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六花北部、六角形に象られた水上都市アスタリスク。その北に位置する学園は《星導館学園》である。
他の学園に比べて突出した部分がない平凡な学園だが、伝統的に他学園と比べて比較的《魔女》と《魔術師》が多い。生徒の自主性に重視しているため、校則は緩やかである。他学園と比べて優れている面は《魔女》と《魔術師》の多さだけではなく、保有する《純星煌式武装》は六学園の中でも1番の多さである。
尚、学園祭は日本の文化を星導館が踏襲して行っていた行事なのだが、他学園も利益になると踏んだのか、真似をするようになったとか。
そんな平和な日々を送っていた星導館に一面大見出しの特集記事が流れていた。
綾斗「あの人の事だからいつかは挑戦するとは思っていたけど、まさか初めて戦って勝っちゃうなんて……とても信じられないよ。」
ユリス「あぁ……実際に戦ったことはないが、お前でも敵わないと思った相手なのだろ?」
綾斗「敵わないというか、敵うはずがないって思ったよ。あの人、会うたびに強くなってる気がするんだ。それも徐々にじゃなくて大々的に。」
綺凛「綾斗先輩の言ってる事は当たってます。比企谷さんの剣術もそうですが、身のこなしが《鳳凰星武祭》と《獅鷲星武祭》と比べたら、格段に良くなってるんです。一体どうやったらあんな風に……」
紗夜「接近戦では間違いなく最強。綾斗でも勝てないって言うのなら、私では到底無理。」
クローディア「えぇ、私も勝てるなんて微塵も思えません。あれ程の実力差を見せつけられれば誰もがそう思いますよ。」
5人の八幡に対する評価は上々だった。実際に戦っているからこその評価であろう。身を以て体験している3人からしてみれば、当然とも言えるべきなのであろう。
クローディア「ですが、【万有天羅】を倒してしまう程とは……彼には驚かされてばかりです。」
綾斗「俺も《天霧辰明流》に比企谷さんの技術をアレンジしてみてるけど、なかなか難しいよ。」
綺凛「綾斗先輩、それは比企谷さんの歩法に原因があります。比企谷さんは剣術の歩法を拳法の歩法にしていると言ってました。確か比企谷さんが使っている拳法は詠春拳って名前だったはずです。」
クローディア「それなら調べてありますよ。詠春拳、女性が創設の武術で腕と短く歩幅を狭く使う事、短橋狭馬で有名な武術ですね。」
綺凛「その歩法を使っているので、綾斗先輩の使っている《天霧辰明流》は大胆な動きなので、混ぜて使うのは難しいと思います。」
綾斗「自分でも思ってはいたけど、やっぱりそっかぁ……でも、綺凛ちゃんの《刀藤流》は合うみたいだね。」
紗夜「私も近くで歩法の練習を見たけど、かなりスムーズに出来ていた。《
ユリス「少なからず、我々も【夢幻月影】の影響を受けているというわけか……」
クローディア「ユリス、比企谷さんの2つ名を間違っていますよ?【神羅武双】ですからね?」
ユリス「私ならこんな2つ名、返上しているな。恥ずかし過ぎて名乗る気にもなれん。」
クローディア「貴方らしいですね。そういえば皆さんは《王竜星武祭》はどうするおつもりなのですか?」
クローディアから突然の言葉だったが、全員驚いた様子はなかった。
ユリス「お前性格が悪いぞ。出場するつもりはないが、あいつがいる時点で辞退するに決まっている。私も少なからず調べているが、あいつが序列1位になった瞬間、《王竜星武祭》を辞退する奴らが次々と現れたのだぞ。今では【神羅武双】と【戦律の魔女】しか注目出来そうな奴はいない。」
紗夜「今いるのは?」
ユリス「……30人を満たしていない。もはやこの2人を除いての20人は勇者といってもいいな。六花最強の男と魔女に挑むのだからな。」
綾斗「でもまた辞退する人は増えそうだね。誰も比企谷さんとは戦いたくないだろうからね。」
綺凛「界龍でも出場する方はいらっしゃらないみたいです。比企谷さんに《三冠制覇》を達成させるためでしょうか?」
クローディア「いえ、界龍はそんな律儀な方達ではありませんよ。単に実力差を悟っているからだと思います。タッグ戦、チーム戦ならまだチャンスはあったでしょう。ですが今回は完全な個人戦、界龍の中には1対1で比企谷さんに勝てると思い込んでいる人は誰1人としていないでしょう。」
星導館学園からの評価で比企谷八幡は、畏敬の念はされど、憧れの念をも抱かせる程だった。