お待たせいたしました。少し恋姫の方に時間を割いていましたので……。でも両方ちゃんと進めますのでご安心ください。
ーー静かだ。さほど広いわけでもない教室が、静寂に包まれている。無関係な人なら、一体何があったんだと周りを見渡せるだろうけど、僕にはできない。…何故なら、この静寂の原因は何を隠そう僕と兄さんだから。
「……視線が痛い……」
兄さんも相当参っているようだ。緊張のあまり体が強張っている。
右隣の兄さんと一緒に、幼なじみに目で助けを乞う。…あ。そっぽ向かれた。
はあ、と溜め息。溜め息をつくと幸せが逃げるなんて言うけど、こんな針のむしろでは溜め息の一つもつきたくなるよ。
「まさか僕までISを使えるとは……」
*****
高校受験当日。受験会場の多目的ホール内で、僕と兄さんは迷子になっていた。
……いや、これは仕方ない思うんだ。形が本当に非常識的で、もはやルル○エと言っても差し支えないんじゃないかってくらいなんだから。どこかの2Pカラーの、『常識にとらわれてはいけないのですね!』という声が聞こえて来そうなくらい。
「……三春、どうしようか」
「……もう次に見つけた扉に入っちゃおうよ。合ってなくても、誰かに訊けるだろうし。…あ、あった」
扉を開けて入室すると、受付みたいな人が忙しそうに書類とにらめっこしていた。
「……あ、受験の子? 時間おしてるから早く奥行って着替えちゃって。……まったく、この建物どうなってんのよ。中で迷って時間ギリギリになっちゃったじゃないの」
……うん。それはすごく同感だよ。とりあえずこの建物は即刻リフォームすべきじゃないかな。僕としては開放感が足りないと思うんだけど、某緑の匠に任せると良いんじゃない?後せめてこっちを一度くらい見て言って欲しかったです名も知らぬ受付さん。
「着替えってする必要あるのか?」
「うーん、カンニング対策とかじゃない?」
そもそも受験を学校じゃなくて多目的ホールでやるのも去年のカンニング事件の影響だし。さらに受験会場は受験の数日前に発表という手の込みようは、やり過ぎじゃないかというくらいだ。
そんなどうでも良いことを考えつつ、奥へと進む。ーーその先に、それはあった。
「IS……」
ーーそう。そこにあったのは、まごう事なきISだった。それが二機、静かに鎮座している。
ふと、兄さんがISに向かって行く。まるで呼ばれたかのように。導かれるかのように。そしてその手が触れた瞬間。
ーーああ、やっぱりだ。やっぱり兄さんはあの場所へ行ってしまう。
「反応……した!?」
……そこにはISを展開した兄さんの姿があった。
原作通りなのは予想通り。いや、計画通りと言っても良いだろう。今まで原作ブレイクをする機会はいくらでもあった。今だって、兄さんが触れるのを止められたのにそれをしなかったのは、今後の計画に支障をきたすからだ。だから、これは覚悟の上…。…例え兄さんが、僕を置いて一人であの学園に行ってしまっても。……覚悟の上の、はずなのに。
「……でも、やっぱりやだなあ……」
ーーそんな僕のわがままを聞いてくれたのか。いつの間にか手を触れていた僕の体は、それに一瞬で包まれていた。
「あなた達!ここで何を……え、嘘でしょ!?男がISを展開するなんて……!?」
異変を察知して入って来た、受付さんの声がどこか遠く聞こえる。
「やった……これで兄さんと一緒!」
この日世界中を駆け巡った、『二人の男性IS適正者発見』というニュース。これで有名になったら計画が実行し辛いなんて事は、その時の僕の頭からはすっかり消えていたのだった。
*****
そして今に至る。
あの後政府の人と姉さんが来て色々話し合った結果、ISを動かせる男という、貴重な『サンプル』として狙われるのを防ぐために、あらゆる国家、企業から独立した機関……ここ、『IS学園』への入学が決まったのだ。
「兄さんと一緒なのは嬉しいけど……」
IS学園はその性質上、すごく警備が厳しい。それにあの天災兎も少しくらいは気にしてるであろう場所だから、ここで計画を進めるのは難易度が高いんだよね。……あ、先生が入って来た。緑色の髪、よく似合っている眼鏡。ーーそしてあの双丘!
「みふぁふ、ふぉうひへほうふぉふへふんふぁ?(三春、どうして頬をつねるんだ?)」
「兄さんのへんたい。ふん!」
兄さん視線が露骨過ぎだよ。やまや先生にはばれなくても僕は誤魔化せないからね。
「皆さん初めまして。私はこのクラスの副担任の、山田真耶と言います。これからよろしくお願いしますね」
「よろしくお願いしまーす」
……静寂。
って誰か返事しようよ!? 逆に一人だけ返事した僕が間違ったみたいじゃん! 兄さんも胸見てる余裕あるなら大丈夫でしょ!
「え、ええと……とりあえず自己紹介しちゃいましょうか。」
良かった。今度は皆ちゃんと反応して、自己紹介に移ってる。さあ、次は兄さんの番だよ?
「え、えーと一夏君?一夏君!」
「は、はい!?」
「い、いきなり大きな声出してごめんね? でも、『あ』から始まって今『お』なんだよね。じ、自己紹介して貰えるかな?」
「そ、そんな先生が謝る必要ないですって!自己紹介しますから!」
あっちゃ~。やっぱり原作通りか~。ということは……
「え、えーと。織斑一夏です。よろしくお願いします。……」
女性陣皆が、特技とか趣味とか、そういうプラスアルファを期待してる。……ま、まずい! この流れは……!
「以上です!」
椅子から女性陣がずり落ちる。兄さんは「え!?何か駄目でした!?」とか言ってるし。ああ。これはもう駄目だ……フラグが立ってしまった……。
ーーバシィン!!
「いだあっ!?……って千冬姉!」
「ここでは織斑先生だ」
兄さんの背後には、よく先生が持ってる黒いのを手にした姉さんの姿が。……ごめん兄さん。流石に姉さんの攻撃は防げなかったよ……
「で?挨拶もろくにできんのかお前は」
「い、いや千冬姉。俺はーー」
ーーダンッ!
「織斑先生だ」
「……はい。織斑先生」
机に熱い口付けを強要される兄さん。でも大丈夫だよ。机はファーストキスに含めないから。
……にしても、これからどうなることやら。先が思いやられるよ。
少し長くなってしまったので金髪さんは次回です。