でもね、昨日って王馬君の誕生日だったじゃん?友達と一緒になって「王馬君ハピバ」って感じで盛り上がってたら、忘れてて…。
先月なんて、僕と東条さんの誕生日が1日違いって理由で、東条さんのオマケ扱いでお祝いだったし……僕の周りで推しキャラの誕生日祝う人が多い。
あれ…それとも、これが今では普通なのかな?
キャラの誕生日を祝う事をしない僕が、おかしいのかな…
「うぷぷ…待たせたわね。オマエラの誰も待っていなくても、ザコドモに『またかよ』と思われても…美しくて絶望的な私様の登場よ!江ノ島盾子53世のね!」
「という訳で、今回の黒幕も江ノ島盾子でしたー!」
ぶひゃひゃひゃとモノクマが大声で笑い出す。
それに重なるようにモノクマーズも笑うもんだから、笑い声が裁判場によく響いた。
「し…白銀さん?どういう事なんですか!?」
目の前で起きている事が信じられないのか、そう言った茶柱の声は震えていた。
「あー、今までの白銀つむぎのキャラは忘れて。だって、あの存在は嘘なんだからさ。というわけで、居るかどうか分からない彼女のファンはご愁傷様でしたー」
さりげなく、ファンとか言ってるんだけど。
これって、視聴者に言ってる…んだよね?多分。
「えーっと…状況が分かってないのってオレだけ?白銀ちゃんは何やってるの?」
そんな王馬の一言が、動揺しているみんなの空気をブチ壊した。
そうだ…一応、アタシと王馬は思い出しライトを浴びなかったから江ノ島盾子を知らない事になってるんだ。
「さっき名乗ったじゃないですか。江ノ島盾子53世って。すぐに忘れられるなんて、私って絶望的に影が薄いキャラなんですね。ていうか、アンタって一応アタシを崇拝する絶望の残党って設定なんだからさ、空気読んでくんない?」
不満げに「えー、初めて会う人を崇拝しろとか言われてもなー…」という王馬の文句を押しのけるように、「ちょっと待って!」と最原が大声を上げた。
「その声にその顔…なんで江ノ島盾子がここにいるんだよ!?」
江ノ島は眼鏡をかけて「歴史が繰り返すように、江ノ島盾子も繰り返す… 」と怪しく笑みを浮かべながら言ったと思うと、次の瞬間にはその眼鏡キャラを止めていた。
「ご覧の通り、アタシは江ノ島盾子を完全再現してるの!つまり、江ノ島盾子そのものなのよっ!」
「じゃあ、あんたを殺せばいいんだね」
暗殺者の目になった春川が、真っ直ぐに江ノ島を見据える。
止めろ、殺すの駄目絶対。
「あ、殺傷事件とかやめてよー。アタシを殺したところで、コロシアイは終わらないしねー。あっ、間違えました…そもそも今回は、まだコロシアイが起きてませんでした。あーあ…アタシの思惑通りなら、今頃生き残ってるのは5人くらいの予定だったんだけどなー。ねぇ…なんで邪魔してきたの?入間さん」
急に白銀に戻ったと思えば、アタシを睨んでいた。
なんで…ねぇ。
全員生存を目指して、何が悪いの?
「な、なんの事だよ。オレ様が何したっていうのぉ…?」
まぁ…理由なんて教えてやらない。
「ふーん…あくまでしらばっくれるんだ?まっ、アタシはそれでもいいんだけどさ、これだけは答えてくれる?…………アンタ誰?アタシの知っているはずの入間美兎とは、ちょーっと違うのよね」
また江ノ島盾子の姿になった。
…下ネタ発言してこなかったのが、やっぱり問題だった?
ちょっと適当に誤魔化しつつ、そのまま返してやろうか。
「ケッ、オレ様が誰かなんて今更言わせんじゃねー。黄金の脳細胞を持つ美人すぎる天才発明家…入間美兎様だぞっ!だいたい、テメーこそ誰なんだよ。雑魚共がほざいている希望ヶ峰学園とか絶望の残党とか…んなの、思い出しライトで植え付けたデタラメの記憶でしかねーんだ。空想の中の人間になっているテメーは、誰なんだよ!」
「「「………え?」」」
あっ…誤魔化す為とはいえ、雑魚とか言っちゃった。
いや、それ以前の問題?
みんなの視線が集まりすぎて、ちょっと逃げ出したい衝動にかられる。
調子乗ったのは悪かったから、そんなに見ないで!?
「…なにそれ。アタシが空想の人間?そんな訳ないって。オマエラは希望ヶ峰学園の生徒で、アタシは江ノ島盾子。その事実は変わらない。だから、思い出しライトの記憶がデタラメな訳ないじゃん」
「それは違うよ!」
…え、何。
赤松の『それは違うよ!』を生で聞けるとか、何の学級裁判…って、今は学級裁判の最中だった。
ていうか、どこからノンストップ議論に入ったの。
「思い出しライトの記憶がデタラメかもしれないって証拠はあるよ。そうだよね?真宮寺君、ゴン太君」
「あれは忘れられないヨ…」
「あの思い出しライトを作れる教室の事だよね?」
もう、アタシ黙ってても議論進んでいけるんじゃない?
ちょっと空気になってみよう。
「そこではね、思い出しライトを作る為に思い出す記憶を設定する…っていう項目があったんだけど、その選択肢がおかしかったんだ。その時は生存者についての設定だったんだけどね『生存者は他の星にいる』『ゴフェル号の中に他の生存者もいる』『本当に生存者はいない』…っていう選択肢が出てたんだ。これって、おかしくない?だって、私達の記憶を取り戻す装置なら、こんな矛盾が起きる選択肢が出てくる訳ないよね?」
赤松の解説に補足を付け足すように、隣で最原が「それだけじゃないよ」と、王馬の研究教室で見た希望ヶ峰学園公式資料集を取り出した。
待って、今それどこから出てきた。
「この本は、複数の研究者が希望ヶ峰学園に関して徹底的に調べたものらしい。つまり、ここに記載されている情報は、かなり正確な情報なはずなんだけど…」
「それに書かれている内容と俺達の記憶で、食い違っている所があるって言いたいのか?」
最原の言おうとしている事に気づいた星が、口ごもっていた最原の代わりに言った。
「それは本当なの?」
確認してきた東条に最原は頷くと、本のページを捲り出した。
「僕らの記憶だと、人類史上最大最悪の絶望的事件を引き起こしたのは、たった1人の女子高生江ノ島盾子…だけど、この本に書いてある内容では超高校級の絶望は、江ノ島盾子だけを指す言葉じゃなくて…彼女から伝染した集団や現象を指す言葉なんだ。だから、超高校級の絶望は、江ノ島盾子1人じゃないんだ」
「そんなの、聞いた事ないっすよ…」
「だけど、食い違っている点は他にもあるんだ」
最原がそう言った瞬間、「えー、もう良くなーい?飽きちゃったー」と江ノ島が退屈そうな声を出した。
「じゃあ、あんたは黙ってて」
バッサリと切り捨てるように春川がそう言った事で、最原が再び本のページを捲る。
「78期生によるコロシアイの時に、彼らを希望ヶ峰学園に閉じ込めのは超高校級の絶望…っていうのが、僕らの思い出した記憶なんだけど、希望ヶ峰学園に閉じこもったのは78期生自身なんだ。希望ヶ峰学園シェルター化計画っていうのが理由らしいんだ」
「あれま、ビックリだねー。神様も言ってるよー?アンジー達が希望ヶ峰学園の募集に応募して、入学したのかどうかも怪しくなってきたってー」
たまに思うんだけど、アンジーの神様って有能な時とそうでない時の差が激しいよな。
ほら、隣で最原が「アンジーさんの言う通りだよ」って同意してる。
「新しい希望ヶ峰学園は、かつてと同じように才能ある生徒の募集をしていた…けど、この本には生徒の募集は行っていなくて、スカウトのみによって生徒を集めていたんだ」
思い出しライトを作る教室や、思い出した記憶と資料集の相違点。
これらが出たなら、誰だって嫌でも気づくはずだ。
「じゃあ、俺達が思い出した記憶は嘘っぱちだったのかよ!?」
「現状を見る限りだと、前に入間さんが言っていた通り…記憶を植え付ける為の道具という事になりますね」
思い出した記憶は作り物のデタラメでしかない、という真実に。
「えー!そんな真実は酷いよー!だって、思い出しライトの記憶が嘘だとすると…」
「今までの話しが全部嘘って事になるわ!」
「伏線モ意味ガナクナルヨネ…」
「これまでの展開は、なんだったんだよ!」
「んな訳ないやろー!」
モノクマーズがいろいろ言っているけど、それゲームではモノクマが全部言ってた気がするなぁ…。
「まぁ、そういう話しなんだけどね。という訳で、今までの記憶はすべて偽物なのでしたー!それが真実なのでしたー!」
そう言うや、江ノ島から白銀へとその姿を戻す。
「たとえば、わたし達が希望ヶ峰学園の生徒だった件なんだけど…あれも、嘘なんだよ。わたし達は希望ヶ峰学園とは何も関係ないんだ」
せっかく白銀の姿で喋ったと思えば、また江ノ島の姿になる。
「だけど…希望ヶ峰学園の記憶を思い出させたのは、やっぱり失敗だったわね。慌てて用意したせいで矛盾を見逃しちゃうし、そのせいでバレちゃうし…。アハハハッ!絶望的に最悪ね!」
絶望的に最悪って言っているわりには、凄く良い笑顔なんだけど…って、江ノ島盾子なら当たり前だっけ?
「すべて、偽の記憶だとしたら…ウチらは、どこにいるんじゃ?なぜ…こんなコロシアイを強いられる生活をしているんじゃ?」
震えながらも声を絞り出した夢野に、江ノ島は無責任にも「理由くらい自分で考えなよ?これは学級裁判なんだからさ」と吐き捨てた。
「だったら…お前は誰なんだ?」
「…ん?」
誰と聞いてきた最原の言葉の意味が分からないのか、江ノ島が首を傾げた。
「あっ、そっか。私達が希望ヶ峰学園と関係ないなら、君が江ノ島盾子なのはおかしいよね?」
赤松が気づいたように、江ノ島を指差す。
「少し前に入間さんが聞いた時は、希望ヶ峰学園や思い出しライトを言い訳にしていたけれど…お前は一体何者なんだ!」
「…俺は俺だ。他の誰でもない」
いつの間にか、江ノ島盾子から日向創へと姿を変えていた。
コスプレするなら、するって前もって教えてほしい…って、これは無理か。
「あの…何が起きたのか分からないのは、転子だけですか?」
「えっ?知ってるよね?ほら、ジャバウォック島のコロシアイに参加していた…」
白銀はそう説明すると、再び日向の姿になった。
「…俺は日向創だ」
白銀の隣に立っている真宮寺と天海のシスコンコンビが、ポカーンとしてる事については、誰も突っ込まないんだ。
いや、その分…白銀のコスプレのインパクトが半端ないって事か?
「えっと…何をしているの?」
「何って…コスプレだよ?」
ゴン太に白銀がそう答えた事で、あちこちから「コスプレ…?」という呟きが聞こえてくる。
「うん、これはコスプレなんだよ」
「でも、ただのコスプレじゃねーぞ!俺のコスプレはキャラを完全再現だからな!」
「どうだよっ!声もソックリだろ!?」
小泉、葉隠、左右田とコロコロ姿を変えていく。
早着替えと呼んでいいのかすら分からない速さなんだけど…着込んでたりしてない…よな?
「だったらよ、さっきの江ノ島も…」
「わたしのコスプレなんだよ!」
嬉々として答えた白銀に、思わず頭を抱えそうになる。
コスプレのクオリティ高すぎぃ…。
「あらゆるキャラクターを完全再現して、あらゆるキャラクターになりきる事ができる…それが、超高校級のコスプレイヤーの才能なんだよ!」
完全再現しすぎじゃね?
声とか身長とか…どうやってんの。