八幡side
界龍に帰って来た俺たちを迎えたのは、界龍の生徒と教師による大歓声と拍手、そして初の準決勝独占の快挙に全員が大盛り上がりしていた。
星武祭は6学園の学生たちが覇を競う大会でもあるが、その大一番手前の段階で1学園のみが残るというのは今までに前例がない事だった。
優勝もしていないのにこれだけ盛り上がれるのは驚いたが、共に笑い、喜び合える仲間がいるのはそれだけで違うものだと改めて痛感した。
当然の事だが、準決勝に残ったメンバー8人はそれぞれ言う事言わされたが、特にどうという事もなく終わった。
飯もあのドンチャン騒ぎのおかげで作る手間も省け、食い物と喜びで腹一杯だった。
八幡「ふぅ〜………全く違うな、あの頃とは。」
あの頃とは総武時代の事だ。あの頃は嬉しかった事はあれども、素直に喜ぶなんて事はしなかった。
あの環境で喜びを表現するのは、もう無理だな。というよりもしたくない。
考えた事なかったが、俺はあの場所に帰る事はあるのだろうか?個人的には帰りたくないなんて事はないが、今の居場所は此処だから帰りたいとは思わない。
………どうなのだろう?
pipipi…pipipi…
ん?ガードナーか?まぁ葉山の事だろうな。断る理由もないから開くか。
そして俺はウィンドウのcallボタンを押してガードナーと連絡を取った。
パーシヴァル『今晩は、比企谷さん。この度は準決勝進出おめでとうございます。』
八幡「恐悦至極にございます……とでも言えばいいのか?」
パーシヴァル『いえ、私に向かってそのような言葉遣いは不要です。普段通りで構いません。』
八幡「まぁその方が俺も助かる。」
やっぱガードナーって大抵の事では表情崩さないんだな。
八幡「それで?今日はどうした?葉山が動いたのか?」
パーシヴァル『いえ、行動はとっていませんが、対象の葉山隼人さんは依然として普通ですが、貴方の話題が出てくると必然とも思えるくらいに心が乱れていました。』
八幡「どんな感じで?」
パーシヴァル『簡潔に述べると、比企谷さんの罵倒や見下しなどです。おそらく自身が上だと主張しているのでしょう。』
うげっ、雪ノ下たちとまんまだな。
パーシヴァル『この件は既に会長にも報告してあります。星導館学園とクインヴェール女学園へのご報告も致しましょうか?』
やっぱりこの前話した面子には報告するように言われてんだな。
八幡「それには及ばん。俺から「pipipi…pipipi…」ん?誰だ?」
戸塚?どうしたんだ?まぁちょうどよかった。紹介がてら報告でもしてもらうか。
八幡「よう戸塚。」
戸塚『八幡!今は挨拶どころじゃ………お話中だったかな?』
八幡「いや、ちょうどよかった。もう1人はガラードワースのパーシヴァル・ガードナーだ。今、お前と似たような事をしている奴だ。』
パーシヴァル『初めまして。聖ガラードワース学園所属のパーシヴァル・ガードナーと申します。以後、お見知り置きを。」
戸塚『い、いえ、どうもご丁寧に。戸塚彩加です。それよりも八幡、似たような事って?』
八幡「あぁ、ガードナーは葉山を監視してくれているんだ。ガラードワースでも違う意味で生徒会に目をつけられているみたいでな。」
戸塚『葉山くんもなんだ……じゃあ僕の話もガードナーさんに聞いてもらったほうがいいかな?』
エンフィールドは教えてないんだろうが、まぁいいだろう。
八幡「そうだな……戸塚、お前は知らんだろうが、俺たちはこういう関係なんだ。」
俺は星導館、ガラードワース、界龍、クインヴェールの同盟について話した。
八幡「っとまぁこういう事だ。」
戸塚『……そこまで警戒していたんだ。なんか雪ノ下さんたちも凄いね。途中でガードナーさんの状況も聞いたし、僕からも報告するよ。八幡、雪ノ下さんたちが動いた。裏はやっぱりレヴォルフだったよ。』
八幡「………戸塚、俺は分かるがガードナーは初めてだから分かるように頼めるか?」
戸塚『そ、そうだね!じゃあ前の報告の件から話すね!』
そして戸塚は、雪ノ下たちが計画を立てている時から動き出した時の事まで丁寧に説明してくれた。
戸塚『っていう感じだったよ。』
パーシヴァル『……成る程、つまりは餌で獲物を釣るといった感じですね。』
戸塚『うん、そんな感じだよ。』
八幡「つまらねぇ事するな。【悪辣の王】もそんな奴らに手貸して何になるってんだ?俺がオーフェリアと絶縁なんてありえねぇってのによ。」
パーシヴァル『ですが比企谷さん、お相手には妹もいるのですよ?よろしいのですか?』
八幡「此処に来て1ヶ月くらいで決めた事だが、俺は今の4人とは絶縁するって決めてたんだよ。血縁だろうと関係なくな。」
パーシヴァル『比企谷さん………』
戸塚『許してあげようとは思わないの?』
八幡「奴ら側についている時点で、俺の敵だ。寝返ったとしても絶対に兄だなんて呼ばせねぇよ………話が逸れたな、とにかく決勝だな。それまでは考える猶予がある。」
パーシヴァル『私たちガラードワースはどうします?』
八幡「いや、今回は何もするな。お前らは葉山の方を頼む。そいつが問題を起こしてくれた時で構わない。」
パーシヴァル『……分かりました。』
八幡「だが星導館が問題扱いされんのも気が引けるな。俺自身どうでもいいが、星猟警備隊に見つかったらタダじゃ済まされねぇからな。」
戸塚『僕がクローディアさんに報告してその日になったら止めに行くってのもあるよ?それじゃダメなの?』
八幡「星武祭開催期間はどこもかしこも空気が重いし、決闘も禁止されてる。怪しまれるのは確実だ。それにだ、多分奴らは新開発エリアの方でやるだろうからな。あの辺なら警備隊が睨みをきかせていないわけがない。やるにしてもリスクが高過ぎる。」
戸塚『そっか……』
パーシヴァル『前々から思っていましたが、やはり比企谷さんは頭の回転が速いですね。こんなにも物事を考えるスピードが速いとは……』
八幡「あまり考えたくはないけどな。」
無意味に頭痛くなるし。
戸塚『じゃあこの話はまた明日にしよっか?八幡も明日準決勝あるし。』
パーシヴァル『そうですね。比企谷さんはゆっくりと身体を休めるべきです。』
まだ話してても平気だが、ここは素直に聞いておこう。
パーシヴァル『ですが、その前に……』
ん?まだなんか報告でもあったか?
パーシヴァル『比企谷さん、紅茶の淹れ方の事なのですが……』
シリアスな雰囲気台無しだよ!?
君この状況でよくそんな事を聞けたね!?
取り敢えずこの話はここまで。
次は準決勝後という事になりますね。