八幡side
玉緑の意識が目覚めないまま3日が過ぎた。苦しそうにしてる様子は無いが、まだかまだかと心待ちにしている奴も日に日に多くなっている。シルヴィも流石にずっと学院に居るわけにはいかないから、クインヴェールに戻った。そして今回の件をペトラさんにも報告するとの事。俺は今界龍から出ていないから分からないが、恐らく六花は大騒ぎだろう。
理由は、未遂とはいえ
この計画の代表的な首謀者は、マディアス・メサ、ヴァルダ・ヴィオス、ディルク・エーベルヴァインの3人だった。尚、赤豚については途中から作戦事項を伝えていなかったとの事だった。だが逮捕された事には変わりはない。
何でこんなに知ってるかって?そりゃ今世間で話題になってるからな。そしてあの事件の事は秘匿されてるが、被害者としてリンドヴァルさんから詳細が記されてる通信が来たからだ。今のところは報道陣が警備隊本部に突っ込むような真似はしていないが、時間の問題だろう。
八幡「あぁ〜暇だ………する事が何も無い。序列戦も玉緑が目覚めて出歩けるようになってからって言っちまったしなぁ。」
この前の序列戦は俺の不戦敗……にはならなくなって、中止という形になった。今月の序列戦は終わったが、星露が俺の条件をのむ形で特例として後日に決闘する事になった。
八幡「なぁ、何か無いのか?」
セシリー「あたしも暇ー。なんか無いのー?」
虎峰「2人してそんな事を言わないでくださいよ。この前序列戦が終わったばかりではありませんか。」
八幡「俺は戦ってねぇ。シルヴィが拐われたから助けに行ってたんだ。」
虎峰「いえ、確かにその通りなのですが……」
学校はあれど、俺達大学部は必要な科目を受けて単位を取ればもう進級とか卒業は確定だからな。今日に限って講義は無いし、鍛錬するような気分でも無いし、虎峰を弄るのは暇つぶしにもならないし。
虎峰「………八幡、何か変な事を考えてませんでしたか?」
八幡「考えてるわけねぇだろ。ていうか大学部ってこんなに暇だったっけ?俺の印象もっと忙しかったような気がするんだが?」
セシリー「それって八幡の自業自得じゃなーい?始めの頃にたくさん科目受けてテスト受けて全部合格して単位あっという間に取っちゃったんだもん。する事が無いのは当然じゃなーい?」
虎峰「それが悪い事というわけではありませんが、もう少し計画を練ってから受けた方がよろしかったのでは?」
八幡「ふ~ん、お前はシルヴィが言った事にケチつけるんだな。そうかそうか。」
虎峰「実に素晴らしい計画だと思いますよ!!先にしておいた方が後が楽になりますからね!!この先もそうするべきです!!」
セシリー「はぁー……【戦律の魔女】が絡むとすぐこれだよー。でも八幡、それホントー?」
八幡「あぁ。先に済ませて後に楽しようって話になった。だから俺は残りに出てくる科目を済ませたらもう終わりだ。」
ぶっちゃけ、誰かに何かを教えていた方が、今の俺には楽かもしれん。暇過ぎて眠くなって来た。
八幡「ふあ〜……やっぱ何もしてないと眠いな。」
虎峰「八幡が欠伸なんて珍しいですね。」
八幡「俺だって欠伸くらいはする。人間だからな。」
しょうがねぇ、少し部屋で寝てくるか。
セシリー「八幡ー、私も寝ていい?」
八幡「俺の心を読むな。後、俺の隣はもう生涯契約されてるので無理です。何があろうと譲れません。もし寝ちゃったら……ボコボコだよ?」
セシリー「あー……うん、納得したー。」
さて、一休み【pipipi…pipipi…】……ん?誰からだ?
FROM:静帆季
帆季『尊師、いかがお過ごしでしょうか?吉報です!玉緑が目を覚ましました!もしお時間のある時があれば、医務室にいらしてください。』
目を覚ましたか!これはすぐに行かねぇとな!
ーーー医務室ーーー
コンコンッ
帆季『どうぞ。』
八幡「失礼する。」
帆季「っ!尊師っ!もういらしたのですか!?」
八幡「あぁ、特にする事も無かったからな。それで、玉緑は?」
帆季「はっ、こちらに!」
目の前には包帯で全身を巻かれている玉緑がいた。だが、目は開いていた。
玉緑「尊師………」
八幡「起きようとするな、そのままで構わない。」
玉緑「尊師……奥方様は?ご無事なのですか?」
八幡「あぁ、お前が身を呈して守ってくれたおかげで傷1つ付いてない。」
玉緑「………それは何よりです。」
緊張が抜けたかのように顔に安堵の色が出ていた。
帆季「では自分、少し水を貰ってきます。尊師、お手を煩わせるようですが、少しの間だけお願い致します。」
八幡「あぁ、任された。」
帆季はそう告げると、扉の前で一礼してから医務室を出た。
八幡「さて、まずは礼を言わないとな。シルヴィの件では本当に助かった、ありがとう。」
玉緑「い、いえ……あの時尊師にも仰った通り、自分は足手纏いにしかなりませんでした。ですが、奥方様が攻撃を弾かれた時、何としてでもあの攻撃を防がなくてはと思ったのです。」
八幡「結果、その思いのおかげでシルヴィは無傷だった。本当にありがとう。俺にはこれしか出来んが、せめてもの感謝の形だ。」
そして八幡は帆季にやった時と同じで、地べたに土下座をした。玉緑はまだ充分に開かない目をギョロッと見開いた。
玉緑「そ、そんな!尊師、そのような真似はお止めください!私などにそのような事なんて……」
八幡「……お前があの時ああしなかったら、シルヴィは殺されていたか、全身一生消えない傷が沢山残っていたかもしれない。お前のおかげだ、本当にありがとう。」
そう、俺にはこれしか出来ない。だからこそ全力で土下座するしか思いつかない。シルヴィを助けてくれた事に関して、2人には土下座しても足りないくらいだ。
玉緑「ほ、本当にお止めください!奥方様に傷が1つも付いていないのなら、それで良かったのです!ですので、頭をお上げください!」
八幡「……お前らは少し謙虚が過ぎると思うぞ。もう少し自分に大らかになれ。兎に角、ありがとうな。」
玉緑「い、いえ……」
八幡「さて、今戻ってきたみたいだから俺も行く。身体、大事にしろ。」
玉緑「は、はいっ!」
ーーー廊下ーーー
帆季「お話は済んだのですか?」
八幡「あぁ、後は頼む。」
帆季「お任せをっ!」
八幡sideout
ーーーーーー
玉緑「………」
帆季「尊師は何をなされた?」
玉緑「……頭を下げられた、こんな俺なんかの為に。」
帆季「やはりそうか……俺の時もそうだった。しかも、周りに大勢の生徒が居る中で恥じらいもせず、俺の前でだ。」
玉緑「なっ!?あの門の前でか!?しかも生徒が居る中でっ!?」
帆季「あぁ……それに比べればお前のこの状況は余程優しいと思うぞ。まぁ、俺達にとっては一杯一杯の状況だがな。」
玉緑「当たり前だ。尊師が俺達に頭を下げるなんて……師が弟子に頭を下げるなんて前代未聞だ。」
帆季「全く、あの人には本当に頭が上がらない。」
玉緑「あぁ………全くだ。」