まだ、具体的な対策が練られていない中、月は、宮水神社の御神体を訪れます。
そこで、月が見た物は・・・・・
『月くん、彗星の破片の落下まで、もう日が無いよ!どうするの?考えてくれるって言ったじゃない!』
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『仕方が無いだろう、デスノート事件なんかがあって、それどころじゃ無かった。それに、君に頼んだ件の回答をまだもらって無い。カリスマ性のある人物のあたりを、付けて欲しいと言ったよね?』
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『そうだった、ごめんなさい。やっぱり、適任者は、糸守町長である私のお父さん“宮水としき”しかいません。お父さんなら、役場の職員はもちろん、消防団も動かせます。住民の信頼も厚いです。ただ、お母さんが亡くなったのがきっかけで、お婆ちゃんと確執ができてしまって、今は一緒に住んでいません。』
そうか、やはり、あの町長しかいないか。母親が亡くなったというのは、例の影月による強盗殺人か?だが、その件は今はどうでもいい。
頑固そうな男だから、説得には骨が折れそうだ・・・・しかし、あういうタイプは、味方に付ければ大変頼りになる。それには、感情的になっては駄目だ!冷静に話し合って、僕を信じ込ませなければ。
ただ、まだ説得のための材料が足りない・・・・・・
「お姉ちゃん、はよせんと、出掛けるよ!」
下から、四葉の呼ぶ声が聞こえる。急いで制服に着替えて、下に降りると・・・・・
「何で、制服着とんの?」
と、四葉が言ってくる。何だ?今日は日曜日では無いし、祭日でも無い。どういうことだ?そもそも、何処に出掛けるつもりなんだ?・・・・・
今日は、山の上にある御神体に、口噛み酒とやらを奉納する日らしい。この町だけの行事なので祝日では無いが、学校や仕事は休みらしい・・・・三葉め、そういう事はちゃんと申し送りしておけ!
僕と四葉、婆さんの3人で出かける。宮水神社の、裏手の山を登って行くようだ。
しかし、何故御神体が神社にでは無く、山の上にあるんだ?普通は、神社の中か、そうでなくても直ぐ側にありそうだが・・・・・
結構な山道を、ひたすら歩く。
「お婆ちゃん、何でうちの御神体は、こんな遠くにあんの?」
四葉が聞く。僕も知りたいが。
「繭五郎のせいで、わしにも分からん。」
繭五郎?誰だ、それは?
「・・・誰?」
僕は、小声で四葉に聞く。
「え、知らんの?“繭五郎の大火”で有名やよ。」
繭五郎の大火?何だ、それは?
まだまだ、先は長そうだ。僕や四葉は何とかなるだろうが、婆さんには、この山道は辛いだろう。非常に、歩みも遅い。これでは、いつ御神体に辿り着けるか分からない・・・・
「お婆ちゃん!」
痺れを切らして、僕は、婆さんに背中を差し出す。婆さんは、にっこり笑って、
「ありがとうよ。」
と言って、僕の背中におぶさる。
立ち上がる時に少しよろけたが、婆さんは、あまりにも軽かった。おぶって歩くのも、大して苦にはならない・・・・・
山頂までの道中、僕の背で、婆さんが日本古来の“ムスビ”の事を語った。
糸を繋げることも、人を繋げることも、時間が流れることも、全部同じ言葉“ムスビ”を使う。それは神様の呼び名であり、神様の力でもあると。では、僕と三葉の入れ替わりも、何かの“ムスビ”なのか?・・・・・・
ようやく頂上に着くと、そこには、大きなカルデラ状の窪地があった。その中央には、巨大な岩と一体化した巨木があり、それが御神体らしい。
おかしいな?この山は、火山では無い。火山でも無ければ、こんなカルデラは隕石でも墜ちなければできない・・・・・まてよ、これも、彗星の破片の落下によってできたのか?だとすると、それは糸守湖よりも昔・・・・・まさか、ティアマト彗星接近の度に、ここに破片が墜ちている?
これが御神体なら、神社と場所が離れているのも分かるような気がする。こんな場所に神社を建てても、通うのが大変だ。逆にこんな物を、町の近くまで運ぶのも困難だ。
僕達は、その御神体を囲むように流れる、小川の前まで行く。
「ここから先は、隠り世。」
婆さんが、また語る。この先はあの世、つまりは死後の世界であり、戻るには、僕達の一番大切なものを、引き換えにしなければならないらしい・・・・その一番大切なものが、口噛み酒なのだと・・・・・この酒は、三葉と四葉が米を噛み、唾液と共に吐き出したものらしい。これが、三葉達の半分なのだそうだ・・・・
御神体の前まで行くと、小さな入り口があり、下に降りる階段が付いていた。中まで降りて行くと、小さな祠があり、口噛み酒はそこに奉納された。
僕はふと、天井に目をやる。何かが描いてある。蝋燭のわずかな光ではっきりは見えないが、紐のような、蛇のような・・・・いや、もしかすると、これは彗星か?何故?こんなところに彗星の絵が?・・・・・知っていたのか?ここに御神体を祀った人々は、彗星の接近の度に、この地に破片が墜ちる事を・・・・・それを、事前に知らせるために、入れ替わりの力が・・・・・いや、待て、それならば、何故その事を古文書等で後生に伝えない?特に、宮水神社にそれが伝わっていないのがおかしい!
御神体を出て、山を降りると、もう陽が雲の後ろに隠れ掛かっていた。
「もう、カタワレ時やなあ・・・・」
婆さんが呟く。
そういえば、古典の授業で教師が言っていたな・・・・夕方、昼でも夜でも無い時間・・・人ならざるもの、魔物や、死者に出くわす時間・・・・・ふん、こちらは毎日のように、死神(魔物)と顔を突き合わせている。カタワレ時など関係無いな・・・・・
考え込んでいる僕に、婆さんが横から声を掛ける・・・・
「あんた今、夢を見とるな・・・・」
「お・・・お婆ちゃん?」
「あんた・・・三葉やないやろ?」
「わ・・・分かるんですか?」
「わしも昔・・・・そんな時期があった・・・・何故か、今迄忘れとったが・・・・」
やはり、入れ替わりは、宮水家の女子に受け継がれて来た力なのか?しかし、何故それが伝承されていない?・・・・・まてよ、今朝来る時に、四葉が・・・・・・
「お婆さん?」
「何や?」
「“繭五郎の大火”って、何ですか?」
今日も、月くんの指示通りに、塾に行って勉強していた。
といっても、月くんのカリキュラムは私にとっては五里霧中で全く理解ができないので、粧裕ちゃんに教えられるように、中学高学年の数学を勉強していた。
先日、粧裕ちゃんに
“お兄ちゃん、数学教えて!”
と言われて安請け合いしたんだけど、1問解くだけでえらく時間が掛かって、怪しまれた。いくら東京の進学校だからって、中学の数学でさえ手こずるなんて、本当に情けない。こんなんで私、東京の大学に行けるのかな?
リュークはそんな私を見て、いつも“クックックッ”と笑っている。ほんとに、この死神はっ!
その塾の帰り道、私はある事に気付き、小声でリュークに話し掛ける。
「ねえ、リューク?」
「何だ?」
「私、誰かにつけられてへん?」
「何だ、気付いてたのか?」
「や・・・やっぱり?」
さっきから、背後に視線を感じていた。
ここ最近、糸守では松本がほぼストーカー状態で、やたらと私をつけ回している。ただ見ているだけで、それ以外は何もしてこないので害はないんだけど、きもい!
月くんが変なフォローしたからなんだけど、デスノートの件を解決してくれたんだから、あまり文句も言えない。ただ、そのせいで、自分を見つめる視線には特に敏感になっていた。
「警察かな?」
「多分な。」
もしかして、月くんがキラだってばれちゃったの?で・・・でも、私が勝手に判断しちゃまずいよね?ここは、普通に振る舞って、とにかく、月くんに知らせなくっちゃっ!
一応は、気付かない振りをして、そのまま帰宅した。ただ、必要以上に緊張していたので、少し不自然に見られたかもしれない・・・・・
その夜、何日かぶりに、月くんのお父さんが早く帰宅した。家族全員で、夕飯の食卓を囲む事になる。私が月くんになっている時では、初めての体験だった。
私は、お父さんの正面に座る。物凄く、威厳を感じる人だ。うちのお父さんもそこそこだけど、その何倍も立派そう・・・・・さすが、月くんのお父さんだけの事はある。
「勉強の方はどうだ?月?」
「え・・・うん、まあまあかな?」
いきなり振られて、とりあえず適当に返した。
「いつも学年トップの、自慢の兄です!はい!」
「自慢の息子です、はい。」
粧裕ちゃんと、お母さんがそれに続く。確かに、月くんは自慢の息子だろうけど・・・・今、中にいるのは、恥ずかしい私なんですけど・・・・・・
でも、お父さん、何か元気が無い。
「疲れてるみたいだね・・・・お父さん。」
つい、そう言ってしまう。
「ん?ああ、今回の事件はそうとう難しそうでな、とても一筋縄じゃいかん・・・・」
今回の事件って・・・・キラの事?
「捜査本部の偉い人が、キラは、学生の可能性が高いと言って来てな・・・・」
え?
「お父さん、食事の時にそんな話は・・・・」
「ああ、すまない。以前にも、月のおかげで解決した事件があったから、ついな・・・」
警察のお偉いさんにまで、頼りにされるなんて・・・・どこまで凄いの?月くんって・・・・
で・・・でも、キラが学生ってばれてるの?まさか、それで尾行が?・・・・・
月くん、大丈夫かな?今後は、このお父さんとも闘う事になるのかな?
尾行の件も気になるけど、もしお父さんに事実を知られたら?月くん、お父さんの名前までデスノートに書くの?
その夜は、彗星落下の事より、そっちの方が気になって中々寝付けなかった・・・・
月は、ようやく三葉の父を説得できるだけの材料を、手に入れました。
一方三葉は、大分月に心を惹かれてしまっています。
このまま住民の避難が成功し、三葉が生き残ったら・・・・3年後、三葉は月に会いに行くでしょう。
ですが、そうなれば、月は三葉の名前をデスノートに・・・・・
果たして、この2人の運命は?次回、最終話です。