悪意
八幡side
文化祭や修学旅行の件で、俺の学校の評判は最底辺と言ってもいいだろう。むしろあれだけの事をして何もない方がおかしいというものだ。現に周りは俺を見ながらヒソヒソと呟き合っている。前までの俺なら耐えられたが、今では相当きている。当然のこととは言え、耐え難いものがあるのは事実だ。
男1「おい、あいつだろ文化祭の時の。」
男2「あぁ。確か女子泣かしたんだってな。最低だな。」
男3「しかも、あの眼見ろよ。ヤベェってアレ。」
男2「おいバカ見るなって!お前も腐るぞ。」
男1「うわっ!マジかよ……」
女1「ねぇあの人でしょ。修学旅行で告白の邪魔したって男子って。」
女2「そうそう。気持ち悪いよね〜。」
女3「しかも本読みながらニヤニヤしてる奴でしょ?キモいよね〜。」
……何て会話が聞こえてくるのも日常茶飯事だ。
今までは聞き流したりしてきたが、こんなに長く続くとそんな事しなくても頭の中にまで話し声が聞こえてくるようになる。別に気にはしてないが思うところもある。
それに………あの時の……
雪乃『貴方のそのやり方、嫌いだわ。』
結衣『人の気持ちをもっと考えてよ!』
そんな事まで、思い出してしまう。
何で………何で俺だけこんな目に遭うんだ……
戸塚「八幡ー!!おはよう!!」
八幡「お、おぉ、戸塚か……」
戸塚「どうしたの八幡?なんか元気無いよ?具合でも悪いの?」
……戸塚が心配してくれているが、今はどんな言葉を掛けられても全然気分は良くなる自信がない。
八幡「いや、別に大丈夫だ。ありがとな。」
戸塚「良いけどあんまり無理しないでね。そろそろ戻るからね!」
八幡「おぅ………」
こんな優しい言葉を掛けられても全く気分が上がらない。大天使トツカエルの力でもダメだった。今の俺の状態は、自分でも分かるほど最悪だった。どんな事もどうでもよく思えてくる。
………高校を卒業するまでこれが続くのだろうか。
八幡sideout
雪乃side
この前の文化祭と修学旅行の件で彼の眼は以前よりも腐ったように思えるわ。当然の事だけれど、彼は余りいい行動をしていないとはいえ、少し同情したくもなるわ。
私としては、彼の気持ちを少しでも和らげようと思うけれど、感情とは真逆の事を言ってしまう。
何故かは分からないけれど、彼の前だと落ち着かない。以前なら平気だったのに、今はとても思う言葉が出ない。
……本当に……何故かしら。
私がそう思っていると……
八幡「………うす」
雪乃「あら、来たのね。告白谷くん。」
八幡「なぁ、傷つくからもうそれやめてくんない?」
雪乃「あら、ゾンビが傷つくとは思えないのだけれど。」
八幡「……もういいわ。」
………またやってしまった。何故こうも裏目に出てしまうのかしら。思ってもないことを口に出してしまう。さっきから思い通りにいかない。こんな自分が嫌になるわ。
ガラガラ
結衣「やっはろー!」
雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん。」
結衣「ヒッキーも、やっはろー!」
雪乃「由比ヶ浜さん、無駄よ。彼はもう碌に挨拶も出来ないのだから。」
結衣「えぇ!?そうなの!?ちゃんとあいさつするし!ヒッキーマジキモい!!」
八幡「俺まだ何も言ってないんだけど……」
結衣「それでもするし!!」
八幡「わーったよ。」
………またやってしまった。何故こうなってしまうの?彼は今もまた傷ついているかもしれないのに、どうして私はまともな事を言えないのかしら。こうしてまた由比ヶ浜さんを誤解させてしまった。
……考えるのは、もうやめましょう。また自分の頭の中が整理出来なくなるだけだわ。
雪乃sideout
結衣side
雪乃「……今日はこのくらいにしましょう。」
結衣「そーだねー!ゆきのん一緒に帰ろー!」
雪乃「なら、少しだけ待っててもらえるかしら?鍵を返しに行くから。」
結衣「うん!いいよー!」
八幡「……じゃあな。」
結衣「え?ヒッキー、一緒に帰らないの?」
八幡「あ?帰るわけねーだろ。」
結衣「そ、そっか……」
ガラガラパタンッ
結衣「…………」
雪乃「…………」
結衣「なんかヒッキー、変わったよね。なんてゆーか暗くなったって言うか。」
雪乃「そうね。でも仕方の無いことよ、それだけのことをしてしまったのだから。」
結衣「う、うん……でも……」
雪乃「そっとしておいてあげましょう。私達に出来ることはないのだから。」
結衣「……うん、そうだね……」
結衣sideout
八幡side
その後、下駄箱に向かい靴を取り出す。だが中からは、悪口の書いてある大量の紙くずと、キズついた靴があった。
……物に当たるなよ。
そう思いつつ、下駄箱から取り出し上履きを戻してから靴を履く。そして自転車のある駐輪場に向かう。日常だが非日常だった。そう思いながら向かってみると、自転車のチェーンが外されていた。
またかよ……よく飽きねぇな。
そう思いながら自転車を押して帰る途中、展望台のある坂に辿り着いた。
ちょっと寄ってくか……
そう自分に言いつけ、坂を登っていく。
まだ少し晴れてはいるが、いい景色だった。少しだけ気分が良くなる。ほのかに香る潮の匂い。心地いい風。
………このままこの時間が続けば良いのに。そう思っていると、徐々に日が暮れはじめてきた。まるで自分の心の中を表しているかのように。
八幡「はぁ、帰るか……」
そう思って歩き出そうとした時…………
男1『おい、あいつだろ。文化祭の時の。』
八幡「!?」
男2『あぁ。確か女子泣かしたんだって。最低だな。』
男3『しかも、あの眼見ろよ。ヤベェってアレ。』
八幡「………やめろ。」
男2『おいバカ見るなって!お前も腐るぞ。』
男1『うわっ!マジかよ……』
八幡「……やめてくれ。」
女1『ねぇあの人でしょ。修学旅行で告白の邪魔したって男子って。』
女2『そうそう。気持ち悪いよね〜。』
女3『しかも本読みながらニヤニヤしてる奴でしょ?』
八幡「やめてくれ!!!」
雪乃『貴方のそのやり方、嫌いだわ。』
結衣『人の気持ちをもっと考えてよ!』
八幡「やめろおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
そして、突然身体から大量の光と黒い物体が出て来た。自分にも何が起きているのか分からなかった。だがこれだけは分かった。
俺は何か特別な力を持っている………
そう思いながら俺は気を失った。
まだ始めたばかりですが、ちょっとは上手くできたかなとは思います。感想の方、お願いします。