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八幡たちが剣戟をしている中、陽乃と紗夜は睨み合いをしており、お互いの動向を探っていた。
陽乃「あれ、撃ってこないの?」
紗夜「お前の受け流しを見て普通に撃つのはあまりにもバカバカしい。今作戦を考えている。」
陽乃「またぁ?考えたってしょうがないんだから早く撃ってきなよ〜。そ・れ・に!君は私に向かってお前って言うけど、私大学生だぞー!ちゃんと敬語を使いなさーい!」
紗夜(相手を誘発するのが上手い。でも、今は冷静に相手の行動を読まなければ私に勝機はない。だがどうする?あれだけの強力な一撃を持つ相手に私の煌式武装で通じるのか?アークヴァンデルス改に罅が入る程の威力を持つあの蹴りにどう対処する?)
陽乃の余裕綽々な言動とは逆に、紗夜はどうするかを頭で必死に考え込んでいた。だが紗夜の作戦を練っている時間があまりにも長過ぎたのか、とうとう痺れを切らした陽乃は溜息をついた。
陽乃「はぁ………あのさ、君の今展開している煌式武装、私に壊されたいの?」
紗夜「っ!どういう意味だ?」
陽乃「だってさ、ずっと一定の場所にしかいないから誘ってるのかな〜って。私からしてみれば、早く壊して下さいとしか見えないよ?その行動。」
紗夜「………お前にはこいつは壊せない。」
陽乃「へぇー大きく出たねぇ。じゃあさぁ、気の済むまで攻撃していいのかな?私に壊せないんだったらさぁ……」
紗夜「っ!!」
急に陽乃の雰囲気が一変し、紗夜は周りの気温が一気に下がったような錯覚に陥った。そして陽乃からは、冷たい声に加えて冷気を帯びた視線を紗夜に浴びせていた。
すると次に陽乃がとった行動は、右脚と右腕に星辰力を溜め込んでいた。
陽乃「邪符を焼き払えっ。急急如律令。」
陽乃は呪符を取り出してそう唱えた後、右手脚から炎が燃え上がっていた。
紗夜「っ!あれは厄介……絶対に近づけさせない!」
紗夜は移動しながら攻撃の機会を伺っていたが、突然陽乃がその場から消えていた。
紗夜「っ!一体どこへ行った?」
陽乃「真上だよっ!鳴神落とし・焔!!」
紗夜は回避しようとするも、距離や移動速度の比率もあって間に合うはずもなく、左腕に装着していた武装が一瞬にして使い物にならなくなってしまった。その状態は煙が上がっており、陽乃が踵落としを決めた場所は大きく損傷を受けた後があり、砲身については曲がっている程だった。
紗夜「くっ……っ!!ま、まさか……本当に?」
陽乃「やっぱり君さ、私の事ナメてるよね?壊せないってさっき言ってたけど、いとも簡単に壊せちゃったけど?これでも私、界龍の序列4位なんだけどな〜。八幡くんはとても優しいから、この辺りでギブアップとか勧めるんだろうけど、私って彼みたく優しくは出来ないからさ。言うなら自分で言ってね?それまで私は続けるから。」
紗夜「………」
紗夜は返事を返さなかった。返せなかったのだ。これだけ圧倒的な強者に対しての実力差の痛感、そして何より破壊される事が無いと思っていた自身の煌式武装を最も簡単に破壊された事により、完全に戦意を失っていた。
陽乃「………はぁ。一応、忠告はしたからね。後はどうなっても私は知らないよ?」
陽乃は冷たい視線を送ったまま燃え上がる脚を上げ、もう片方の武装に狙いを定め、勢いよく振り下ろした。
だが武装は壊れる事なく、逆に陽乃の右脚は
陽乃「………八幡くん。」
八幡「陽乃さん、幾ら何でも大人気ないのでは?少し落ち着いてください。今の陽乃さんは陽乃さんらしくない。」
陽乃「私のとってる行動ってそんなにおかしい?」
八幡「少なくとも俺にはそう見えます。普段の貴女ならこんな無意味な追い込みは絶対にしない。俺が知ってる普段の陽乃さんなら、ですけどね。」
陽乃「………」
八幡「………」
陽乃「……そうだね、今の私は少し変かも。今日は何か調子が出ないや。ゴメンね八幡くん、止めてくれてありがとう。それに沙々宮ちゃんもゴメンね。」
八幡「俺はいいですよ。沙々宮、この試合まだ続けるか?」
紗夜「………いや、いい、私の負けだ。」
『沙々宮紗夜、
試合終了のブザーが鳴り、実況の梁瀬も試合終了の実況を始めた。
梁瀬『試合終了〜!!勝者、比企谷八幡&雪ノ下陽乃ー!!これもまた見事な完勝劇でしたね!チャムさん!』
チャム『いや〜本当に凄かったっスね〜!特に比企谷選手と刀藤選手の剣戟が1番白熱したっス!!』
梁瀬『しかーし!!これでまた凄い事になりました!!比企谷、雪ノ下ペアの勝利により、次の対戦カード全てが界龍ペアによる激しい叩き合いという事になりましたー!!!』
チャム『次の試合も楽しみっスね!!』
陽乃「………」
八幡「陽乃さん、大丈夫ですか?」
陽乃「………ゴメン。ちょっと微妙、かな。体調はなんともないけど、気分は最悪って感じ。」
こうして《鳳凰星武祭》の準々決勝最終試合は八幡と陽乃の圧勝という形で幕を閉じた。