八幡side
シルヴィア「おぉ〜!ここがららぽーとかぁ!大きいねぇ!」
午前10時半、俺たちは10時頃にホテルを出て、早速デート(シルヴィがそう言わないとうるさいから。)へと向かった。
大体行くところは決めてあるから、そんなに右往左往する事はないだろう。
八幡「六花には大型店舗じゃなく専門店が多いからな。シルヴィにとってこういうのは新鮮か?」
シルヴィア「うん。私世界中でライブとかするけど、楽しむ時間ってそんなになかったから、街とかってあんまり回ってなかったんだよね〜。」
八幡「なら今回のライブ後でこんな事するのは珍しい方なのか?」
シルヴィア「というより滅多にないんだ。ツアーとかもあるからそんなにのんびりとか出来ないから。」
うん、要するに大変って事だ。
シルヴィア「それにしても、こんな朝からなのに人多いね。何かあるの?」
八幡「何でだろうな?学生は秋休み入ってるからいるのは問題ないが、こんなに人が多いのは何でだ?」
シルヴィア「八幡くんでも分からない?」
八幡「知るわけないだろ?」
しかもそれに伴って、やたらと視線が集まる。そして立ち止まる人も多い。そしてポケットやカバンから携帯取り出して写真を撮ろうとする。分かってる?それ盗撮だからね?許可取って。
シルヴィア「じゃあ行こっか!まずは服屋さんから行こ〜♪」
八幡「コーディネートは任せた。」
シルヴィア「お任せあれっ!」
ーーー洋服店ーーー
店員「いらっしゃいま……へっ!!?」
ん?噛んだ?
シルヴィア「じゃあメンズコーナーに行って君を着せ替え人形にしながらコーディネートしていくからね。」
八幡「………マネキンの気持ちがよく分かった瞬間だ。」
シルヴィア「八幡くんは今から私のマネキンだよっ!」
八幡「じゃあズボンとかもシルヴィが履かせてくれるのか?」
シルヴィア「あぅ///…………マネキンは取り消します///」
冗談で言ったつもりが間に受けちまったようだな。
八幡「冗談だから服選んで来い。俺に渡してくれれば着るから、その時に感想頼む。」
シルヴィア「う、うん///」
さて、シルヴィはどんな服を持ってくるのかね?気長に待ちますか。
ーーー10分後ーーー
シルヴィア「お待たせ〜!まずはこれ着てみて!」
八幡「あぁ。」
………俺にこの色って似合うか?
八幡「シルヴィ、一応着てみたがどうだ?」
シルヴィア「着替え終わった?おぉ〜流石八幡くん、着こなしてるね〜!」
八幡「ホントかよ……」
俺が今着てるのは、ベージュのパーカーに少し濃い赤の長袖シャツに黒のズボン。首には十字のネックレスをつけてる。
シルヴィア「うんうん、八幡くんいつも黒っぽいのしか着てないから良いよ!」
八幡「まぁ黒は割と好きだからな。」
今着てるのも黒だし。
シルヴィア「じゃあこの服買おっか!八幡くんにも似合ってるし!でも、まだまだ探すからね〜?」
八幡「好きなだけ付き合ってやるよ。シルヴィのセンスに任せる。」
そして俺はシルヴィにお任せで洋服を選んでもらった。だが結局、買ったのは最初の一式だけだった。
シルヴィア「此処って本当に色んなものがあるね。見るのが楽しくなってくるよ。」
八幡「そう言ってもられると、来た甲斐があるな。シルヴィ、ららぽの他にはどこか行きたい場所はあるのか?」
シルヴィア「…………うん、あるんだけど……きっと八幡くんは嫌だと思う。」
八幡「総武高校か?」
シルヴィア「やっぱり分かるんだね。ううん、嫌って言った時点で当然だね。」
八幡「俺は別に構わないぞ?」
シルヴィア「え?で、でも……」
八幡「俺はな、あの学校自体は憎んではいない。生徒の奴らは憎んでこそいるが、感謝もしている。」
シルヴィア「………え?どういう事?」
まぁそうなるよな。当然だ。
八幡「シルヴィ、お前パラレルワールドって知ってるか?」
シルヴィア「聞いたことくらいは……」
八幡「簡単にいうと俺たちが今いる世界とは異なる世界だ。だが、日付や時間は同じだ。やってきた行動で変わったりする。迫られた選択によって世界は変わるからな。」
シルヴィア「……要は違う世界って事だよね?」
八幡「そうだ。」
シルヴィア「でも、それが何?どうやったら感謝なんて出来るの?」
八幡「俺は文化祭、修学旅行で散々な目に遭った。それはその後の学校生活でも同じだ。それは理解してるよな?」
シルヴィア「うん、実際に聞いたから。」
八幡「けど、俺がもしあの状態で星脈世代の力を暴走させていなかったら?もし展望台に行ってなかったら?どうなってたと思う?」
シルヴィア「………六花には来てない?」
八幡「まぁ確実にその時期には行ってないだろうな。六花に行ってないって選択肢はないとは言い切れないが、あの時の俺があのまま学校に居られるはずがないからな。そのくらいの状態だ。」
八幡「まぁただの自己満足かもしれないが、学校の俺を散々罵ってくれた奴には、俺を追い込んでくれてありがとうって感じだ。そうでなきゃ俺は、界龍でこんな生活はできてねぇし、シルヴィとも出会えてなかった。そう思うと、俺は奴らにも感謝出来るんだよ。」
皮肉にも聞こえるけどな。
シルヴィア「………八幡くんはそんな考え方もできるんだね。凄いよ。」
シルヴィア「普通の人だったら無理だよ。そんな考え方なんて出来ないよ。私も含めて。」
八幡「まぁ、そうだろうな。自分をバカにした連中の事を許せる奴は稀だ。そんな奴、滅多にいない。」
シルヴィア「八幡くん、自分の事珍しい人間だって思ってるの?」
八幡「ん?……あぁいや、そういう事じゃなくて……いや、自分から言っちまってたもんな。」
シルヴィア「あっはは!八幡くんってば可笑しっ!自分の事を珍しいだなんて!」
ぐっ……してやられた。
シルヴィア「でも、その通りかもね。自分を中傷した人を許せる人なんてそうそういないよね。」
八幡「考え方も人それぞれだからな。俺がこんな考え方をしているだけだ。」
シルヴィア「でも立派だよ。やっぱり八幡くんは優しいね。」
うぅむ……優しいって言葉は未だに慣れないな。何度も言われているはずなのに。
八幡「それで、どうすんだ?総武高行くのか?」
シルヴィア「うん、八幡くんがよければ。」
八幡「んじゃ行こうぜ。1年ぶりだな。」
そこまで楽しみって程でもないけどな。