学戦都市の“元”ボッチ   作:生焼け肉

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真実を告げるも………

雪乃side

 

 

雪乃「………」

 

由比ヶ浜「でさ、その女なんて言ったと思う!?ヒッキーが優しいって言ったんだよ!?何言ってんのかホントに分かんなかったよ!!」

 

雪乃「そ、そう………」

 

 

昨日は彼女が帰ってくるのを待てずに寝てしまったせいか、今日のこの時間に由比ヶ浜さんの愚痴を聞かされている状況になっているわ。それにしても、さっきから聞いてみると、比企谷くんと梅小路さんの悪口しか言ってないわね、由比ヶ浜さんは。私も半年前はこんな感じだったのかしら?だとしたらとても醜いわ。意味合いは少し違うけれど、醜女しこめというのはこういう時に使う言葉なのかもしれないわ。

 

 

でも、もう正直に話した方がいいのかもしれないわ。彼女や私のためにも。

 

 

雪乃「……由比ヶ浜さん、私からもいいかしら?」

 

由比ヶ浜「え?何?」

 

雪乃「由比ヶ浜さんは比企谷くんの事、どう思っているの?私は貴女が比企谷くんに好意を抱いているものと踏んでいたのだけど?」

 

由比ヶ浜「うぇ?今も好きだよ?だからシルヴィアさんに恋人を代わるように言ったの。そしたら答える前に今話した女が出てきたんだ。」

 

雪乃「比企谷くんとリューネハイムさんは付き合ってるのよ?そう簡単に了承してくれるわけないじゃない。いえ、するわけがないじゃない。」

 

由比ヶ浜「うぅ〜やっぱそっかぁ……シルヴィアさんよりも私の方が先にヒッキーの事好きになったのに、横取りとか本当にあり得ないよ。」

 

雪乃「因みにだけど、由比ヶ浜さんは比企谷くんを恋人にしたらどうしたいの?」

 

由比ヶ浜「そうだね〜やっぱり他の女の人に目移りしないように何処かに監禁するかな。だってヒッキーって周りに女の子たくさんいるから。」

 

 

………由比ヶ浜さん、それはもう恋心ではないわ。貴女のそれはただの所有欲、支配欲だわ。

 

もうダメだわ……私はもう、貴女と友達でいられる自信がないわ。

 

 

雪乃「……んんっ!由比ヶ浜さん、貴女に言わなくちゃいけないことがあるの。」

 

由比ヶ浜「え?なになに?」

 

雪乃「実は私………」

 

 

そこから私はこの《王竜星武祭》の始まる半年前くらい、つまりは比企谷くんが序列1位になった時の私の心情や感情を含めた内容を今に至るまで全て話した。勿論、この星武祭で比企谷くんと会ったことも洗いざらい話した。

 

 

由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん?冗談だよね?だって……ゆきのんだってあんなにヒッキーの事を恨んでたじゃん。」

 

雪乃「………そうね、それは事実だわ。消えない、そして恥ずかしくて情けない頃の私。でも彼が序列1位の座を勝ち取った時のニュースを見て思ったの。変わっていないのはどっち?あの頃から成長していないのは?結論はすぐに出たわ。変わってないのも成長していないのも、私たちだという事が。」

 

由比ヶ浜「な、何言って………」

 

雪乃「だってそうじゃない。私たちが彼を恨んで来た時間、あまりにも長過ぎるわ。そして無駄で無様な日々だった。今まで過ごしてきた六花の時間で成長したと思えるような事はあったかしら?私はつい最近できたくらいよ。由比ヶ浜さんはあるかしら?」

 

由比ヶ浜「そ、それは………」

 

 

やっぱりね、何も答えられない。それもそのはずよ。あえてこういう言い方をするけれど、何もしてないもの。

 

 

雪乃「私は比企谷くんに会ってこれまでの事を謝罪したわ。勿論、許してもらおうなんて思ってもなかったし、それならそれで別に良かったわ。ただ想いを伝えたかっただけだから。でも、彼はこんな私を許してくれたわ。彼が優しい、それは正解ね。」

 

由比ヶ浜「謝罪?何それ?ゆきのん謝ったの!?」

 

雪乃「えぇ、そうよ。」

 

由比ヶ浜「何でゆきのんが謝るの!?謝るのはヒッキーの方じゃん!!」

 

雪乃「違うわ由比ヶ浜さん。間違っていたのは私たちの方よ。私たちは彼に頼り過ぎたのよ。文化祭といい修学旅行といい、私たちで成し遂げていないのよ。そしてそれを彼に押し付けてしまった。その結果、彼によって真実が校内に広まって私たちは彼に逆恨みをしながら2年半も時間を無駄にしたのよ。由比ヶ浜さんはそれでも彼が、比企谷くんが悪いと言い切れるのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由比ヶ浜「私はどう考えてもヒッキーが悪いと思うしっ!!男なら女の子に優しくするべきだし!!それにあのノートを書いてなければ、こんな事にはなってなかったのに!!」

 

雪乃「そのノートを公表したのは私たちよ?彼の痛みをほんの少し受けただけなのよ?」

 

由比ヶ浜「あれの何処がほんの少しなの!?学校で毎日悪口言われるし、嫌がらせもさせられてきた。それの何処が少しなの!?」

 

雪乃「比企谷くんはこれを1人で耐えてきたのよ。相談する相手なんて誰もいない、ずっと1人だった。それに比べれば少しだと思うわ。」

 

由比ヶ浜「全然少しじゃない!!ねぇゆきのん、なんで今更ヒッキーに肩入れするの?」

 

雪乃「比企谷くんの言っている事が正論で、貴女の言っている事が極論だからよ。分からないかしら?」

 

由比ヶ浜「分かるわけないじゃん!!ヒッキーが正しいわけないしっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪乃「………そう。なら私から言うことは何もないわ。それじゃ、さようなら。」

 

由比ヶ浜「え?何処いくの?」

 

雪乃「新しい部屋に引っ越す事になったの。だから今日が最後という事になるわ。」

 

 

もう彼女の声は聞きたくないわ。なんだか惨めになってくるもの。

 

 

雪乃「じゃあ、さようなら。」

 

 

私は由比ヶ浜さんの言葉を聞く前に部屋を出た。

 

 

雪乃「はぁ………友人との縁は切りたくない、という事かしらね。彼女との関係を切れなかったわ。でも、もう彼女とは関わり合わない事にしましょう。」

 

 

………でも、なんだか寂しくなるわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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