ー第1幕ー深紅の吸血鬼
「ん・・・」
違和感。違う者がいるという、違和感。
「ふぁ・・・」
違和感を気のせいと処理し欠伸をしながら起きる。
しかし、違和感は一向に消える気配はない。しかも、チリチリとした感覚がうなじに走る。
周囲を見回してみるが、誰もいない。
「いたら大問題よね・・・」
自分の行動に、苦笑する。
彼女がいる部屋には朝日がうっすら差し込んでいた。
「・・・!!」
何を感じたのか彼女はいきなり部屋の扉を勢いよく開け、外に飛び出る。
「なんだ・・・」
そこにはいつもと変わらない博麗神社の風景があった。
ふぅ・・・と彼女ー博麗の巫女・博麗霊夢は思わずため息をつく。
馬鹿馬鹿しいーそんなことしか霊夢の頭には浮かばない。何も変わっていないのに違和感を感じるなんて。
でも、うなじのチリチリと感覚は未だ去る気配がない。
「気のせい・・・よね」
「何が気のせいなんだー?」
少しハスキーな間延びした緊張感の欠けらも無い、声。
「・・・!!」
反射的に声のした方に振り向きながら飛びずさる。
声のした神社の屋根に目を向ける。
そこには血よりも紅い、深紅の髪にボーイッシュな顔立ち、髪と同じくらい紅いワンピースを纏ったー
ー吸血鬼がいた。
☆★☆
「誰よ、アンタ」
霊夢が警戒心をむきだしにした声で訊ねると深紅の吸血鬼はコテっと首を傾げた。
ーちなみにこの時霊夢はその仕草があまりにも可愛らしかったため一瞬見惚れてしまった。
「・・・聞いてるんだけど?」
深紅の吸血鬼は答えずにただ、首を傾げている。
沈黙の数秒が流れる。
霊夢は次第にイライラが募ってきた。
「ちょっと、聞いてるんだから答えなさいよむ」
怒気を孕んだ声で言い放つ。
深紅の吸血鬼は、 また暫く首を傾げていたが、何かに気づいたらしく口を開いた。
「そっか、あたしの名前知らないのかー」
「当たり前じゃない。初めて会ったんだから」
予想外の言葉が飛んできて、ズッコケてしまいそうになるのをぐっと堪える。
相当な馬鹿なのかもしれない。いや、もしかしたらこれは自分をペースを崩すための策略なのかもしれない。
でも、今の言動に不自然さは欠片も感じなかった。相当な手練なのだろうか・・・。
霊夢の内心を知ってか知らずか深紅の吸血鬼は無邪気に笑う。
「・・・何が可笑しいのよ」
「いや?あたしの事を知らない奴なんていなかったから」
「はぁ?」
深紅の吸血鬼の言葉を聞いてくるうちに霊夢は警戒するのが馬鹿らしくなり、気を緩める。
「アンタ、そんなに有名なわけ?私はアンタのこと知らないんだけど」
神社の屋根の上に尚も居座り続ける吸血鬼ことなどつい先程まで全く知らなかった。
知らない奴がいないー霊夢は深紅の吸血鬼のことを知らない。恐らく魔理沙たちも知らないだろう。知らない奴がいないぐらい有名ならば1度でも話題にあがったはずだ。
「んー?あぁ。多分お前は知らないと思うぞー。だって
この世界の話じゃないから」