もう少し待って下さい。
八幡side
なんか中華も久し振りな気がする。最近は忙しい日々が続いていたからな。《王竜星武祭》がやってる中、見学しにきたり、シルヴィが泊まりに来たりと中々暇になれなかったからな。少し経った今でもその余韻はある。それは飯を自分で作っていたからだ。あれから1週間も無意識に作っていた。
これでは報奨金が底をつく。今日から週に5日は食堂だな。でないと、生活していけないかもしれん。
八幡「今日から中華でもいいか。しかし本当に久し振りな感じがするな。」
何にすっかなぁ。唐揚げ定食や麻婆豆腐もいいが、炒飯とラーメンも食いたい。小籠包と青椒肉絲も食いてぇな。餃子としゅうまいも外し難いし、いっそ小分けにしたメニュー出してくんねぇかな?
八幡「すいませー……あれ?」
まだ準備中?変だな。この時間帯ならやっててもおかしくないはずだが。
職員1「ありゃ、来ちゃったよ!」
職員2「ん?あぁ!八幡坊ちゃん!あんただったのかい!」
八幡「え?あ、はい。どうかしたんすか?これから混むって時に。」
今から準備してないとなると、後がつっかえて料理場が機能しなくなる。新しい料理が注文された際には、それこそ大問題だ。
職員1「それがねぇ、此処のスタッフがもう2人来るはずだったんだけど、熱が出たって今連絡が入ってきたもんだからさー。」
職員2「前以て連絡してくれればあたしらも対応出来たんだけど、こんな時間に連絡入れられてもしょうがないだけなのに。それでメニューどうしたらいいか考えてるってわけさ。ごめんねぇ。」
成る程、だからか。確かにスタッフ2人じゃあ限界がある。この場を切り盛りするのはどう考えても無理だな。
職員1「はぁ……仕方ないけど、今日はメニューを減らすしかないね。あんだけの生徒数に幾つものメニュー渡されたんじゃ、あたしらが追いつけないよ。」
八幡「それなら手伝いましょうか?」
「「え?」」
料理なら自信あるしな。
職員2「でも、坊ちゃんは飯を食べに来たんだろ?手伝いなんかしてもいいのかい?余計に腹が減るだけだと思うけど……」
八幡「そんなに空腹って訳じゃないんで大丈夫です。飯代持ってくれるんなら手伝いますよ?これでも自信ありますから。」
おばちゃん2人は考え込む仕草をしたが、すぐに答えは出た。
職員2「よっしゃ!あたしゃ坊ちゃんに賭ける!あんたの腕を信じるよ!」
職員1「よろしくねぇ!じゃあ早速だけど、中に入っとくれ。色々と器具の場所とか説明するからさ。」
そんなこんなで10分、説明が終わって調理服を着てから、調理の準備を開始する。
いつどんな注文が来てもおかしくはないからな。他のメニューも作っておくか。出来たのは保温機に入れときゃいいからな。
ーーー30分後ーーー
男子1「……おい、この小籠包何時もより美味くないか?」
男子2「お前もそう思う?俺もだ。」
女子1「何この麻婆豆腐……何時もより少し辛いけどすごく美味しい!」
女子2「こっちの唐揚げも凄く美味しい!レシピ変えたのかな!?」
男3「んっ!?こっちの炒飯すげぇ!!いい塩加減だ!」
女3「嘘!?一口ちょうだい!」
たちまちに此処の食堂は人で溢れ、廊下にも並んで最後尾が見えない程だった。幸いにも人気料理はまだストックがあるからまだ平気だ。
にしても………楽しくなってきた。
男子4「唐揚げ定食!唐揚げ1つ追加でお願いします!」
男子5「炒飯大盛!」
女子4「野菜炒め定食お願いします!」
星露「青椒肉絲を頼むのじゃ!」
すげぇ勢いで来るなぁ。1人なんか聞き覚えのある声だったが、まぁいい。どんどん来い!だって今4品の内3品は出来てるからな!1品はもう少しお待ちください。
職人2「………坊ちゃん、あたしらもう調理してないのに……1人で間に合わせるなんて……あんた何者だい?」
職人1「長年やってきてるけど、恐ろしいねぇ。でたらめにも程があるよ。」
すると食堂の食卓の方ではこんな声が………
星露「んんっ!?この味……もしや其処に八幡が居るのではないのかえ!?」
ん?今誰かに呼ばれたか?
八幡「ん?誰か呼んだか?」
ガタッ!!!
星露以外の全員が一斉に立ち上がった。
八幡「………え?何?」
男子3「し、し、失礼を承知でお聞きしたいのですが、この料理は……尊師が?」
八幡「あぁ。途中からおばちゃん達は配膳に廻ってたからな。」
全員(星露以外)「っ!!!」
………すると、立ってそのまま固まってしまった。
男子1「まさか……まさか尊師が……我らのために食事まで………」
男子2「なんてお方だ……」ゴウキュウ
八幡「……え?ど、どうしたんだ?」
女子2「私たち……此処まで愛されていたなんて……」ホロリ
女子4「器から違うわ……」ナミダ
八幡「いやいや、たかが飯くらいで大袈裟すぎるだろお前ら。こんなの別に楽しんでやりゃあいいだけだ。」
全員(星露以外)「たかが飯くらい!!?」
………今度はどした?
男子5「なんと……尊師そこまで……」
男子3「我々の成長のためなら、苦など気にしないと言われるなんて……」
いや、そこまで言ってないからな?俺だって苦しいのは嫌いだからね?
女子1「私………尊師にもっと憧れちゃったわ。」
男子3「あぁ、すげぇ人だ。」
あんまり褒めるの止めてね?俺褒められ慣れてないから。
全員「尊師っ!!」
八幡「は、はい!?」
ヤベッ、声裏返った。
男子3「今回はご馳走様でした。この食事に込められた尊師の想い、決して無駄にはしません!これからもより一層の努力をすると誓います!」
八幡「……えーと、無理すんなよ?大怪我でもしたら元も子もないんだからよ。」
全員「ありがたきお言葉っ!!」
此処軍隊じゃないからそんな声揃えなくてもいいよ?
男子生徒がそう言い終えると、食べ終わった者は再度お礼を述べてから退室して、残っている者は、料理を噛み締めるように食べていた。俺ただ飯作っただけだよ?
ーーー1時間半後ーーー
………ようやく終わった。俺だって分かった瞬間の奴等の顔面白かったな。鳩が豆鉄砲受けたような顔してたな。
八幡「あぁ〜腹減った。俺も食うか。」
職員2「坊ちゃん助かったよ。しかしあんた本当に慕われてるんだね〜。正直疑ってたけど、さっきのアレ見てすっ飛んだよ。」
八幡「勝手にやってるだけですけどね。俺は教えてるだけですけど、奴らにとっては拠り所みたいなものなんでしょうね。」
職員2「まぁいい事じゃないか。約束通り食っていきな!まぁ全部あんたが作ったもんだから貰う気なんて無いけどね。」
八幡「えぇ、じゃあ遠慮無く。」
程良い感じで余ったので、最初思ってた全品というわけではないが、ほとんどの料理が食べられた。
飯を食い終わって、身体を動かそうと思って道場に向かって着いてみると………
全員「尊師っ!!お疲れ様です!!」
全員が並んで深いお辞儀をした。
いや、ホントにいいからね?
八幡の料理スキルは、もうカンスト超えですね。