八幡side
チーム・ランスロットが負けた……今でも信じられない。フェアクロフさんが率いて過去に連覇を成し遂げた程の強豪チーム。今回の星武祭では間違い無く最強と言ってもいいチームだ。そんなチームが、今回初の星武祭出場チームに敗れるなんて誰が予想した?
誰も予想していないだろう。むしろ誰もがランスロットの勝利を確信していたに違いない。俺だってそうだ。
だがその確信は敗北という形で現れた。周りもそうだが、一番辛いのはこれまでチーム・ランスロットを率いて戦ってきたフェアクロフさん自身だろう。
あまりにも辛過ぎる……
八幡「………ただいま。」
シルヴィア「……お帰り八幡くん。」
笑顔で迎えてくれたシルヴィだが、俺の声量と声の低さで気付いたのか、少し笑顔が曇っていた。
シルヴィア「………チーム・ランスロット、残念だったね。これまで無敗だったチームなのに。」
八幡「あぁ……けど、フェアクロフさんからしてみれば残念なんてもんじゃないだろうな。1年目、2年目と制してきた《獅鷲星武祭》の無敗記録を、たかが初出場のチームに破られたんだからな。こんな屈辱的な事は無いだろう。」
シルヴィア「………うん。」
……ダメだなぁ、シルヴィにこんな話をさせるなんて。けど、今くらいはいいか。
八幡「まぁ今回の《獅鷲星武祭》は復活戦があるからな。そこで復活してくれればチャンスはある。」
シルヴィア「……そうだね。アーネストには頑張ってもらわないとね。八幡くんが決勝で待ってるんだから。」
八幡「あぁ、そうだな……うしっ、湿っぽい話はこれでもう終わりだな。」
シルヴィア「うん!八幡くん、本戦出場決定おめでとう!」
八幡「……あぁ、ありがとな。」
シルヴィア「さぁ入って入って!今日は腕によりをかけて作ったんだから♪」
八幡「ふっ……分かったからそんなに引っ張るなよ。」
シルヴィといるこの時間が、俺にとっての1番の幸せな時間だ。どんな時よりも幸福を感じられる。
ーーー夕食後ーーー
ふぅ………今日の晩飯も最高だった。シルヴィの奴日に日に料理の腕上げていくから追い抜かれないか心配だ。大丈夫だよな?俺の腕落ちてたりしないよな?
シルヴィア「八幡くん、何考えてるの?」
八幡「いやな、俺の料理の腕落ちてないか心配になってな。最近作ってないから。作ってないっていうか作れないんだけどな。」
シルヴィア「八幡くん……もしかしなくても私よりも料理下手になったとか思ってないよね?」
八幡「ん?思ってるが、どうしてだ?」
シルヴィア「もう!あれだけ美味しい料理が作れる人がどうしてそんな風に思えるのさ!私なんて八幡くんの足元にも及ばないよ!八幡くんの料理はプロでも舌を巻いてビックリするほどの腕前なんだから、自信をもつ!」
いや、プロが舌を巻いてビックリするほどの腕前なら、俺はどこぞの一流料理店でもう働いてるわ。
シルヴィア「そんなに心配なら、一度八幡くんが作った料理をネットにアップしなよ。それか八幡君の名前を出さずに路上販売するか。」
八幡「ネットは兎も角、路上販売なんてどこでするんだよ………」
シルヴィア「え?スーパーとかこの前行った○○○カフェとか!これまで行ったお店と協力すれば何とかなるんじゃないの?」
八幡「………何となく出来てしまいそうな気がしてしまった俺がいる。」
シルヴィア「でしょう?暇な時やってみようよ!」
八幡「俺、あんまり自分が料理が出来るって事を広めたくないんだが?」
シルヴィア「?あれ?じゃあ何でこんな話になったんだっけ?」
八幡「………何でだ?」
よく考えたら本当に何でだ?
シルヴィア「………ふふっ♪まいっか!」
シルヴィが俺の肩に頭を乗せてきた。
八幡「……そういやシルヴィ、次のライブとかはまだ決まらないのか?あれからだいぶ経ってると思うが。」
シルヴィア「それなんだけどね、ペトラさんがまた八幡くんと一緒にって考えてるみたいなの。それから、他の歌手の人からのデュエット要請もまだ絶えないんだ。」
八幡「……それで?」
シルヴィア「八幡くんと一緒にライブするにあたっての条件は八幡くんから出されてるからそれを守れる範囲で場所を絞り込み中。他の歌手に至っては秒をかけずにお断り。『八幡くんがいるのにどうして他の人と歌う必要があるの?』だって。私もそう思う。八幡くん以外と歌うのなんてもう想像できないもん。」
俺もシルヴィ以外と歌うなんて想像出来ないな。俺自身、カラオケとかに行かないというのも理由のうちにあるが。
………今度、陽乃さんとか虎峰連れてカラオケでも行くか。
シルヴィア「明日と明後日はどうするの?休みなら八幡くんと出かけたいなぁ〜。」
八幡「俺もそのつもりだ。戦いに挑む2位たちには悪いが、折角の2日間だ、有効に使いたい。」
シルヴィア「やったぁ♪じゃあさじゃあさ!さっき私が言った路上販売を「やらん。」
俺は人々に奉仕する為にそんな事をするのではありません。