嘘じゃないから、本当だから……(ガタガタ)
うーん…と唸りながら伸びをすると、肩から少しだけ骨が軋む音がした。
目の前の作業台には、乱雑に置かれた道具の数々と遊び心で作った発明品がある。
それらをいそいそと片付けながら、アタシは「ふぅ…」と一息ついた。
さっきの白銀とのデートは酷かった。
記憶から忘れたいぐらいには。
まぁ…そんな事があったから先程、危険予知ランプという発明品を作成したんだけれど。
今度からは部屋から出る前にコレを確認する事にする。
「よっと…」
ダンボール箱に入れた発明品を両手で抱えて研究教室を出て、寄宿舎へと向かう。
……運んでいる間も危険予知ランプの電源は入れている為、起動する事があればすぐに隠れてやるけどな。
「凄い荷物ですね…」
発明品が起動する事もなく寄宿舎までたどり着くと、寄宿舎の前にいたキーボが中身を覗き込んできた。
わざわざ「良ければ、運ぶのを手伝いますよ」と言ってくれたけれど…キーボってそんなに力なかったよな?
持たせた瞬間に、ガッシャーンとかならない??
「もうすぐそこなんだし、別にいいって。落とされて怪我されたら困るしな!」
「ロボットのボクを心配してくれるのは、入間さんだけです…」
しみじみと言ってるキーボだけど、ごめん…アタシの今言った言葉の大半は発明品の心配が含まれてる。
いや、キーボに何かあっても困るけど。
「あの…それを運び終えたらでいいので、ボクの相談に乗ってくれませんか?」
相談なんて言われて、何の悩みだろうかと考える。
まぁ、キーボがアタシにする相談なんて機能の事ぐらいしか思いつかない。
それ以外だったら、他の人にするだろうし。
「あぁ、オレ様に任せろ!テメーの悩みぐらいすぐに解決してやるぜ!!」
改造・メンテナンスに心を踊らせてそう答えたけれど、数分後にアタシはそれを思い違いだったと知る事になる……。
×××××
せっかくだからデートチケットの消費も兼ねて、キーボの相談に乗るために中庭のベンチに腰掛けた。
中庭を選んだ理由なんて、研究教室が近いからだ。
「で、悩みって?」
「あの、実は……」
ドキドキしながらキーボが話すのを待つが、そう言ったきり何故か口ごもる。
言いにくい事…まさか、とうとうロケットパンチできるようになりたいのか!?
「キーボ、恥ずかしがる必要はねーんだ。オレ様に任せろ!」
早く言えとアタシが急かすと、キーボはショートしてしまったのかと錯覚してしまう程に顔を赤くした。
「あの、恋とはどういったものなんですか!?」
「は?」
こい…恋……鯉??
「あー、あれか!池とかでよく見る魚か」
「いえ、それじゃなくて…恋愛する際になるものの方で……」
湯気を出しながら訂正してきたキーボに「あぁ、そっちかよ」なんて言いながら、アタシは視線を落ち着きなくさ迷わせた。
恋とは何か…という相談だったか。
まぁ、確かに紅鮭時空は恋愛的に結ばれた2人が卒業だもんな。
キーボなりに、卒業しようと努力してるんだよな。
そこまでは良い……だけど、相談する相手を間違えたとしか思えねーよ!
そこはほら……赤松とか最原にするべきだ。
赤松なら喜んで答えてくれる気がする。
「あー…えーっと……うーん…」
なんと答えるべきか分からず、言葉にならない声を出すアタシを見て「入間さんでも、分からない事なんですね…」と落ち込んだように呟いた。
「はぁ!?この天才であるオレ様に分からない事なんてあるわけねーだろ!ただ、なんて答えてやるか言葉を選んでいるだけで…」
あんな大口叩いて相談に乗ってやるって言ったんだし、なんとかして答えないとアタシの気が済まない。
まぁ…テンプレとも言える言葉で教えてあげるしか方法なんて思いつかないけど。
「恋ってのはなー…ほら、あれだ!恋してる人と一緒にいるとドキドキしたり、幸せって感じてだな…もっと一緒にいたいって思ったり、そいつの事を考えるだけで時間がすぎてたりして……」
あとそれからなんだっけ…と思いながらキーボの様子を伺うと、頷きながら何やら深く考え込んでいるようだった。
「あっ、それとだな…そいつが他の誰かと一緒にいるのを見ると辛くなって、自分だけを見て欲しいという欲が出て、振り向きもしてくれなかったら『私を見てくれない君なんて…っ!』とか言って相手を殺す事で自分の物にしようなんて狂行きなってだな……」
「そんな恐ろしい事を、ボク達はモノクマにやれと言われているんですか!?」
怯えたように狼狽えるキーボを見て、アタシは首を傾げた。
キーボのこの反応…アタシが知っている反応となんか違う……。
最後のはキーボに言わない方が良かったか?
いや、でも恋について知りたいのなら、そういうのも知るべきだろうし…いや、でも伏せるべきだった??
「ま…まぁ、他にも何人かに聞いてみろよ。オレ様がいつも正しいとは限らねーからなっ!」
「今の話しを聞いた後って事もあって、あまり気は進みませんが…そうします」
絶対にそうしてこい。
正しい恋について教えてくれるはずだから。