冬香side
さて、昨日に続きまた試合ですが、今回の星武祭では人数が少ないために、順位も決めておきたいとの運営からの発表もありました。なので、試合に負け敗退した者でも1度か2度の試合が残っているということです。私は暁彗との対戦で敗北しましたが、同じくブロック戦で敗退した星導館の由比ヶ浜さんと雪ノ下さんと試合をすることになっております。
しかし、私は少し不安です。相手は由比ヶ浜結衣さん、もし怒りで我を忘れてしまい、彼女に過度の攻撃をしてしまわないか……八幡様からは自由にして良いとのお声を頂きましたが、やはり不安なものは不安です。
冬香「……やはり彼女を前にすると、怒りが湧き上がってくるかもしれません。」
八幡「俺はその場に居なかったからお前がどうしたのかは口上でしか聞いていないが、そこまでか?」
冬香「八幡様からしてみればその程度の事かもしれませんが、私にとっては許せない事なのです。もはや妻といっても過言ではないシルヴィア様に対して別れろなどと。しかも挙げ句の果てには代わりになるなど……自身の身も弁えない愚か者でしかありません。それに、八幡様の正妻に代えなどおりません。」
八幡「いや、確かにその通りだが、なぜお前がそこまで怒るんだ?怒るとしたら、俺かシルヴィだと思うのだが?」
冬香「常日頃からお世話になっている御方、その夫人に対して行動や言葉に慎みのない者に怒るのは当然です。本来であれば、あの時にトラウマなんて生易しいと思えるくらいの恐怖を刻み込みたかったのですから。」
八幡(トラウマよりも怖い恐怖か……それは誰も味わいたくないだろうな。)
八幡「ならこれはどうだ?見ただけで怒りが出て来そうなら、もう最強の式神を使って相手を倒すってのはよ?そしたらすぐに済むだろ?」
成る程……流石は八幡様です!
冬香「成る程、
八幡(何だろう?今冬香が言った言葉のニュアンスが全く違ったような気がしたんだが……特に最強の辺りに。)
ふふふ、八幡様のおかげで召喚する式神さんや妖怪さんが決まりました。これなら彼女も大いに臆し、戦う気すらも無くなるでしょう。
冬香sideout
由比ヶ浜side
マジ最悪じゃん!!なんで私あんな不気味な人と戦わなくちゃいけないの!?あの人、多分《魔女》だと思うけど、あの人が使った魔法ってあの気持ち悪い何かだよね?うぅ〜相手にしたくないよぉ〜……
ゆきのんもヒッキーに負けてから会ってないし、しかもなんか仲良さげだったような………いや、そんなのあり得ないし!
由比ヶ浜「大丈夫!あの気色悪い何かを出す前に倒せばいい話だしっ!」
雪乃「………由比ヶ浜さん、やっぱり不可能なのかしら?自分が悪いって自覚させるのは。」
由比ヶ浜sideout
ーーーーーー
梁瀬『さて皆様、勝ち残った選手の試合は一先ずお休みにして、惜しくも初戦で敗れた選手から順位を決めていきます!!ルールは簡単です!1人2回それぞれ違う選手と戦うという至ってシンプルなルールです!今回戦うのは星導館の由比ヶ浜結衣選手と界龍の梅小路冬香選手です!』
千歳『敗退した選手やっていうのに、なんか楽しみやわぁ!やなっち、はよ始めようや!』
梁瀬『慌てずとも両者はステージに降り立っていますのですぐにでも始められますよ!!』
冬香「……1つ質問させてもらってもよろしいでしょうか?」
由比ヶ浜「な、何ですか?」
冬香「今でも八幡様に対するお気持ちは変わりないですか?それとも変わりましたか?」
由比ヶ浜「え?変えるわけないじゃないですか。あの、どういう意味です?」
冬香「……成る程、不躾な質問をいたしました。ですが、これで私も決心がつきました。」
由比ヶ浜「は、はぁ……」
冬香(これで心置きなくあんたを打ちのめせるわ。あんたも待っとれや、ウチの妖怪さんに喰われる瞬間をなぁ。)
この時、冬香の瞳は完全に光を失っていた。
梁瀬『両者準備が出来たようですのでお送り致します!!《王竜星武祭》順位戦!バトル・スタート!!』
由比ヶ浜「行きますよ!!やあぁぁぁ!!」
由比ヶ浜は武装を展開して冬香目掛けて突っ込んで行った。
冬香「感情的で直線的……なんだか相手にするのもバカらしくなってきました。急急如律令。」
冬香は呪符をいくつか取り出して1枚投げてから唱えた。その妖怪は鬼のような顔をしているにも関わらず、その身体は蜘蛛のような体をしていて8本の足は鋭い爪のようになっていた。その大きさは人間をはるかに超える大きさだった。
由比ヶ浜「な……な……」
冬香「ご紹介致します。こちらは
由比ヶ浜「か、勝てるわけないし……ひ、一先ず体勢を、ヒィッ!!?」
後ろを振り返った瞬間、由比ヶ浜は自分の目を疑った。目の前にいたのは女性だった………のだが、それは上半身だけだった。下半身から下は蜘蛛だったのだ。
冬香「由比ヶ浜さんの後ろにおりますのは、
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜(な、何あれ?妖怪?に、逃げないと……変なのかまた………)
由比ヶ浜「っ!!!」
今度は右を向くと……今度は普通の男性だった。昔の服を着た普通の男性だった。
???「美味ソウナ人間ダァ〜!!喰ワセロ〜!!!」
由比ヶ浜「あああああぁぁぁぁぁ!!!」
突如その男性が叫び出した途端、口が大きくなってそのまま開いた。
冬香「そちらは
もう由比ヶ浜は戦うどころか、逃げるという考えすらもなかった。ただ恐怖。これだけが唯一頭の中に残っていた。そして、冬香が何度も繰り返し言っている単語《食べる》。しかも人のである。それを聞いただけでも背筋がゾッとするというのに、目の前にその存在がいるとなると、思考が止まるに決まっていた。
由比ヶ浜「…………」
冬香「最早剣を取る余裕すらありませんか。ですが、意識を保っていられた敬意を評して、最後にこの式を出しましょう。急急如律令。」
冬香の正面に牛鬼、由比ヶ浜の後ろに絡新婦、その右に鬼一口、そして左に現れたのは、もはやなんと言っていいか分からない妖怪だった。蛇のような外見だが、身体には毛のようなものが生えており、目や鼻といったようなものは存在せず、大きな口だけがあった。
冬香「最後にこの子、
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜は口から泡を出して気絶してしまった。最後の野槌で限界を超えたのだろう。
冬香「お答えを聞いていないのですが、いいでしょう。また後日聞く事に致します。」
冬香は式神を再び呪符へと封じた。
梁瀬『ゆ、由比ヶ浜結衣選手、意識消失……しょ、勝者、梅小路冬香〜……こ、怖かったですね。』
千歳『ア、アレはあかんて……女の子やったら一発KO確実やわ。あんなん目の前で出されたら、ウチもう土下座するしかあらへん。』
会場も鳥肌を立たせている中、唯一平気な顔をしている冬香はというと……
冬香(トラウマを与えられたかどうかは分かりませんが、充分恐怖を植えつけることは出来ましたかね?)
妖怪については少しだけ違う点もございますが、ご了承ください。
思った事、冬香さんえげつねぇ………全部人食いの妖怪ですからね。