今回の視点は、最原君です。
「嘘…だよね?こんなの…」
顔を真っ青にした赤松さんが血だまりと化したプレス機を見ながら、今にも消えそうな声でそう言った。
僕だって、こんなの信じたくない。
だけど……
「さっきのモノクマのアナウンス…あのプレス機の下で、誰か死んでるの?」
誰かって…そんなの、格納庫に居た王馬君と入間さん。
2人だけだ。
「王馬か入間のどっちかが、死んだって事かよ!?」
拳を壁に力強く叩きつけながら、百田君が「チクショウ!」と大きな声で叫ぶ。
なんだかんだで、百田君はよく王馬君の嘘の被害に合っていたから話す事も多かったし、入間さんには病気を治す薬を貰ったという借りがある。
それなのに、こんな事になるなんて…思いもしなかった。
「うぷぷ…すべては学級裁判で明らかにしてください。だって、それがコロシアイのルールだから!という訳で、やっとコロシアイが起きたね!モノクマファイルを配っておきまーす!」
重い空気の中で、楽しそうなモノクマの声が響く。
「モノクマ…ファイル?」
プレス機を呆然と見ていた春川さんが、ゆっくりとモノクマの方に顔を向けた。
殺気がヒシヒシと、モノクマに向けられる。
「そう。ほら、オマエラって捜査に関しては素人だから、これを見たらバッチリってわけ。それじゃ、捜査を頑張ってくださーい!」
モノパッドから確認できるらしいモノクマファイルの説明をするや、モノクマは僕達の前から姿を消した。
「コロシアイが起きて…モノクマが動いているっていう事は、首謀者の王馬さんが生きているって事になりますよね?」
「じゃったら、あそこで死んでおるのは入間という事か…!?」
茶柱さんと夢野さんが『気づきたくなかった…』みたいな顔をしながら、話していた。
そんな中で、何かに気づいた星君が僕達に「だったらよ…」と辺りをキョロキョロしながら話し出した。
「犯人が王馬だとしたら、あいつはどこに行ったんだ?」
「もしかしたら、現場であるここから離れている可能性があるネ…」
「でしたら、手分けして探しましょう!」
今にも飛び出して行きそうなキーボ君を「そんな事してる暇はないと思うけど」と、春川さんが止めた。
…確かに、モノクマが捜査の時間をどれだけくれるのか分からないんだし、王馬君の捜索に時間を削る訳にはいかない。
それに、入間さんが死んだと決まった訳でもないんだ。
真実を暴くのは恐い…だけど、僕達の命がかかっているんだ。
だから、僕は真相を見つけ出す。
超高校級の探偵として…!
「みんな、調べよう。ここで何が起きたのかを」
「よく言ったぞ、終一!早速やってやろーぜ!」
「うん。私も頑張るよ!」
百田君と赤松さんの後押しもあり、みんなが一斉にモノクマファイルを確認したり、格納庫内を調べていく。
僕も、やれる事はやらないとな…。
まずは、モノクマファイルの確認からしていこう。
『死体発見現場となったのは、エグイサルの格納庫…被害者はプレス機で押し潰されている為、身元は不明…』
…これだけ?
「これじゃあ、何も分かっていないのと同じっすよ…」
同じようにモノクマファイルを確認していた天海君が、頭を抱え込みながら呟く。
それには、僕も同意だ。
この被害者の身元が分からないって、どういう事なんだろう?
被害者が分からないなんて、そんな事あるのか?
まさか…モノクマは被害者を知らないのか?
いや、そんなまさか…ね。
「最原君、どう?何か気づいた事とかある?」
モノクマファイルを一通り読み終えたらしい赤松さんが、僕の意見を聞いてくる。
気づいた事…か。
「ううん、今はまだ何も。だけど、被害者が不明って事が気になるな」
「さすが最原ちゃん!モノクマが被害者が分からないからって不明にした事に気づくなんて、流石だね!」
「えっ、モノクマが分からない事なんてあるの!?……って、え?」
赤松さんが隣で固まった。
僕だって、一瞬何が起きたのか分からなかった。
今、赤松さんの前に…誰が喋っていたんだ?
「赤松さん…今……」
王馬君の声がしなかった?と確認しようとしたら、また別の声が聞こえてきた。
「つーか、ここに死体なんかあったか?オレ様達はそんなの見てねーぞ?ていうか、見たくないよぉ…」
……まただ。
でも、今のは王馬君じゃない。
入間さんの声だ。
2人の声が聞こえるなんて、僕の耳は正常だろうか?
「さ、最原君、後ろに…」
ゴン太君が僕と赤松さんの方を指差す。
いや、今の言葉からすれば、正確には僕達の後ろだ。
よく見れば、みんなが僕達の後ろの方を見て目を丸くしていた。
百田君だけは、なぜか震えていたけど。
一度、赤松さんと目を合わせてから僕は後ろを振り返った。
何か言うべきなんだろうけれど、言葉が出なかった。
「あり?みんなして驚いたような顔してどうしたの?」
「王馬の顔に変なのついてるから、それ見て吃驚してるだけだろ?」
「入間ちゃん、つまんない嘘は止めなよ」
僕達の心境なんて知りもしないで、いつも通りに談笑している王馬君と入間さんの姿があった。
「で……出たああああぁぁあぁぁぁぁ!!!!」
春川さんにしがみつきながら、百田君が絶叫する。
あまりの声の大きさに、思わず僕は耳を押さえた。
も、百田君…いきなりどうしたんだ?
「どっちだ!?どっちかが幽霊なのか!?ふふふふざけんじゃねーぞ!」
「…ちょ、殺されたいの!?」
百田君の行動の理由に気づき、僕は改めて王馬君と入間さんに目を向けた。
一瞬、百田君の方から鈍い音がしたけれど…僕は何も見てない。
「あーあ、百田ちゃん春川ちゃんに殴られてやんのー」
王馬君の煽りに、百田君は「うぐっ…」と唸り声で返す。
春川さん結構キツくやっなんだな…。
「えっ、待って、どういう事!?なんで2人とも無事なのさ!?」
格納庫から出て行ったはずのモノクマが戻ってきたと思えば、2人に詰め寄っていた。
あれ……何かおかしいぞ。
「無事も何も…オレと入間ちゃんは遊んでただけだよ?」
「だよなー。つーか、死体って何?全員いるじゃねーか」
何を言っているんだとばかりに、2人はうんざりしたような顔でモノクマに答えた。
やっぱりおかしい…どうして、首謀者の王馬君がやっている事をモノクマは知らないんだ?
なんで…誰も死んでいないのに死体発見のアナウンスを流したんだ?
「じゃあ、あのプレス機はなんなのさ!?ご丁寧に動かないように電源コードまで切って!」
頭の中で情報を整理しながら、僕達はモノクマと王馬君、入間さんの話しを黙って聞いていく。
「あぁ…プレス機?あれで潰されているのはな……オレ様の発明品なんだぜ!いきなり潰すとか酷いよぉ…」
「えー、いいじゃん!あんな輸血するだけの発明品なんて、東条ちゃんがいたら必要ないんだしさー」
プレス機の血だまりの正体は、入間さんの発明品だったのか…。
百田君もそれを聞いて落ち着いたのか、さっきまでの怯え方が嘘だったかのように「そうだと思ってたぜ…」と立ち直っていた。
「えっ、待って?それじゃあ、つまり……」
「モノクマが勝手に勘違いしたってわけだー」
困った顔をしながら呟いた白銀さんに続くように、アンジーさんがいつもの笑顔で真相を告げた。
やっぱり…そうなるんだよな。
「待ってちょうだい。どうしてモノクマは勘違いなんてしたのかしら?首謀者は王馬君なんでしょう?」
「あぁ…首謀者っていうのは、オレの嘘だよ。だって、それがオレと入間ちゃんと春川ちゃんの3人で作った作戦なんだから」
東条さんの質問に答えた王馬君の言葉に、僕達は更に衝撃を受けた。
王馬君が首謀者だという事は嘘?
入間さんと春川さんも含めた、3人で作った作戦?
一体、何の為の?
「待ってください!だったら、王馬君が絶望の残党という事は、どう説明するんですか!?」
「ぜつぼーのざんとう?何ソレ?」
何も知らないとキーボ君に返す王馬君は、嘘をついているようには見えない。
何がどうなっているのか、分からなくなってきた。
「3人の作戦っていうのが少し気になるんだけど…誰か説明してくれるかナ?」
真宮寺君が王馬君、春川さん、入間さんの3人を見て、目を細める。
確かに…その作戦っていうのが何なのか知っておいた方がいい。
「プログラム世界から戻ってすぐに、入間が私に話しがあるって声をかけてきたんだ」
ポツリと、春川さんが話しだした。
プログラム世界の後となると…何日か前か。
「で、それをたまたま知ったオレは盗み聞きしてやろーって思ってたんだけど、2人にバレちゃってさー。まぁ、結局はオレも混ぜてもらう事になったんだけどね!」
…王馬君は、入間さんに呼ばれた訳じゃなかったのか。
だけど、入間さんの話しって?
「入間が私に話したのは『首謀者を乗っ取る為に協力して欲しい』って事だった」
「でもその偽の首謀者役はオレの方が適任だから、変わってもらったんだよねー。オレも同じ事考えてたから調度良いと思ってさ」
入間さんが、首謀者を乗っ取ろうとしていた?
でも、実際に行動したのは王馬君で…。
さっきから何も言わないで、エグイサルを見ている入間さんに目を向ける。
いや、だとしても…やっぱりおかしい!
「だったら、僕達が思い出しライトで思い出した『王馬君が絶望の残党』っていうのは、どうなるんだ!?」
「あぁ、それ?」
入間さんが僕達1人1人を見ながら、やっと話しだした。
「発明家として言わせてもらうけど、思い出しライトは記憶を思い出す機械じゃねー。デタラメの記憶を忘れた記憶と思わせるような、ヤベー機械だ」
告げられたのは、思い出したもの全てを否定する言葉だった。
僕達が思い出しライトで思い出した記憶は、全てデタラメ?
「あっ、勿論これはオレと春川ちゃんは前もって聞いてた事だよ」
2人が何時、入間さんからそんな事を聞かされたのか。
考えなくても分かる。
3人の考えた作戦について、話している時だ。
「それと今の話しにもなるんだけど、モノクマがオレらの作戦を知らない事と、コロシアイが起きたって勘違いしちゃったのはエレクトボムを使ったせいだよ。入間ちゃんの発明品なんだけど…みんなは効果を知ってるよね?だから説明を省いちゃうけど、モノクマは何らかの方法でオレらを監視できるらしくてさー。本当に参っちゃうよね」
もしかして…3人が考えていた作戦って!
「まさか…モノクマと本物の首謀者を騙す為にこんな事を?本物の首謀者が自分達の嘘に乗るように…少しでも首謀者を追い詰める為に、嘘の首謀者を演じてたのか?」
導き出した考えを3人に投げる。
だって、他に考えられないんだ。
これが…嘘で作られた事件の全てだ。
格納庫に居た王馬君と入間さん。
この2人と僕達と一緒にいた春川さんは、ある作戦の元で行動を起こしていた。
それは首謀者を追い詰めて、その正体に少しでも近づく事。
モノクマにも気づかれないように、入間さんの発明品であるエレクトボムを使って、3人しか知らない秘密の作戦を作った。
首謀者の乗っ取り…僕達全員を敵に回してしまうような計画を、3人はする事になった。
その為に、今までの思い出しライトでの記憶や地下道から見える外の世界…それらをつなぎ合わせた話しを作り、王馬君が首謀者だと僕達に思わせる事から始めた。
あの地下道から見た外の世界…それを前もって王馬君は知っていて、話したんだろう。
僕達はその話しを信じてしまった。
そして…偽の首謀者となった王馬君は、協力者である入間さんを僕達の目の前で連れ去り、絶望だけを残して格納庫に篭もった。
暫くは、何もする気が起きないぐらいに僕達は参ってしまっていたけれど、3人の計画はここからが本番だった。
昨日の朝、春川さんと百田君から思い出しライトが食堂で見つかったという事で、僕達は食堂に集まって思い出しライトを浴びた。
思い出しライトから王馬君が絶望の残党である事と、僕達が希望ヶ峰学園の生徒であること、沢山の人達の希望を背負っている事を思い出した。
でも、それこそが3人の狙いだった。
入間さんが教えてくれた思い出しライトの性能から考えると…これは、首謀者が都合の良いように作っただけの記憶でしかないんだから。
僕達が次の日の朝に来ると知った王馬君と入間さんは、恐らく昨日の夜にでもエレクトボムを使って、嘘の死体を発明品で作り…モノクマにコロシアイが起きたと思わせた。
モノクマが分からない殺人…本当ならば、そんな事は起きるはずないみたいだけど…エレクトボムの効力によって、何らかの方法で僕達を監視していたモノクマは見る事ができなかった。
それでなくても、モノクマはエグイサルに囲まれていたんだし、知りたくても知れなかったんだろう。
2人はエレクトボムの効果が切れるまでの時間にそれらを終わらせると、姿を眩ませた。
もしかしたら、ここでも入間さんの発明品を使っていたのかもしれない。
モノクマは2人の思惑通りに、その嘘に騙された。
朝になって僕達が格納庫に乗り込むと、モノクマと同様にコロシアイが起きたと思ってしまった。
そりゃあ、あんな血だまりのプレス機を見れば、誰だってそう思ってしまうに違いない。
だけど、これは嘘のコロシアイでしかない。
モノクマが死体発見のアナウンスを流し、僕達が捜査に乗り出したのを不審に思った2人は…ネタバラしとばかりに、僕達に姿を見せた。
これが、僕が導き出した真相。
よく思い出してみると、王馬君が勝手に首謀者を名乗っていただけで…モノクマから告げられた訳でもないし、肯定された訳でもない。
僕達みんなが、勝手にそう思い込んでしまっただけだった。
「全部説明しないで済んで、助かったぜ…」
僕の推理は合っていたようで、入間さんは補足とかは特にしてこなかった。
だとしても、まだ分からない事がある。
例えば……
「じゃあ、あの地下道の扉を開けた時に見た外の世界はなんだったの!?思い出しライトが本当にそういう機械だっていう証明ができるものも、地味にないよね!?ねぇ、入間さんは本当に思い出しライトを調べたの?そんな時間今までなかったはずだよ!?それに、本当に首謀者なんているの!?」
白銀さんが一気に質問をぶつけていく。
なんだ?
何か違和感があった気がする…。
「だったら、この学園中を調べればいいじゃねーか」
モノパッドのに書かれている校則の『才囚学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません』という文章を指差しながら、入間さんは僕達に向けて笑っていた。
それってつまり…この学園に、全ての謎を解く鍵があるのか?
「ついでに…なんで最初の動機が没になったのかとか、本物の首謀者が誰なのかもハッキリさせちまおーぜ」
なんで今になって、最初の動機の話しが出たんだ…?
もしかして、それが首謀者に繋がる何かなのか?
何も教えてくれない入間さんの考えを、全て理解するのは難しい。
だけど、なんとなく分かる。
僕達は確実に、首謀者の尻尾を引きずり出してきている。
「それで…オレ様達の手で、この希望と絶望の物語の幕引きをしてやろうじゃねーか。それでいいよな、モノクマ?」
「うぷぷ…」
モノクマが入間さんに返したのは、そんな不気味な笑いだった。
~ここから先、ただの悪ふざけです~
赤松「ところで、どこに隠れていたの?」
入間「エグイサルに決まってんだろ?1人乗り用なんだけど、オレ様が改造して2人乗り用にしたんだぜ!」
赤松「凄い!さすが入間さん!」
入間「そ…そう?」
最原「それにしても、本当にコロシアイが起きたと思って焦ったんだけど…」
入間「そんな最原に言いたい事があるんだけどよぉ…」
最原「な、なに?」
入間「ジャジャーン。…ドッキリ大成功!」
最原「……うん。なんとなくそんな気はしてたよ」