駆け足なラストだけど、深く考えたらダメ。
簡単なキーボの改造も終わり、アタシが離れるとキーボはすぐに武装した。
「このフィクションの世界のすべてを破壊し、コロシアイを終わらせる…それが、外の世界の意志です」
それはつまり、才囚学園を破壊するというゲーム通りの展開だ。
「そっか…。まぁ、最後の最後に計画が失敗するっていう結末までしっかり模倣できたんだから…模倣犯としては、胸を張っていいはずだよね?」
…そういうよく分からない発言は、どうしても意味を探ってしまうからやめて欲しい。
ほら、変に考え込んでしまいそうだし。
「これで…良かったんだよね?」
「えぇ。コロシアイに苦しめられるのは、私達で最後なんだから…」
「にしし…。嘘も悪くないでしょ?」
「テメーは度がすぎるんだよ…」
そうやって笑い合う中で、「…では、始めます」とキーボが淡々とした声で言う。
「いえ、終わらせましょう!これが外の世界の意志ですっ!!」
そう言ってキーボが飛び出して行くんだから、アタシはハッとしたように東条を振り返った。
「東条、依頼だ。白銀の確保」
「よく分からないけど…任せてちょうだい」
こういう状況だけど、依頼とあれば実行してくれる東条に感謝する。
でも、東条だけでは少し荷が重かったのか、白銀はモノクマやモノクマーズを使って抵抗しており捕獲は困難だった。
「もー…しょうがないなー」
それを見かねた王馬が、見覚えのある機械をポケットから取り出して操作する。
ちょ、お前それ…エグイサル操つるリモコン。
まだ持ってたのかよ。
そんな事を思っている間に、王馬の操るエグイサルがモノクマとモノクマーズを抱えて中庭へと飛び出して見えなくなった。
「ちょっと…どういうつもりなの!?」
首謀者としてオシオキを受ける為に、アタシ達から離れようとしていた白銀は東条に捕獲されるなり大声で叫んだ。
でも…正直聞きづらい。
ほら、外ではキーボが派手に暴れてるから。
学園の壊れる音とかで…聞き取るのが大変なんだって。
とりあえず、なんで東条に捕獲させたのか答えてあげないと。
アタシは歩み寄ると、すぅー…と一度息を吸った。
あぁ、崩壊の振動が凄いから歩くだけで時間がかかったじゃないか。
「んな顔すんなよ…。いいじゃねーか、オレ様達は仲間なんだ。だったら、みんな仲良く一緒に…だろ」
ちゃんと聞こえるように、一言も聞き逃さないように、できるだけ大きな声を出してアタシは笑顔で言ってやる。
呆気に取られたように白銀はキョトンとしていたけれど「まぁ…そういう事なら」と、苦笑いで返した。
ちょ、苦笑いしなくてもいいじゃん。
頭上から降ってくる数多くの瓦礫を見ながら、アタシは「そろそろかな…」と1人呟く。
あいにく、誰にも聞こえなかったのか変に聞かれる事はなかった。
白銀はアタシ達の側にいる。
だから、ゲームの時みたいに首謀者として瓦礫に潰されて死ぬなんて事はないはず。
キーボだって、さっき改造した。
だから自爆みたいな事をしようとすれば、武装機能が解除されて一時的にキーボの全機能が停止、念の為に視聴者の目となる機能は永遠に失うようにした。
もちろん、空中で機能停止なんてなったらキーボが墜落しちゃうからそれの保険としての発明品もこっそり装着させたし、機能停止した後にキーボの代わりとして爆発を果たす自立移動の発明品も用意しておいた。
キーボは、みんなが死なないように計算してこの学園を壊しているんだろうし…うん、完璧じゃないか。
みんなは無事外の世界に出られて、そこで嘘を真実にして生きていく。
ただ、そこに…アタシという人格がなくなるだけ。
そこにいるべきなのは、アタシじゃなくて本当の入間美兎なんだ。
「………」
寂しくないと言えば、嘘になる。
ただ、本来のあるべき姿に…本来の形に戻るだけ。
「これ以上求めるなんて…バチ当たりじゃん」
目を閉じて、崩壊の音が止まるのを待つ。
この音が止まった時、アタシはまだここにいるんだろうか?
それとも……アタシのいるべき日常に戻ってる?
何も聞こえなくなり、アタシはゆっくりと目を開けた。
目の前は真っ暗だ。
自分の姿さえもよく見えない。
アタシはどこにいるんだろう。
本来いるべき現実?
夢の中?
それとも……
そうやって、グルグルと頭の中で自問自答を繰り返す。
でも、答えはズズッ…と頭上で何かを動かす音と、そこから差し込んだ微かな光で分かった。
「よかった!みんないたよー!」
そこから、声が沢山聞こえる。
ゆっくり首を動かして自分の周囲を確認すると、座り込んでいる東条と白銀の姿があった。
アタシはまだ……みんなと一緒にいる。
「ねぇ…なんで、わたしたちは生きているの?」
白銀がアタシや東条にそう聞いてくる。
なんで……あれ、なんでだっけ。
何か理由があった気がするんだけど…ヤバイ、忘れた。
そもそも最終章のオシオキ後の話しは1度しか見ていない。
「外の世界が、それを望んだんです」
答えてくれたのは、こっちに歩いてくるキーボだった。
どうやら、一時停止は解除されていたみたいだ。
キーボの手を借りながら、ゆっくり立ち上がると微かに笑顔を浮かべているみんなの顔が視界に映る。
「外の世界はフィクションの終わりを受け入れた上で、ボク達を生かすという選択をしました…」
あぁ…そういえば、ゲームで3人が生き残った時に、そんな可能性の話しをしていた気がする。
「これから、どうするんすか?」
「あれで終わりだと思ってたからな…何も考えてねーぞ」
「だったら…今度こそ、みんなと友達になろうよ!一緒に遊んだり、出かけたりしてさ!」
「いいですね!男死がいるかもしれないのは不満ですが…まぁ、邪魔しなければ一緒でもいいですよ」
これからの事を話し合うみんなを見て、思わず袖で目を擦った。
ずっと待ち望んでいたエピローグ。
ずっと…待ち望んでいた風景。
アタシがやってきた事は無駄じゃなかった。
「あれ?入間ちゃん泣いてるの?」
「な、泣いてねーよ!」
まだ!まだ泣いてないならセーフ!
ていうか、そんな事言わなくていい。
声に出して言うなよ。
「でもでもー、今にも泣きそうだよー?」
「だ、だから…違うんだよぉ……」
ほらー、みんなしてアタシの顔を覗き込んでくる!
そんなに見るなって!
…恥ずかしいから、本当に勘弁してください。
でも、悪くない。
むしろ、心地良い。
「真実で世界が変わるように、嘘で世界を変えられる…か」
声にして言うつもりはなかったけれど、気づいたら言っていた。
嘘と真実は別物でありながら、実は一緒なのかもしれない…なんて、アタシにとって都合の良い考えでしかないんだろう。
「それじゃあ、行こうか。この世界の…フィクションの向こう側の世界に」
みんなが歩き出す。
遅れないようにアタシも歩き出すけれど、眩しい光がどんどんアタシの視界からみんなの姿を隠していく。
あぁ…やっぱり、この先にはアタシは行けないんだ。
でも、それでも良い。
真っ白になった視界の中で、みんなに小さな声で「バイバイ」と別れを告げた。
「ケッ、なに寝ぼけた事言ってんだよカスが」
「なっ!?」
思わずカチンときて、アタシは真っ白な世界の中に現れた入間を睨みつけた。
うーん…さっきまでの自分を睨むなんて、なんか変な気分。
「そ、そんなに睨むことねーだろぉ…?だって、本当の事じゃねーかよぉ」
おどおどしながらもそう言ってくる彼女に、アタシはますます訳が分からなくなる。
アタシが言った事を寝ぼけた事?
…何もおかしな事は言ってないはずだ。
「アタシは、さっきまでキミだった…。だけど、そんな事は普通じゃ起きない事なんだ。物語が終わった今、アタシはアタシのいるべき世界に戻るはず…。キミに憑依していた理由もなくなる」
これだけは、どう足掻いても変えられない真実。
それなのに入間は「ったく、ブスは記憶もチキン並みかよ…」なんて悪態をついてきた。
…アタシをバカにしてんのか?怒るぞ?
「まっ、この世界じゃ仕方ねーか。ここではある程度の記憶は引き継いでるが、肝心な部分は一時的とはいえ忘れるんだからな!もうすぐオレ様みたいに思い出したら、出かかったクソみてーなテメーでもわかんだろっ!」
いや、さっぱり分からない。
あとその嫌な例え方を止めろって。
×××××
目を開けた時にまず目に入ったのは、机に椅子といった物が沢山置いてある学校の教室だった。
ここはどこで、アタシは誰なのか…ぼんやりとした頭で考えて、思い出す。
アタシはさっきまで、ゲームの世界にいた事を。
でも、ただのゲームじゃない。
だって………
混乱する頭を整理するように、アタシは頭を抱えてその場にうずくまる。
あぁ…そうだ、思い出した。
アタシは、そういう存在だった。
ならば……
そこまで考えて顔を上げると、16人の見知った人間が頭に被っていた装置を取っている所だった。
V3の…超高校級の才能を持った、16人の姿が。
まずは…なんて声をかけようか?
お帰り?
おはよう?
それとも…
「みんな…お疲れ様」
やっぱり…労いの言葉かな。
アタシが声をかれると、入間がすぐに「あっ!」と声を上げるなり、ズンズンとアタシの前まで歩いてきた。
「テメー、なんでオレ様のアバターにちゃっかり入り込んでんだよ!テメーの仕事は、その電脳空間からオレ様達のやっている事を見守ったりする事だろ!単細胞が何やってんだよ!!」
「アタシは、ちゃんと管理してたって!それなのに、気づいたらキミの意識プログラムに飲み込まれるし…むしろ、プログラム世界とはいえ誰も死なずに終えられた事に感謝してくれたっていいじゃん!」
ギャンギャンと言い争うアタシ達は、端から見たら入間がパソコンに向かって怒鳴っているようにしか見えないんだろう。
そりゃそうだ…だって、アタシは目の前にいる入間によって作られた、決して交わらない平行世界の人間の記憶を持った人造エネミーなんだから。
初めは、凄く取り乱した。
気が付いたら電脳空間で、自分は電脳体、目の前にはゲームで見た事ある超高校級達。
しかも、通っているのは新しく設立された希望ヶ峰学園で16人はクラスメート…学園長は無印の主人公である苗木、クラスの担任が霧切ときた。
驚きで口をあけて、長い時間間抜けな顔をしていた記憶がある。
何度も何度もアタシは入間から、平行世界の人間の記憶を見る事ができる発明品を改良したり、他の発明品と一緒に使ってみた結果、偶然生まれた存在なのだと聞かされた。
……思い出すだけで、何をしたんだよと聞きたくなる結果だ。
とにかくその瞬間から、アタシは記憶を元にしただけの作られた存在でありながら、最初から自我を持つ人造エネミーとなった。
だから、変にテンションがおかしくなって色んな事を喋った。
思えば、それがダメだったのかもしれない。
アタシは思わず喋ってしまったのだ。
ダンガンロンパの、超高校級のみんなの事を。
アタシの世界でのみんなの事を。
で……入間はそれを体験できるプログラム世界を作り、みんなは好奇心でやった。
それだけなら、アタシの記憶通りのゲームで見た展開になるはずだったんだけど……ここで、予期せぬ事が起きた。
プログラム世界で予期せぬバグが起きぬように見守る役目のアタシが…プログラム内で入間の意識プログラムに飲み込まれ、ゲーム設定の為にエネミーになったという記憶を失い、彼女に憑依した人格としてプログラム世界で奮闘する事になった。
そして…今に至る。
まぁ…あれだ。
元凶は自分でしたー…っていうオチになるのかな。
うわー、嫌だぁ。
でも…と思って、アタシはプログラム世界から帰ってきて話し込んでいるみんなを見る。
ゲームでは、何が嘘で何が真実なのか分からない、プレイヤーの想像にお任せします…って感じのオチだった。
賛否両論なんて事になったりしていた。
「嘘も真実も知っているのはアタシだけ…ってのも、悪くないや」
クスッと思わず笑うと、トントンと肩を叩かれた。
なんで肩を叩かれたかなんて…そんなの、アタシと同じ電脳世界でしか生きていけない存在にしかできない。
ゆっくりと振り返ってみれば、不二咲のアルターエゴが「話しがあるんだけど…ちょっといいかな?」と不安そうにアタシを見ていた。
「あー…ちょっと待って」
そう言って、アタシは一度みんなの方を見て見たけれど、なぜかみんなある一点を見て『しまった…』みたいな顔をしていた。
どうしたんだろう…と思いながら確認できる範囲でみんなの視線の先を見てみると、3より少し大人っぽくなった苗木と霧切が教室に入ってくる所だった。
あっ…これ、みんなして説教されるパターンかな。
まぁ、そりゃそうだよね。
だって、端から見れば人類至上最大最悪の絶望的事件を元に作ったプログラムだしな。
アタシはみんなから視線を逸らして、不二咲のアルターエゴを再び見るなり土下座した。
「その…反省してます」
「な、なんで僕が言おうとしている事が分かったの!?」
なんでって、エスパーですから!
……嘘だけどね。
~END~
~この先、作者による独り言~
・どこからどこまでが嘘で本当?
・16人は超高校級級の才能を持っている→本当
・16人は新しい希望ヶ峰学園の生徒→本当
・才囚学園はフィクション→本当
・人類至上最大最悪の絶望的事件が起きた→本当
・隕石の墜落→嘘
・ゴフェル計画→嘘
・超高校級狩り→嘘
・白銀がチームダンガンロンパの人→嘘
・天海の生存者という才能は?→嘘。本当は冒険家
・つまり、どういう事?→V3でのコロシアイは、プログラム世界での出来事(だと思っている)
・主人公はどういう存在?→入間の発明品の結果にできてしまった偶然の産物(説明が雑)
・これで本編完結という事は、更新も終了?→活動報告にて発表