インスピレーションが~沸き上がりそうで~出てこない~
誰か僕に文才恵んで…いや、ホントまじで。
「いやー、一時はどうなるかと思ったけど、何事もなくて本当に良かったよねー!」
「んあ~…昨日はゆっくり寝られたわい」
「神様のおかげだよー。きっと、色々と裏で手を回してくれたんだねー」
みんなが集まった食堂は明るい空気に包まれていて、昨日までの事が嘘のようだった。
まぁ、モノクマが今だけとはいえ居ないんだ。
アタシも今の空気が心地よくて、思わず笑顔を浮かべながら東条が作ってくれた朝食をいただく。
このフレンチトースト、まじデリシャス。
こんなお嫁さんがいたら、旦那となる人が羨ましい…マジ許さん。
「…どうした。浮かねー顔だな」
少し離れた所で同じように朝食を食べていた星が、隣に座っている天海の顔を覗き込んでいた。
周りに気を使っているのかその声は小さく、聞き取れたのが不思議だ。
「や、別になんでもねーっす。このまま終わるに越した事はないっすよね」
苦笑いを浮かべて笑う天海と星の会話を、アタシと同じように聞いていたんだろう。
アタシの隣に座っていた赤松が、急に食事の手を止めて腕を組む。
「でも…本当にこれで--」
その言葉、斬らせてもらう!
なんて事を心の中で叫びながら、アタシはとっさに赤松の口の中にサラダとして朝食に出ていたトマトを無理矢理入れた。
べ、別にアタシがトマト嫌いだからとかじゃないから。
本当だから、嘘じゃないから。
赤松の発言で今の空気が壊れる事を防ぎたかっただけだから。
それ以外に理由なんてねーから!
「い、入間さん?」
赤松の真っ正面に座っていた最原が、引きつった顔でアタシと赤松を見ていた。
いや、これにはちゃんと理由があってね?
説明しようにも、余計な事ゲロっちゃいそうだから言えないけど、理由があんだよ!
「ちょっと!いきなり何するの!?」
復活したかのように、口の中のトマトを飲み込んだ赤松が怒ったように叫ぶ。
いや、だから理由が(以下略)
「わ、悪かったから…そんなに怒らないでよぉ……」
怯えたような声を出しながら涙目で赤松を見ると、「もー…」っと呟いたのを最後に何も言わなくなった。
まぁ、目で訴えてはきているけれど…。
計画通り…なんてどや顔はしないが、アタシは勝ったとばかりに拳をグッと握りしめた。
「…………」
そんなアタシ達のやり取りを、さっきから真顔で最原の隣で見ているチビな総統が「んー…」と呟いていた。
恐らく、赤松が言おうとしていた事に気づいたんだろう。
王馬がテーブルに肘をついて身を乗り出すと、赤松は自然とアタシから王馬の方に意識をやった。
「ねぇ、赤松ちゃんが何を心配しているのかは知らないけどさ…コロシアイを続けるのは不可能なんだよ?」
にしし、と笑いながら王馬がそう言ったすぐ後に「そこで、オレッチの出番だクマ!」と、昨日の朝を最後に聞かなかった声が食事に響いた。
みんなして食事の手を止め、テーブルの上にいつの間にか立っていた某猫の妖怪のような格好をしたモノクマを凝視した。
「…え?」
「モ、モノクマッ!」
ガタタッと数人が立ち上がり、信じられないとばかりの顔をする。
アタシは座ったまま朝食を続行させてもらうけどね。
お腹減ってるし。
「オレッチはモノクマじゃないクマ。事故でポックリ逝っちまったオレッチは妖怪ジバックマとして生まれ変わったんだクマー!これからは、オレッチがこの学園の学園長クマ!」
……周りのモノクマを見る目が凄い。
白銀はコスプレの完成度が低いって文句を言うし、神宮寺は妖怪と幽霊を取り間違えていると民族学的な話しをしだすし、それ以外はパチモンじゃん…って目で訴えてる。
その反応を見て、モノクマは落ち込んだようにションボリしながら「これだから高校生は嫌なんだよ」と言う。
「もー、さっきから何を騒いで…」
なぜか厨房の方からモノタロウがやって来ると、モノクマを見て「あれーっ!?」と叫んだ。
それを聞きつけて、他のモノクマーズもゾロゾロと厨房から食堂にやってくる。
「死んだはずのお父ちゃんが実は生きていたー!」
「きっと、妖怪の仕業だわ!けど、生きてるならそう言ってよ。死んだと思ってコトコト煮込んでたのよ?」
どこで煮込んでるのか気になるけれど、気にしたらいけない気がする。
「あっちで死骸が煮込まれているのに、なんでこっちにもお父ちゃんがいるんだ!?どっちが本当のお父ちゃんなんだーッ!?」
厨房の方を見ながら叫んだモノキッドのせいで、どこで煮込んでるのかなんとなく分かった。
できれば、アタシは知らないままでいたかった…。
モノクマは首を傾げながら「いや、どっちも本物なんだけど」と、モノクマーズを見て言う。
「ボクにはちゃんとスペアがあるんだよ」
アッハッハと笑うモノクマに、モノスケが閃いたとばかりに手をポンと叩いた。
「つまり…この学校にはお父やんを製造する機械があるっちゅー訳やな。で、なんぼでもお父やんのスペアを製造できーー」
その言葉を遮るように、モノクマはモノクマーズを順番に抱き上げると思いっきりペロペロと舐め始めた。
感動の再会と称してやっているけれど、過激すぎる。
「もしかして…コロシアイってまだ続くの?」
「やっぱ…そうっすか。終わらすにはモノクマを倒すだけじゃなくて…その後ろにいるやつを、なんとかしないといけないんすね」
「どちらにしても想定内…驚く事じゃないわね」
それを聞いたモノクマはモノクマーズを舐めるのを止めると「へぇ、想定内ねぇ…」と呟くと、ニヤリと笑った。
「だったら、こういう展開はどう?では、『追加の動機』の発表でーす!」
追加の動機と聞いて、みんなの表情が険しくなる。
知ってるとはいえ、アタシの体も強張る。
「タイムリミットは2日後の夜時間とします。もし、それまでに殺人が起こらなければ…コロシアイに参加させられた生徒は全員死亡!噂のモノクマ製造機から大量のモノクマを出動させて、クマ本来の野生味を大解放しちゃうよっ!」
「タ…タイムリミット?」
「全員死亡…だと?」
追加された動機の条件に、場の空気が一気に凍りついた。
それを見ても、モノクマは悪びれもせずに「オマエラが全然コロシアイをしないせいだろ?」と笑う。
「それより、お父ちゃんの大量出動ってどういう事?タイムリミットの後はオイラ達の出番じゃないの?」
「そうだぞッ!今度こそエグイサルに活躍させろよッ!」
出番が取られたとばかりにモノクマーズが講義すると、モノクマは面倒だとばかりに肩を落とした。
「いや…あんな目に逢いたくないっていうか…ほら、オマエラが疲れると可哀想だから…」
アタシ的に、モノクマの本音は前半部分だと思う。
昨日、事故とはいえエグイサルに潰されてるし。
「まぁ、好きにすればいいよ。仲良く一緒に死ぬのも、自分だけ生き残るのも、ぜーんぶオマエラの自由だからさ。アーッハッハッハ!」
モノクマはアタシ達にそれだけ言い残すと、モノクマーズを連れて姿を消した。
数分前の事が嘘のように、重い空気になった食堂は苦痛でしかない。
食欲なんてログアウトしたし…。
「ねぇ…どうするの?2日後の夜時間なんて…あっという間だけど?」
震える腕を押さえながら、白銀がこの場の全員の顔を伺う。
「こうなったら、戦うしかないよ…」
「そ、そうですよ!先手必勝で襲いかかればきっと勝ち目はあります!」
ゴン太の考えに賛成とばかりに、茶柱が合気道家とは思えない発言をする。
そんな中で、アタシはゆっくりとみんなから離れて食堂の出口に足を進める。
あともう少し…あとちょっと……
扉をゆっくり開けた所で、「…どこ行くの?」と春川が此方を見ないで呟いた。
いつから気づいてた…って、春川なら流石にバレるか。
でも、それだけでみんなの視線が一気にアタシに集まるんだから怖い。
もう、みんな一斉に振り返るとかホラー。
タイミング合いすぎ。
思わず「ひぃっ…」って悲鳴を上げたんだけど。
「な、なんだよぉ。ちょっと頭の中を整理したいだけじゃん…」
まぁ、正確には部屋に置きっぱなしにしているガチャの景品を整理しながらどう改造しようか考えるだけだけど。
「だから…部屋で休んでくる!」
脱兎の如くアタシが外へ飛び出すと、後ろから「変な考え起こしちゃダメだからね!」と誰かの声がした。
×××××
改造のイメージも固まり、暇になった為アタシは何をしようかと思考を巡らせた。
昨日のように本を読むのもいいと思うけれど、明日解放される研究教室に備えて倉庫やガチャで素材集めをするのもいいかもしれない。
『ピンポーン…』
突然、部屋に響いた音に一度首を傾げるも、すぐにインターホンが鳴ったのかと気づく。
「……えっ?インターホン??」
ということは、誰かがアタシを訪ねに来たということ。
慌ててドアを開けて誰なのか確認する。
「こんにちは、入間さん」
扉の先には、赤松が立っていた。
えっ、何か用?
ま、まさか昨日アタシが本棚の仕掛けを見ていた事に気づいたとか!?
「どうした赤松?まさかオレ様が変な事考えてないのか確認しに来たのかよ?」
冗談半分でそう言うと、すぐに「違うってば…」と否定してきた。
「ちょっとお喋りしない?ピアノも弾けないし、やることなくて暇なんだよね」
「ふーん…まっ、オレ様も暇だったし乗ってやる」
立ち話もどうかと思い、アタシ達は寄宿舎の階段に腰掛けた。
そのまま、アタシは隣に座る赤松が話し出すのを待ってみるも、何故か何も言おうとしない。
えっ、まさかの話題なしで来たの?
「あのさ…さっきは、ありがとね」
「はっ?」
話し出したと思ったら、赤松がアタシにまず言ったのはお礼だった。
えっ、意味が分からない。
誰かと間違えてない?
「ほら、さっきの朝食の時みんながコロシアイは終わったって思ってる中で、私はこのまま終わるわけないって言おうとしてた時の。止め方は酷かったけど…アレって私があのトンネルの時みたいに責められないようにしてくれてたんだよね?だから…ありがとう」
「……あぁ、あのトマト突っ込んだ時のか」
うん。思い出した。
でもさ、そこまでは考えてなかった!
ただ嫌いなトマトを…ゲフンゲフン。
じゃなくて、あの空気壊したくなかっただけで…あれ?結局はそうなるって事か…??
よく分からん。
「それでね、入間さんにお礼がしたくて。こんなので良かったら貰ってくれる?購買部のガチャガチャを回したら出てきたものなんどけど…」
そう言って赤松がアタシにプレゼントとしてくれたのは、触手マスィーンだった。
………ナイス、チョイス!!
アタシがガッシリと赤松の手を両手で包むと、いきなりの事で驚いたのか赤松の肩が跳ね上がった。
でも、そんなの気にしてあげない!
「ありがとな、赤松!ちょうどこんなのが欲しかったんだよ!!」
フフフ…これでアタシの改造の幅が広がった。
もう誰もアタシを止められない!いや、止める事は許さない!
「なら…良かった」
アタシが喜んだのを見て、赤松が嬉しそうに笑顔を浮かべた。
もしかしたら、渡すのが不安だったんだろうな。
ほっと一息って、安心してるのが分かる。
「それじゃ、オレ様は部屋に戻るとするかな」
「えっ、もう?」
立ち上がったアタシを、階段に座ったままの赤松が見上げる。
何で?と目で訴えるな。
「あー、もう。分かったからぁ…。これを部屋に置いてくるだけ!すぐ戻るから待ってろッ!」
だから、そんな捨てられたチワワみたいな顔しないでください。
それに弱いんで。
部屋に赤松から貰ったばかりの触手マスィーンを置くと、アタシはガチャでダブったタピオカジュースを2つ手にして赤松の元に戻った。
別に長話するつもりはないけど、喉が乾いたら嫌だからっていう理由なんで。
って思っていたのに、アタシが赤松から解放されたのは夜時間の少し前だった。
……なんでこうなった。