学戦都市の“元”ボッチ   作:生焼け肉

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とっておきの模倣技

 

 

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シルヴィアと暁彗の戦いが始まって10分程経過している。現在では互角の勝負だった。暁彗の錬星術(アルナジュミア)で通常よりも高い攻撃力と防御力、そして体術と棍術を合わせた技でシルヴィアに隙を与えていなかった。

 

シルヴィアもそれに負けじと、新技などを披露しながら暁彗へと攻めている。それでも暁彗の防御力の高さに攻め切れずにいた。陽動をかけてみても、空中で移動したり棍で陽動に使った技を弾くなどをされている。

 

 

今のところはお互いに致命傷は負っていなかった。双方まだ決め手になる技を出していないというのもあるが、長引けば不利になっていくというのはどちらも同じ状況だった。どちらが早くこの状況を打開するかで勝負が見えてくるだろう。

 

 

シルヴィア(どうしよう………あの錬星術があんなに厄介な技術だったなんて思ってなかったよ。身体能力は元々高いのは知ってたけど、そこに攻防技術を高められたんじゃあ、ちょっと勝てる自信が無くなっちゃうよ。)

 

暁彗(………………今の所は優勢、か。妃殿が前回の《王竜星武祭》で使ったあの技を披露するのであれば全力で止めるが、まだ出す気配はない。ここは妃殿の出方を見るか。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「真実の守護曲(トゥルー・セリア)!」

 

シルヴィア「結晶の福音曲(クリスタル・ゴスペリア)!」

 

シルヴィア「疾風の輪舞曲(ブラスカ・ロンド)!」

 

シルヴィア「衝撃の追奏曲(インパクト・カノン)!」

 

 

シルヴィアは自身を強化する歌を歌い、陽動に使った斬撃を作り出す歌も再び歌った。少しでも暁彗に対抗するためであろう。

 

 

シルヴィア(少し星辰力が勿体無い気もするけど、出し惜しみをしてたら私が先にやられちゃうからね。愛の聖歌(セロ・ホーリックス)はまだ使いたくないしね。)

 

 

シルヴィア「まだ試作段階だけど、少し試してみようかな……まぁ、模倣技だけど。」(ボソッ)

 

暁彗「………………もういいのか?」

 

シルヴィア「あ、はい。その声から察するに、やっぱり余裕なんだね。もう少し警戒してくれたら嬉しいんですけどね〜。」

 

暁彗「………………充分に警戒している。妃殿の技の中には恐ろしいものもあるからな。」

 

シルヴィア「そうですか……じゃあ、行きますっ!!」

 

 

この戦闘では暁彗が攻撃を仕掛けることが多かったが、今度はシルヴィアから攻めていった。身体能力を強化しているだけあってか、かなりのスピードで暁彗に接近していた。

 

シルヴィアは完全に接近する前に、いくつか斬撃を放っていた。恐らく自身の注意を錯乱させるための方法だろう。そして銃も発泡しているので、斬撃と銃撃の両方が暁彗に襲い掛かっていた。

 

 

だが暁彗はそこから動こうとはしていなかった。

 

 

暁彗「(はつ)っ!」

 

 

暁彗を中心に波動のようなものが広がり、斬撃と銃撃が両方かき消されてしまっていた。だがシルヴィアは足を止めず、そのまま暁彗に突っ込み剣を振った。

 

 

シルヴィア「はああぁぁ!」

 

暁彗「フッ!」

 

 

ガキイィィィンッ!!

 

 

シルヴィア「……どっちも消しちゃうなんてすごいですね。どうやってるんですか?」

 

暁彗「………………圧縮した星辰力を一気に外へと放出しているだけのことだ。」

 

シルヴィア「ちなみに八幡くんは出来るんですか?」

 

暁彗「………………1日で会得した。」

 

 

シルヴィア(さすが八幡くん♪)

 

 

暁彗「………………話をしているとはいえ、隙が多すぎる。急急如律令、爆。」

 

 

2人が鍔迫り合いをしている中、暁彗は瞬時に片手で呪符を取り出してシルヴィアに向けた。そこからは爆発が起きて2人を巻き込んだ。

 

 

暁彗は錬星術のおかげか、そこまでダメージはなかった。肝心のシルヴィアは強化されているとはいえ、爆発を直撃で受けている。完全な致命傷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そこにシルヴィアの姿はなかった。

 

 

暁彗(………………姿が見えない?あの時確かに目の前にいたはず……何故?)

 

 

暁彗が、観客が、実況が、解説が、誰もがシルヴィアの行方が分からなくなっていた。煙が晴れているにも関わらず、シルヴィアの姿が何処にもないからだ。

 

 

バァンッ!

 

 

バギッ!!

 

 

暁彗「っ!!」

 

 

突然の銃声……そして何かが割れた音。暁彗はすぐに分かった。自身の左胸に衝撃が起きたのを。そう、自分の校章が砕かれていたのだ。

 

 

シルヴィア『ふぅ〜ギリギリだったよ〜!鍔迫り合いをしている隙にトドメを刺そうと思ってたけど、まさかあそこで爆発させるなんて思ってもなかったから急いで離れたけど、気づいてなくてよかった♪』

 

 

何処からともなく声がした。そして暁彗が立っている場所から少し離れた斜め左前に白い靄が現れて、そこからは美しい笑顔をしたシルヴィアが出てきた。

 

 

クリスティ『武暁彗、校章破壊!!勝者、シルヴィア・リューネハイム〜!!!これは驚きました!!まさか透明化していたとは!!』

 

護藤『おそらくあの技は、界龍第七学院序列1位の比企谷八幡選手の技を模倣したものだと思います。』

 

クリスティ『ほう、模倣ですか?』

 

護藤『はい。彼の能力は影と幻を操る能力。その中の技の1つである《鏡花水月》を彼女なりにアレンジして改良させたものでしょう。』

 

 

シルヴィア(50点かなぁ。八幡くんのあれは能力じゃなくて星仙術です。それと、別に改良はしてないから擬似・鏡花水月みたいなものだね。でも、名付けるとしたら………《不可視の戯曲(インビジブル・オペラ)》かな。)

 

 

暁彗「………………私の負けだ。まさか比企谷八幡と似たような形で倒されてしまうとはな。今回は剣ではなく銃か。」

 

シルヴィア「なんだか嬉しいです、そういう風に言われると。八幡くんとお揃いみたいで。」

 

暁彗「………………次の相手は恐らく比企谷八幡だろう。今回のような1手2手では通じない相手だ。心して準備に取り掛かるように進言する。」

 

シルヴィア「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





八幡の技を模倣するとは、流石はシルヴィアちゃん!!


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