八幡side
シルヴィア「門番さんの言い方からして命に別条は無いみたいだから本当に良かったよ。私を庇って攻撃を受けた時、凄い出血だったから。」
八幡「あぁ。俺が駆けつけた時も酷い状態だった。血が止まっている箇所も少なからずあったが、それでも出血多量のレベルだったからな。その中で生きてるんだ、かなりの精神力だ。」
しかもその中で俺に情報まで教えてくれたんだしな……頭に血が上っていたとはいえ、怪我人にさせる事じゃあなかったよな、無理やり口を開かせるような真似をして。
シルヴィア「でも本当に助かったんだよ。私はその時、煌式武装を持ち歩いてなかったから体術だけで対応するしかなかったから。」
八幡「あんまり聞いちゃいけない気はするが、助っ人に来た時のあいつはどうだったんだ?」
シルヴィア「………正直に言うとマディアス・メサには手も足も出てなかった。一方的にやられてた……でも、負けるって分かってても私の前から退こうとはしなかったんだ。」
八幡「………」
シルヴィア「そして私も戦いに出向いたんだけど、マディアス・メサに攻撃を弾かれて隙が出来ちゃったんだ。もうダメだって思ったら、彼が私の前に出て剣の雨に………」
八幡「……そうか。」
シルヴィア「………その後は簡単。私は彼の傷に気を取られて、相手を見る事を忘れて気絶させられちゃったんだ。」
………負けるって分かってても足に食いついていったってわけか………無謀な事だが、根性あるな。まるで3年前の俺みたいだな。
シルヴィア「でも、その事もあって私はこうやって歩くことが出来るんだよね。」
八幡「あぁ……俺がその門番だったとしても身代わりを選ぶ。女の肌に傷なんて付けたくねぇからな。」
ーーー医務室ーーー
まだ治療中だとは思うが、様子を見るだけなら良いよな。俺たちも関係しているんだしな。
コンコンッ
沙希『……誰?』
八幡「比企谷だ、2人なんだが入ってもいいか?」
沙希『………うん、いいよ。』
八幡「分かった、じゃあ入るか。分かってるとは思うが、大声は出すなよ。」
シルヴィア「うん、分かってるよ。」
まぁシルヴィならそれくらいの常識持ち合わせているから心配しなくても良いか。
2人「失礼します。」
沙希「おかえり比企谷……それにリューネハイムさんも。無事に救えたんだ。」
八幡「あぁ、今治療を受けている奴のおかげでな。戸塚も中か?」
沙希「うん。たかが治療だけど、傷を見せながらやるのは不衛生だって。」
………もう将来は治療院の先生から看護師だろうな。
シルヴィア「怪我の具合とかはどうなのかな?」
沙希「あたしからは何とも言えないけど、戸塚が言うには傷が浅い部分もあれば深い部分もあるって。出血を拭き取ってて分かったけど、確かに戸塚の言った通りだったよ。」
八幡「そうか………今日中に目覚める事はなさそうだな。」
沙希「流石にあの怪我だから暫くは起きないと思うよ。」
まぁそりゃそうか。
八幡「今って様子見ること出来るか?」
沙希「それは戸塚に聞いてみないとね、一応治療中だから。戸塚が『魔法で治療するとはいえ、集中してやりたいんだ。』って言ってたから。」
シルヴィア「じゃあ出直した方が良いかもね。八幡くん、目が覚めたって連絡があったら来ることにしようよ。」
八幡「あぁ、そうだな。悪かったな川崎、戸塚にも礼を言っといてくれ。」
沙希「いいよ別に。あたしが戸塚を呼んだんだから。」
俺たちは川崎にそう伝えてから医務室を後にして、俺の寮部屋へと向かった。
ーーー八幡の部屋ーーー
シルヴィア「久し振りだなぁ……」
八幡「まぁ何処でも良いから座ってくれ。今お茶を淹れる。」
シルヴィア「手伝うよ?」
八幡「いや、大丈夫だ。ゆっくりしてろ。それともお湯の方がいいか?」
シルヴィア「ぷふふっ♪何その冗談?」
八幡「いや、味の付いてないものが飲みたくなる時ってない?アレだよ。」
シルヴィア「でもこの時期お湯はないよ。だって夏だよ?」
………それもそうだな。それなら水の方がいいな。
八幡「なら冷茶のほうがいいか。」
シルヴィア「うん、それでお願い。」
ーーー数分後ーーー
八幡「ほい、冷茶とお茶請け。茶には合わないが、クッキーしかなくてな。」
シルヴィア「ううん、ありがとう。」
………ふぅ、ようやく一息だな。
シルヴィア「……八幡くん。」
八幡「ん?」
シルヴィア「助けてくれて、本当にありがとう。私すごく嬉しかった。」
八幡「当然だ、って言いたいところだが、今回はあの2人のおかげでシルヴィを救えたんだ。半分以上はあの門番2人のおかげだ。そうでなければ………俺はお前を裏切るところだった………」
シルヴィア「八幡くんこそ自分を責めすぎだよ。あの門番さん2人が頑張ってくれたから、私はこうして無傷だし、無事に助かったんだから。」
……ふっ、俺が言った事を鸚鵡返しされるなんてな。いや、確かにその通りか。
ーーー数十分後ーーー
シルヴィア「………」
八幡「……眠いか?」
シルヴィア「え?」
八幡「無理もない、ずっと気を張り詰めてたんだ。眠くもなる。俺のベッドを使っていいから眠ってきていいぞ。」
シルヴィア「………八幡くんも一緒に来て。」
八幡「………そうだな。今のシルヴィを1人にはしておけないな。分かった。」
俺はお茶とお茶請けを片付けてから、シルヴィを連れて寝室へと向かった。
そしてすぐに横になったのだが、シルヴィは真っ先に俺の胸に顔を押し付け抱き着いてきた。
シルヴィア「ふわぁ……あったかい……」
八幡「ゆっくり休め。今日は色々ありすぎた。」
シルヴィア「うん………」
そしてシルヴィはすぐに眠ってしまった。さて、これは俺も動けないな。ちょうど良いから俺も寝るか。
こうやってここで2人で寝るのも、3年ぶりだな。
陽乃「様子を見に来たと思ったら……」
冬香「お2人共、安心しきったお顔をしておいでですね。こちらも安らぎを感じます。」
2人は互いの身体に手を回して抱き合いながら寝ていた。少しだけ口角を上げているので、笑っているかのようにも見える。いや、おそらくは笑っているのだろう。
セシリー「そうですねー。虎峰、無粋なことはしないでよー?いくらあたしでも怒るからねー?」
虎峰「………分かってますよ。僕だってそんな事するつもりは毛頭ありません。」
暁彗「………………此処は2人だけにしておくべきだ。」
沈雲/沈華「そうですね(わね)。」
小苑「成る程のう、暁彗が言っておったのはこういうことか……」
麗蘭「これは……確かに起こすという方が無粋ですね。このままそっとしておきましょう。」
アレマ【そうだねー。アタイも流石に今の2人には手なんて出せないってー。】
星露「序列戦は日を改めることにするかのう。」
麗蘭「残念でしょうが、そうする他ないでしょう。お2人共疲れているのです、ゆっくり眠らせてあげましょう。」