学戦都市の“元”ボッチ   作:生焼け肉

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1年間の空白とただいま

 

 

八幡side

 

 

そして車が走る事数分、ようやく着いた比企谷家の前で車が停まった。

 

 

平塚「さて、着いたぞ比企谷、リューネハイムさんも。比企谷は懐かしいんじゃないか?」

 

八幡「んー……特に思い出したりとかして無かったので、それ程でも無いですね。平塚先生は何回か来てるのでは?」

 

平塚「あぁ、今年は8月に来たな。君の《鳳凰星武祭》の時にな。私もその時驚いたぞ。君があんな場所に居るなんて思ってもなかったからな。」

 

八幡「……そうですか。」

 

平塚「まぁ早く会ってやるといい。両親もさぞ心配しているだろう。」

 

 

そうには思えないけどな。小町過保護主義者と俺放任主義者のあの両親に俺を心配する気遣いがあるとは思えない。

 

 

八幡「送ってくれてありがとうございます。行くぞシルヴィ。」

 

シルヴィア「うん。」

 

 

車から降りて玄関の前に立った。此処も1年ぶりだというのに、懐かしいとは感じない。

 

 

平塚「ではな比企谷、ご両親にもよろしく言っておいてくれ。」

 

 

そして平塚先生は再び車を走らせて、そのまま見えなくなってしまった。

 

 

シルヴィア「………此処が八幡君の家なんだ。」

 

八幡「……まぁな。変わりない普通の一軒家だ。」

 

 

今家の庭の方の窓を見て気付いたが、居間に明かりが点いている。誰かが居るのは確実だな。

 

 

シルヴィア「どうしたの?入らないの?」

 

八幡「ん?あぁ、済まない。じゃあ行くか。」

 

 

そして俺は自分の家なのにも関わらず、家のインターホンを鳴らした。

 

 

比企谷母『は~い、どちら様ですか?」

 

 

そして顔を合わせるのは1年と半年ぶりの俺の母親の姿が出てきた。

 

 

八幡「久しぶりだな、母ちゃん。」

 

比企谷母「………はち……まん?」

 

八幡「あぁ、1年前の今頃に姿を消したアンタの不良息子、比企谷八幡だ。ただいま。」

 

 

母ちゃんは何か言いたげだった。だが、何故かそれを言葉にする事なく、無理矢理抑え込んだかのように喋り出した。

 

 

比企谷母「………」

 

八幡「………家に入れてもらってもいいか?今はこの雨だから、止むまでの間でいいから世話になりたい。」

 

比企谷母「っ!え、えぇ……勿論いいわよ。アンタの家でもあるんだから遠慮なんてしなくていいよ。」

 

 

詰まった喋り方だった。何?そんなに帰って来て欲しくなかったのか?それならそれでハッキリ言えばいいものを。

 

 

ーーー比企谷家内ーーー

 

 

八幡「シルヴィ、まぁ大体予想してる事は分かるが、俺の母親だ。」

 

シルヴィア「初めまして、息子さんの八幡君とお付き合いをさせて頂いております、シルヴィア・リューネハイムです。よろしくお願いします。」

 

比企谷母「ご、ご丁寧にありがとうございます。八幡の………は、母です。息子がいつもお世話になっています。」

 

シルヴィア「いえそんな!最高の恋人です!」

 

比企谷母「そ、そうですか………」

 

 

………何で『母』って言う部分を渋ったんだ?そんなに嫌だったのか?

 

 

八幡「シルヴィ、暫く俺の部屋で待っててくれないか?2階に上がったら札があるからすぐに分かる。手洗いは階段の左を真っ直ぐ行って左側の扉だ。(母ちゃんと話がしたい。少し待っててくれないか?)」

 

シルヴィア「うん、分かった!その間八幡君の部屋を見てるね!(いいよ。大事な事だから構わないよ。)」

 

八幡「あんまり覗き見とかするなよ?(済まん、待たせる事になる。)」

 

シルヴィア「そんな事しないよ~。じゃあ待ってるね♪(大丈夫!頑張ってね♪)」

 

 

シルヴィと会話をし終わったら、今から出て2階へ上がる音が聞こえた。

 

………もう大丈夫だな。

 

 

八幡「………少し話さないか?真面目な話も含めて。」

 

比企谷母「………今更私に何を話すの?」

 

八幡「向こうの小町の事と、今後の俺の事だ。」

 

比企谷母「………分かったわ。」

 

 

母ちゃんの了解を得て、俺達は居間にある食卓へと座った。

 

 

八幡「んじゃあ、俺の事から話そうか。小町の方はヘビーだからな。最初に話すには重過ぎるからな。」

 

比企谷母「小町が何かしたのかい?」

 

八幡「簡単に言うとな、だがそれは後だ。俺の事から話したい。」

 

比企谷母「………話していいよ。」

 

八幡「そんじゃあ先ずは、1年間居なくなって済まなかった。」

 

比企谷母「………え?」

 

 

え?なんか驚くところあったか?

 

 

八幡「まぁ母ちゃんや親父からすればどうでもよかったかもしれんが、一応な。」

 

比企谷母「………何で?」

 

八幡「?」

 

比企谷母「何で………アンタが謝るの?」

 

八幡「いやだって突然家出みたいなのしちまったからな、そりゃ謝るだろ。」

 

比企谷母「………」

 

八幡「続けるぞ?知ってるとは思うが、俺は今六花の界龍第七学院って学院に在学して寮住まいだ。向こうでは問題なく過ごせているから、暮らしには困ってない。友人も出来たし、さっき紹介した恋人も出来た。心配……なんてするわけないか、一応……近況報告?みたいなもんだ。」

 

 

実際、俺から母ちゃんに言う事なんて何も無いからな。心配かけたっつっても、あっちは何も思ってねぇだろうし。

 

 

比企谷母「………それだけ?」

 

八幡「え?」

 

比企谷母「それだけなの?他には何も無いの?」

 

八幡「そう言われても……何もないが?」

 

比企谷母「嘘に決まってるわ!!」バンッ!!

 

八幡「………」

 

 

おいおい、突然何だよ?っていうか何で嘘だって思うんだ?

 

 

八幡「……何で母ちゃんはそう思うんだ?」

 

比企谷母「何で……何でそんな平気な顔で私の事を母親だなんて呼べるのよ!?何で平気な顔でこの家に帰って来たのよ!?アンタにとって私達家族なんてどうでもいい存在でしょ!?何でっ!?」

 

八幡「………1つ目のだが、俺の母親はアンタしか居ないからだが?他に誰が居るんだ?2つ目は、此処が俺の家だからだ。3つ目に関しては意味が分からんのだが?何故俺が家族をどうでもいいって思えるんだ?」

 

比企谷母「そんなの上っ面でしょ?1年間アンタが居なくなって私も旦那もよく考えたわ。何で居なくなったのかって………答えはすぐに出たわ。この家、家族に愛想尽かしたんだって!そんな理由でもなきゃ、アンタがこの家から出て行くわけが無いじゃない!!」

 

八幡「………」

 

比企谷母「すぐに帰ってくると思ったわよ。アンタの事だから、悪びれもせずにすぐに帰ってくると思ってた。でも、何日、何週、何ヶ月経っても帰ってこなかった………これだけの間行方が分からず、学校側からも転校したなんて聞いても納得出来ないわよ!!」

 

八幡「………」

 

比企谷母「アンタが居なくなってから段々喪失感が湧いてきたわ。いつも帰ってきたら寝てるか本読んでるアンタの姿もなければ、休みの日には帰って来た時の『ただいま』の返事もないし、偶に作る料理だってアンタが居ない事を忘れて一人分多く作っちゃう。分かってるのよ、自分勝手だって!ずっとほったらかしだった息子に対して急に寂しさを持つのよ?アンタからしてみれば気持ち悪いと思う筈よ。でも……でも……例え嫌われていても、1年間も訳の分からないまま会えなかったら辛いのよ!!………うっ……うっ……」ポロポロ

 

 

………俺は、人生で初めて母ちゃんの本音を聞けた気がする。そりゃ俺が母ちゃんと会話する事なんて、まず滅多に無かったからだ。もっと言えば、今までの俺があんな感じだから、家族にも避けられていたのかもしれないが。

 

 

八幡「………そうだな、少し整理するか。俺がこの家から居なくなったのは、別に家族が嫌いだからとかそんな理由じゃない。学校側から俺がいじめを受けていた事は聞いてるか?」

 

比企谷母「……グスッ……えぇ。」

 

八幡「その原因もあって俺は後天的に星脈世代になった。そしてそれからは、横浜でとある人と2週間生活して、六花に行った。母ちゃんの言う愛想を尽かしたんじゃない。それに、俺の家族は俺に愛想を振りまく程暇な奴等じゃないしな。」

 

比企谷母「………」

 

八幡「俺も悪かった。親父や母ちゃんは、俺の事なんて気にしない、すぐに忘れると思っていた。けど、母ちゃんはそんな風に思ってたんだな。」

 

比企谷母「……当たり前よ。アンタの事を放っておいたのは認めるけど、こんなに長い間居なくなってたら、私でも辛いわよ。」

 

 

まぁ、その気持ちは分からなくもないな。シルヴィと離れ離れになってた期間は確かにキツかった。帰ってきた時、その反動もデカかったしな。

 

 

比企谷母「………じゃあアンタは、私の事を…………まだ母親だと呼べるの?」

 

八幡「当たり前だろ?俺は別に両親を恨んでいるわけじゃないからな。」

 

 

小町はどうでもいいけどな。けど、それは後でだ。

 

 

比企谷母「……グスッ…うっ……うぅ……」ポロポロ

 

八幡「俺、まだ言われてなかったな。帰ってきたんだ、言ってもらってもいいよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ただいま、母ちゃん。」

 

比企谷母「……お帰り、八幡!」ダキッ!!

 

 

俺は、赤ん坊の頃以来に母ちゃんから抱き締められた。

 

 

 




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