雪乃side
《王竜星武祭》が終わり、1年も過ぎて、新年の大騒ぎが漸く収まった頃、私は小町さんと一緒に商業エリアを探索しているわ。何か目的として歩いているわけではないのだけれど、こうして何も考えずに歩いているだけでも今は楽しめている。前まではこんな事全く思う事なんて無かった………六花に来た最初の2年間を早々に無駄にしているのね、私は。
でも今は充実した日々を送れている。彼への敵対心、嫌悪感、憎悪なんて感情は私の中にはもう無い。今あるのは彼に対する申しわけ無さ、和解してくれた事、今までと同じように接してくれる事の感謝ね。小町さんも他人との縁という形で彼と良好な関係を取れているみたい。いつかは兄妹の縁が戻れる事を祈っているわ。
由比ヶ浜さんは………もう分からない。学園内で会う事は時々あるのだけれど、声を掛けられたりする事も無くなった。彼女はまだ彼に対して良くない感情を持っているみたい。どうにかしてあげたいのだけれど、これは彼女自身の問題だから手を貸してはあげられないわ。私も小町さんも自分で考えて今の結論に至っている。だから今のままでいるのも、変わるのも貴女次第という事よ。
小町「雪乃さん雪乃さん!この前、このお店に新しいパフェが出されたみたいですよ!ちょっと行ってみませんか!?」
雪乃「それは良いのだけど、小町さん全部食べられるの?大きさとかカロリーは?」
小町「うっ……それは言わないでくださいよ。女の天敵『カロリー』を口にしたら食べるのを迷っちゃうじゃないですか〜。」
雪乃「ふふふ、ごめんなさいね。大丈夫よ、多かったら私も食べてあげるから。」
小町「やったぁ!!ありがとうございます!!」
………姉になるっていうのはこんな感じなのかしら?不思議と頼られている感じがするわね。彼もこんな風に感じているのかしら?界龍では沢山のお弟子さんを抱えているって噂は聞いた事あるのだけれど。
ーーー喫茶店ーーー
「いらっしゃいませ〜2名様ですか?」
雪乃「はい。」
「お席へご案内します〜こちらへどうぞ〜。」
緊張感の無い人ね……でも、何だか憎めないような感じの喋り方ね。
小町「パッフェ〜♪早く食べたいなぁ〜♪」
雪乃「ふふ、楽しそうね。私は何にしようか……し……」
小町「?雪乃さん………へ?」
シルヴィア「はい八幡君、あ〜ん♡」
八幡「あむっ…んっ…んっ……うん、美味い。」
シルヴィア「良かった♪じゃあ八幡君もっ!」
八幡「分かってるよ。」
………目の前にはさっき言っていた彼、比企谷八幡君が彼女であるシルヴィア・リューネハイムさんと食事をしていた。それも食べさせあいっこをしながら。
シルヴィア「ほらほら八幡君、早………あっ。」
八幡「ん?どうした?」
シルヴィア「八幡君、雪ノ下さんと小町ちゃんだよ。」
っ!
八幡「え?おぉ、奇遇だな。お前達も飯か?」
雪乃「え、えぇ。貴方達もそうみたいね。」
八幡「まぁな。」
シルヴィア「折角だから相席しない?最近の星導館の事も知りたいしね。」
小町「小町は構いませんけど………」
小町さんは比企谷君を意識していた。やっぱりまだ心の中では蟠りがあるみたいね。
八幡「俺も構わないぞ。シルヴィ、こっちに来い。2人はそっち側に座れ。」
シルヴィア「は~い。」
雪乃「分かったわ。」
小町「は、はい……」
雪乃「2人はこのお店によく来るのかしら?」
シルヴィア「ううん、普段は外食はあまりしないよ。デートする時に行くだけかな。殆どは家で料理したのを食べてる。一応将来も見通して練習中だからね。」
小町「将来?」
八幡「俺達は将来、飲食店経営をしようと思っていてな。だから今の内に料理とかの勉強をしてるんだよ。それで料理だ。」
……意外ね。比企谷君なら教師や武術家にでもなるものだと思っていたのだけど、料理人になりたいだなんて。リューネハイムさんも同じみたいね。
シルヴィア「お店に入れる人数は15〜20人にしてるから防火管理者をギリギリ取らないようにしてるんだ。流石に2人で経営していくのに、そんな手間はかけられないから。」
小町「こ、小町、初めて聞きましたよ。その防火管理者なんて言葉。」
シルヴィア「お店に1人は必要だからね。後は食品衛生管理者も必要だけど、それは八幡君がもう取ってくれてるから問題無いんだ。だから事実上は、もう経営しても大丈夫な状況になってるんだよね。」
小町「あれ?調理師の資格は要らないんですか?」
シルヴィア「うん。調理師免許はあってもなくても問題は特に無いんだ。まぁ持ってるに越した事は無いけどね。八幡君は持ってるの?」
八幡「いや、持ってない。無理に取る必要も無いからな。資格を取るわけではないが、一応どんな料理を作るか今からでも練っておきたいからな。」
昔の比企谷君とは大違いね。こんな風に将来を見据えてるなんて………あの時は働きたくないとか言っていた彼とは本当に思えないわ。
シルヴィア「2人は将来どうするとか考えてるの?」
小町「小町はとりあえず大学進学ですね………まだ働くなんて考えられないですし。」
シルヴィア「まぁそうだよね。じっくり考えるといいよ。雪ノ下さんは?」
雪乃「母親の事業に入ろうと思っているわ。主に事務内で総務や経理に就きたいと思っているわ。」
八幡「まぁ、なんとなく想像出来るな。お前って身体よりも頭を動かしそうなタイプだからな。あっ、物理でじゃないからな?脳内でって意味だからな?」
雪乃「それくらい分かってるわよ。物理で動かしても仕事なんて出来ないじゃない。」
八幡「冗談だよ。さすがは雪ノ下だな、冗談を真に受ける真面目っぷりは健在か。」
雪乃「……つまりはからかったというわけね?」
八幡「ガチガチに緊張するよりかはマシだろ?」
雪乃「っ!………本当に変わったわね。気遣いも出来るようになっているなんて。」
八幡「此処に来てからは変わったさ……お互いに丸くなったもんだな。」
………そうね。私が丸くなったのは最近だけど、今思えばもっと早くからそうなっていればと心底思うわ。何で私はこうも生き方が下手なのかしらね。
でもいいわ、これから良くしていけばいい話よね。