学戦都市の“元”ボッチ   作:生焼け肉

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んーなんか忘れているような、ないような……分からないです。
とにかくどうぞ!


変わらない思いと変わった思い

 

 

小町side

 

 

何が何だか分からなかった。突然兄の名前がこのページから出てきた時から、私の思考は止まったままだった。

 

雪乃さんは陽乃さんと何か話していたようだけど、その内容も耳や頭にも入ってこない。ただ1つ言えるのは、このページにお兄ちゃんが載っている事が未だに信じられない事だった。

 

 

雪乃「由比ヶ浜さん、小町さん。」

 

由比ヶ浜「………ゆきのん?」

 

小町「……どういう事なんですかこれ?お兄ちゃんが序列2位って……」

 

雪乃「落ち着きなさい。きっと彼の事だから何か卑怯で卑劣な手段を使ったに違いないわ。それに姉さんもあんな男を選ぶなんて……これはもう土下座程度じゃ済まされないわ。」

 

由比ヶ浜「そ、そうだよね!ヒッキーが序列2位なんてあり得ないよね!絶対ズルしたんだよ!ヒッキーマジ最低!」

 

小町「ですよね!本当にゴミィちゃんなんだから!小町的に超々ポイント低い!」

 

 

そうだよね!雪乃さんの言う通りだよ!ゴミィちゃんが序列2位?界龍の2番目?捻くれたな性格くらいしか取り柄のないゴミィちゃんがそんなに強いわけないよ!

 

 

由比ヶ浜「でもさゆきのん、私たちって界龍の事何も知らないからどうしようもないよ。界龍に知り合いいる?」

 

雪乃「残念だけど姉さんはダメね、洗脳谷くんにやられてるわ。残っているのは……川崎さんだったかしら?」

 

小町「あぁ!沙希さんなら何か知ってそうですね!番号分かります?小町知らないんですけど。」

 

由比ヶ浜「わ、私も知らない。」

 

雪乃「……どうやら生徒の方に直接聞いてみるしかないようね。」

 

雪乃「明日はちょうど休みなのだし、街に出て界龍の生徒がいたら聞き込みをしてみましょう。何かあるはずよ。」

 

2人「さんせーいっ!!」

 

 

小町sideout

 

陽乃side

 

 

雪乃ちゃんとの通信は終わったけど、本当に腹が立つ。まさかあんなにも歪んだ子になってるなんてね。

 

 

八幡「大丈夫ですか?」

 

陽乃「うん……ごめんね。君にとっては1番会いたくない人の1人の顔を見せちゃったからね、お姉さん反省。」

 

八幡「いいですよ、むしろありがとうって言いたいですよ。俺の代わりに怒ってくれたんですから。俺にはあんな事出来ませんし。」

 

 

やっぱり彼は優しい。界龍に来てから1年、そして彼と一緒に此処で過ごした期間は半年、八幡くんをちゃんと見たら色が全く違った。前の色は灰色で、何色にも染まらないような感じだった。

 

けど、仮面を捨てた今の私が見える色は、極彩色だった。それも綺麗に彩られた状態でいながらも激しさを感じるが、その中にも静けさと穏やかさを感じる色だった。

 

これだけでは表せない程の色の数と感情の表現が含まれている。

 

 

陽乃「八幡くんって本当に優しいよね。」

 

八幡「どうしたんです?突然そんなこと言うなんて。らしくないですよ?」

 

陽乃「あっはは!そうだね。でも本当にそう思うんだ……」

 

八幡「……初めて会った日のことでも思い出してるんですか?」

 

陽乃「流石だね。勘のいい子は嫌いって言ってるところだけど、君は別かな。君なら全部打ち明けられてもいい気がする。」

 

 

こんな気持ちになるなんてね。

 

 

八幡「そうなるのも仕方ないですよ。1番上ってのは、結構背負いたがるところありますからね。俺も人の前では、弱みなんて見せたくないので。」

 

陽乃「……やっぱり八幡くんと話してると気が楽になるよ。前ほど卑屈じゃないし、裏を探ろうとしないし。」

 

八幡「余計なのが混ざっていますが、それも仕方のない事でしたからね。人を信じられなかった頃の俺ですからね。」

 

 

ある意味私たちは似ていたのかもね。

 

 

八幡「まぁ、それも半年前で終わりましたけどね。陽乃さんは1年前ですけど。」

 

八幡「もう仮面をつける事や人の裏を探るような事せずに済みますからね。」ナデナデ

 

 

急に八幡くんは頭を撫でてきた。きっと彼は無意識でやっているんだと思う。それでも、手を止めてほしくないと思った。その手が凄く暖かかったから。

 

 

八幡「……ん?あっ、すみません。」

 

陽乃「八幡くん、続けてくれないかな?」

 

八幡「え?」

 

陽乃「私、今は妹でいたいな。」

 

八幡「こんなダメ兄貴でいいんですか?」

 

陽乃「うん、君がいい。」

 

 

それに今くらいしか出来ないと思うし。

 

 

 

 

 

 

 

暫く私は八幡くんに頭を撫でられていた。彼の撫で方は少し遠慮のような感じもあったけど、暖かさは充分に伝わってきた。

 

 

陽乃「分からないとは思うけどさ、お兄ちゃんってこんな感じなのかな?」

 

陽乃「なんか分からないけど、凄く守られてる感じがする。」

 

八幡「どうでしょうね……俺は自然体なので分かりません。」

 

陽乃「そっか、ならそうなのかもね。」

 

陽乃「あーあ、私にもお兄ちゃんがいてくれたらなぁ。そしたら雪乃ちゃんもあんな風にならずに済んだかもしれないのに。」

 

八幡「分かりませんよ?俺がいてもあんな風になった妹がいますからね。」

 

陽乃「ふふふっ、そうだね。でも、もし八幡くんが兄で私が妹だったら、きっと上手くいってたと思うなぁ。」

 

 

もしの話は好きじゃないけど、本当にそうなってくれたら私の人生は変わってたかもね。仮面もつけずに済んでたかもね。

 

 

八幡「お互いに苦労する妹を持ってるって部分は共感出来ますからね。でも、その共感も近いうちに消えるかもですけどね。」

 

陽乃「……そうだね。なら目一杯、仮のお兄ちゃんに甘えておこうかな〜♪」

 

八幡「ふっ、やっぱりそっちの方が似合ってますよ、貴女には。」

 

陽乃「うん、私もそう思ったよ。」

 

 

本当に彼も私も変わっちゃったね。凄くつまんない人間になっちゃった。でも、凄く退屈のしない生活は送れているから良しとしますか!

 

 

 

 

 

 




八幡は面倒見がいいから兄として見られるのは不自然ではないですよね。

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