36話の『修行と一方……』の最後の方の閑話です。
お得と勝手な約束
八幡side
怪我や傷は俺が眠っていた3日間で治り、疲労もすっかり取れた俺は久々に休みを堪能していた。中々に極楽なものだ。
そしてここだけの話、序列の事だが暫くは暁彗のままにしておくそうで、何でも小苑さんが気を利かせてくれたみたいだ。
その理由が気になったから聞いてみると………
小苑『お主の情報を漏らさぬ為じゃ。何が原因で元いた高校に気づかれるかも分からんし、そうなったらお主も嫌じゃろう。一応の予防線じゃ。』
との事だった。小苑さんマジ良い人過ぎる。確かに俺の居場所が知られるのは御免だしな。
※八幡はノートに書いてあった事を全く覚えていません。9話の『後日談』参照。
コンコンッ
八幡「ん?はい。」
冬香『梅小路です。お邪魔してもよろしいでしょうか?八幡さん。』
八幡「あぁ、ちょっと待ってください。」
先輩に動かせちゃ悪いからな。
ガチャッ
八幡「どうしたんですか?こんな端の寮部屋まで突然……」
冬香「えぇ、突然で申し訳ありません。本日は皆様忙しい故、急遽私がご報告をすることになったのです。あしからず。」
八幡「いえ、そんな……ん?報告?」
この前ので全部じゃないのか?まだ他に何かあるのか?
冬香「疑問は尤もだと思われますが、八幡さんの体調が完全回復してからと師父が仰っていたものですので、それまでお待ちしてました。」
八幡「それなら中に入って聞かせて下さい。それと、勝手に心を読まないで下さい。」
冬香「ふふふ、すみません。」
そして俺は部屋へ入れ、椅子を用意してから話を聞くことにした。
八幡「それで、話とは何ですか?」
冬香「話と言っても、その内容はお1つだけなのですよ。お手間やお時間はお掛けしませんので……|《個人的な用事もありますが、それは後でもいいでしょうし。》」
ん?冬香さん最後に何か言わなかったか?
冬香「んんっ、今回の試合で、
え?冒頭の十二人になったら、そんなお得なことがあるの?
冬香「それと言い忘れていましたが、冒頭の十二人になると特別報奨金が出ますので、生活方面では八幡さんの思う以上には安定すると思いますよ。」
うそーん!?そんなのがでるの!?冒頭の十二人良い事だらけじゃん!なってよかったぁ〜。
冬香「それで如何ですか?部屋を移動しますか?移動する際の手続きは不要ですのでご安心下さい。」
八幡「それじゃあお願いします。もともと1人でいることや静かな方が好きなので。」
冬香「分かりました。師父にはそう伝えておきますね。」
これで少しは六花を満喫出来るな。街に出たのは数回程度だからな。
冬香「あの………八幡さん。」
八幡「はい?」
冬香「もし……八幡さんさえ良ければでよろしいのですが……」
冬香「今日1日、私と過ごしてはもらえないでしょうか?」
八幡「………え?」
え?どうして?
冬香「実は、試合が終わった後に八幡さんとの時間を過ごしてみたいと思い、他の5人の方々にお願いしていたのです、『後日時間をくださらないか。』と。」
八幡「………どうして俺なんです?」
冬香「八幡さんにとっては、誠に勝手な事とは承知しています。セシリーさん達や陽乃様がいつも八幡さんの事を気にかけておいででしたので、八幡さんと過ごす日々について、少し気になっていたのです。それで、どうでしょうか?今日お時間は空いておられますか?」
今の口振りからすると、今日が無理なら明日でもって言うタイプだな。おそらく何日も仕掛けてくるだろう。ここは早く終わらせた方が賢明だな。
八幡「はい。特に用事も無いので、空いてますよ。」
冬香「まぁ!そうでしたか!それでは早速、もうそろそろお昼ですので昼食などはどうでしょうか?」
八幡「そうですね。」
こうして俺は今日1日は冬香さんに付き合ったが、その日はかなりの精神を削られた。セシリーや雪ノ下さんと同じことするんだもん!
途中で抱きついてきたり、飯食ってる時にあーんしてきたり、頭を撫でてきたりと色んな事をされた。
願わくば、あの2人のようにならない事を祈ろう。いやマジで。
んー、今回はダメだなぁ。
次回は星露です。