシ達に向けて不安そうな顔をしだした。
「んなわけ、ねーだろ!だから、そんな顔をオレ様の前ですんな!」
ビシリと赤松に指差しながら言ってみると、アタシの言い方が悪かったのか、さっきよりも困り顔にさせてしまった。
うーん…難しい。
「言い方はあれだけど、入間さんの言う通りよ。貴女が真っ直ぐな正論を言うから、もう他に言う事がなくなっただけよ」
東条のフォローも入り、赤松の顔に徐々に笑顔が戻る。
うん…素直になれないこの性格が悪いだけか。
もう少し言い方を考えないとな…。
「じゃあ、さっそくみんなで手分けして、出口を探しに行くぞー!おー!」
アンジーが身体を左右に動かしながら、一人で見事なコール&レスポンスをして笑う。
そうして手分けしようという空気の中で、「あっ、ちょっと待って!」とゴン太がそれを止めた。
何事だとばかりにゴン太に視線が集まる中、「関係ないかもしれないけど…」と前置きをしてゴン太が話し始める。
「さっき…校舎裏の草むらでマンホールを見つけたんだ」
「マンホール?」
あまりピンと来ないのか、赤松が目を丸くして考む。
「それだ!そのマンホールの中を確認すんぞ!出口に通じているかもしれねぇ!!でかしたぞ、ゴン太!」
マンホールの存在をみんなに示したゴン太を褒めている百田には悪いけれど、アタシは無事に出口までたどり着ける自信がないから、できれば止めておきたい。
けど、そんな事は口が裂けても言えない。
「校舎の裏という事は…裏庭のボイラーがある所ね?獄原君、案内をお願い」
「うん。みんな、ゴン太について来て!」
こうして、アタシ達は獄原君を先頭に体育館を飛び出して裏庭のボイラー室まで走った。
×××××
ボイラー室に全員入ると、みんなの視線はすぐに草むらの中に隠れるように存在しているマンホールに注がれた。
「うわー、このマンホールのフタって重そうー。持ち上がるのー?」
「ボクがやってみましょうか」
そう言ってキーボがマンホールのフタに手をかけ、渾身の力で持ち上げようとするも、フタはビクともしなかった。
「スミマセン、無理です」
「だったら、ゴン太に任せてよ。さっき見た時は持ち上がったから、多分大丈夫だと思うよ」
そう言って、今度はゴン太がマンホールのフタに手をかけ、そのまま軽々と片手でマンホールのフタを持ち上げた。
…一体、どんな腕力してんのこの人。
そしてそのまま、ゴミ箱にティッシュを捨てるかのようにポイッとマンホールのフタを投げた。
ねぇ、本当にどんな腕力してんの?
「な、なんか不気味だね…ここに入るの?」
マンホールの中を覗いた白銀が不安げに呟く。
アタシもその隣で中を覗いて見る。
マンホールの中は薄暗くてよく見えないけれど、埃っぽくて、ひんやりとした空気が漂っていた。
「…………行こう」
自分を叱咤するように胸の前で拳を握りしめると、アタシは足を踏み外さないようにマンホールの梯子を降りていった。
それに続くように、ゆっくりと他の人も梯子を降りてくる。
そのまま、みんなで長い梯子をしばらく降りると、やがて開けた場所へとたどり着いた。
「広い工業用の通路みたいね…。昔ここに工場でも建てられていたんじゃないかしら」
足を踏み入れた瞬間、東条がそんな事を呟いた。
その言葉の通りで、ここはマンホールの中とは思えない造りになっていた。
「それより…あれを見るっす」
そう言って天海が指差した先には、『出口』と書かれた立て札があった。
その先には長いトンネルが続いている。
「わざわざ出口なんて書いて…怪しくないですか?」
茶柱が本当に出口があるのか疑っていると、「そりゃあ、ちょっと危ないかもしれないけれど…」と赤松が自信あり気に笑いながら続ける。
「これだけ『超高校級』が揃っているんだし…みんなで協力し合えば、絶対になんとかなるはずだって!」
なんとかなる、大丈夫……そんな思いを胸に抱いてみんながトンネルの中に入っていく中で、アタシはトンネルの中にあるであろう仕掛けの事を考えてしまい、憂鬱な気分になっていた。
お願いだから、誰か今すぐ仕掛けを無力化させるハンマー作って………てか、作るのアタシじゃん。