八幡side
風呂の出来事から大分経った後、俺達はまた紅茶とアップルタルトを食しており、色んな雑談をしていた。シルヴィは明日決勝だからな。こういうメンタルケアも必要だ。本人は今笑っているが、安心出来ているかはまた別問題だ。
一応出来る限りのサポートはするが、俺にも限界がある。明日も決勝まで居られるのは、精々2〜3時間といったところだ。最初から最後まで俺と居てリラックスが出来るかなんて言われたら、絶対に出来ないだろう。
シルヴィア「八幡君、どうかしたの?」
八幡「………ん?あ、あぁ済まん。ちょっと考え事をしていた。」
シルヴィア「………ひょっとして明日の事?」
八幡「……何で分かったんだ?」
シルヴィア「八幡君の考えてる事がなんとなく分かるようになってきたんだ。それに今はこうして手を繋いでるからね。」
八幡「それもあるかもな。」
俺達は今、手を繋ぎながらソファに座っている。ついでに言うと、タルトを食べる時はお互い片方の手を使って食べている。
シルヴィが手を離したくないって聞かねぇからこうしてるわけだ。最初は食べさせ合いっこと言われたが、手を繋ぐだけでもういっぱいだ。
シルヴィア「大丈夫だよ八幡君、今こうしてるだけでも充分過ぎるくらい余裕がある。決勝ステージに立ったら分からないけど、こうしてるだけでも大分違うよ。」
八幡「……ならいいんだが、無理すんなよ?なんかあったら俺に言えよ。出来る限りはしてやる。少しでもいいからな?」
シルヴィア「……じゃあさ八幡君。」
八幡「ん?どうした?」
シルヴィア「……今日寝る時、一緒でもいい?お風呂場でも言ったけど、君が傍に居ないと不安になっちゃうから。」
八幡「………そうか。いや、そうだな。誰だって傍に居て欲しい時はあるよな。まぁ、俺は無いが。」
シルヴィア「ふふっ!何それ?」
八幡「今までそんな奴居なかったからな……いや、こんな時にする話じゃないな。」
シルヴィア「でも、これからは私が居るからね?いつだって頼ってね?」
八幡「………そうだな。」
シルヴィア「うんっ♪それと八幡君、ペトラさんから言われたんだけど、私の事務所に入る気はないかって。しかも私のデュエット限定で。」
なんだそりゃ?シルヴィのデュエット限定?歌手なんてこの世界に幾らでも居るってのに何で俺を選んだ?
シルヴィア「それがね?この前のライブで来る筈だった人から今度はこういう事は無いようにするからやらせてくれないかって依頼が来たんだけど、ペトラさんが即お断りしちゃって。それで、八幡君に白羽の矢が立ったっていうか……どうかな?」
八幡「どうって言われてもな……俺は芸能界になんて興味ねぇし、別段やりてぇわけでもねぇしな。」
あん時は、ただシルヴィに頼まれたからやっただけだからな。俺の意思で決めていいなら、俺はやらんな、注目されんのも目立つのも嫌いだし。
シルヴィア「その顔はやっぱりダメかぁ。まぁ分かっていたけどね。」
八幡「俺の性格分かってんだろ?」
シルヴィア「まぁね、もしかして趣味が悪いって言いたいのかな?」
八幡「いや、小悪魔だなって。」
シルヴィア「あっ、そういう事言うんだ!ならお前の片腕は私が貰ったぞ~!ギュ~!」ダキッ!
コイツって偶に派手になるよな。まぁ、そういうところも良いんだがな。まぁ、少し付き合ってやるか。
八幡「じゃあ俺はお前の頭を貰うからな?抵抗するなよ?」ナデナデ
シルヴィア「うにゃ〜……」トロォ∼…
出た、シルヴィのよく分からん声。
シルヴィア「これされちゃうと身体から力が抜けちゃうよぉ〜。八幡君って頭撫でるの上手過ぎるよぉ〜。なんか魔法使ってるのぉ?」トロォ∼…
なんか喋り方間伸びしてないか?
八幡「いや、何もしてないが……それよりもお前、喋り方間伸びしてないか?」
シルヴィア「そんなの八幡君が頭撫でるからだよぉ〜。もっと撫でてぇ〜。」トロォ∼…
俺のせいみたいにされたと思ったら、今度は更に要求された。しかもちゃっかりよしかかって来てるし。
八幡「……もう寝るか?」ナデナデ
シルヴィア「んんぅ……まぁ〜だだよぉ〜♪八幡君は撫でるのぉ〜。」トロォ∼…
八幡「眠いんだろ?もう寝るぞ。」
シルヴィア「ナデナデしてくれる?」
八幡「……分かった。やってやるからベッドまで歩け、ほら。」
シルヴィア「むぅ〜。八幡君と離れたくないのぉ〜!抱っこ!」
コイツ………なんか性格変わってねぇか?すげぇ子供っぽくなってんぞ?……俺もう知らねぇぞ?明日になって恥ずかしくなっても知らねぇからな?
八幡「たくっ……ほらっ!」
シルヴィア「♪〜ありがとぉ~!」
そしてシルヴィアをベッドに寝転がせた。だが、どこか不満そうだった。
シルヴィア「むぅ〜八幡君っ!一緒に寝てくれるんでしょ!八幡君もベッドに入って!でなきゃ、めっ!だよ!」
何コイツ超可愛くね?こういうのをギャップっていうのか?
八幡「おぉ、悪いな。電気消すだけだから我慢してくれ。」
シルヴィア「………うん。」
俺は電気を消すと、少し戸惑いながらもシルヴィが寝ているベッドの手前の方で寝転んだ。一応シルヴィの方を向いてだ。
シルヴィア「………ごめんね八幡君、さっきまでのは演技なんだ。」
八幡「……え?マジか?全然気付かなかった。だが何でこんな事を?」
シルヴィア「八幡君がどんな反応するのかなぁって。そしたら八幡君、全部私に合わせてくれるからビックリしたよ。」
八幡「そりゃな、明日は大一番だからな。何でも言えって言ったのは俺だしな。」
シルヴィア「………近くに寄っていい?」
八幡「……あぁ。」
俺が答えてすぐに、こっちへとゆっくり近寄って来た。顔も近いが風呂の時に比べりゃどうって事ない。
シルヴィア「今日はありがとうね。私の我が儘につき合わせちゃって。」
八幡「気にすんな。今日はもうゆっくり休んどけ。俺もお前も明日は早いからな。」
シルヴィア「………うん。」
………
八幡「やっぱり不安か?」
シルヴィア「………本当に凄いね。八幡君は分かっちゃうんだね。」
八幡「その顔見たらな。流石に拭いきれないもんだと思うぞ。相手は六花最強の魔女だからな、ならない方がおかしい。」
俺に今出来るのは、不安を取り除くくらいだ。あまり変な事は出来ないからな。
シルヴィア「なんだろう……怖いのかな?私って八幡君みたいに心も身体も強くないから。せめて八幡君のような動じない精神力を分けてほしいよ。」
八幡「……なら反対側を向いてろ、ちょっとしたリラックス法をしてやる。」
シルヴィア「?……うん。」
シルヴィは俺が言った事に素直に従い、そのまま俺に背を向けている。
別にいいよな?殴られる覚悟ならもう出来てる。
俺はそのままシルヴィを抱いた。
シルヴィア「え?は、八幡君?」
八幡「人は後ろから抱かれると、安心感、ストレスと不眠の解消という効果がある。お前が俺に後ろから抱かれて安心するかどうかなんて分からんが、少しはマシになるだろう。」
シルヴィア「……充分過ぎるよ。凄く安心してきた、眠くなってきた。ねぇ八幡君?今日はこのまま寝ていいかな?出来れば朝までずっと。」
八幡「あぁ、もう休め。」
シルヴィア「うん……お休み。」
そう言ってから俺とシルヴィは夢の国へと旅立った。
思いの外時間掛かってすいません。