憑依してしまった以上、救いたいと思った   作:まどろみ

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7日目①

なんだかんだで、この生活もあと僅か。

もう少し続いてほしいような、今すぐ終わってほしいような……そんなチグハグな思いが渦巻く。

まぁ、アタシという人格がある事自体が奇跡中の奇跡というか、本来の入間美兎がどのタイミングで表に出てくるのかが怖い気もするけれど、それはそれ、これはこれと深く考えない事にする。

 

「折角だし、久しぶりにガチャでもしてから………あん?」

 

中庭を歩いている最中、見慣れた後ろ姿の異常な気配を察知して、思わず足を止めた。

なんというか……普段からでは考えられないどんよりとした雰囲気が出てるし、手元に持っている物を見てブツブツ独り言を言っている。

 

おい、いつも醸し出してるシスコ…じゃなくてイケメンオーラはどうした。

 

「あ、天海?何やってんだよ…」

 

一応、それなりの距離を取った状態で恐る恐る声をかけてみる。

遅れて声をかけた事に気づいたのか、ゆっくりとした動作で振り向いた天海の顔色はめちゃくちゃ悪かった。

 

「あぁ……入間さんっすか」

 

「そ、そんな死にそうな顔すんなよぉ…。よく分かんねーけど、体調が悪いなら寝とけっつーの!」

 

斬美ママー!と心の中で叫びながらビシッと寄宿舎の方を指差す。

そんなアタシに力無く笑いながら「や、体調が悪いとかじゃないんで大丈夫っすよ」と天海は言ってくるけど、全然大丈夫じゃねーだろ。

 

「落ち込んでるのは…その、俺の優柔不断さというか。………実際に見せた方が説明が早そうっすね」

 

そう言って手招きしてくるから、逃げ腰になりながらも天海に近づいていき、人が2人分ほど入りそうな距離まで来ると「これなんすけど…」と持っていたものを見せてくれた。

 

 

「なんだコレ……」

 

 

「最原君から貰った、一途コンパスっていうアイテムらしいんすけど…」

 

 

「んなの、オレ様も知ってるっつーの」

 

 

確かアイテムの説明では、気になるあの子がどの方向にいるのか一目で分かるストーカー涎ものアイテムとか書いてた気がするけれど、こんな針が高速回転するやつじゃなかったはずだ。

 

ナニコレ?バグ?不良品?

もはや、別のアイテムじゃねーの??

 

「これを持っていたら、ここから出るとき妹を捜すのに役立つと思って貰ったんすけど……誰か1人なんて選べねーっすよ」

 

「………そうか」

 

真面目に考えて損したわ。

なんだよ、いつものシスコン擦らせてただけかよ。

あぁ、でも本人からしたら大問題だったな…。

だったら、仕方ない。

超高校級の発明家であるアタシの出番だ。

 

「オレ様に貸しな。改造してやるよ。確か妹の人数は12人だったよな…?」

 

天海の手から奪い取るように一途コンパスを回収すると、コンパスの針は高速回転を止めてピタリと止まった。

………針の先については、見なかった事にする。

 

「俺の為に改造してくれるんすか…?」

 

「当たりめーだろ。なんたって友達だからな」

 

「…そうっすね。変に考えたりしないで最初から入間さんに頼んでおけば良かったんすね。最原君に残りの必要分も貰うのは、流石に引かれてしまうんで…」

 

「それは流石にねーわ…」

 

一途コンパスを12個身につけて世界を巡る天海を想像してしまい、思わず笑いが込み上げる。

必死に笑うのを堪えようと思ったけれど、無理。

肩が震えるし、腹捩れる。

 

「まっ、これなら針を追加して調整してやるぐらいだし、すぐに終わんだろ。オレ様にかかれば楽勝もんだな!」

 

 

 

×××××

 

 

これぐらい余裕・楽勝って、少し前までなら思ってた。

倉庫が近くにあるからという理由で、食堂に道具を持ち込んで改造し始めたのはいいんだけど……。

 

「……………」

 

「凄いっすね、コレ。中がこんな風になってるなんて知らなかったっす」

 

めっちゃ後ろから覗き込まれてる。

何度か「離れてねーと、危ねーぞ」と言ってはいるものの、少ししたら気になるのか再び後ろから見られている事数回。

正直やり辛い。

男子はみんなメカとか改造が好きなの?

 

「……っと。針は入れたし、後は仕上げも良し。性能の確認だけだな」

 

「手際良いっすね」

 

さて…後は、どうやって天海に見られる事なく確認作業をするかが問題だ。

アタシ自身が持っている一途コンパスと照らし合わせる必要があるし、針の向きを見られでもしたら…誰を指しているのか分からないとしても精神的に死ぬ。

適当に理由を付けて遠ざける(叉はアタシがここから離れる)のがベストだが、何か理由として使えそうなものはないかとテーブルの上に散らばった物を見る。

……殆ど倉庫から持ってきたものだし、これをダシにするか。

 

「まっ、その前にもう使う事ない部品を片付けておくか」

 

「だったら、俺がやるっすよ」

 

そう言うや天海は、アタシがもう使わないと固めて置いていた物を持って食堂から出て行った。

やることイケメン…じゃないくて、確認作業しないと。

アタシが所持している分の一途コンパスを取り出して、針にずれがないかあらゆる角度から調整する。

 

うん。問題なしだな。

 

食堂に戻ってきた天海に「これで大丈夫だぜ」と裏面の状態で改造した一途コンパスを手渡す。

早速とばかりに天海が針の見える表面にひっくり返してみると、なぜか12個の針が全て高速回転していた。

 

 

………なんでだよ!?知らない内に妹増えたのか!?

 

 

「……これ、妹意外にも反応してるかもしれないっす」

 

「はあぁぁ!?」

 

思いついたかのように言う天海に、思わず脱力しそうになる。

んなの、アリかよ。

今度は針何本いるんだよ。

 

「あっ、でも多分1人分で済むと思うんで、頑張ってガチャ回してみるっすよ」

 

それでも出る確率はどれだけか分からないし「なら、オレ様のをやるよ!!」と無理矢理押しつけると、大ざっぱな妹探索器となってしまった一途コンパスの針がピタリとそれぞれ違う方角を指して止まった。

 

………妹、散らばりすぎじゃね?

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