(分かりづらかったり、見にくかったりしたらすみません)
モノクマのいない無人の映像がモニターに映し出された事で、もう朝なのか…と思いながら、アタシはつけていたゴーグルを頭の方へかけ直した。
エグイサルの簡単な改造も終わった事で気が抜けたのか、眠気が襲ってくる。
ふわぁ…と欠伸をすると、目をキラキラ輝かせた王馬がアタシの側までやってきた。
「ねぇねぇ、入間ちゃん!エグイサルにどんな改造したの?空を飛ぶようにしたの?それとも、穴を掘るようになったの?必殺技とか出るの!?」
「ちょ…オレ様今から寝るから。起きたら説明してやるから…」
これ以上つきまとわれないように荷物を持ちながら格納庫の奥の扉を開けると、不満そうな声を出す王馬から逃げるように扉を閉めて、その場でズルズルと座り込む。
っていうかさ、ほぼ無意識で動いてたから今になって気づいたんだけどさ…
「ここ、格納庫の奥のトイレじゃん…」
トイレで寝ようとするとか、なんなの。
これ…後から絶対に弄られるやつじゃない?
主に王馬に。
頭では今から向こうに戻って寝るスペースを捕獲しようかと考えるけれど、睡魔が酷くて思うように身体は動かない。
……もういいや。
もう朝だというのに、こんな場所でだけど…おやすみ。
誰かの足音が聞こえて、夢の中から意識が現実に引き戻される。
ソロソロと動きながら、アタシはトイレに設置されている小窓の方へ近づいて、誰が彷徨いているんだろうと確認がてら覗き込む。
「「うわぁっ!?」」
すると、ちょうどこちらを覗きにきていた最原と同時に驚きの声を上げたけれど。
「な、なんだよぉ…。驚かすんじゃねーよ!」
バクバクと五月蝿い心臓を落ち着かせながら、できるだけ小声で文句を言ってみる。
下っ端魂全開(?)な最原は、アタシの文句に申し訳なさそうに「ご、ごめん…」とすぐに謝ってきた。
いや、多分アタシの方がごめんって言うべきなんだけどな。
「つーか、こんな所で何してるんだよ?」
「入間さんを助けに来たんだよ」
最原にそう言われて、アタシは小窓から確認できる程度で周りを確認する。
最原以外は誰もいないし、何かを持っているようでもなさそうだけど?
「はぁ?お前1人で何ができるんだよ??」
「今日は下見だよ。明日の朝、みんなで助けに行くから…」
窓の近くの壁に凭れながら、「そっか…」とアタシは最原をジロジロと観察する。
何かを決意したような、そんな強い瞳をしている。
「…落ち込むのは、止めたのかよ?」
「うん。百田君や春川さん達のおかげだよ。確かに一度は絶望に押しつぶされて、参っていたけど……だけど、思い出したんだ。僕達が沢山の人達の希望を背負っていた事を」
絶望と希望…ねぇ。
詳しい事は分からないけれど「思い出しライトでも使ったのかよ?」って聞いてみれば、肯定する返事が返ってきた。
となると…記憶の内容もゲーム通りなのかな?
もし、アタシが王馬と春川の意見を無視してまで首謀者役をしていたら…なんて考えをして、今更バカげているなと頭に浮かんだ妄想を振り払う。
例えそうだとしても、カルト集団のリーダーが王馬からアタシに変わるだけで、内容までは大して変わらないんだろう。
格納庫への扉を、一度だけチラリと見る。
王馬が入ってくる気配は無さそうだけど、だからといってこのまま最原とダラダラ話し続ける訳にもいかない。
名残惜しいけれど、最原にはみんなの所に帰ってもらおう。
「そろそろ、戻った方がいいんじゃねーの?王馬にバレたら厄介だぜ?」
「うん…。またね、入間さん」
小窓から最原が離れ、その姿が見えなくなるとアタシは格納庫の方に行く為に、扉を開ける。
すると、扉にピッタリくっついていた王馬が転がり込んできた。
おーい、盗み聞きかよ。
呆れたように王馬を見下ろしていると、「さっき話してたのって、最原ちゃん?」って聞かれた。
どっから聞いてたのやら。
前のコンピュータールームの時みたいに、最初から聞いてましたーって感じでも可笑しくない気がしてきた。
「そうだけど、それがどうした?」ってアタシが聞いてみると、王馬は急に目に涙を溜めて嗚咽を洩らす。
えっ、何事。
「入間ちゃん…浮気するなんて、あんまりだよっ!」
「意味不明な嘘つくなよ!?」
ふざけるにも、これはないと思うわ。
そもそも浮気って、誰と誰がだよ!?
×××××
充電したエレクトハンマーを持って、寄宿舎から集合場所である食堂に向かいながら、あのクソヤローのせいで今頃苦労しているだろう入間に同情した。
入間は大丈夫だと言っていたけれど、あんな勝手な事をした王馬が本当に首謀者じゃないという証拠もない。
だけど入間と王馬が一緒に居るという時に、食堂で見つかった思い出しライト。
あの時の入間が言っていた思い出しライトの本当の性能と、首謀者がするであろう行動を思い出す。
それらを合わせて考えると…不本意だけど、王馬は首謀者じゃないっていう事になるんだと思う。
だけど、昨日使った思い出しライトでの記憶と入間の話し。
それらを分けて考えるのは、かなり難しい。
笑いながら「春川なら、大丈夫だろ!」なんて言っていた入間に、一言言ってやりたい。
全然大丈夫じゃないんだけど。
頭を押さえながら食堂に入ってみると、珍しい事に私が最後だったみたいで、百田に「やっときたな、ハルマキ!寝坊したか?」なんて笑顔で言われた。
こっちの苦労もしらないで…まぁ、それが百田の良い所なのかもしれないけど。
「別に寝坊なんてしてないし、必要な物を確認してたら遅れただけ」
いつもなら赤松か最原のどっちかが最後に来るのに、珍しい事もあるんだ…って思いながら、私はポケットから入間が造った手榴弾型のエレクトボムを取り出す。
そういえば、どうやって王馬が首謀者じゃないって説明するつもりなんだろう。
本当なら、入間じゃない別の誰かが格納庫の奥に閉じ込められる予定だったんだし、なんだか嫌な予感しかしない。
…それでも、あの2人なら何か考えてそうだけど。
「それじゃあ、行こうか。みんな、エグイサルには気をつけて格納庫を目指そう」
昨日、下見として格納庫に行ったという最原の掛け声で、私達は食堂から飛び出した。
サイバーな中庭を、できるだけ数人で固まりながら格納庫を目指す。
道中で見かけた、動かない4体のエグイサルを不思議に思いながらも格納庫のシャッターの近くまで辿り着くと、百田が全員いるかどうかの確認をしていった。
シャッターの真上にあるセンサーのせいで、これ以上近づく事はできないけれど、エレクトボムを使えば警報センサーは無効となる。
その後は、操作パネルをエレクトハンマーで叩いて電子バリアを解除、中に侵入…暗殺の仕事をする前のように、自分のやるべき事を脳内でシュミレーションしてると、百田の確認は終わっていたみたいで私に視線が集まってた。
「春川さん、お願い」
「言われなくても分かってるし、失敗する事はない」
エレクトボムを持つ手に、力が篭もる。
チャンスは1回だけ。
「その発明品、昨日の話しでは有効時間は1時間で、有効範囲は50メートル…だったわね?」
確認してきた東条に、黙ったまま頷く。
入間曰わく、本来のエレクトボムは有効時間が2時間らしいけれど、それでも十分な時間だ。
「中にいる王馬クンのリモコンが使えなくなれば、エグイサルにも隙が生まれるはずです」
「王馬君がエグイサルに乗り込みそうになったら、ゴン太が抑えるよ!」
道中で見たエグイサルは4体。
もう1体は、格納庫の中に健在したまま。
まぁ、エグイサルは使ってくる事はないと思うけれど念の為という事で、何人かはエレクトハンマーを起動させた。
「じゃあ…いくよ」
エレクトボムの起動スイッチを入れて、シャッターの前まで投げる。
これで、警報が鳴る事はない。
茶柱が操作パネルをエレクトハンマーで叩いた事でシャッターの電子バリアも解除された。
シャッターを開けて、格納庫に入り込んでいく。
けど、格納庫に入った瞬間…思わず足を止めた。
しかも、足を止めたのは私だけじゃない。
全員だ。
「………」
「……え?」
視線が、ある一点に集まる。
こんな事になるなんて、聞いてないっ。
『ピンポンパンポーン』
聞いた事のないアナウンスが流れた。
モニターに、暫く見かけなかったモノクマが映る。
『うぷぷ…うぷぷぷぷぷぷ……死体が発見されましたー!』
困惑・混乱・動揺・錯乱。
グルグルと頭の中で、それらが混ざる。
大量の血が流れたプレス機が、絶望として私達の前にそびえ立っていた。