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ーーー六花・中央区付近ーーー
八幡「……シルヴィ、大丈夫か?」
シルヴィア「うん、平気だよ。」
八幡「あの時は怒りで頭いっぱいだったから何も聞けなかったが、怪我はないか?あのレヴォルフの連中に何かされなかったか?」
シルヴィア「大丈夫だよ……君が、八幡くんが守ってくれたから。」
八幡「あのレヴォルフの連中は廃人にしたからいいが、マディアス・メサは去勢しても良かったかもな。」
シルヴィア「ふふふっ!」
冗談なのか本気なのかは分からないが、シルヴィアを安心させるためにした行為なのだろう。危機から抜け出したとはいえ、1番不安を抱えていたのはシルヴィアだと八幡は理解していたからだ。
分かってはいても、彼女の心配をせずにはいられないのだろう。
シルヴィア「それで、レヴォルフの人たちとマディアス・メサと……ウルスラはどうなるの?」
八幡「レヴォルフの連中は一端、学院に戻すそうだ。まぁすぐに退学処分にするだろうな。そうしなかったら神経を疑う……マディアスは《星猟警備隊》の尋問官が取り調べを行うそうだ。奴は普通の人間になったから殴るとかは出来ないが、ペンチで爪を剥がすとか去勢するとかなら許されるだろう。」
シルヴィア「……八幡くん、なんか去勢に拘りすぎてない?」
八幡「俺のシルヴィに手を出そうとしたんだ。なら、それ相応の覚悟をしてもらわないとな……もうそれは出来ないが、もし俺が警備隊にいたら間違いなく去勢させてるな。」
八幡「ウルスラ・スヴェント……だったか?シルヴィアの先生の名前?」
シルヴィア「うんそう!どうなるか聞いてる!?」
八幡「一応は警備隊の方で目を覚ますまで保護って形になってる。あの人の過去のことを聞いたんだが、《蝕武祭》に出場していたこともあるみたいでな、取り敢えずその事も聞きたいみたいだから、治療院には行かせないで身柄は押さえておくそうだ。」
シルヴィア「………そっか。」
余程ウルスラの事が心配だったのだろう。その一声は安心したようにも聞こえた。
シルヴィア「【ヴァルダ・ヴィオス】は?」
八幡「それが少し難しいらしい。相手は純星煌式武装、しかも身体を乗っ取るタイプだから、下手に攻撃をしたらその本人も傷つきかねない。外す事は簡単だが、そいつからは尋問するにしても難しいってよ。俺の予想では、厳重保管って所だと思う。あんな危険な物はこの世に出しちゃ行けないと思ってる。」
シルヴィア「……そうだね、私もその方が良い。もしくは破壊したほうがいいと思う。」
俺も最初はそう考えてた……でも今保管してるのは、リンドヴァルさんだから問題ないだろう。
シルヴィア「そういえば、決闘はどうなったの?真っ最中だった?」
八幡「いや、始まる直前に門番の1人が来て、事情を説明を聞いて、すぐに外に向かったが手遅れだった。もう1人の門番は全身切り傷だらけの血まみれになっていた。」
シルヴィア「そういえば彼は無事なの!?私を庇ってあんなに沢山の剣の欠片の雨に………」
八幡「俺も分からん……俺が最後に見た時は、シルヴィアが連れ去られた方向を教えてもらった後に気を失ったからな、どうなったかまでは学院に行かないと分からん。」
シルヴィア「………私のせいで……あんなに傷ついて………私のせいで………」
八幡「おいやめろ……自分を責めるな。」
シルヴィア「でも!」
八幡「いいからやめろっ!」
八幡は涙を零すシルヴィアを抱き締めた。
八幡「お前がそんな事言ったら、あいつのやった事は無駄になる。シルヴィがこうして無傷でいるのも、あの門番が身を呈してシルヴィを守ったからだ。間違っても自分のせいだなんて言うな。奴が報われないだろ。」
シルヴィア「………」
八幡「界龍に着いたらあの門番2人に礼言おうぜ。今回、あの2人がいなけりゃ俺はお前を見捨てたも同然の行為をしてたんだ。知らせてくれてありがとうと、身体を張って守ってくれてありがとうって言ってやろうぜ。」
シルヴィア「………うん。」
八幡「よし……じゃあ界龍に行くぞ。少し時間短縮したいから伽耶梟で行くか。」
八幡「微睡め、伽耶梟。」
八幡は影で梟を呼び出し、その上に乗って界龍を目指した。
ーーー界龍第七学院ーーー
虎峰「八幡、まだでしょうか?」
陽乃「かなり時間経ってるよね……」
門番1「尊師……ご無事だと良いのですが……」
小苑「……っ!……どうやら帰ってきたようじゃ。皆よ、空を見上げよ。」
小苑の言葉に全員が空に目をやった。するとそこには、八幡の影で作られた伽耶梟がいた。徐々に高度を下げて地面に着地すると、そこからは八幡とシルヴィアが梟から地面に降り立っていた。
そして界龍全生徒が歓喜の声を上げた。
虎峰「八幡、シルヴィアさん、無事でしたか!」
セシリー「良かったよ2人共ー!!」
冬香「御無事なようで安心いたしました。」
「尊師、奥方様!よくぞご無事で!!」
「お怪我はありませんか!?」
2人は界龍の生徒によって熱い歓迎を受けていた。
八幡「あぁ、ありがとう……虎峰、今日の門番の1人はいるか?」
虎峰「はい、あちらに居ますよ。」
八幡「そうか……ありがとな。」
八幡はシルヴィアと共に門番のいる門の前まで歩いて行った。
門番1「そ、尊師!それに奥方様も!ご無事で何よりでした!!」
八幡「あぁ……お前には礼を言わないとな。」
門番1「そんな!礼だなんてとんでもございません!!私は当然のことをしただけでございます!!」
八幡「いえ、させてくれ。そうでないと気が済まない。」
門番1「わ、分かりました。」
八幡「今回のシルヴィアの件、お前が知らせに来てくれなかったら、俺は大切な人を見捨てるところだった。本当に……本当にありがとう。」
門番1「なっ!!?」
八幡は門番1の前で土下座をした。後ろにいる生徒や母体、諜報機関の幹部までもが驚愕していた。
門番1「そ、そんな尊師っ!!頭をお上げください!!私に土下座なんて!!」
八幡「いいや、俺が今している事に序列や肩書きなんて全く意味のないものだ。あの会場の空気の中、報告するのに余程の勇気が必要だっただろうに……そして当たり前のブーイングを受けてもなお、俺に報告をしてくれた。俺の為に………本当にありがとう。俺には言葉と行動での感謝はこれしか思いつかない。感謝するにし切れない。」
門番1「………」
シルヴィア「私からも。八幡くんに私が危険だって事を知らせてくれて、どうもありがとう。君のおかげで私は無事でした。本当に感謝します。」
そしてシルヴィアも頭を下げた。
門番1「わ、分かりました!感謝は受け取りますので、どうかおやめ下さい!私はお2人の無事なお姿を見られただけで満足でございます!!」
八幡「……あぁ、本当によくやってくれた。もう1人は医務室か?」
門番1「はい。あまりにも傷が深かったので治療院に連れて行こうと話になったのですが、事が事ですのでどう説明していいか分からなかったところ、川崎殿が星導館学園に回復魔法に長けた友人がいると聞きましたので、只今医務室で治療を行っているところです。」
八幡「そうか………俺も医務室に向かう。何度も言うようだが、本当に感謝する。」
シルヴィア「本当にありがとうございました。」
門番1「いえ!これからもお役に立ってみせます!!」